●常用固定回線を外に持ち出すという発想
新しい通信サービスに不安はつきものだ。それは、WiMAXとて例外ではない。特に、現時点で日常的に使っている通信サービスが、とりあえず、安定して接続できているのであればなおさらだ。そこに何らかの付加価値、たとえば、接続帯域幅の向上や、モビリティ、コストの低減などの魅力が提示された時点で、その置き換えや併用を考えることになる。置き換えに際しては、本当に、今の環境を完全にカバーできるのかどうかを、しっかりと確かめるために、ある程度の併用期間を確保するのが無難だ。
WiMAXは、モビリティを強くアピールしてきたことから、広域の無線LANシステムという印象で見られることが多い。だが、街全体を覆うという意味では、郊外の私鉄沿線にある自宅のような場所に固定して使うPCであっても、そのロケーションが圏内であれば、そのサービスをフルに活用できる点を積極的に認識したい。そして、そのWiMAXは、外にも持ち出せるモビリティを兼ね備えている。つまり、WiMAXは常用固定回線としての実力を、そのまま外に持ち出せる新たなサービスだと考えてみれば、ちょっとした発想の転換ができる。
従来のモバイルインターネット接続サービスは、どうしても、セカンダリーのイメージが強かった。普段、自宅で使っている光ファイバーやADSL、ケーブルテレビなどの固定回線を外に持ち出すことができないから、出先でインターネットを使うために、モバイル用に別途サービスを契約するわけだ。当然、そのためのコストは重い負担だ。WiMAXだって、Flatプランは4480円と、追加投資金額として考えれば、やはりハードルは高い。でも、従来の固定回線を置き換える唯一の常用固定回線として考えれば、コスト的にはリーズナブルであり、それだけの実力もある。
●驚きの基本使用料380円と業界最安値の天井
月の最低額380円で定額制を利用できる「UQ Step」を開始
UQコミュニケーションズも、コストに対してシビアなユーザーの気持ちを十分にわかっていたようで、ついに2段階定額プランとしての「UQ Step」の提供を開始した。このプランはパケット単価0.042円の従量制だが、9050パケットまでは月額380円の基本使用料に含まれる。それを超える分についてはリニアに積算されていくが上限が4600円に設定されているため、基本使用料380円+上限額4600円=4980円を超えることはない。UQ Flatが4480円なので、結果的には500円高くなってしまうが、ほとんどWiMAXを使わなかった月には、380円ですませるというリスク回避の保険料として考えたい。
では、その380円分9050パケットというのは、どのくらいの通信料かというと、1パケットは128バイトなので128×9050=1158400バイトとなる。つまり、約1MB強だ。また、それに加えて上限4600円分のパケット数は、4600÷0.042≒109523パケット。こちらは、128×109523≒14019047バイト、つまり約14MBだ。
使用パケット数に応じて課金されていくが、用途を考えると、最低額か上限額かのどちらかになるだろう
通常の使い方では、おそらくは、380円か4980円のどちらかしかないだろう。380円の基本料金に含まれる1MB強は、1200万画素のコンパクトデジカメで撮影したJPG画像1枚分にも満たない。広告などを含む一般的なWebページなら10ページ分あるかどうか。
一方、上限の14MBという容量も、WiMAXの実力なら、場合によっては1分以内に達する通信量だ。デジカメのJPG画像なら3枚程度である。ただ、Webページなら百数十ページ分といったところなので、こちらは、多少、量的な手応えを感じる。
こうして定量的にデータを分析する限り、モバイル通信事業各社が提供している2段階プランと同様に、UQ Stepもまた、使った月は必ず上限、使わなかった月は基本使用料のみという結果になるだろう。
だが、他事業者と比較した場合、UQ Stepには、2年縛りなどの期間拘束がない点、またUQ Flat <-> UQ Step間の契約変更には手数料がかからないという優位性がある。月の末日までに申し込めば、翌月は別のプランの契約となるわけだ。UQ Flatを使っているが、来月はあまり使わないな、と思ったらUQ Stepに契約を変更しておけば基本使用料の380円ですむ。万が一、フルに使ってしまったとしても4980円で、差額の500円は保険料のようなものになると書いたのは、そういう意味だ。そして、上限の4980円に達したとしても、その価格は業界最安値である点にも注目したい。
3種の料金プランがそろったUQ WiMAX。自分の利用用途に合ったプランを選択できる。もちろん、途中のコース変更も自由だ
●継続的な契約でWiMAXの実力を体感する
コスト面で考えたときに、本当に役に立つのか立たないのかわからない通信サービスに、いきなり固定額として月額4480円を支払い続ける契約をするというのは、心理的なハードルがとても高い。でも、380円ならダメモトでそのハードルは超えられるし、本当にダメなら解約も簡単だ。だが、急ピッチで進むサービスエリアの充実により、現時点では、自宅固定回線との置き換えは無理と判断していても、来月には、それがかなう可能性は高い。
このコラムでは、24時間600円でWiMAXを使えるUQ 1dayのコストパフォーマンスを高く評価してきたが、実際の暮らしの中では、連続した24時間よりも、1日1時間を24日間の方が、ずっと現実的だ。そして、それをかなえるためには、UQ Flatしか選択肢はなかったわけだが、新たに加わったUQ Stepは、使わなかった、あるいは、使えなかった月のコストを380円に抑えることで、契約に至る心理的なハードルを一気に低くした。
併用からスタートして、使い心地を確かめながら固定回線を置き換え、最終的にはUQ Flatに移行するという流れの中では、とてもリーズナブルなプランだといえそうだ。UQコミュニケーションズでは、WiMAXの実力をアピールするために、Try WiMAXなど、さまざまな試用施策を用意しているが、手持ちのWiMAXパソコンのWiMAX機能を常に生きた状態に保つためには継続的な契約が望ましい。
ちなみに、まだ、WiMAXパソコンを手にしていないユーザーにも朗報がある。今年もあと残りわずかだが、12月いっぱいは、4種の外付け端末が半額になるキャンペーンが開始された。もちろん、UQ Stepの契約も可能だ。次に購入するPCをWiMAX搭載にするかどうかを決めるためにも絶好のチャンスだ。UQ Stepでは、UQ Flat同様にUQ Wi-Fiや追加機器登録オプションも使えるので、あとになってWiMAXパソコンを追加購入しても、手持ちの外付け端末が無駄になることもなさそうだ。
WiMAX搭載PCは、いつでもどこでも液晶を開けばすでにインターネットにつながっているという、かつてない体験を提供するが、PCの買い換えタイミングなどの事情もあり、その環境を、今すぐには自分のものにすることができないケースもあるだろう。だが、いちはやくWiMAXの実力を知ることさえできていれば、次のPCには必ず搭載PCを選びたくなる。そして、その選択が、暮らしの中でのPCの使い方のスタイルを劇的に変えていくのは間違いない。
[Text by 山田 祥平]