●WiMAXが覆うモバイルの点と線、そして面
移動中のふとした空き時間に、PCでインターネットに接続できれば、モバイルの利便性は飛躍的に上がる
モバイルにはふたつのスタイルがある。
ひとつは点のモバイル。モバイルノートPCを持ち運び、到着した地点に腰を据えてPCを使うモバイルだ。地点のバリエーションは多岐にわたる。職場、出張先のホテルの部屋、街角のコーヒーショップ、訪問先の応接室や会議室などさまざまだ。
もうひとつは線のモバイルだ。点のモバイルの各地点を結ぶ線の途上でPCを使う。電車の中やクルマの中、あるいは歩きながらもアリだ。つまり、移動しながらのモバイルとなる。広義には電車を待つホームでのつかの間のモバイルも、点というより線に分類してもいいかもしれない。デバイスのバリエーションがモバイルPC以外に広がることで、線のモバイルスタイルは、今後さらに増えていくと思われる。
もちろん、WiMAXは、点のモバイル、線のモバイル双方をサポートする。そういう意味では新たなモバイルカテゴリとして「面のモバイル」を称してもいいだろう。
UQコミュニケーションズは、当初の計画では2010年3月末までに、4000局の屋外基地局開局を予定していたが、09年11月20日の時点で5100局に達したことに伴い、10年3月末時点での予定数を6000局に拡大することになったという。つまり当初予定の1.5倍の基地局が整備される。まさに、面というエリアが加速的に広がっている印象だ。現状では11月20日時点で、35都道府県261市町村で基地局が開局しているが、日本全国を覆うのも時間の問題だ。計画では2010年3月末で全国政令指定都市をカバー、2011年3月末で全国主要都市に拡大、2013年3月末には人口カバー率90%を予定しているが、きっと、これらもどんどん前倒しにされていくのだろう。
●よく行く場所は限られている
東京都内の屋外を走行する電車内であれば、ほぼ確実につながるようになっているWiMAX。線と線は確実に結ばれてきている
よく「全国を股にかける」といった言い方をするが、どんなにコアなモバイルユーザーでも、そこまで広くまんべんなく全国を飛び回ることは珍しいはずだ。自分がモバイルでPCを使う場所は、それが点であれ線であれ、ある程度、固定されているケースが多いのではないだろうか。
そして、自分が最も長くPCを使うのは、どこにいるときなのか、さらに、二番目によく使う場所はどこなのかを考えてみよう。PCを使う可能性の高い場所を点として地図の上に置き、それらの点を電車などの公共交通機関や道路といった導線で結んでみる。そして、WiMAXが使えるところと使えないところを切り分けてみよう。もし、WiMAX搭載PCが手元にあるのなら、実際に、試してみるのもいいし、端末がなければ、TryWiMAXに申し込んで端末を借り出せばいい。
そうすると、自宅以外は大丈夫とか、私鉄沿線の特定の駅間だけで使えないといった事実が判明するはずだ。そして、自分がPCを使う時間のうち、どのくらいの比率がWiMAXが使えない時間になるかを算出してみよう。そして、その時間は、日に日に短くなっていくことも保証されている。今は自宅で使えなくても、都市部に住んでいる限りは、そこがWiMAXで覆われるのに、さほどの時間はかからないだろう。
●エリア整備の前倒しに感じるWiMAXのやる気
つまり、今の時点では、自分がモバイルでPCを使いたい場所の一部でWiMAXを使えないとしても、おそらくは、その時間がモバイル全体のアップタイムに対して、WiMAXのオフラインとオンラインの比率を算出してみたときに、無視できる程度の時間にすぎないことに気がつくかもしれない。
それが自宅なら、また別にブロードバンド回線があるはずだが、その場所がWiMAXに覆われた時点で、WiMAXを自宅のブロードバンドとして使うようにするか、あるいは双方を残すかを考えればいい。それよりも、今、圧倒的に長いオフライン状態を、WiMAXによってオンライン状態にすることで得られる、計り知れないメリットを享受する方が賢い。
小型のWiMAXレピータも登場している
今までインターネットに接続できなかった場所で、インターネットに接続でき、しかもブロードバンドが得られるようになることで、モバイルでPCを使う時間は確実に増えていくはずだ。インターネットにつながらないからPCを使わなかっただけで、つながるのなら、携帯しているPCをカバンから出して使う意味が出てくるわけだ。つまりは線のモバイルトレンドが強調されていく。それによって、モバイルPCのアップタイムは長くなり、さらにWiMAXがオンライン状態になる時間も増え、結果として、オンライン比率はどんどん高くなっていくだろう。そして、現実として、オフラインになってしまう時間の比率は無視できる程度に収束していくだろうし、やがてはそれもゼロになる。それは、エリア整備の前倒しまで発表してしまうUQコミュニケーションズの頼もしい取り組みを見ても期待していいと思う。
今後は、超小型の基地局や屋内レピータを活用した屋内エリアの整備も進んでいくという。塗りつぶされたエリアの中に潜む死角が、これでどんどん埋まっていく。今の進捗状況を見る限りは、少なくとも、エリアに関する心配は杞憂に終わると考えていいだろう。
[Text by 山田 祥平]