- 2013年11月11日 UPDATE
- Reported by 西田宗千佳
「4K世代にふさわしい絵」を目指す! 4Kテレビ・TH-L65WT600の実力
テレビの次が「4K」だと言われて久しい。テレビを手がける家電メーカーとしては、4K(3840×2160ドット)のパネルを使ったテレビをつくることは、もはや必須の状況と言っていい。だが、本当にいい4Kテレビをつくるのは、そう簡単なことではない。パネルメーカーから4Kパネルを調達し、単純にくっつけただけでは、たいした製品にならないからだ。買った人が「4K」で期待するであろうことをカバーしていないと、本当の4Kテレビとは言えない。
そんななか、パナソニックはようやく4Kモデル「TH-L65WT600」を市場投入した。単なる「パネルだけ4K化」では満足いく商品にならないことは、パナソニックもよくわかっている。だからこそ、ある意味「満を持して」の市場投入、と言えるだろう。
ハイクオリティな4Kテレビを実現するために必要な要素は3つある。「2Kおよびそれ以下の映像からの高画質化」「4Kパネルにふさわしい画質・発色の実現」そして「高解像度を生かした用途の提案」だ。これらは最終的に不可分なもので、システムとしてまとまってユーザーに提供される。TH-L65WT600は、そうした特性を狙って開発された商品である。
自然なエッジでディテール強調、「4Kファインリマスターエンジン」
まず「高画質化」について考えていこう。
現状、4Kテレビで表示できる「4K解像度」のコンテンツは多くない。TH-L65WT600の場合、DisplayPort™1.2aからPCのコンテンツを表示する、という手段もあるし、HDMI2.0により、今後4Kのコンテンツが入力されることも増えてくるだろうが、まずはブルーレイや地デジに代表される2K以下のコンテンツを高解像度化して表示することが中心になるはずだ。ここではいわゆる超解像技術を使うことになるが、パナソニック「4Kファインリマスターエンジン」という名称の技術を採用している。映像をパターン別にデータベース化し、ディテールを強化する部分とそうでない部分、ノイズ成分を抑える部分と残す部分などを分析し、最適な超解像を行う技術だが、「4Kファインリマスターエンジン」の場合、映像ソースの特性に応じた差別化を含め、12万のパターンから最適なものを選んで超解像する、という形を採用している。
特に解像度が上がると、微細なノイズの表現や文字のなめらかさが向上する。「4Kファインリマスターエンジン」では、古い映像や暗い部分のノイズ感を自然な形で抑える「ランダムノイズリダクション」、特に解像感の低いネット映像の文字を読みやすく補正する「クリアフォント」といった機能を備えている。それらは、2K以上に4Kで価値を持つ。4Kの本質は「ドットを感じない自然な画づくり」にあり、解像感やなめらかさを伴わない4K化では本末転倒だ。「4Kファインリマスターエンジン」では、そうした部分にきちんと配慮し、ギスギスとした、派手でエッジがたった映像にならない「自然な4K」を目指した技術開発が行われている。
2Kテレビで培った「コマ補完」技術+バックライト制御
次は「画質・発色」だ。
超解像による4K化も、そもそも4Kでの表示が適切なものになっていないと意味をなさない。現在利用できる技術のなかで、いかにハイクオリティな4K画質を実現するかが重要となってくる。TH-L65WT600においては「4Kフレームクリエーション」とLEDバックライトの制御技術で、こうした部分の高画質化を実現している。
現在のフラットパネルディスプレイでは、映像のなめらかさ・自然さを生み出すために「コマ補間」技術が必要になる。フレーム間で映像が止まったように見えた結果、フレームとフレームの間で混ざり、ぼやけて見えてしまうことを防ぐためのものだ。液晶技術も進化し、以前のように毎秒240コマでなくては「ぼけ感」が抜けない……ということはなくなってきたが、それでも、毎秒60コマの映像を120コマに拡大する必要はある。「4Kフレームクリエーション」はこのための技術だ。コマ補間そのものは、パナソニックが液晶およびプラズマテレビで長く培ってきたものの延長線上にあるが、TH-L65WT600は4Kだから、つくらねばならない映像の処理量も格段に大きいし、より自然な画づくりも求められる。
さらに、そこで動きの「キレ」を生み出すために加えられているのが、LEDバックライトの制御だ。バックライトをライン単位で分割制御し、コマの書き換えにあわせて順次、表示と点灯を切り換えることで、動画性能を高めている。
動画性能が高まるということは、コマ同士の色が混ざらないということでもある。すなわち、精細感が増し、色の純度が増すことになる。「画質の良いテレビ」をつくる上では当然必要となることだが、解像感が必要とされる4Kでは、2K以上にこうした要素を重要にする必要が出てくる。
くっきりしているが遠近感も、実直で豊かな画質
こうしたウンチクはまあ、なんとなく覚えておいてもらえればそれで十分。大切なのは、結果的にどのような映像ができあがっているのか、ということである。
結論から言えば、TH-L65WT600は非常に快適なテレビになっている。液晶テレビは、ぼけ感を抑えるために、エッジの立った「キツい」映像になりがちだ。4Kテレビでは、その精細さを際立たせるため、特にエッジの立ったセッティングで見せてしまいそうになる。
だが、TH-L65WT600はそうなっていない。動物の毛並みや木立など、精細感が重要とされる部分ではきちんと精細でありつつも、なだらかな空や山並みはきちんと「なだらか」だ。なにより、エッジを強調した映像では、本来ディテールがやわらかくぼやける遠景でも「くっきり」してしまうため、全体に平板な映像になりがちだ。TH-L65WT600の場合には、4Kネイティブの映像でも、超解像された映像でも、適切な精細感と立体感が維持されていた。
4Kで表示するという意味では、フレームレートも重要だ。HDMI2.0では4K・毎秒60フレームの映像に対応する。映画は毎秒24フレームであり、一見オーバースペックに思えるが、そんなことはない。今後、4Kで撮影されたスポーツ中継が増えていくのは間違いない。スポーツにおいて動きは命であり、動きの自然さはフレームレートによってもたらされる。大きなスポーツイベントは映像技術にとって進化の時だが、間違いなく4K・毎秒60フレームの映像記録が注目されるだろう。またゲームでももちろん、フレームレートの高さは重要であり、毎秒60フレームの世界が大切になる。TH-L65WT600では、出荷当初からHDMI2.0の4K・毎秒60フレームに対応している。こうした点は、クオリティの後押しがあってのものだ。
これからのテレビでは、解像度に加え「発色」が重要になる。何度も述べてきたように、ぼけ感が減ること、解像感が上がることは、色純度を高めるうえでプラスに働くからだ。いままでのテレビと違い「真に迫った色再現性を持っていること」が、4K世代のテレビには必要とされる。
TH-L65WT600の発色は、決して派手ではない。だが、しっとりとした自然な色合いだ。そうした実直な色合いの表現が、テレビとしての本質的な画質向上を行ううえで重要だ、と判断されているのだろう。
TH-L65WT600に搭載されたHDMI2.0インターフェイスは、単に4K・毎秒60フレームを実現するための道具ではない。HDMI2.0規格のフルスペックにあたる「4:4:4」伝送にも対応している。「4:4:4」とは、通常の放送やブルーレイ記録で使われている「4:2:0」記録に比べ、色差の表現力に優れる。輝度は同じだが、より豊かな「色」を持つ映像を見られるわけだ。同社がブルーレイレコーダー「DMR-BZT9600」などのDIGAシリーズ上位機種で採用している「マスターグレード・ビデオ・コーディング(MGVC)」に対応したブルーレイディスクなどを再生した場合には、非常に大きな意味を持ってくる。
そうした映像でも「解像感」「立体感」「澄んだ色」の3点を実現すべく努力していることが、TH-L65WT600の美点と言えるだろう。
最後に残るのが「高解像度を生かした用途の提案」。ここについてTH-L65WT600は、高画質化でなく「機能」として、様々な新提案が行われている。2回目では、そうした部分を中心に解説をしていきたい。