●内蔵だからこそのインスタント接続
WiMAXを搭載したPCを薦める理由は、やはり、USBやPCカードといったデバイスを使って接続するよりも、圧倒的に使い勝手がいいからだ。もちろん、外付けデバイスでも、最初にドライバやユーティリティをインストールしてしまえば、次回からは、装着するだけの簡単な手順でつながるが、一度、内蔵環境を体験してしまうと、この装着という行為すらめんどうくさいものに感じるようになるから人間は横着なものだ。
外付けモジュールは複数のPCで使い回せるという利点がある。しかし出っ張るので持ち運びには不便だし、内蔵モジュールにくらべて消費電力が多いというデメリットもある
UQコミュニケーションズは、本サービスを開始する前、モニターユーザーを募り、無償で試験サービスを提供していた時期があった。今年の2月から6月までのことで、ほんの少し前の話なのだが、当時は、内蔵PCなどはまだこの世になく、いくつかの外付け端末から、自分が使いたいものを選んで応募したところ、運良く当選して、日本で最初のWiMAXユーザーになれた。
当時のサービスエリアは、今と比べると、まだまだ狭いもので、都心を移動しながら、ここはつながる、ここはつながらないと、いろいろな場所で試したことを覚えている。ここはどうだろうと思ったら、まず、PCをカバンから出してスリープから復帰させ、ズボンのポケットにつっこんだままにしてあるUSB端末を取り出し、PCのUSB端子に装着、デバイスが認識されるのを待って、ユーティリティで電波の状態を見るわけだ。電波さえ良好に受信ができれば、勝手につながるという点では、内蔵PCと使い勝手はいっしょで気軽だ。端末装着の手間さえ厭わなければ、このあたりは、手動の接続を伴う3G端末での利用よりも、ずっとお手軽だ。
こうして善良なモニターユーザーの一人として、日々、接続状況を確認してきた。だが、そのうち、自分の行動範囲の中で、どこがつながり、どこがつながらないかがわかってくると、ここはどうだろうと試すことをしなくなってしまった。チャレンジをしなくなってしまったのだ。つながるところはわかっているので、そこだけで使うようになってしまったのだ。きっと、本サービスが始まった今、多くのユーザーも、きっとそんな感じだと思う。自分が使うところで使えれば、ほかのところで使えなくても、あまり気にならない。というか、使えないことに気がつかないのだから問題もないわけだ。
だが、こうしてモニターの義務をさぼっている間に、WiMAXのサービスエリアは、どんどんきめ細かな面展開が進み、かつてつながらなかった場所でも、快適に使えるようになってきている。モニターとして参加していたユーザーで、自分の使う場所で使えずに、やむなく本サービスへの加入を見送った方も、ぜひ、もういちど試してみてほしいと思う。
●勝手につながるからエリアチェックがカンタン
電源を入れると、あるいはスリープから復帰させると、その瞬間にユーティリティWiMAXへの接続を試みる。このあたりの使い勝手は内蔵WiFIとほとんど同じ
どうして、以前使えなかった場所で使えるようになっていることに気がついたかというと、WiMAXを搭載したPCを使うようになったからだ。搭載PCならサービスエリアチェックはきわめて簡単だ。なにしろ、WiMAXモジュールを待機状態にさえしておけば、つながる場所でPCを開けば勝手につながってしまう。たとえ、バッテリ節約などのためにWiMAXをオフにしていても、2回のクリックでオンにできるので、ここはどうだろう、と試すのもたやすい。そこが外付けデバイスとの大きな違いだ。
しかも、WiMAXのサービスエリア内にいるかどうかは、WiMAXにサービス加入していなくてもチェックできるという点がミソだ。もちろんインターネットに出て行くことはできないが、WiMAX加入手続きのサイトにはつながる。電波の受信状態が良好で、そのサイトが安定して使えるようであれば、その場所はWiMAXが使えるということだ。WiMAXのネットワークの外に出て行けないだけで、これなら使える、という感触は十分に得られるはずだ。
WiMAXの基地局は日々整備が進み、サービスエリアのところどころにあいていた穴はどんどんふさがりつつある。地方への展開も急ピッチだ。まさに秒進分歩で充実しつつあるサービスエリアの進捗状況がWiMAXパソコンのオーナーであれば、たとえ、サービスの加入者でなくても手に取るようにわかるのだ。
つまり、自分がPCを使いたい場所で、使えるかどうかのチェックを続けていて、これなら満足できると納得できるタイミングで、サービスに加入すればいい。それでも不安なら、一日600円で使えるUQ 1dayサービスを利用する手もある。契約料もかからない。この価格で、WiMAXエリアはもちろん、この秋から始まった新幹線のN700系車内や、都営地下鉄構内のWiFiを含め、24時間インターネットを使い放題なのだから、かなり戦略的な価格だ。WiMAXの使い勝手を体験するには十分だろうし、場合によっては、必要な日だけこのサービスを利用してもいい。ただ、いつでもどこでも即つながる便利さは、やはり完全定額プランのUQ Flatで使ってこそ実感できる。最初に契約料として2,835円と、一ヶ月の基本使用料が4,480円かかるとはいえ、常時接続のモバイルブロードバンドとしてはリーズナブルな価格設定なので、UQ 1Dayで試して、UQ Flatへの移行を検討してみるのがいいだろう。
●あとからは内蔵できない。後悔先に立たず
つまるところ、いつでも試せて、そして満を持して申し込みサイトで契約した数分後には、サービスをフルに活用できるという点で、WiMAXパソコンを購入するメリットはとても大きいことがわかってもらえたと思う。今は使わないからWiMAXはまだいらないというのでは、いざ使おうとしたときに得られる利便性が台無しだ。少なくとも現時点では、ほしくなったからといって内蔵モジュールを後付けすることはできないからだ。
ちょっと年期の入ったPCのユーザーであれば、WiFiの黎明期に同じ思いをしなかっただろうか。無線LANモジュールなんて外付けで十分と思っていたら、あれよあれよという間に普及し、あるときネットワークルーターを買い替えたら、当たり前のようにWiFiアクセスポイント機能が付いていたりしたはずだ。なぜ、あのときWiFi内蔵のPCを選ばなかったのかと、大きな後悔をしたことを覚えているはずだ。その失敗を、ここでもう一度繰り返すのはよそう。たとえ、今はまだ使わなくても、WiMAX搭載機を選んでおくべきだ。それが賢い消費者というものだ。
[Text by 山田 祥平]