さて今回で探検隊も最終回である。今回はこれまでを振り返りつつ、UQのWiMAXのサービスエリアがどこまで広がったかをまとめてみよう。
そもそも後発サービスであるUQ WiMAXにとって、サービスエリアは最大の弱点だった。正直に言ってしまえば、都内で限定サービスが開始された2月時点では、その都内でも繋がる場所は少なかった。しかしそれから10ヶ月が経過し、サービスエリアは大幅に改善されている。これは、UQがWiMAXのエリア整備を最重要課題として力を注いでいるおかげだろう。
一気に拡大したサービスエリア
たとえば屋外型基地局の数を見ると、限定サービス開始の2月時点で500局、正式サービス開始の7月時点で1,500局だったが、10月以降は急激に増加ペースが上がり、12月15日時点では4,160局にまで達した。最近では毎月800局以上のペースで急速に増えている。UQでは当初、年度末までに6,000局を開局すると発表していたが、すでにスケジュールの前倒しが決まっている。このペースならば年度末には7,000局以上となり、来年中には先行する3G系の他事業者を追い抜くことすらできそうである。
WiMAX基地局数の増加ペースの速さは、この探検隊シリーズでも強く実感させられた。実はこの探検隊企画がスタートした当初、WiMAXのサービスエリアとしてアナウンスされていたのは東名阪のみだった。しかし10月には広島と福岡が加わり、急遽探検隊の出動も決まった。12月にはさらに札幌市や北九州市など13のエリアが加わったとアナウンスされたが、実は11月14日の福岡取材時、帰りの新幹線車中で北九州市付近でもWiMAXが使えることが確認している。実際のところ、UQの公式アナウンスよりも早く、急速に全国へとエリア拡大が進められているのだ。
屋外だけでなく屋内基地局も整備が進められている。すでに駅構内などが使えるようになっているが、今後は小型・低コストの中継局を導入することで、さらに屋内エリアの拡充を進めやすくするという。
また、基地局数を増やすだけでなく、すでに開局しているエリアも、基地局のアンテナなどに調整を施し、ビルの谷間や屋内に電波が通りやすく改善している。筆者も実際に使ってみて、2月時点ではほとんど使えなかった都内の屋内で、10月時点では問題なく使えるようになったことを確認できた。すでにサービスエリア内とアナウンスされている場所も、中継局の整備と既設基地局の調整で、接続状況は改善され続けているというわけだ。個人宅などはケースバイケースで難しいところだが、UQが社員を使って調査したところ、たとえば東京23区内であれば、9割以上の人が自宅でWiMAXを使えたという。
確かに先行する3Gの事業者に比べると、サービスエリア面で追いついた、とはまだ言い切れないかもしれない。しかし、実際に使ってみると、「ここで繋ぎたいのに繋がらない」というケースは本当に少なくなった印象を受ける。いつでも待受できなければ困る携帯電話と異なり、少なくとも現時点では、WiMAXはノートパソコンを開くような場所でさえ繋がれば実用には十分である。そういった意味では、都心部のWiMAXエリアは、すでに実用レベルに達しているとの印象を感じた。
今後のサービスエリア拡大にも期待
今後、ノートPCの標準装備となっていくことが予想されるWiMAX。そのためにもエリア拡大は急務だ
WiMAXの最大の弱点だったサービスエリアは、すでにかなり改善されているが、さらなる整備も進められている。UQの田中社長は「エリア拡大はわれわれの一番の使命。とことんやる」とコメントしているが、これまでのエリア拡充のペースを見ると、有言実行でエリア拡大に注力していることが感じ取れる。この10ヶ月間でかなりのエリアが構築されたが、今後のエリア拡大もかなりのペースで進むことに期待が持てる。
これまでは大都市を中心に展開してきたWiMAXだが、2009年度中に政令指定都市などをエリアとするなど、今後は地方への展開も進んでいく。UQの田中社長は「都心に比べ地方の方が基地局を建てやすい」ともコメントしているので、地方都市への早急な展開も期待できそうだ。
基地局の増設による面的なエリアの拡大に加え、中継局や既設基地局の調整による既存エリアの死角対策も行われ、屋内やビルの谷間でも繋がりやすくなっている。WiMAXのエリアは質・量の両面から充実しつつあるのだ。
ただ結局のところ、どんなにサービスエリアが広がっていても、ユーザー個人にとって重要なのは「自分の生活圏で繋がるか」だろう。幸いにもUQのWiMAXには、「Try WiMAX」などの試用サービスも用意されている。読者のみなさんには、是非ともそういった試用サービスでWiMAXのエリアの充実度合いを体感してもらいたい。
[Reported by 白根雅彦]