7.1ch&HDオーディオ対応 「サラウンドだけ」で満足ですか!? リビングのレイアウトを変える新「POLYPHONY(ポリフォニー)」

最近テレビ売り場では、テレビと一緒に売れるものが変わってきている。以前は「テレビ+レコーダー」が基本だった。今もそれは黄金の組み合わせである。だが、さらに追加されるものが一つ生まれている。  それは「シアターラックセット」だ。市場規模が急拡大したこともあり、テレビメーカーもこのジャンルに参入、販売数量の拡大に一役買っている。  そんな中、オーディオメーカーとして気を吐いているのがヤマハだ。ヤマハは今秋、「POLYPHONY」シリーズの新モデル、「YRS-2100」「YRS-1100」「YRS-700」を投入した。新モデルは、機能アップしただけにとどまらず、リビングでの利用を考えた新しい提案を持った、おもしろい製品に仕上がっている。

「使いやすさ」「音質」の同居と「将来性」が重要

 ヤマハのホームシアターシステム、中でも「POLYPHONY」ことYRSシリーズの特徴は、正面のみのスピーカーでサラウンドを実現する「フロントサラウンド」と、テレビとセットで使うラック機能を組み合わせたことにある。同社のフロントサラウンドといえば、兄弟機にあたるYSPシリーズが有名だが、そこにも搭載されている「インテリビーム」が便利だ。付属のマイクを使って周囲の音響的環境を測定し、フロントサラウンドスピーカーから出る音が反射して自分に届く際に「サラウンドに聞こえる」よう調整する技術である。POLYPHONYシリーズでは、サイズ・設置場所重視モデルでビーム調整が不要な「YRS-700」以外に搭載されている基本機能だ。YRS-700にも、省スペースな部屋に向いた「AIR SURROUND XTREME」というバーチャルサラウンド技術が採用されていて、フロントサラウンド対応であることに違いはない。

YRS-2100とYRS-1100は、音のビームを壁面反射させることにより、7.1chサラウンド再生を実現

YRS-700は、ヤマハ独自の「AIR SURROUND XTREME」というバーチャルサラウンド技術により、7.1chサラウンド再生を実現

新POLYPHONYの大型テレビ対応モデル「YRS-2100」

ロスレス出力時には、サラウンドインジケーターと呼ばれるLED表示が青く光る

 ブルーレイやデジタル放送などで、音の良いサラウンドに接する機会は増えているのだが、テレビが薄型になったため、テレビだけでは音質面が少々心許ない。音質のいいサラウンド環境は、やはり必須だ。
 そこで重要となるのは、3つの条件である。
 まずはいうまでもなく「音質」。特に、7.1ch・ロスレス系コーデック(ドルビーTrueHD、DTS-HD Master Audio)を、ロスレスのまま再現する能力を持つことは、もはや必須だ。

 YRS-2100で、ロスレス収録のBDとしては初期の傑作と名高い「AKIRA」をチェックしてみたが、ロスレスでしか感じにくい微細な表現と、体を包み込むサラウンド感が合わさり、1ボディでかつ、このコストで味わえるものとしては非常にクオリティの高い体験となる。「This is it」のような、ポップ系のライブタイトルであっても、我々が普段気づきにくいような細かなこだわりを積み重ねて作られているものであることを体感して楽しむには、やはり相応の品質が必要。新POLYPHONYシリーズはもちろん、それに十分な能力を持っている。ちょっとしたことだが、ロスレス出力時にはLED表示が変わり、動作状況がわかりやすいのもポイントだ。

 それだけでなく、映像ソースに合わせて音質をチューニングする機能も大切だ。同じ映画でも「セリフ重視」で見たい時と「雰囲気重視」で見たい時とでは適切な音質は異なるし、同じ映画でも、アニメと洋画では傾向が異なる。それどころか、同じアニメでも望まれる音響効果は違う。もちろん、スポーツや音楽が異なるのは言うまでもない。

 POLYPHONYには、映像ソースに合わせて音響効果を変える機能が搭載されている。上位2モデルには、11のモードを持つ「シネマDSP」が、YRS-700には4つのサラウンドモードが搭載されており、それぞれを切り換えながら利用できる。テレビ放送の場合には、EPG(電子番組表)のジャンル情報に合わせて設定が切り替わる「おまかせサラウンド(※)」があるので、操作が楽なのもありがたい。
 また特に今回は、YRS-2100・YRS-1100のゲーム向けのサラウンドモードの調整を、スクウェア・エニックスとの技術交流によってリニューアルしている。単に迫力や一体感を得るだけでなく、ゲーム内の効果音・メニュー音の「立ち上がり」を早くし、操作との一体感も実現できるようなチューニングが施されているという。

3モデルとも、HDオーディオ規格に対応する

YRS-2100とYRS-1100は11のモードを持つ「シネマDSP」を搭載、YRS-700は4つのサラウンドモードを搭載している

背面の接続端子。3機種ともARCに対応したHDMI Ver.1.4の端子を備える

 次に重要なのが「将来性」。HDMIが規定している最新の技術に対応しておくことは、せっかく買った製品を長く使う上で必要なことだ。
 今は3Dに対応したテレビやレコーダーを持っていなくても、将来買い換える可能性がある。音響機器側も、準備しておくに越したことはない。新POLYPHONYは、全機種が最新のHDMI規格(HDMI Ver.1.4 ARC対応)に対応し、3D機器にも問題なく対応できる。
 ARCは、オーディオストリームを出力側へ「返す」ことができる技術。POLYPHONY以外の機器でもサウンドを楽しみたい、という場合、別途HDMIケーブルを繋ぐ必要がなく、テレビからの1本のケーブルで済む。シンプルな結線と配置が特徴であるシアターラックでは、必須の機能といえるだろう。

(※)「おまかせサラウンド」機能は、株式会社東芝・日立コンシューマエレクトロニクス株式会社の対応テレビと連動。詳細はこちら

シアターラックに問われる「家具」としての価値

 これらの技術的要件を備えていることは、シアターラックとしての完成度を語る上で、もちろん非常に重要なことである。
 でも、本当にそれだけでいいだろうか? シアターラックは、特に「家具」としての性質が大きな家電である。満足できる音が出る、ということも大切だが、生活シーンの中にどうマッチさせられるか、ということがより大きな価値を持ってくる。

 例えば新POLYPHONYでは、テレビを壁に寄せられるだけでなく、新POLYPHONY自身と壁の間ができるだけ狭くなるよう、端子部の配置が工夫されている。上位2モデルでは、オプションの壁寄せ金具「YTS-V1200」をセットにすれば、POLYPHONYとテレビをくっつけ、さらに壁に寄せる「壁ピタ」という配置もできる。下部の「棚板」にも工夫が凝らされている。三段階に高さを変えられるので、手持ちの機器と組み合わせた際のレイアウトもしやすい。なおYRS-700は、ワンルームマンションなどでの「コーナー配置」に特化した形状だ。そういった層を重視してか、カラーリングも白と黒に統一されている。

YRS-1100に壁寄せ金具をセットし、テレビを設置したところ

壁にぴったりと寄せられるように、端子部が奥まった場所に配置されており、壁寄せ金具をセットする場所も金具の厚み分窪んだデザインになっている

YRS-700は、コーナーをカットしたデザインで、部屋の角に設置することに特化した形状になっている

 特に新POLYPHONYが面白いのは、「テレビ台」という固定概念から脱しつつある、という点である。従来、シアターラックは、テレビと同じ大きさで、収納よりもコンパクトさ重視……。だが、テレビが薄型になり、部屋の中での存在感が変わってくると、シアターラックの価値も当然変わってくる。
 例えば最上位機種のYRS-2100は、横幅が1600mmと大きめになっている。これは、65インチクラスのような大型テレビとのセットを考えてのこともあるが、それに加え、次のような意図もある。
「あえてテレビの横をフリーにして、自由に使ってください」と。

YRS-2100に、47インチのテレビを設置したところ。左右のスペースに余裕があるので、テレビサイドの空間を自由に使える

スピーカー下部に切り欠きを入れたデザインで、スリムさを強調

本体を支える支柱は、丸みを帯びたデザインに

YRS-2100の棚板は、3分割されており、それぞれの高さを3段階で調整できる

 作り付けの家具の上に薄型テレビを置いている家庭が増えている。「テレビといえば部屋の角」という固定概念から離れ、生活の中に密着させるための発想だ。新POLYPHONYもそれに近い。シアターラックを「家具」としてとらえ、より部屋にマッチするように配置し、テレビサイドの空間も自由に使ってもらう。新しく「アーバンブラウン」というカラーを用意したのも、より強まる「家具指向」を意識したものである。

 シアターラックの使いやすさは一つではない。
 家電として、音響機器としての使いやすさと、家具としての使いやすさ。
 その両方を備えているからこそ、新POLYPHONYは魅力的に映るのである。

「YRS-2100」は、65インチまでの大型テレビに対応。カラーは、アーバンブラウン(左)とブラック(右)

「YRS-1100」は、50インチまでのテレビに対応。カラーは、ブラック(左)、ホワイト(中)、アーバンブラウン(右)

「YRS-700」は、カラーは、ブラック(左)、ホワイト(右)

 

西田宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

 
 

■関連情報
YRS-2100製品ページ
YRS-1100製品ページ
YRS-700製品ページ
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 http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20100831_390416.htm

 
 

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