ビエラリレーコラム
  • 2013年10月28日 UPDATE
  • Reported by 西川善司

4K対応ビエラは現在、自分にとって最高の4Kゲームモニター

パナソニックの薄型テレビに待望の4Kモデル「TH-L65WT600」が登場した。パナソニックは、プラズマテレビと液晶テレビの両方式の製品を手がける唯一の国内メーカーだが、今回登場した4Kテレビ製品は液晶ビエラの方になる。画面サイズは65インチで、プラズマに優るとも劣らない大画面モデルだ。大画面☆マニアの筆者としては、垂涎のモデルである。

筆者は自他認める大画面☆マニアであるが、大画面で何を楽しんでいるかといえば映画とゲームである。

TH-L65WT600は、新搭載された「4Kファインリマスターエンジン」によって映画ブルーレイソフトが高画質で楽しめるので、そっちの話題も話したかったのだが、今回は、ゲーム好き要員として起用されているようなので「ゲームの人」の立場でTH-L65WT600の特長を2回にわたって語りたいと思う。

低表示遅延モードの「ゲームモード」を搭載

テレビと言えばテレビ放送を楽しむための家電製品だが、あらゆる映像機器の映像を映し出すセンターモニターとしての価値を重視するユーザーも多い。数ある映像機器の中で、今やゲーム機やPCはマイノリティではなく、メインストリーム的存在となっている。

テレビを選ぶ際「ゲームモニターとして十分な性能があるか」という部分を気にするユーザーは今や少なくないのだ。

さて、ゲームファンにとって、ゲームモニターに求める性能の中でとても重要度が高いのは「表示遅延の少なさ」である。昨今では、各社から「ゲームモード」と名付けられた低遅延モードを搭載するテレビ製品が増えてきているが、パナソニックのビエラシリーズも、2012年モデルから「ゲームモード」を備えるようになり、もちろんTH-L65WT600にもちゃんとこれが搭載されている。

インプレス独自の測定方法によれば、ゲームモード時の表示遅延は約18ms。これならば、リアルタイム系のアクションゲームでも、不満のないプレイが可能なはずだ。

表示遅延とよく混同されるのが応答速度。これは液晶パネルに映像が描き込まれて全画素が目的の色に書き換わるまでの速度で表示遅延とは別系統の処理時間だ。

応答速度については公称値が公開されていないが、TH-L65WT600は倍速駆動に対応しているので、この点を心配する必要はない。

4K/60Hzゲーミングを可能にした2つの世界初

TH-L65WT600は4Kテレビ製品である。

「4Kテレビっていったって4Kコンテンツがないじゃないか」という人がいるが、そういう人を見かけたら「PCゲームがあるんですけど…」といってあげよう。

意外に知られていないのだが、現在発売されているPCゲームで、明示的に最大解像度が設定されていない限りは基本的に4K(3840×2160ドット)で描画させる設定が可能だ。筆者が実際に確認しているだけでも「The Elder Scrolls V: Skyrim」「ファンタシースターオンライン2」「CRYSIS3」「DmC Devil May Cry」「ファイナルファンタジーXIV」があるし、少なくも、「4K」(海外ではUltraHD)というキーワードが盛り上がっている今年以降発売されるタイトルは、こぞって4Kまでの出力を許容してくるはずだ。

「PCゲームを4Kで出力して、ちゃんと高解像度の恩恵、あるの?」と思う人もいるだろう。これに対しても「あるよ」と返答できる。

というのも最近のPCゲームは、2560×1600ドット(WQXGA)解像度などのフルHD以上の解像度でのグラフィックスレンダリングとその映像出力に対応しているものが多く、そうしたタイトルでは、4K出力した際にはテクスチャ表現やディテール表現、最遠景の情景などが精細に描画してくれるのだ。今回のTH-L65WT600の評価でも、4Kレンダリングに対応した「PROJECT CARS」(SLIGHTLYMAD STUDIOS)をプレイしたり、「ファイナルファンタジーXIV」(スクウェア・エニックス)のベンチマークを視聴してみたが、フルHD映像と比較すると、まるで視力が向上したかのように見える。それこそ、普段よりも画面に近づいてプレイしたくなるほど鮮烈に見えるのだ。恐らく、遊び慣れたゲームほど、4Kでプレイしたときの感動は大きいと思う。

まるで視力が向上したかのごとくプレイできる

さて、TH-L65WT600では、このPCとの4K接続手段として2つのソリューションがあることが特長として訴求されている。

1つはDisplayPort端子、もう一つはHDMI端子だ。

TH-L65WT600は、テレビ製品としては世界で初めてDisplayPort端子を搭載した製品(※)となった。しかも、最新のDisplayPort1.2a規格に対応しており、1本のDisplayPortケーブルで4K映像の60Hz(60fps)伝送が可能なのだ。

余談だが、筆者は、各社のテレビ開発担当に4KテレビはDisplayPort端子を搭載すべき…と2年前から言い続けてきたのだが、一番乗りはパナソニックだった。この英断には心から拍手を送りたい気持ちだ。

他社の4Kテレビ製品でもHDMI端子を介して4K接続に対応した製品はあるが、それらの多くは30Hz(30fps)が上限となっている。一部のモデルでは2013年内に行われるファームウェアアップデートで60Hzに対応するモデルもあるようだが、TH-L65WT600では、そのHDMI端子が工場出荷状態から最新のHDMI2.0規格に対応していることから購入直後から4K/60Hzの接続に対応できる。ちなみに、この「HDMI2.0対応」もテレビ製品としては世界初(※)だ。

30Hz表示と60Hz表示では、同じ4Kの高精細表示であったとしても、60Hz表示の方が動きが滑らかで見やすい。特にレーシングゲーム、一人称シューティング(FPS)のような画面の動きが速いゲームでは、この動きのスムーズさがゲームの遊びやすさや楽しさに直結する。対戦では、それこそ、このスムーズさの違いが勝負の分け目にも関わることもあるだろう。

「TH-L65WT600が4K/60Hz接続対応なのはわかった。しかし、そんな出力に対応したグラフィックスカード(GPU)があるのか」と心配するユーザーもいるかも知れない。この点も今やそれほど大きな問題ではない。AMDならばRADEN HD7000以上、NVIDIAならばGeForec GTX600以上であれば、4K/60Hz出力に対応している。もちろん、4K解像度で快適な60Hzプレイを目指す場合は、対応モデルの中でも上位クラスのGPU製品が必要になるだろうが。
※2013年9月5日現在、チューナーを搭載した民生用テレビとして

DisplayPortとHDMI 2.0端子を備える

4Kの4:4:4フルプロセスはTH-L65WT600だけ

そうそう。忘れるところだった。

競合ひしめく4Kテレビ製品の中にあって、現状、TH-L65WT600だけが持つ、PCユーザーにとって嬉しい特長がもう一つあるのだ。

それは4K映像を「YUV=4:4:4」で入力でき、さらに「4:4:4」のまま映像処理を行って表示できる…という点だ。

小難しい解説は省くが、4:4:4は色信号も輝度信号も間引かず、元の解像度のまま映像処理を行う仕組みのこと。TH-L65WT600は、4K解像度において4:4:4フルプロセスを実践しているのだ。

PCやゲーム機では、映像信号は色差YUVではなく、RGBで伝送されるのが主流だが、テレビの映像エンジンは、映像処理のためのプリプロセスにてRGBをYUVに変換して行うことが多い。実際、多くの競合他社の4Kテレビでは「YUV=4:2:0」に変換して処理してしまっている。「4:2:0」は輝度信号は元の解像度のままだが、色信号は縦横半分ずつ、つまり4分の1の解像度に劣化させる処理系だ。

極論を言えば、PCやゲーム機の4K映像を過不足無く表示できる4Kテレビは、現状、TH-L65WT600以外にほとんどないということなのだ。

次回は、TH-L65WT600の映像エンジン側の話題や、その活用について語りたいと思う。