zooma.jpg
"Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語"

DVR-A06-J Pioneer DVR-A06-J徹底解析!
開発者が明かす、安定性への執念
DVD

◆ 新技術の秘密が今解き明かされる

 発売以来、好調な売れ行きを示すPioneer DVR-A06-J。よくわかんないならとりあえずパイオニア買っとけ、を合い言葉に、初心者からマニアまで幅広い層に支持されている結果だろう。もちろんその期待を裏切らないバツグンの信頼性・安定性はそのままに、新たにDVD-RWの書き込み精度向上、さらにはDVD+R/RWのサポートと、着実に技術を積み上げてきている。

 DVD-RW強化のキーワードは2つ、「プレシジョン・レコーディング・テクノロジー」と「デフェクトマネージメント」だ。概要は既に前回お伝えしているので、まだ見ていない人は今回の記事を把握するためにも、さらっと目を通しといて欲しい。

 さあこの特集ですっかり恒例となった、開発者インタビューである。毎回毎回「あのそれ企業秘密っぽい匂いがしますけど大丈夫なんでしょうか」レベルの濃いー話がバリバリ飛び出して関係者一同大あわてな現場からオトナの事情でいろんなことを丸めつつ、今回もパイオニア所沢工場からナマの声をお送りしていこう。


◆ 業界全体のクオリティを上げてゆく

 まずはプレシジョン・レコーディング・テクノロジーからご説明頂こう。お答え頂いたのは、A06のファームウェアを担当した小野 龍彦氏、アプリケーション評価担当の新井 博氏、品質管理を担当した大森 誠司氏だ。

記:プレシジョン・レコーディング・テクノロジーは一般にピックアップのチューニングと言われてますが、実際はファームウェア制御と言うことなんでしょうか?

小野:そうですね、あらかじめディスクの特性によって最適なパラメータを用意して振り分けるといったシステムを含めてそう呼んでいます。

小野達彦氏 新井 博氏
A06のファームウェア担当、小野龍彦氏 アプリケーション評価担当、新井 博氏

記:これは現状のRWディスクをかなり調査されたそうですが、実際にはどのぐらいの数のメディアを集められたのでしょうか?

新井:メディアを評価するのに専用の部隊があるのですが、まだ販売前のものも含めて、市場に出ているものはすべてやっていると思います。

記:国内メーカーに限らず、台湾製のへっぽこいやつとかもみんな……(笑)

新井:ええ。台湾メーカーの粗悪なものなどは書けない原因がちゃんとあって、それはそれで仕方がない部分もあるのですが、極力そういうものでも書くような努力はしています。

記:品質のバラツキのというのは、実際ファームを書かれてみて予想以上に大きかったですか?

大森:本来、たとえばあるAというメーカーが作ったIDを持ったディスクがあるとしますよね。それって本当はどんな作り方をしてもばらついてもらっては困るんですけれども、どうしてもラインとかロットによってバラツキがあります。うちが調査した最適な記録状態で書こうとしたときに、そのバラツキによって思わぬ記録の結果になったしまったりといったことがあって、そういう面では苦労しましたね。

大森誠司氏
品質管理担当、大森誠司氏

記:実際にピックアップを制御すると言っても、具体的にどんな制御するんですか?

小野:主にビーム、記録パワーの強さを制御するのが目的ですね。ディスクからIDを読み取って、そのIDにあったパラメータを読み出して記録します。

記:となると、ファームウェア領域というのはそういったプリセットをたくさん用意しなければならないので、かなり大きくなっているわけですか?

小野:そんなに圧倒的に大きくはなっていないと思いますよ。メディアを開発する会社に対してメディアデベロップメントキットを提供して、ディスクに最適なパワー値とかディスクに対する最適値の情報などをやりとりしてますので。うちとそういうやりとりしているメーカーに関しては基本的には個別のテーブルはなくて、読み取ったディスクに書かれている最適記録のパラメータを用いて記録します。

記:なるほど。このプレシジョン・レコーディング・テクノロジーというのは、メディアの品質も合わせて高めていくっていう、業界全体の大きな動きなんですね。

デフェクトマネージメント図解
プレシジョン・レコーディング・テクノロジーでオーバーライト特性は劇的に向上する


◆ メディア精度をキープするデフェクトマネージメント

記:ではもう一つの強化テクノロジーで、デフェクトマネージメントを具体的にご説明いただけますか。

小野:実際に書き込んだところに対して読み出しの動作を行ってみて、「エラー訂正を多くしなければならなかった」という情報を集めてきまして、その書き込みの状態が良くないのではないかという判断をしています。それを情報としてメディアの管理領域に書いていきます。

解説する小野氏
デフェクトマネージメントの原理を解説する小野氏

記:つまり書きながらすぐ読んでいるんですよね?

小野:そうですね、書き込み時にそういう機能が働くようになっているのですけれども、すでに書いてあるところに対しても、だんだん劣化してきたということを報知するような機能にもなっています。

記:劣化するところを報知するとそこは読めないと言うことですか?

小野:いや、訂正すれば読めるんですけども、他の所は良かったけれどもそこの所は訂正しなければ読めなかった、とかいう情報を持ってくるということになります。

記:RWだから、一回消去してまた書くと言うことはあり得ると思うんですけども、その場合は管理領域はどうなっちゃうんですか?

小野:完全フォーマットしてしまえばそれはすべて消えることになりますね。高速フォーマットでは、ある程度その辺の情報を残した形で消すという形も考えられますので、その場合は情報をどんどん追記していくわけです。

記:そういう方法で使っていくと、ディスク精度はキープされますよね? なるほど、ちょっとハードディスクっぽい考え方ですね。

小野:そうですね、もともとはハードディスクとかと、似たような使い方ができるようにという形で考案されてきているものです。


◆ ピックアップも特性改良

 今回のA06は、前モデルのA05からハードウェア面であまり違いがないと言われている。表面からわかる点としては、ヘッドホンジャックがなくなったことぐらいだろうか。

記:ハードウェアでは、A05に比べてどこか改良されているんでしょうか?

千田:ピックアップなんですが、今回のA06ではレンズを樹脂製に変更して、より球面収差を抑えることに成功しました。通常、他社さんもそうなんですけど、ピックアップに樹脂レンズってなかなか使わないですね。温度変化による収差が発生してしまって、読めなくなったり書けなくなったりといったことが起きますので、今まではどうしても高いんですが、ガラスレンズを使ってました。

千田勇人氏
A06のピックアップ設計を担当した千田勇人氏

記:具体的にはどうやるんでしょう?

千田:2つの樹脂レンズを組み合わせます。メディアに近いほうの対物レンズがもともと樹脂製なんですが、これらのレンズの特性をわざといじりましてですね、温度が上がればある収差を発生させる、温度が下がればある収差を発生させるっていう特性を、2つのレンズ間で逆にすることで、収差を相殺させています。

A05のピックアップ A06のピックアップ
A05のピックアップではガラスレンズを採用していた A06では樹脂製レンズを採用し、精度アップとコストダウンを実現した

記:そうするとA05から搭載された液晶チルトの補正も、より正確になるということですか。

千田:はい、その通りですね。今までは液晶のみで収差を無くしていたんですけれども、それに対して部品レベルでも補正をやっているので、より温度特性上の収差が出なくなっているという設計になっております。


◆ 温度変化と振動にも強い

記:今回はせっかく品質管理の大森さんがいらしているので、そちらの方でなにかおもしろい話が聞けたらなと思うんですが(笑)。いちばんユーザーが気にするのは温度と振動ですよね? 品質管理ってどうやって行なうんでしょうか。

大森:まず、0℃とかの部屋を用意しまして、その中で記録再生を繰り返しやってどこでエラーが出るだろうか確認していくというのが基本ですね。

記:A06は動作保証温度はどれぐらいでしたっけ?

大森:5〜45℃です。

記:高い方の45℃っていうと、高速なPCではありがちですよね?

大森:そうですね、でも常温の環境であれば一般的には35〜45℃の間には収まってると思いますよ。ヘビーユーザの方では45℃ぐらいまでいくかもしれませんね。まあそれも含めて我々はマージンを持たせてチェックしています。

記:実際にマージンはどれぐらいあるのでしょうか。

大森:プラスは5℃、マイナス方向も5℃ぐらいですね。実際の試験は-5度でもやっています。

記:次は振動に関してなんですが。いちばん振動するのって、自分自身だと思うんですけれども、そのあたりの対策というのは?

清宮:ドライブが振動する場合は、ディスクのアンバランスによって振動するんですけれども、高回転で回す事によってかなり早く揺れてしまうんですよ。
それを抑えるためにですね、A-05から搭載してますけど、このプレート、ダイナミック・レゾナンス・アブソーバっていうのがゴムでシャーシに留まっています。このゴムの堅さとプレートの質量のチューニングをしまして、最高回転数のちょっと上ぐらいで共振点がくるようにしています。そうすると高回転するメディアは、このベースの振動とは逆位相で振動を始めるんですね。で、その逆位相の振動で全体の振動を打ち消しています。

清宮雅明氏 共振点を決定するゴムとプレート
A06のメカ部分を担当する、清宮雅明氏 ゴムの堅さとプレートの質量で共振点を調整する

◆ 総論

 A06がこれほどまでに安定して動作する理由は、実に膨大な量の調査や試験の蓄積によって培われたものだということがわかる。またプレシジョン・レコーディング・テクノロジーでは、パイオニアとメディアメーカーが相互に協力して、ユーザーにより安定したDVDソリューションを提供しようという取り組みの一端も垣間見ることができた。

 台湾メーカーの参入により、DVDメディアはこれから価格競争はより加速していくだろう。安定性を求めるならば、品質の高いメディアを使うことが重要なのは言うまでもない。しかしメディアのパッケージを見ただけでは、その品質なんてわからないのは事実だ。

 そんな状況の中で、ドライブ側でがっちり安定して書き込んでくれるA06の存在はありがたい。特にDVD-RWのオーバーライト特性が向上したことで、パケットライトや映像の一時保存など、様々な活用シーンが見えてくる。

 店頭に並んだパッケージをご覧になってお気づきかもしれないが、Pioneerのドライブの箱は、リリースを重ねるに従ってだんだん小さくなっている。衝撃緩衝材が減ったことに不安を持つユーザーもいるだろう。しかしこれは液晶チルトやスマートレーザドライバといった技術を用いてドライブの構造をDVD-ROMドライブ並みにシンプルにすることで、故障箇所を極限まで減らしていった成果だという。

 シンプルだから丈夫、そして磨き抜かれた高性能。円熟期を迎えたPioneerのDVD技術を堪能できるのが、DVR-A06-Jだ。

「記録型DVDドライブの頂点を目指す
今度のDVR-A06-JはDVD±R/RW対応!」はこちら!!

 パイオニアのホームページ
http://www.pioneer.co.jp/
 製品情報
http://www.pioneer.co.jp/dvdrrw/world/


= 小寺信良 =
テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクター/エディタとして10数年のキャリアを持つ。手がけた作品は2000本近くにのぼるという本物の映像のプロでありながら、ペンを取れば軽快な文章によるコンシューマ機器の解説で人気を博す。
小寺信良

この記事に関するお問い合わせ<watch-adtieup-pioneer0306@ad.impress.co.jp
[PR]企画・製作 インプレスウォッチカンパニー 営業部編成課
Copyright (c) 2003 Impress Corporation All rights reserved.