第2回

WiMAXモジュール搭載の
メリット、デメリット

〜実はデメリットがない、そして今後〜

●充実するWiMAXパソコンラインアップと急ピッチで進むエリア整備

この記事を書いている時点で、国内7メーカーから16機種のWiMAX搭載PC(WiMAXパソコン)が発売されている。いよいよ、WiMAX標準搭載時代の幕開けだ。年末のホリデーシーズンに向けて、PCの買い換えを考えている方も多いと思うが、そこでWiMAX搭載モデルを選ばないと、その買い物にはあとで大きな後悔をすることになる。搭載していて邪魔になるものではないし、将来に対する投資対効果、つまり投資に対するその見返りの大きさとしては最大級のオプションであるからだ。

2009年度内にかなり広がるエリア。エリア情報はUQコミュニケーションズの公式ページからチェックできる

直近の朗報としては、UQコミュニケーションズが、WiMAXエリアの拡大を前倒しにしていくようだ。実際、同社のサイトでサービスエリアを確認してみると、2009年12月末までに拡大予定の地域が増えている。ここにきて、一気にサービスエリアが拡大するのは心強い。

となると、WiMAXなんて自分は蚊帳の外、と思っていたユーザーも、ちょっとまじめに、近い将来のモバイルインターネットを検討する必要が出てくる。実際、10月には福岡と広島で本サービスが開始され、甲府や岐阜、福井、長野、新潟、仙台、山形といった、いわゆる地方都市も年内のサービスインが予定されている。自分の住んでいる地域が、もし、政令指定都市や県庁所在地なら、ぜひ、UQコミュニケーションズのサイトでサービスエリアマップを確認してみてほしい。  UQコミュニケーションズによれば、高層ビルの乱立する首都圏は、ビル陰や予想外の電波の干渉等で、膨大な数の基地局を稼働させても、その最終的な整備が追いつかず、現時点では弱電界となってしまっている場所も散在し、現在はその最終チューニングに追われているそうだが、地方都市では比較的電波状況がよく、サービスイン当初からサービスエリアとされている場所では快適な利用ができそうだということだ。いずれにしても、年内には、サービスエリアの状況は大幅に改善されるだろう。

●モバイル機は明日どこで使うかわからない

モバイルPCの購入時に、WiMAX搭載機を選ぶことを強く薦めるのは、モバイルPCというのがいつ、どこで使うかわからないからだ。現時点では自宅のブロードバンド回線でしか使用しないとしても、ある日突然、カバンに入れて持ち出す可能性もある。それは、明日かもしれないし、今度の正月かもしれないし、来春、急に命じられる地方出張かもしれない。

WiMAX搭載機は、そのほとんどが通信モジュールとして「インテル® WiMAX/WiFi Link 5150」を搭載している。そのモジュールを見ればわかるが、実測で数グラムしかない。内蔵していない機種では、その代わりにWi-Fiのみをサポートしたモジュールを搭載しているはずだが、その重量差などほとんどない。また、WiMAXモジュールを搭載したからといって、バッテリ駆動時間に影響を与えることもない。

つまり、本格的にモバイルPCを使うユーザーにとって、きわめて便利なオプションであると同時に、いつか使うそのときのための保険としても、きわめて重要なのがWiMAXモジュールなのだ。なにしろ、搭載していればよかったと思っても、気づいたときには、それがかなわないのだ。今、無線LANモジュールを搭載していないモバイルPCが想像できないように、ほんの少し先には、WiMAXがないと不便な状況になることは目に見えている。急ピッチで進むサービスエリアの拡大は、すぐにそれを現実のものとする。

モバイルでの常時接続においては、やはり外付けアダプターよりもモジュール搭載機の使い勝手に軍配が上がることは、かつて無線LANを使い始めたときに外付けアダプターで接続していたユーザーになら、きっとわかってもらえると思う。モバイルブロードバンド常時接続の快感は、外付けデバイスでは絶対にかなわない体験だ。しかも、無線LANは黎明期から現在に至るまで、ユーザーがアクセスポイントまでおもむく必要があったが、WiMAXはユーザー自身をサービスエリアが包むことを目指している。

●WiMAX搭載にはコスト以外のデメリットが見いだせない

もし、WiMAXパソコンのデメリットがあるとすれば、その価格のみだといっていい。一部のメーカーではラインアップ全機種搭載だったりするので、モジュール搭載による価格差がわかりにくいものもあるが、おおむねプラス1万円というのが現在の相場だ。ただ、この価格は少しずつ低下していき、最終的には無視してもいいくらいのものになるだろう。今のPCに無線LANが標準装備されているように、必ずWiMAXも標準装備になる。世界標準の技術とインフラであるし、インテル®が強力にバックアップしている点もその大きな理由だ。

WiMAXモジュールを搭載していれば、サービスプロバイダと契約していなくても電波強度を知ることができる

現状の1万円という金額を高いとみるか、低いとみるかは人によってわかれると思うが、じゃあ、WiMAXの完全普及を待ってから買うべきかといえば、個人的にはもうWiMAX搭載機以外を選ぼうという気にはなれない。PCの買い換えサイクルは、おおむね3〜4年とされている。おそらく、これから購入するPCにWiMAX搭載機を選ばなかったら、その3〜4年のうち半分以上を後悔することになるだろう。すでに行動範囲がサービスエリアに入っている幸運なユーザーであれば、なおさらだ。

それに、WiMAXパソコンを買ったからといって、すぐにサービス契約しなくてはならないわけではない(購入とWiMAXの契約は別)。WiMAX搭載機ならば、自分の行動範囲内で接続できるかどうか、サービスに加入する前に常時チェックすることができるので、これなら使える、とはっきりした時点で、サービスに加入すればいい。内蔵だからこそのサーベイができるわけだ。それでいざWiMAXを使うと決めたときには、定額料金プラン「UQ Flat(月額4,480円)」で契約するほかにも、「UQ 1Day」契約で必要なときに600円を払って使うという選択肢も用意されている。

そういう意味で、現時点で考えうるさまざまな要因を考慮しても、WiMAX搭載機にコスト以外のデメリットは見いだせない。将来のことは予測不可能だが、邪魔になるものでは決してない。そして、多くのユーザーがWiMAX搭載機を入手し、WiMAX環境を堪能すればするほどサービスそのものの充実も期待できる。今、WiMAXパソコンを選ぶことが、将来の自分の環境をより豊かなものにするための行動になるわけだ。

[Text by 山田 祥平]