ビエラリレーコラム
  • 2013年12月16日 UPDATE
  • Reported by 西田宗千佳

「4K」かつ「スマート」なテレビが生み出す価値とは

テレビは「映像」を見るもの。でも、テレビで「テレビ放送だけ」を見るものだった時代ではなくなりつつある。テレビ放送を大切にしながらも、ネットコンテンツなどを日常的に利用するのがポイントになる。そうしたテレビを「スマートテレビ」などと呼ぶことが多いが、TH-L65WT600は間違いなく、いま手に入る、トップクラスの「スマートなテレビ」である。パナソニックは「スマートビエラ」の名称で、ネット機能を大胆に組み込んだ製品をアピールしているが、TH-L65WT600は最上位モデルだけに、ぐっとリッチな体験ができるようになっている。

4Kと最上級の「スマートテレビ」との相性はどうだろうか?

まるで壁掛け地図! グーグルマップも精細に

4Kテレビを見た時、最もインパクトを受ける映像はなんだろうか? 美しい映画や風景もいいが、筆者は「地図だ」と答える。グーグルマップを日常的に使っている人も多いだろうが、それらはたいてい、パソコンやタブレット、スマートフォンでのものだ。画面の解像度は横2000ドットあたりが多いのではないだろうか。

これが4K(3840×2160ドット)になると、精細さはなかなかスゴイものになってくる。なにより重要なのは、65型という巨大なディスプレイで表示している、ということだ。パソコンやタブレットでのグーグルマップが「地図帳」だとすれば、4KテレビであるTH-L65WT600で表示したグーグルマップは「壁掛け地図」のように感じる。

内蔵のウェブブラウザで表示。まさに壁掛け地図! 一覧性はもちろん、精細さもスゴイ

しかも重要なのは、ここで表示しているグーグルマップは、TH-L65WT600内蔵のウェブブラウザで表示している、ということだ。テレビ内蔵のウェブブラウザなんて……と思う人もいるだろう。だが、TH-L65WT600クラスの製品になると、組み込まれているプロセッサーのスピードもかなりのもの。4Kクラスの巨大な映像をネットからダウンロードしつつ構成するのだから、2K時代よりもさらにハイレベルなものが必要になるのも当然である。

TH-L65WT600のウェブブラウザは、日常的に利用するのに十分な機能を備えている。AV Watchのトップページも、見やすいサイズでしっかり表示できる。特に、標準添付の「タッチパッドリモコン」を組み合わせて使った時の操作感がいい。画面が巨大になった分、テレビリモコンではおなじみの十字ボタンでは、スクロールやポインターの移動が大変なのだが、タッチパッドならさほど問題はない。文字入力を簡便化するため、音声認識で検索キーワードを入力する機能が備わっているが、その認識率も高い。

4Kである美点は、文字をより多くのドットで構成して表示することだ。フルHD(2K)のパネルになった時、テレビの文字はずいぶんきれいになったと思ったものだが、その後スマートフォンやタブレットでなめらかな文字を見るのが当たり前になってみると、サイズが大きい分ドットが目立った。しかし4Kならば、65型という巨大なディスプレイであっても、ドット感はほとんど感じられない。

こうした高性能なウェブブラウザ機能を応用して用意されたのが「Hybridcast」への対応だ。Hybridcastとは、NHKが採用している、放送とウェブを融合させるための仕組みで、従来のデータ放送を置き換えるものだ。NHK総合チャンネルで「dボタン」を押すと表示されるようになっている。この中身は、放送に連動したウェブサイト。放送とともにURLが送られてきて、番組にあわせて最新の情報を表示する仕組みになっている。技術のコアはHTML5であり、モダンなウェブサイトと同じ技術で作られていて、データ放送よりも即応性・多彩さ・表現力すべての面で優れている。4Kでウェブが美しく表示できるようになった結果、テレビにネット情報を重ねて表示するHybridcastも、より美しくなった。

EPGは「27局同時表示」可能! 文字もなめらか

ドット感がないのは「文字」だけではない。実は、操作用の各種アイコンなども、縁がなめらかでドット感を感じない。それもそのはず、TH-L65WT600ではユーザーインターフェース用のアイコンなどをすべて「4K対応」のために作り直している、とのこと。違和感を感じないのも当然だ。

いかに高性能になったとはいえ、テレビはパソコンでもタブレットでもない。パネルの実解像度でインターフェースを作る製品は少なく、たいていはより小さい解像度で作り、内部処理したものを「拡大表示」して対応する場合が多い。だがパナソニックは、TH-L65WT600に「似つかわしい」ユーザーインターフェースに統一するため、あえてそうした部分にもこだわり、4Kでテレビのユーザーインターフェースを構築したのである。

4Kになって、地図と同様に強いインパクトを受けるのが電子番組表(EPG)だ。TH-L65WT600のEPGでは、最大27チャンネルを一気に表示できる。24時間分の番組を、スクロールすることなく一覧することだってできる。さすがにこの状態では、テレビ視聴距離だとちょっと文字が小さくなりすぎると感じるが、まあそこはご愛敬。文字サイズを拡大したとしても、文字はなめらかなままだ。文字フォントにはベクターフォントを使っており、サイズ変更によってギザギザ感が出ないように工夫しているのだという。広い画面をより有効に使ったデザインになっているので、EPGそのものがとても見やすいのは最大の美点だと考える。

4Kにあわせて「マイホーム」も進化

同様に、スマートビエラで導入されたメイン操作画面である「マイホーム」も、4Kパネルにあわせて色々と最適化されている。

注目は、画面右端のブックマーク表示だ。2Kモデルのブックマークは、文字通りのブックマークであり、記録しておきたいウェブサイトを呼び出す手がかりに過ぎなかった。だがTH-L65WT600の4K対応画面では、ブックマークそのものが「そのページの今のサムネイル」になっている。

2Kかつ狭い画面のテレビでは、サムネイルの中身をきちんと読むことは難しい。しかし、4Kでは話は別。よく見るページの情報は自動的に更新され、サムネイル画像として反映される。だから、このサムネイルに大きな変化があったり、気になる記事の見出しを見つけたりした時には、さっとアクセスすることが可能だ。こうしたユーザーインターフェースは、解像度が高くサイズも大きい、65型4Kパネルでこそ生きてくる。

TH-L65WT600に限ったことではないが、スマートビエラシリーズでは、YouTubeやアクトビラ、Hulu・ひかりTV・TSUTAYA TVなどの20ものネット配信に対応している。パワフルなプロセッサーを使っているTH-L65WT600の場合、これらのアクセスも快適である。

そして、TH-L65WT600の本質である「画質」は、こうしたネットコンテンツの高画質化にも使われている。4Kへの高解像度化はもちろん、圧縮ノイズを中心とした見づらい部分の補完・修正や、文字周辺のノイズ削減など、様々な高画質化機能が用意されていて、画像がかなり見やすくなる。毎秒15フレームほどしかない映像も、コマを補完する「4Kフレームクリエーション」を使ってなめらかな表示にしてくれる。

これから、ネット動画をテレビで見る機会はどんどん増えていくだろう。日常的にネット動画を見るためには、そのための操作が簡単になるような仕組みも必要だ。「マイホーム」は、良く見る動画サイトへすぐにアクセスできるようカスタマイズできるようになっているので、「テレビの新しいチャンネルの一つ」のつもりで楽しめるようになっている。

テレビ新時代の幕を開けた4K対応ビエラ

4Kでテレビは新しい時代を迎える。だが単に「解像度が上がった」だけでは新しいテレビとは言えない。それにふさわしい画質、それにふさわしい使い勝手と機能が必要だ。次のテレビの姿はまだ誰にも分からないが、TH-L65WT600は、4Kパネルとマイホームを組み合わせることで、そのために一歩、新しい方向へ踏み出していると感じる。