左から森秀範氏、大堀陽一氏、檀特教遵氏 |
オリジナルPC、いわゆるショップブランドのBTOパソコンはPCパーツショップが自作PCパーツをベースに組み立て、あるいはOSのインストールまでを行い、購入して到着後すぐに利用できるというスタイルのPCだ。自作PCパーツがベースなだけに家電メーカーのPCと比べ高性能、あるいは低価格といった点で支持を得ている。しかし、最近はどのPCパーツショップもこうしたBTOパソコンを展開しており、どこのショップのBTOパソコンを選んだら良いのか迷うことも多々あることだろう。そこで、今回は秋葉原でも老舗のPCショップ「ツクモ」が展開するオリジナルPC「eX.computer」シリーズの主力モデルである「Aero Stream(エアロストリーム)」を紹介していきたい。
ツクモでは各種のゲーム推奨モデルやバリューモデル、果てにはワークステーションモデルなど様々なオリジナルPCを扱うツクモだが、そのベースとなるのがこのAero Streamだ。それだけに、このモデルこそがツクモのオリジナルPCへの基本ポリシーが表れているとも言える。今回はそのポリシーという面をツクモを運営するProject Whiteのスタッフにお聞きした。実際にAero Streamの開発に携わっている方々で、開発者の直な言葉を製品レビューとともに、インタビューとして紹介しよう。
−−まずはツクモのオリジナルパソコンの歴史をお聞かせください
Project White 取締役 大堀陽一氏 |
大堀陽一氏 ツクモがパソコンの取り扱いを開始したのが1977年、今から33年前になりますが、オリジナルPCは約21年前、1989年ごろにスタートしました。まだ日本語DOS/Vが登場する以前の事でして、NEC-9801が全盛期だった頃になります。DOS/Vパソコンが安くてハイエンドなPCを作れるもの、として徐々に認知されはじめたのもこのころです。
−−BTOという仕組みを取り入れたのはいつごろからでしょう?
大堀陽一氏 現在のeX.シリーズの前に(ツクモの頭文字をとった)TSシリーズというのを1993年より開始しまして、2000年頃これにBTOを対応させました。もっとも「BTO」の定義をどこに置くかで変わりますね。今も実施しておりますが、当時も好みのパーツを組み合わせる「組み立て代行」という形で内部構成を変更することは可能でしたが、それはあくまでパーツ単位での保証でした。BTOとしてシステムレベルで保証を付与した時点を考えるとやはり2000年ということになります。以降、ずっとBTO対応のオリジナルPCを継続いたしまして、2005年には現在のeX.computerをリリースしました。
−−BTOがスタートしたきっかけは何かありますか?
大堀陽一氏 BTOがスタートする以前も、既製品PC購入時にメモリがもっと欲しい、HDDはもっと大容量で、といったニーズにはお応えしていました。しかしやっぱりお客さんはビデオカードやその他幅広いパーツにこだわりを持たれる。そうしたユーザーの声にお応えすべくBTOに踏み切りました。もちろん当初は出来合いのモデルが主流で一部のお客様がBTOを選ぶという形でしたが、今は逆にBTOがメインとなってきました。昔はBTOといっても納期がかかりましたが、現在は仕様を変更しても最短3日でお届けできますので、こうしたデリバリーの速さもBTOが主流となってきた要因でしょう。
−−現在のeX.computer、なかでも主流であるAero Streamのコンセプトをお聞かせください
Project White 商品企画部 課長 檀特教遵(だんとくきょうじゅん)氏 |
檀特教遵氏 Aero Streamシリーズは現在様々な派生モデルをラインアップしているeX.computerシリーズのベースとなるシリーズです。シリーズには筐体のサイズ別に、ATX対応のタワー、マイクロATX対応のミニタワー、そしてスリムの3タイプがあります。
Aero Streamの筐体は現在第2世代のモデルになります。第1世代から継続しているコンセプトとなりますが、エアロの名前にもなっているとおりエアフローです。タワー・ミニタワータイプとも第1世代モデルより前後12cmファンを採用し、筐体内の風の流れを確保し、ファンコンで制御することで動作音を抑えています。
なぜエアフローを重視しているかと言いますと、PCの故障の原因は熱が一番多いのです。長期間の使用における故障率を下げるという意味でエアフローを強化しています。また、お客様のニーズとして静音も重要です。これらの両立を目指し、ファンにこだわると同様、ツクモとしての経験を生かしたオリジナル設計のケースを採用しています。
−−ではAero Streamのエアフローに関し、タワータイプ・ミニタワータイプにおけるこだわりを紹介していただけますでしょうか?
都内の事務所内には大量の検証機材と、それをテストするための機材がセットされている |
檀特教遵氏 まずケースファンですが、前後ともブレードにディンプル加工を施したものを採用しています。通常のブレードと比べ風切り音を抑えることができ、同じ風量であればより静かに、逆に同じ音量であれば、よりエアフローを稼ぐことが可能です。同時に、吸気側ファンには防塵フィルタを装着し、ホコリによる故障も防いでいます。また、ケース側の特徴にもなりますが、フロントファンは音漏れを抑える意味でフロントパネルのサイドスリットからの吸気としました。併せてファンガードとしてのパンチングメッシュを廃止することで風切り音を抑制し、リアファンのガードはハニカム形状を採用することでこちらも風切り音を抑えています。こうした改良によってノイズを低減できたぶん、ファンの回転数を最大1200rpmから1500rpmにアップすることも可能となり、冷却性能の上限を向上させることもできました。
また、ミニタワータイプではCPUクーラーに外の空気を直接取り込むためのパッシブダクトを廃止しています。これは容量の小さなミニタワー筐体ではダクト部がむしろエアフローの妨げとなるためです。一方、パフォーマンスを重視されるタワー筐体ではCPUとビデオカード用に2基の側面ファンを追加搭載可能としています。動作音は若干上がってしまいますが、当社のAero Streamは無音を目指すものではありません。負荷がかかった状態で、安定動作しつついかに動作音を抑えられるのかという点にフォーカスしていますので、こうした選択となりました。もちろん、側面ファンにも防塵フィルタを装着しています。
−−そのほかにもPCパーツショップの老舗ならではのこだわりがあるようですが、
檀特教遵氏 ミニタワー筐体についてご説明いたします。PCのパーツにおいて熱源となるもののひとつにHDDがありますが、この筐体ではHDDの装着を密にせず、大きくゆとりをもたせました。しかし、拡張性も重要な要素ですので、ケース底部にも増設ベイを設けて計3基まで対応させました。また、ケースはコンパクトですが奥行きは余裕をもたせ、ハイエンドのビデオカードも搭載可能としています。実際のBTOではGeForce GTX 470まで選択できますのでパフォーマンスを求めるお客さまにも選んでいただけます。
−−このオリジナルケースはどのように開発されたのでしょうか?
ケース開発段階で使用したCADデータとイメージデータ |
檀特教遵氏 いくつかのケースメーカーに弊社のコンセプトに合うケースを設計してもらったうえで、サンプルを確認します。コンセプトに沿って設計されたサンプルをベースに、細かなところでは必ず修正をかけます。例えばインタフェースカバーを開いた際、当初の設計だとただ開くだけで利便性に欠けており、きっちり90度に開くというわけではなかったのです。そうした際には担当者を現地に向かわせ、金型レベルで微調整を行なったりします。そのほか、製品化の後もユーザーのフィードバック等を元に細かなマイナーチェンジを重ねています。
−−パーツに関するこだわりについて教えてください
檀特教遵氏 まず電源やマザーボード、ビデオカード、メモリといった主要な部品に関しては有名だからとブランドだけで選ぶようなことはせず、技術レベルでお話しできるメーカーの製品を選んでいます。例えば市場では主要製品が電源メーカーではないメーカーからも電源ユニット製品が登場しているわけですが、オリジナルPCの標準電源に関してはそうしたメーカーを採用してはいません。
電源ユニットに関しては標準でTopowerの製品を選択しています。第一に耐久性を重視した結果であるのですが、そのほか12cmファンを搭載していますし、ファンコントロール用のコネクタを搭載することで回転数の制御を行っています。
メモリに関してはSanMaxの製品を採用しています。メモリはPCの安定動作には重要な部品になりますので、チップに関してもいわゆるメジャーチップだけを採用しています。そしてそのチップのなかでもランクというものがありますので、信頼できるモジュールメーカーのものを使っています。
マザーボードに関しても、市場で定評のあるメーカーの中でも技術的なフィードバックがかけられるメーカーとコミュニケーションを密にして採用させていただいています。
ビデオカードに関しても、現在ビデオカードというとチップが同じであれば、どれも同じというイメージもありますが、採用するにあたって弊社で一度評価したうえで採用しています。例えばなかにはファンコンが効かず動作音が大きいような製品もありますので、ちゃんと確認することが大切だと思います。
もちろん、ツクモとして店頭販売しているなかでのフィードバックも反映されますので、パーツの信頼性という面では自負しております。
−−そのほかのBTOオプションに関してはいかがでしょうか?
Project White 商品企画部 課長 森秀範氏 |
森秀範氏 BTOオプションでは、人気のSSDやRAIDのオプションなどトレンドを盛りこんでおります。また、静音性や冷却性を気にする方が増えてきているためCPUクーラーのオプションもご用意しました。OSもWindows 7のProfessionalやUltimeteもお選びいただけますし、現在は64bit版が人気ですが、32bit版もご用意しています。
−−どのような方がAero Streamをご購入なさっていますか?
森秀範氏 ご購入層は幅広いですが、中心となるのはパフォーマンスを求める20代〜30代のお客さまです。ただ、60歳以上の方も多いというのが弊社の特徴でしょうか。これはショップを長くやっているという点が大きいと思われますが、ちょうどDOS/Vが盛り上がった当時現役な方々にご購入いただいている印象です。こうした方々はPCの知識も豊富ですから、例えばビデオ編集やRAW現像のように目的を持ってハイエンドPCを求める傾向にあると感じています。
BTOパソコンも今では上級者だけでなく初心者の方にもお求めいただいています。Windows 7といえば、標準のメーラーが廃止されていますが、そうした初心者の方でも迷わないよう、Aero StreamではOS付きモデルでWindows Live Essencialsを初期導入しております。また、互換性が心配な方の為にWindows7のProfessionalまたはUltimateプリインストールモデルには「XP Mode」を初期導入しておりますし、より使いやすく便利になったOffice製品の同時購入およびプリインストールにも対応しております。BTOパソコンの届いてすぐに使えるという点を十分に考慮した製品仕様、BTOオプションとなっておりますので、幅広い方におすすめできます。
−−ありがとうございました。
今回、インタビューと併せ、Aero Streamシリーズの主力であるタワー筐体モデル、ミニタワー筐体モデルを各1台お借りし、ここでお聞きしたこだわりポイントを実機にて試してみました。Aero Streamをより詳しく知りたい方はレビュー編をご覧下さい。