第4回

機器追加オプションで
どれでもWiMAX

〜MACアドレスで認証も手間いらず

●複数機器の併用を見据えたサービス体系

WiMAX機器を追加購入した場合、最小のコストで複数機利用を可能にする「WiMAX機器追加オプション」

 UQ WiMAXの画期的なところは、ユーザーが複数のWiMAX機器を併用することが配慮されている点だ。「WiMAX機器追加オプション」を利用すれば、同時に接続できるのは一台だけなものの、ひとつの契約に対して2台までの追加機器を登録し、合計3台の機器でサービスを使用することができる。料金もかなりリーズナブルで、一台あたり200円/月だ(2010年1月までは無料)。

 WiFiモジュールがノートPCやゲーム機、デジタルオーディオプレーヤー、スマートフォンなどに当たり前のように搭載されるようになっているのは、ご存じの通りだ。今、ちょっと身の回りを確認してみても、常用しているデバイスで、WiFiモジュールを内蔵している機器はずいぶんたくさんある。たとえば、個人的な環境として、ノートPCは、大、中、小、極小の4台から、その日の用事によって持ち出すものを変えている。また、ポケットの中にはたいていiPod touchが入っている。つまり、外出時には少なくとも5台の常用機のうち、2台のWiFi機器を持ち出しているわけだ。それらの機器はどれでも、契約している公衆無線LANのエリアに入れば、IDとパスワードによるWeb認証を行なうことで、ネットワークに接続することができる。基本的に、1契約のみで機器を問わず接続できる、というのはメリットだが、わざわざWebでIDとパスワードの認証をおこなうのは、わずらわしくはある。

 WiMAXでは、公衆無線LAN同様、コストを抑えながらも手軽に複数機器の接続が実現できる。しかも、わずらわしいWeb認証の手順は必要ない。その秘密は、MACアドレスによる認証システムにある。

●WiMAX認証の仕組みはMACアドレス単位

WiMAXモジュールのMACアドレスは一意(ユニーク)で、同じナンバーは2つ存在しない

 WiMAXでは、ユーザー認証をWiMAX機器のMACアドレスを使って行う仕組みになっている。MACとはMedia Access Controlを意味し、ネットワーク内で一意となるように、個々のネットワークデバイスに割り振られたアドレスのことだ。ちなみに、Windowsでは「物理アドレス」と呼ばれ、機器の詳細表示などから、そのアドレスを確認することができる。

 UQ WiMAXの場合、契約するとMy UQ IDと呼ばれるアカウントが割り振られる。これにひもづけるかたちでUQ FLATやUQ 1dayなどのサービスを契約、さらに実際に使う機器で、そのサービスの利用時間を購入するという流れになる。この利用時間購入の手続きをした機器のMACアドレスがMy UQ IDとひも付けされることで、以降の認証が個別のMACアドレスで行われるようになるのだ。

 だから、たとえばWiMAXパソコン(正確には、WiMAXパソコンに搭載されたモジュールと)とMy UQ IDをひもづけておけば、仮にシステムをリカバリーして工場出荷状態に戻したとしても、WiMAXモジュール自体のMACアドレスは不変なため、適切にドライバをインストールし直せば、何事もなかったかのようにアクセスポイントに接続し、インターネットを利用できる。つまり、形の上では機器一台と、利用時間購入一台分がペアになっているわけだ。

 また、機器追加オプションの機器登録と削除は何回でも自由にできるので、たとえ、10台を超えるような内蔵デバイスを持っていたとしても、その日に持ち出す機器を登録して持ち出せば、任意のWiMAX搭載機器を自由に接続することができる(※)。

(※)ひと月あたり、機器登録したデバイス1台につき200円の費用が必要

●将来を見据えたサービスオプションの提供

 今後、WiMAXを内蔵する機器が増えていくのは自明だ。たとえば、デジカメやカーナビ、手のひらサイズのインターネットデバイス、ゲーム機、もしかしたらスマートフォンや、一般的な携帯電話にいたるまで、現状でWiFiや3G通信を載せている機器なら、それらがすべてWiMAXを搭載しても、ちっともおかしくない。そうなると当然、一人のユーザーが複数のWiMAX内蔵機器を所有する時代になる。そのとき、すべてのデバイスに個別にサービスを契約するのも、いまの携帯電話のように機種変更のたびに面倒な手続きをするのも、ナンセンスだ。Web上から自由に追加/変更が行えるWiMAX機器追加オプションは、そんな時代を見すえたサービスだと捉えることができる。

 そんな、時代を先取りした優れたサービスではあるが、現時点では使いにくい点もある。というのも、同時接続はできず、最後に接続した一台だけがサービスを利用できる仕組みになっているからだ。

 たとえば、自宅に置いたままのPCがWiMAXで接続している際に、外出時に持ち出しているノートPCでWiMAXに接続すると、自宅のPCの接続は切れてしまう。しかも、そのあと自宅PCが自動再接続を試みると、今度はノートPCのほうの接続が切れて、自宅PCが再接続する。すると携帯しているPCは自動再接続を試みて…と、互いに回線を取り合うような状況が発生してしまうのだ。

 UQコミュニケーションズでは、この状態になることを既知の問題としてとらえてはいるものの、ユーザーが各機器の状態をうまくコントロールすれば不便を回避することができるため、あえてサービスの提供に踏み切ったという。確かに、この手のサービスがあるとないでは利便性は大きく違ってくる。多少の不便は承知の上でも、サービスとしては将来を見据えたもので、その提供に踏み切った判断は、高く評価したいと思う。

 今はまだ、WiMAX搭載機が大量に使われている段階ではなく、まだ、この機能の利用率が低いことから、大きなトラブル等にはつながっていないという。今後、利用率が上がってきたときに、同時接続オプションの提供や、自動再接続のタイミング制御などの方法で、ユーザーに不便を強いないような仕組みを考えたいとのことだ。

[Text by 山田 祥平]