ここ数年の電子機器の進化は、とみにめざましい。たとえば大〜中電流域使用の代表選手であるデジカメ。画面が大きくなり、カラー化され、ズームなど機能が増えると、電池への負荷は確実に高まる。こうしたハイパワー機器をストレスなく使いたい!という声は、大きくなる一方だ。 そうした声に応えて登場した「オキシライド乾電池」。松下電池工業で同電池の開発チームリーダーを務める野矢重人氏に、開発の舞台裏のお話をうかがった。 |
||||||
「1996年に、あるメーカーさんから『こんなものをやってみたらどうか』という話をいただいたのがはじまりなんです」と野矢氏は明かす。 「アルカリ乾電池の高性能化は、技術的にもうこれ以上は無理という飽和点に達していたんです。われわれとしてもアルカリとは違うステージでの開発に踏み出さなくてはと、模索している時期でした」 「そういう話でしたら、まだ研究途中なんですが、新しい材料がありまして……」 その後は、まず二次電池の世界でオキシ水酸化ニッケルの技術蓄積が急ピッチで進んでいった。こうした研究成果が、一次電池の開発部署にもフィードバックされ、双方が連携する形で技術と人材の垣根がどんどん低くなっていった。 「いま、私の部下の半分は、もともと二次電池の部署でニッケル水素の開発をやっていたメンバーになってまして」と笑う野矢氏。 つまり、「オキシライド乾電池」は、一次電池である「アルカリ乾電池」を母に、二次電池である「ニッケル水素電池」を父として産まれた、究極のサラブレッドなのである。 |
||||||
野矢氏が、開発チームのメンバーに一貫して言い続けてきた言葉がある。 「第1に『プロセス』の革新が必要、2番目に『ものづくり』の革新が必要、そして最後に『テクノロジー』の革新だ」。 試験管レベルでのテクノロジーは、すでに確立されている。あとは、生産現場に移したときに、安定した品質を供給できる設備と工法の開発にかかっているというわけだ。 特に、オキシライド乾電池では、黒鉛の粒子を従来比2分の1以下まで細かくしたことで、電導性を高めた反面、材料と材料を結びつける結着力が弱くなった。その結果、正極を中空円筒状にバラツキなく成型することが難しくなった。 また、正極に電解液を滲みこませる工程では、粒子の隙間に空気が入らないような工法が必要だ。これも、実験室では簡単にできるのだが、ラインに持ってくると非常に難しい。 同社では、10億円を投じた新生産設備「Uライン」によってこれらの技術的な壁を突破、月1500万個の大量生産を可能とした。「U」は「究極の」を意味するUltimateの頭文字である。次世代電池にかけるパナソニックの自信のほどがうかがえる。 |
||||||
![]() |
||||||
ところで、パナソニックのアルカリ乾電池といえば、ボディーの金色のイメージが鮮烈で、“金パナ”の愛称で呼ばれている。今回、40年ぶりの次世代乾電池ということで、デザインはどうなるか?と思ったら、基調色は緑から深いブルーに変わったものの、やはり金色のラインは変わらず、ということでホッと胸をなでおろした(笑)。 「世界11都市、1088人を対象にマーケット調査した結果、これがいいということに決まりました。銀色も美しいと候補に挙がったのですが、実際に店頭に並べたときのインパクトはやはり金ですね」。 |
||||||
ちなみに、オキシライド乾電池の誕生により、高負荷に強いデジカメ専用をうたったニッケルマンガン電池の生産は終了する。オキシライド1本で、中・低負荷から高負荷までの全域をカバーできるからだ。それほど、オキシライドは万能であり、今後、乾電池の標準はオキシライドになる、と考えてよいだろう。 オキシライド乾電池の登場は、既存の乾電池使用機器だけでなく、すべてのポータブル機器にとって朗報だ。イザというとき、コンビニですぐ手に入る乾電池は、緊急事態に強い。専用電池から乾電池への流れを生み出すことも期待される。 また、来年には単4も展開する予定で、オキシライドが使えるシーンは広がっていく。「必要は発明の母」だが、「供給が需要を生む」ことも反面の真実である。実際、アルカリ乾電池の登場は、その後のポータブル機器の百花繚乱をもたらした。オキシライド乾電池がリードするユビキタス・ネットワーク社会とはどんなものになるのか、これからの展開がますます面白くなってきた。(聞き手:峯村創一) |
||||||
|
■関連情報 ■関連記事 |
||
|