鼎談 WILLCOM D4 モバイルPCとしての有り余る魅力

ウィルコムのWILLCOM D4 Ver.Lは、インテルの最新CPU「Atom」を搭載したウルトラモバイルPCだ。最近は、Windows XPを搭載した低価格なネットブックが話題を集めているが、WILLCOM D4 Ver.Lは、Windows Vistaを搭載していることからもわかるように、ネットブックとは一線を画す、よりモバイルに特化した高性能マシンである。ここでは、モバイルに詳しいライター2名(坪山氏はD4の発売当初からのユーザー)とウィルコムのD4企画担当者によって、WILLCOM D4 Ver.Lの魅力をじっくり語り合う機会を得たので、その内容を紹介したい。(石井英男)

対談参加者

石井英男
フリーライター
本記事執筆者
坪山博貴 氏
フリーライター
早坂忍 氏
株式会社ウィルコム
データ通信企画室
 課長補佐

以下、敬称略。

なお、今回コラボ企画として、坪山氏による記事がITmedia +Dにて掲載されている。そちらもあわせてチェックすれば、WILLCOM D4のことがよりいっそう理解できるだろう。

さまざまなシチュエーションで便利に使える3Wayデザイン

WILLCOM D4は、ケータイでもPCでもスマートフォンでもない、新たなカテゴリーの製品であり、キーボードを閉じた状態で使うViewスタイル、キーボードをスライドさせて使うInputスタイル、液晶をチルトさせて、ノートパソコンのように机の上に置いて使うDeskスタイルの3つのスタイルで使える3Wayデザインを採用していることが魅力だ。


Viewスタイル、Inputスタイル、Deskスタイルの3つの形態で使える3Wayデザイン
石井WILLCOM D4の「D4」というネーミングには、ケータイでもPCでもスマートフォンでもない、新たなカテゴリーの製品という意味が込められていると聞きました。インテルは最近、こうした製品をMID(Moblie Internet Device)と呼んでいるようですが、立派なPCとしての機能を持ちながら、このサイズを実現していることは大きな魅力だと思います。D4は、主にどんな使われ方をされているのでしょうか?

早坂購入者に対して、Webでアンケートを取っているんですが、やはり想定通り、液晶の大きさとか手軽さを活かして、モバイルでのインターネットブラウズとかメールですとか、ビューア的な使い方が多かったですね。

石井キーボードもサイズのわりにしっかりしていると思いますが、キーボードを出さなくても、タッチパネルやタッチパッドで操作できますし、どこでも気軽に使っているわけですね。

早坂はい、いろんなシーンで使っていただきたいと思って作っています。例えば、モバイル時は、キーボードを閉じた状態でタッチパネルを使って操作ができますし、外でカフェなどに入った場合は、メールなどが打ちやすいように、本体を置いてキーボードをチルトして打てるとか。また、画面のローテーション機能も搭載していますので、本体を縦にして、片手で操作していただくことも可能です。そういったさまざまな新しいスタイルを提案できるようなデバイスとして考えていて、D4ではこの新しい機構を採用しています。

石井シーンに応じて使い分けられるように3Wayデザインにしたというのは、最初からのアイデアだったんですか?

早坂そうですね。その辺を意識して作っています。

石井このギミックで苦労された点はなんですか?

早坂W-ZERO3シリーズですと、単純にスライド機構だけなのでスライド感を追求していますが、D4ではキーボードをスライドさせて、さらに画面を起き上がらせるチルト機構があるので、この起き上がらせるときの感覚にこだわりました。ガチャッてなってもいけないですし、安っぽくパタッとなってもいけない。ヒンジを弱くしてしまうと、自重で液晶が倒れていってしまうんですね。そういったところをトライアンドエラーで、サンプルを何回も作ってチューニングしました。

石井坪山さんは、D4を発売日に購入されて、ずっとお使いですよね。そのあたりの耐久性についてはいかがですか?

坪山まだ、耐久性うんぬんという状況ではないと思いますが、今のところは全く問題ないですね。この角度はけっこう重要ですね。置いて使うときはやっぱり角度で液晶の見え方が全然変わりますから。

早坂D4にはワンセグチューナーも搭載されていますので、ユーザーさんが机に置いた状態でワンセグ放送を見るということも考えて、最適なチルト角を決めました。

石井それから、モノとしての仕上げの良さも魅力ですね。表面は光沢のあるブラックで、底面はラバーっぽい、手に馴染む塗装がされていて、細部までこだわりを感じる。筐体デザインについて苦労された点はなんですか?

早坂デザイン的なこだわりでいいますと、イルミネーションキーがサイドに付いていますが、これが浮かび上がってくるように仕上げています。赤っぽいアンバーなんですけど、浮き上がってくる色なんですね。その美しさを最大限に表現できるボディカラーは光沢のある黒なんですね。イルミネーションキーという新しい技術を、いかに美しく見せるかということにもこだわっています。

坪山氏は、D4を発売日に購入し、愛用しているD4のヘビーユーザーでもある。その坪山氏も、D4の筐体デザインや使い勝手には十分満足しているようだ。

キーボードのクリック感やタッチパネルの操作性に苦労

WILLCOM D4は、スライド式のQWERTYキーボードを搭載するほか、タッチパネルとタッチパッドを搭載しており、3Wayデザインのどのスタイルでも操作できるように設計されている。特に、キーボードやタッチパッドの出来は秀逸だ。こうしたユーザーが直接触るデバイスについて、思うところを語り合った。


設計で入念にトライ&エラーが繰り返されたというキーボードとタッチパッド。タッチパッドの使い勝手は坪山氏も絶賛

石井キーボードも、サイズから予想するよりもはるかに使いやすいと思いました。ただ、キーストローク自体はすごく浅いですよね。クリック感はありますが、一般のノートパソコンのキーボードみたいに、キートップ全体を押し込めるわけではないんですが、これは新開発なんですか。

早坂パソコンでは、キーボードの打ちやすさが非常に重要ですので、しっかりと押し込めるパンタグラフキーを採用しています。もちろん、D4でも、キーボードの打ちやすさはユーザビリティを大きく左右するので重視する必要がありますが、新しいモバイルコミニュケーションツールを出したいという思いがあったので、いかに手軽に持ち運べるかという、小ささを追求しました。しかし、操作性はおざなりにできないので、そこをいかにキーを押しやすく、かつ持ち運びやすいサイズにするか、というところが一番のポイントでした。D4のキーピッチは12.2mmなので、人間工学的にいってタッチタイピングできるギリギリのサイズだと思っています。キーストロークもおっしゃる通りで、押した感覚を入れようとするとキークリックが重くなってしまうんですね。重くなってしまうと文字入力とか長文とかを入力しづらくなってしまいますので、いかに長文を打ちやすく、キークリック感を出すか、数多くのトライアルをしてギリギリまでチューニングしました。D4では、新開発のメタルドームキーを採用しており、ストロークは浅くても、カチッとしたクリック感を実現しています。

坪山このキーボードのタッチの固さって、両手親指打ち用じゃないかと思ってるんですよ。僕は置いて打つと、キーの打ち漏らしがあるんですよね。物理的にストロークをとれないという中でバランスとったんだと思うんですけど、個人的にはもっとふかふかでもいいですね。立って両手で使うときには、これくらい固めのほうが入力ミスは少ないんですが、速く打とうとしてDeskスタイルにすると、打ち漏らしが出ちゃうことがあります。

早坂それは、私たちも色々やりましたが、親指で打つ力とそれ以外の指で打つ力が違うんですよね。

坪山指で叩く感じと、しっかり押すの違いがあると思います。両方のバランスとるのは難しいと思いますけど。

早坂チューニングする前は、まだ「押す」って感覚でした。一個一個キーを押して入力しているという。それをいかに「叩いて弾く」ような感覚にもっていけるか、というところでチューニングしています。軽くすると今度は押した感覚がなくて、クリック感を出すと重くて小指では押せなくなってしまうので。

坪山どうしてもシフトキーのあたりが打ち漏らしやすいですね。特にフルのWindowsではシフトキーやAltキーなどとの併用が多くなるので、そのあたりは結構重要ですよね。石井さんとはちょっと見解が逆ですが。

石井使い方にもよりますよね。

坪山僕はViewスタイルが一番いい。このタッチパッドの出来がものすごくいいので。

早坂それも非常にチューニングしました。画面は横長なんですけど、イルミネーションキー(タッチパッド)部分は縦長なんですよね。横幅が広い液晶に対して、パッドの横幅は狭いので、その移動量の調整にも時間をかけています。

坪山氏は、Deskスタイルで置いて打つにはややキータッチが固いと感じているようだが、私(石井)は、置いて使っても快適に打てると感じた。キータッチは、個人の好みもあるので、気になる人は店頭などで実際に触ってみることをお勧めしたい。タッチパッドの操作性については、坪山氏も非常に満足しているようだ。

名前は同じでも、ネットブックのAtomとは違う

WILLCOM D4では、CPUとしてAtom Z520が、チップセットとしてUS15Wが搭載されている。最近は、Atomを搭載したネットブックが話題を集めているが、ネットブックの場合、CPUがAtom N270で、チップセットはIntel 945GSE Expressという組み合わせであり、D4とはCPUもチップセットも異なるのだが、誤解している人も多いようだ。

石井それから、スペック的なところでいいますと、Atomプロセッサをいち早く搭載したというところですよね。最近Atomというといわゆる低価格なネットブックが注目を浴びてますけど、あちらは名前は同じAtomでも別のCPUで、開発コードネーム自体も違いますよね。D4に搭載されているAtomは、開発コードネーム「Silverthorne」で、より低消費電力でバリューの高いCPUですよね。チップセットもネットブックに採用されているものよりも、世代が新しく、より高性能なものですよね。

早坂はい、まず開発の初期段階では、インテルのAtomプロセッサについては、情報を全く持っていなかったんですよ。それで、その前の世代の「McCaslin」(開発コードネーム)というプラットフォームで開発しようとしたんですけど、それですと重量が600gくらいになって一回り重くなりますし、消費電力もかかってしまう。中国で行われたIDFに行って、新しいモバイル向けプラットフォーム「Menlow」が出るということを知り、さらに低消費電力化が進んでいるということで、これにしようと決めました。同じAtomプロセッサでも、ネットブックといわれる製品に搭載されているプロセッサとD4に搭載されているプロセッサとは間違いなく違います。インテルが提唱しているMIDというのがありますが、いかにフルインターネットをモバイルで使いやすくするかというコンセプトですね。そのMID向きプラットフォームを採用させていただいていますので、低消費電力とか高パフォーマンスとか、そういった部分では現状のネットブックとは違います。

石井チップセットの描画性能もネットブックに比べると高いですよね。フルHD動画も、D4では快適に再生できます。


おもむろに、自身のD4に入れたフルHDのH.264動画を披露する坪山氏。D4の動画再生能力の高さには担当者の早坂氏も嘆声

坪山(D4でのフルHD動画の再生を二人に見せながら)これはH.264のフルHDの動画です。CPU占有率は70%くらいいっちゃいますけど、それでも他のことをしなければ止まることはないですね。ハードウェアアクセラレーションが効いていますので。次世代DVDに使われているコーデックはハードウェアサポートがどんどん進んでいっていますが、ネットブックではそのあたりは現状サポートされていないんですよね。

石井ネットブックをあまり悪く言うつもりではないんですが、ネットブックのチップセットは2世代くらい前の製品ですよね。

早坂ネットブックは開発途上国向けとか、教育向けとか、これからITリテラシーを高めようというところに向けた製品ですね。

坪山もともと目的が違うものが、日本では一緒に売られてしまってますよね。しかも、キャリアとの契約とセットで一万円パソコンとかっていう売り方は、ちょっとどうかと思います。

早坂そうですね。ネットブックなどと同列に見られてしまっているので、D4のいいところをうまく見せられていないというのは、反省点としてあります。

石井また、液晶が5型ワイドで1024×600ドットというのは精細度がかなり高いわけですが、明るいし、きれい。シャープの液晶技術の高さを感じさせられます。

早坂液晶もシャープさんにD4専用として独自に開発していただいています。高精細であるとか、表示品位の高さというところはもっとアピールしていきたいです。

ネットブックが各社から登場したことで、「Atom=ネットブック」の図式が広まってしまったが、D4のAtomは、ネットブックのAtomとは似て非なるもので、よりバリューのあるプラットフォームを採用しているということを知っておいてほしい。

Vistaも想像以上に快適に動作する

D4とネットブックとの違いは、CPUやチップセットだけではない。ネットブックでは、OSとしてWindows XP Home Editionを搭載した製品がほとんどだが、D4では、最新のWindows Vista Home Premium SP1が搭載されている。当然、Vistaのほうが、より進化したOSであり、使い勝手の点でもセキュリティや機能的な面でも優れている。しかし、D4はメモリが1GB固定なので、Vistaを動かすのは少々厳しいと思っている読者も多いことだろう。

石井ネットブックとの差別化という点では、ネットブックはOSがWindows XP Home Editionですが、D4には、最新のWindows Vista Home Premium SP1が搭載されていますよね。Windows XPでもスマートフォン向けのWindows Mobileは全然違って、パソコンのソフトがそのまま動くわけですけど、Vistaのほうが、セキュリティも強化されていたり、さまざまな面で進化していますよね。すでに、販売されているパソコンのOSは、ほぼすべてがVistaですから、それと同じ環境で同じ操作性で使えるっていうことは、D4のいいところだと思います。


D4を使い込んだ者として、熱を持って語る坪山氏

坪山タッチパネル搭載を考えたら、Vistaを選択するのが本来ではありますよね。OS標準で対応していますから。Windows XPだとTablet Editionが必要で、別物になってしまう。

石井Vistaだとメモリがたくさん必要だと考えている人が多いでしょうが、D4は1GB固定ですが、実際に触ってみると、結構サクサクと動くので意外でした。

早坂Vistaでメモリ1GBというのは、先入観として悪いイメージが浸透してしまっているような感覚を受けています。実際に使うと“ちゃんと動く”、とユーザーさんに言っていただくことが多いので、店頭やタッチアンドトライなどでD4を触っていただく機会を増やしていきたいと思っています。実際に使っていただければ、この良さを体感していただけますので。

坪山Vistaのほうにも問題はありますよね。プリインストール直後だと一日くらい放置しておかないとディスクアクセスが止まらないじゃないですか。ずっとインデックス作成や学習をやっていますので、だからVista搭載パソコンは、どんな製品でも最初は重いんですが、そういうのが収まってくると基本的に問題ないですよね。メモリを2GB搭載しても、4GB搭載しても、スワップが始まっちゃうと速度は同じになっちゃいますよね。こういったMIDで、アプリケーションを同時に5個も6個も立ち上げるかっていうと、それはちょっと使い方が違いますよね。とりあえず一つのタスクが快適に動いて、せいぜいバックグランドに2つくらい常駐させて切り替えてパッと使えればいいという程度なので、1GBでもそれほど困らないですよね。もちろんメモリを増やせるのなら、増やせた方がいいと思いますが、そういう仕組みにするとどうしてもサイズが大きくなっちゃうでしょうから。

私は、D4でVistaが思ったより快適に動くことに驚いたのだが、D4のヘビーユーザーである坪山氏も、パフォーマンスについては特に不満を持っていないようだ。もちろん、A4フルサイズのCore 2 Duo搭載ノートパソコンなどと比べると、パフォーマンスは見劣りするが、アプリケーションを同時にいくつも起動しないようにすれば、実用上十分な速度で動作するのだ。

Ver.Lは大容量バッテリーが同梱で約4.5時間駆動を実現

WILLCOM D4のような携帯性に優れた機器は、AC電源のない場所で使われることも多く、バッテリー駆動時間が重要になってくる。WILLCOM D4は、標準バッテリーパックと、標準の3倍の容量を持つ大容量バッテリーパックの2種類のバッテリーが用意されている。D4発売当初のモデルには標準バッテリーが同梱されていたが、標準バッテリーの駆動時間は約1.5時間であり、短すぎるという声も出ていた。

 また、当初のモデルでは、電源オフ時のバッテリー消費電力がやや大きく、電源をオフにしていても標準バッテリーで約20時間、大容量バッテリーで約60時間経過すると、バッテリーが空になってしまっていた。その後、電源オフ時の省電力機能を強化するサービスが無償で行われ、電源オフ時のバッテリー持続時間が標準バッテリーで約80時間、大容量バッテリーで約240時間と4倍も延びた。WILLCOM D4 Ver.Lは、大容量バッテリーが標準で同梱されているほか、電源オフ時の省電力機能もあらかじめ強化済みだ。大容量バッテリーなら、約4.5時間の駆動が可能であり、モバイルでの実用性が大きく向上した。


画像の大容量バッテリーが標準装備された「WILLCOM D4 Ver.L」は、4.5時間という、モバイル機器として水準以上のバッテリー駆動時間を達成している

石井Ver.Lでは、大容量バッテリーが標準で付いていて、Office 2007が省かれた分価格も下がり、非常にお買い得になっていると思います。こういう小さいデバイスだとAC電源のない外で使われることも多いと思いますが、標準バッテリーだと約1.5時間しか持たないとか、最初の頃は、電源オフ状態でのバッテリーの減りが大きいという問題があったと思うんですが、Ver.Lでは改善済みですよね。

早坂発売当初は、電源周りとかバッテリー周りでユーザーさんの問い合わせが多かったです。そうした問題をすべて払拭して、Ver.Lを出しました。Ver.Lでは、大容量バッテリーで約4.5時間もちますし、シャットダウン時の消費電力も大きく削減していますので、そのあたりは問題ありません。

石井ネットブックでは、駆動時間は約2.7時間とか、3時間以下の製品がほとんどですから、約4.5時間持てば十分合格点を付けられると思います。

早坂大容量バッテリーを付けても575gなので、それでも圧倒的に軽いんです。

坪山通信をしながらでも、3時間くらいは持ちますよね。

早坂カタログスペックでは約4.5時間ですが、ハードな使い方をすると3時間ちょっととなることもあります。

石井それでも新幹線で東京から大阪まで使えるわけですから。ACアダプタも比較的コンパクトで持ち歩きやすいですよね。

大容量バッテリー装着時の本体の厚さは約35.3mmとなり、やや厚い印象を受けるが、USBポートなどは高さが増して、かえって使いやすくなる。AC電源のないところであまり使わないという人は、大容量バッテリーの代わりに標準バッテリーを装着すれば、厚さが約25.9mmとスリムになり、重量も約460gまで軽減されるので、ユーザーの使い方に応じて選択すればよいだろう。

無線LANもBluetoothもワンセグも搭載

WILLCOM D4は、小さなボディに数多くの機能を詰め込んでいることも魅力だ。無線LANとBluetoothに加えて、ワンセグチューナーも搭載しており、ワンセグ放送の視聴も楽しめる。また、オプションのクレードルを装着すれば、外部ディスプレイ端子なども利用できるようになり、さらに拡張性がアップする。こうした拡張性の高さは、スマートフォンでは真似ができない、Windows Vistaを搭載したD4ならではの魅力だ。

石井D4は、機能的にも充実していると思います。スマートフォンでも最近は無線LANとかBluetoothを載せていたりしますが、D4ではさらにワンセグも搭載していますよね。全部入りという感じで。さらに、クレードルを付ければ外部ディプレイ端子やUSBポートが増えますよね。そのあたりは、PCアーキテクチャを採用しているからこそのメリットだと思います。スマートフォンだとデバイスドライバの問題があって、USBポートを備えているからといって、USB機器が何でもつながるわけじゃない。

早坂PCアーキテクチャの魅力というのは拡張性の部分だったり、互換性が高いということにあると思いますが、私たちはやはりケータイ会社なので、ケータイの良さをいかに詰め込めるかがポイントで、スマートフォンを今後どう進化させていくかという中で企画されたのがD4なんです。やはりスマートフォンを開発していくと、Windows Mobileではどうしてもパソコンとの違いが見え隠れする、ということを指摘するユーザーさんが意外に多かったんですよ。それで、より手軽にフルインターネットを楽しんだり、家のPCの環境をそのまま持ち出せるデバイスを企画してみようということで、D4を出させていただきました。

PHS機能を内蔵し、プッシュメールやリモートロックなどを実現

WILLCOM D4は、ネットブックや一般的なUMPCとは異なり、PHS機能を内蔵していることも大きなウリだ。PHS網はいわゆる無線WANの一種であり、特定のエリアでしか使えない無線LANとは異なり、いつでもどこでも気軽にインターネットに接続できることが特徴だ。また、メールのプッシュ受信やリモートロックを実現していることも、PHS内蔵ゆえの利点だといえる。

石井D4は、PHS機能を内蔵しているので、メールを自動的にプッシュで受け取れるのは、緊急性の高いメールを受け取る際に非常に便利ですね。それから、セキュリティ面についても、PHSを利用した遠隔地からのリモートロック機能なども、D4ならではのメリットだと思います。

早坂はい、D4は、通信機能を内蔵しているというのが、大きなポイントだと思います。ご指摘の通りパソコンでは、プル型で自分でメールを取りに行くのが普通ですが、D4ではW-SIMによる通信機能が内蔵されていますので、待ち受け状態ならメールも自動受信しますし、遠隔でメッセージを送れば、ロックもかけられます。時間はかかってしまいますけど、遠隔からハードディスクの消去もできます。

石井それなら、企業ソリューション用としても使いやすいですね。また、W-SIM対応ということで、より高速なW-SIMが登場すれば通信速度が速くなる可能性もあるわけですね。ウィルコムフォーラムなどでは、W-OAM typeGに対応した黒いW-SIMが展示されていましたが、それが出てくれば、W-OAM typeGのエリアでは何割か速くなりますよね。

早坂W-SIMの高速化も、もちろん進めております。それをどのタイミングで出せるかということですね。通信環境の利便性を上げていくことはできると思います。

石井公衆無線LANサービスもだいぶ拡充されたというか、マクドナルドとか、使えるところが増えてきてます。D4は、無線LANを内蔵していますので、そういうところでは無線LAN経由で接続することで、ブロードバンドというか、さらに高速に接続できますね。

早坂公衆無線LANもそうなんですけど、ご自宅で無線LAN環境を構築していて、自宅ではD4を無線LAN経由で使っているという方も非常に多くいらっしゃいます。

石井それは無線LAN内蔵のメリットですよね。いちいちLANケーブルを繋いだり、無線LANアダプタを使うのでは利便性が落ちますから。確かにWiiとかPLAYSTAION 3とかも無線LAN対応ですし、無線LANルータも低価格化していますので、ブロードバンド環境にしたら一緒に無線LANを導入するという家庭も増えていると思います。そういう環境で、寝室などで寝ころんでネットサーフィンをするとかっていうときに、D4はとても便利ですよね。

早坂パソコンだと、椅子に座って、ソファに座って、じゃあパソコンやるかっていうような感覚で使っていらっしゃると思うんですね。では、ケータイって、どうやって使っているかというと、お風呂の中で電話してみたりメールしてみたり、ベッドで寝転がってインターネットを見ていたり、非常に接する機会が多いんですよね。簡単に触れるっていうところがポイントだと思っていまして、D4も家のベッドで寝ころがりながらインターネットができたりとか、そういうところがウリにできると思います。

坪山縦にしても、横方向の解像度が十分にあるので、ポータルサイトを見たり、G-mailを使うときにも重宝しています。

早坂そうですね。私もD4で何を使うかというと、G-mailとかスケジュールとかを愛用しています。動画もそうですね。動画を入れておいて、移動中に再生して見たりとか、ポッドキャストじゃないんですけど、それに近いことができますので。

石井最近はiPodとかで動画を見ている人もいるんでしょうけど、やっぱりD4は画面が大きくて解像度も高いし、色々なコーデックに対応できるところもありますし、60GBのハードディスクも内蔵していますから。動画もたくさん入りますよね。スマートフォンでは、フルHD動画を見ようとすると厳しいですが、D4なら先ほど坪山さんに見せていただいたように、液晶も高精細で、フルHDならではの解像感がきちんと出ていますよね。

坪山ポータブルプレイヤーでは、動画をコンバートすることが前提になってますから、それだとケータイでもiPodと変わらなくなっちゃうんですよね。

石井D4では、デスクトップパソコンなりノートパソコンなり、Windowsパソコンで作成したファイルをそのまま閲覧できますし、いざとなれば編集することもできますしね。

坪山さっきの動画は、デスクトップパソコンや居間のテレビで見るために、テレビ放送を録画して自分でエンコードしたものです。普段は、ネットワークプレイヤーを使って、大画面テレビで見るためのデータをそのままD4にコピーして持ってくれば見られる。しかも解像度も高く、ハイビジョン感覚で見られます。D4は、立ったまま使えるフル機能を持ったPCであるというところがすごく重要ですね。ネットブックでは、立ったまま使うのは厳しいので。

石井PCって要するにパーソナルコンピュータの略ですが、D4は、よりパーソナルというか、個人に密着したというか、より生活に溶け込むような、どこでも相棒になる端末として可愛がれるという感じですね。

早坂できればさらに進化させていって、究極のモバイル端末にしたいと思っているんですよね。

D4は、最新技術を惜しげもなく投入した、現時点で最高のモバイル端末の一つといえる。PCという枠にとらわれず、さらに進化していくはずだ。
 たとえば11月下旬には、D4専用のカーナビソフトがインクリメントPからリリースされる。活用シーンがひろがり続けるD4の今後の展開が楽しみだ。


白熱した「D4」トークはまだまだ続く…詳しくはIT media +Dの記事をチェック!
石井 英男

ライター歴15年のベテランで、ハードウェア系記事やノートパソコンケータイ、スマートフォンなどのモバイル系記事を得意とする。最近は二足歩行ホビーロボットにも興味があり、ロボット系記事の執筆も行う。モットーは「正確で、誠実な文章を書くこと」。

坪山 博貴

PC、スマートフォン、ケータイ、AV機器などデジモノ全般を得意とするフリーランスライター。ウィルコムはDDIポケット時代からのユーザーで、現在は「新つなぎ放題」と「話し放題」を契約して、WILLCOM D4を使い倒している。

早坂 忍

株式会社ウィルコム スマートフォン企画室 課長補佐。 1998年、当時のDDI東北ポケット株式会社へ入社。ネットワーク建設でエリア設計を担当。2006年より、W-ZERO3シリーズの商品企画・開発を担当し、W-ZERO3[es]を世に送り出した。以降、スマートフォンおよびモバイルデータ通信市場の拡大に向けた商品/サービス企画を推進している。「WILLCOM D4」の開発においては、主に商品開発の面で関わっている。