オンキヨーのDC204は、インテル® Atom™ N270 プロセッサー を搭載したネットブックだ。ネットブックは、ハードウェア仕様の制限等でロープライスを実現している、いわば業界戦略製品といっていい。だから、どのベンダーの製品もスペック的には横並びになってしまう。個々のベンダーの腕の見せ所は、細かいところの作り込みだが、そこにあまり注力しすぎても、コストに響いてしまうのが難しいところだ。
だが、DC204は、こうした制限にもかかわらず、上質な仕上げ感を感じる製品だ。また、その購入時に、BTO選択肢として、WiMAX搭載をチョイスすることができ、そのことが、この製品の魅力を大きく高めている。
光沢感のある天板、つや消し梨地処理がほどこされた底面、そしてアクセントの赤いラインなどが美しい |
メッシュ状のヒンジ部分。その下のインジケーターはヘアライン調 |
やはりヘアライン調のタッチパッドを含め、キーボード面はオールブラック仕様 |
ネットブックは、メールとインターネットさえできればいいとする手頃感のあるPCとして普及した。もともとは発展途上国向けにとにかく廉価なPCを、ということで企てられたカテゴリだったが、むしろブロードバンド先進国で爆発的な人気となってしまった。
ネットブックが登場するまで、PCを持ち歩きたいというニーズはあっても、それはあくまでもニッチなもので、圧倒的多数のユーザーが求めているものではなかった。世の中で使われているノートPCのほとんどは、一度も外に持ち出されたことがないというのが定説だったのだ。それは、ある意味で事実でもあるわけだが、そうなってしまった理由のひとつは、いわゆるモバイルノートPCが軽薄短小化に向けて技術の粋を投入され、そのためにかなり高いコストが必要だったことがある。必然的に価格は高くなり、一般のユーザーが気軽に手を出せるものではなくなってしまったのだ。ベンダー各社もちょっと腰の引けたところがあり、たとえば、主力製品はモビリティを犠牲にしても光学ドライブを搭載するといった傾向にあったし、売れる製品も、やはりそうした「モバイル"も"できるPC」だった。ワンスピンドルのモバイル特化型PCは、まさに、ニッチ中のニッチだったのだ。
そこに登場したのがネットブックだ。数グラム、数ミリ単位の無駄を極限まで省くことを目指したモバイルノートPCまではいかないが、創意と工夫でローコストのままでの軽量化、薄型化を実現し、さほど抵抗なく持ち歩きのできるPCを、手に入れやすい価格で実現した。それによって、2台目のPC、個々の家族が自分専用に使えるPCといった位置づけの製品として受け入れられたのだ。
人々は、PCを持ち歩きたがらないのではなかった。2台目のPCが欲しくないのでもなかった。手頃な価格で入手ができるのなら、そんなPCが欲しかったのだ。かくして、ネットブックはそのニーズの存在を証明し、新たなスタイルのパーソナルコンピューティングを創生した。
そして、オンキヨーのDC204は、WiMAXという強力な装備によって、ネットブックがネットブックたるための本来の装備を完全な形で実装した製品だといえる。
ネットブックである限り、インターネットにつながらなければ意味がない。携帯電話のように、いつでもどこでも、液晶ディスプレイを開くだけでインターネットにつながり、Webを楽しんだりできてほしい。WiMAXは、そんなニーズにベストマッチだ。なにしろ、「つなぐ」という作業を意識することなく、いつでもどこでも、液晶ディスプレイを開けばインターネットにつながっているのだから。それでこそネットブックの呼称がふさわしいというものだ。
さらにDC204の場合、標準仕様でストレージがSSDであるという点も魅力だ。大容量のHDDにも心は惹かれるのだが、頻繁に持ち運んで使う可能性があるPCでは、容量よりも耐衝撃性を優先したほうが安心感が高い。本体を多少ラフにあつかったとしても、衝撃等が原因で故障する可能性は低く、PCを扱う際のストレスを大きく軽減してくれるはずだ。
重量960gと、ネットブック各製品の中でも軽量な部類に入るDC204だが、軽いPCは、自分ではそのつもりがなくても、結果的にちょっとした衝撃を与えてしまいやすくもある。そのたびにヒヤッとするストレスから解放されるだけでも、SSD搭載はうれしい。オンキヨーが太鼓判を押してくれるわけではないが、まるで携帯電話のように、ソファやベッドの上に投げ出したりしても大丈夫というのは、モバイル機器として、とても重要な要素だ。
ネットブックは、その液晶ディスプレイの仕様にハードウェアとしての制限があり、縦方向が600ピクセルと、過去において一般的だったXGAの768ピクセルよりも狭い。もちろんDC204も例外ではない。ただ、Webブラウザを使うだけなら、Webブラウザを開いた状態でF11を押し、全画面表示のキオスクモードにすることをお勧めする。全画面表示では、タイトルバーやアドレスバー、お気に入りバー、コマンドリンクなどが非表示となる。そして、マウスポインタをディスプレイ上部に持って行くと、そのときだけ、非表示にされていたそれらの要素が表示されて、通常通りに操作することができる。ページ上のリンクをクリックしてブラウズだけしている分には、これらのバーを操作する必要がないので、非表示になっていれば、そのぶん、より多くの情報を一画面でブラウズすることができる。ネットブック特有の縦方向に狭い解像度は、こうした運用の工夫でカバーできる。
とにかくDC204のようなネットブックが目指すべきは「カジュアルさ」だ。そこでは、インターネットへの接続作業という、Webを楽しむ上でのややこしい手続きは、できうる限り排除したい。その点、WiMAXなら、「つなぐ」ということを考える必要はない。リビングルームにいても、寝室にいても、また、ネットブックを持ち出して通勤通学途上、あるいは、馴染みのコーヒーショップと、いろいろなところで液晶を開き、スリープから復帰したらもうつながっている、というカジュアルさを楽しみたい。
スリープから目覚めたデスクトップは全画面表示のブラウザが開きっぱなし。楽しんだあとはWebブラウザを閉じるのではなく液晶を閉じてスリープさせる。Windowsがどのバージョンだったかも忘れるくらいに、長い間デスクトップを見ていないような、そういう使い方はネットブックならではだ。
ちなみに、DC204では、WiMAX搭載のBTOオプションは1万円相当だ。製品そのものの価格に対して、割合的にちょっと高価な印象を受けるが、それによって得られる便利さ、気軽さ、カジュアルさは筆舌に尽くしがたいものがある。WiMAXのようなソリューションがあってこそ、ネットブックの特性が生きる。ここはひとつ、必須のオプションとして選択したいものだ。
(Text by 山田祥平)