「VAIO Zシリーズ」は、シリーズのコンセプトとして、「妥協のないノートPC」を目指してきた製品だ。モバイル性の高いノートPCであるとはいえ、外出先でだけ使われるとは限らない。だから、デスクに腰を落ち着けてテクニカルな作業をする際にも、ストレスを感じさせないパフォーマンスを提供しようという、いわばスタミナとパフォーマンスを兼ね備えた製品として誕生した。
シリーズの出荷開始当時、開発に関わったメンバーにインタビューしたことがあるが、そのときに聞いた言葉が「選ばれた人に選んでもらえるマシン」というものだった。つまり、運転手付きのクルマで移動するようなエグゼクティブが、唯一無二のパソコンとして、いわば、自分自身の分身に近い存在として絶大の信頼感をもって携帯し、常にいっしょにいられるパートナー、あるいは、セクレタリーといったイメージだ。モバイルを強く指向した結果、バッテリ駆動時間や携帯性を最優先するためにさまざまな抑制を施した特化型のPCとしてではなく、モバイル以外での使用シーンでも納得のできる使い方のできるPCが目指されているのだ。
そのZシリーズが、WiMAXを搭載した。それによって、またひとつ妥協がクリアされたのだ。ネットワーク接続に関しては、有線LANが使えるところでは有線で、無線LANが使えるところでは無線でと、常に最高の帯域幅が得られる手段を使ってインターネット接続をするのが普通だ。インターネット接続の帯域幅は、PCのパフォーマンスの体感に大きな影響を与えるがゆえに、とにかく高速な接続を望むのは当たり前だ。ブロードバンドに対する要求を、Zシリーズを外に持ち出してのモバイル環境においてもかなえたい。Zシリーズのユーザーは、ずっとそれを願ってきたはずだ。WiMAX搭載モデルの登場は、モバイルPCとしてだけではなく一般的なPCとしてみても、パーフェクトに近い装備を具現化しているZシリーズの完成度に、さらに磨きをかけるフィニッシュであるともいえる。
内蔵グラフィックスと外付けグラフィックスを切換えることができるZシリーズ。バッテリー駆動時間を重視するときは前者、パフォーマンスを重視するときは後者と、使い分けが可能
パームレストに備えられたFeliCaポートと、指紋認証デバイス
HDMI端子に加え、BDドライブも搭載可能。オフィス/モバイルの両立のみならず、ビジネス/エンターテインメントのバランスも、Zシリーズならではのポイント
今のところ、WiMAXに接続することでおおむね下り10Mbps程度、上りも数Mbps程度の帯域幅が得られる。広域を対象にしたインターネット接続サービスとしては最速の部類に入るだろう。下りのスピードは大きなファイルのダウンロードなどで恩恵を得られるが、それよりもここで注目したいのは、安定して得られる数MBという上りの帯域だ。
Zシリーズは、ハイパフォーマンスなインテル® Core™2 Duo プロセッサーや、最大搭載量8GBのメモリ、500GBのHDD、内蔵グラフィックスと外付けグラフィックスの切り替え機能、FeliCaポート、指紋認証、BDドライブ、HDMI出力など、およそ、現在のPCにおいて、あったらいいなと考えられるすべての装備を搭載することができる。そうしたZシリーズの高スペックと、WiMAXの広帯域との組み合わせは、かつてなかったモバイル体験を実現する。
いまどきはコンパクトデジタルカメラでさえ1000万超の画素数で撮影ができ、写真一枚あたり10MB近いサイズのファイルを大量生産する時代である。だがZシリーズのパフォーマンスがあれば、このくらい高画素の画像が何百枚あっても、使える写真、使えない写真を難なくセレクトし、必要ならば多少のレタッチを加えてアーカイブするのは簡単だ。Zシリーズで1600×900ドットという高解像度の液晶ディスプレイを搭載すれば、これらの作業でストレスを感じることはまずないだろう。
出張して視察した施設の随所を撮影し、いちはやく、オフィスに待機しているスタッフに見てもらうために、それらの写真をメール送信、あるいは、VPNを使ってオフィスのファイルサーバーにアップロードするような場合には、上りの速度がとても重要になる。メールで送信できるのは、メールサーバーの制限等を考慮すれば、たかだか10MB程度だろうから、そんなに大きな恩恵を感じることはないかもしれないが、数百MBのアーカイブとなると話は別だ。宅ふぁいる便のようなASPサービスを使う場合も同じことがいえる。仮に100MBのアーカイブをアップロードするのに、実効アップロード速度が1Mbpsでは20分弱かかるが、4Mbps出れば5分程度で終わる。このスピード感の違いはかなり大きいし、理論値云々ではなく、実際にこのくらいのスピードが得られるのがWiMAXの実力だ。
これまでの情報収集型のインターネット利用では下りの帯域幅ばかりが重要視されてきたが、これからのインターネット利用スタイルでは、上りの帯域幅にも注目する必要がある。WiMAXは、いつでもどこでもつながる接続性と、上り下り共にきわめて広い帯域幅、その両方を提供する。そのWiMAXが、いっさいの外付けデバイスを装着せずに、Zシリーズ単体で利用できるようになったことの意義は大きい。まさにオフィスのブロードバンドをそのままモバイルに持ち出したかのような感覚。単にWiMAXモジュールを内蔵しているに過ぎないのだが、それは、ブロードバンドをその身に宿したに等しい。エリアによっては、オフィス内でもWiMAX接続で十分と判断できるかもしれない。
国内出張のみならず、Zシリーズのオーナーであれば海外出張時の利便性を気にするかもしれない。海外への出張は、往復の飛行機での移動時間を含めれば1週間程度の出張になることが多いはずだが、その際にも日常的に得られているパフォーマンスと同等の使い勝手を持ち出したい。そういう点でも、Zのスペックは十分に満足できるものだ。自身のオフィスにおける日常をそのまま持ち出せるといっていいだろう。
すでに国内各空港が続々とWiMAXエリアに入りつつある。海外でのローミングも視野に入っている。WiMAXを搭載したZシリーズの機動力はさらに増すことだろう
さらにUQコミュニケーションズでは、海外のWiMAX事業者との提携について、積極的にビジネスプランを進めている。ローミング契約によって、海外においても、内蔵WiMAXがそのまま別の事業者につながり、リーズナブルなコストで広帯域のインターネット接続が可能になる日も、そんなに遠くはないということだ。
現在、北米のホテル等に宿泊すると、ホテルが提供する有線や無線のインターネット接続サービスを利用できるが、その際のコストはNoon to Noonで10〜15ドル程度のところがほとんどだ。しかも、それを利用できるのは、ホテルの中にいるときだけで、場合によっては、ロビーでの打ち合わせとなったとたんに、インターネット接続がかなわないといったケースもある。
だがWiMAXが、それらの接続サービスと同程度、あるいはそれよりも廉価な価格で使えれば、モバイルノートPCとしてのZシリーズの頼もしさはグッと向上するはずだ。ホテルの部屋はもちろん、現地での移動中、食事の際のレストラン、空港での待ち時間まで、ずっとオンラインでいられる。WiMAX搭載のZシリーズを選んでおけば、サービスインしたその日から、そんなユビキタス体験ができる。そんなに遠い未来の話ではないはずだ。
Zシリーズには外付けデバイスは似合わない。何がなんでもすべてのデバイスを内蔵し、出かけた先で、あれを持ってくるのを忘れた、あれを持ってくればよかったという不便を、絶対にオーナーに体験させないことが目指されているからだ。
WiMAXが地球全体を覆う日は近い。たぶん、今から購入するZシリーズがライフタイムを終える前に、WiMAXは世界的に普及するだろう。だからこそ今、Zシリーズを選ぶなら、WiMAX搭載は必須のオプションだ。それは接続性の可能性を購入するということでもある。スタミナとパフォーマンスを兼ね備えたZシリーズが、オールマイティなコネクタビリティを得るのは進化の方向としてごく自然なものであり、それを選ばない理由はない。Zシリーズを愛機の候補として検討しているオーナー予備軍なら、きっとそれを理解できるはずだ。
[Text by 山田祥平]