「レッツノートS8」は、光学ドライブを持つ12.1型ワイド液晶の2スピンドルモデルで、軽量さと堅牢性を両立させたパナソニックのレッツノートシリーズの中核となる新シリーズだ。これまでのW8は、T8とともに企業向けに供給は続けられるが、主力は、こちらに置き換わっていくものと思われる。W8から光学ドライブを省いたT8があるように、S8から光学ドライブをのぞいた1スピンドルモデルとしてN8も用意されている。パナソニック側が、そういっているわけではないが、SはスピンドルのS、NはNoスピンドルのNと覚えることにした。
そして、このS8、N8は量販店向けモデル、直販のマイレッツ倶楽部限定モデルを含め、全モデルが「Intel® WiMAX/WiFi Link 5150」を搭載している。つまり、有無をいわさず、WiMAX内蔵という仕様になっているのだ。
今回は、量販店向けモデルをいちはやく試用することができたので、そのインプレッションを紹介しよう。
「レッツノートS8」の最大の特徴は、標準電圧版プロセッサーのインテル® Core™2 Duo プロセッサー P8700 で高い処理性能を確保しながら、2直4パラ12.4Ahという業界最高容量のバッテリーを搭載し、実に、約16時間という長時間駆動を実現していることだ。これまでのW8のバッテリーパックが5.8Ahだったので、その倍以上の容量を確保していることになる。バッテリーパックそのものの重量は、W8のものが約320gで、S8のものが約410gだ。約90gの増加で、容量が倍以上になったこともすごいが、本体総重量はW8の約1.249Kgから約1.32Kgへと、わずかに約50g増にとどまっている。つまり、バッテリーをのぞく本体重量は、S8の方が軽くなっていることに驚く。
この約16時間という駆動時間は、JEITAバッテリー動作時間測定法(Ver.1.0)によるものなので、実際の使用においては、それほど長時間は使えない。その実状は、モバイルPCのユーザーであれば、先刻承知の通りだし、あきらめに近い感じでとらえているはずだ。
たとえばバッテリーでノートPCを駆動していても、無線デバイスを駆使し、快適な視認性を確保できる適度なモニタバックライトの輝度に設定して、日常的な使い方をしつつ、残り容量が10%を切ったところで警告ダイアログを見て使用をやめるというのが一般的だと思うが、それでカタログスペックの半分程度の時間を使用できればよしとするのが妥当だろう。ベンチマークテストのように、バッテリーがスッカラカンになるまでPCを使うというユーザーはめったにいないはずだ。
だが、S8のカタログスペックは約16時間なのだ。たとえ、カタログスペックの半分しか駆動できなかったとしても、実使用で約8時間持つというのは心強い。モバイルPCを抱えて外出し、出先で約8時間を超えて作業をすることはまずないだろう。人によっては1泊の出張でも十分かもしれない。個人的な経験からも、そんなに長く使わなければならない日はまずないし、あったとしても、AC電源確保の対策を考える。
モバイルPCのバッテリー駆動時間を確保するために、今までのモバイラーは涙ぐましい努力をしてきた。見にくいのをガマンしながらバックライト輝度をギリギリまで落とし、また、こまめに無線デバイスのスイッチをオフにする。また、省電力設定でプロセッサーの処理能力を抑制し、OSのスリープではバッテリーを消費するので、復帰の遅いのをガマンして休止状態を使ったり、使うたびにシャットダウンと起動を繰り返したりしてきたのだ。これでは、本体が持つ実力の半分程度しか発揮できなかったといっていい。
だが、今回の新バッテリーと小口径厚型ファン、低消費電力のLEDバックライトを採用したことで、バッテリーを気にせず、AC電源をつないでいるときと同じ感覚で使っても、約8時間という駆動時間を確保することができている。まったく工夫をしなくても、余裕で1日の外出をカバーできるのだ。このことは、モバイルに感じるストレスを大きく軽減してくれるはずだ。
WiMAXはノートPCを使っているところでは常にオンにしておきたい。インターネットを使うから、そのたびに接続するという使い方では、ユーザー体験が著しくスポイルされる。S8では、パナソニック独自開発の高感度アンテナを天板に内蔵し、良好な感度が得られているため、WiMAXへの接続性も高い。
読みかけの本を開くように、ラッチレスのS8の液晶を開くと、瞬時にスリープから復帰、ログオンパスワードを入力して作業途中のデスクトップが表示されるころには、すでにインターネットにつながっていて、開いたままのブラウザ上のリンクをクリックすれば、すぐにリンク先が表示される。まるで、ずっとつながっていたかのような贅沢な体験を、何の工夫もなく実現することに、S8の長時間駆動は大きく貢献している。
WiMAXに限らず、無線デバイスは、PCに使われている各種のデバイスの中でも、比較的大きな電力を消費する。だからといって、こまめにオンオフを繰り返してバッテリー消費を抑制するのでは、いくら駆動時間が延びるからといっても、ユーザー体験的には本末転倒だ。
S8は、高いクロックで駆動される標準電圧版のプロセッサーを搭載したことで、処理能力が著しく向上し、かつてない高性能を気軽に持ち歩けるようになったのだから、日常的なユーザー体験もいっしょに持ち歩きたい。ある意味で、S8は約8時間程度とはいえ、ワイヤレスでAC電源を確保しているのと同一の体験が得られる製品だといえる。そして、そのことは、広い帯域をモバイルで確保できるWiMAXのインフラと協調し、新たなモバイルスタイルを創出するだろう。S8は、きっと従来のモバイルPCの使い方を変える。そんな予感が確信に近いものとして感じられる。
[Text by 山田祥平]