今回はユーザーのみなさんがサイクロン式に感じている疑問を中心にお聞きしたいと思います。ここ数年、本当にサイクロン式が定着しましたよね。実際、売り上げにも表れているのでしょうか。
(千田氏)紙パック式とサイクロン式の売り上げを見ても、2012年度にほぼ5:5の割合になっています。2013年の見込みだと、サイクロン式がついに台数で上回る勢いがあります。もともと、東芝が国内掃除機第一号の「VC-A」を発売したのが1931年、世界初のマジックバッグ式である「VC-37HD」を発売したのが1963年です。ここから紙パック式の時代が長かったのですが、東芝が国内メーカー初のサイクロン式コードレスクリーナー(VC-J1X)を発売したのが2000年です。その後は全体で見ると徐々にサイクロン式の割合が増えて紙パック式の割合が減り、その他が登場しているという状況です。
なるほど、こうして伺うと、東芝は「国内第一号」など先駆けて新しいタイプを出すことが多いのですね。
(千田氏)はい、2005年には国内掃除機第一号の「VC-A」発売から75周年を記念するモデルとして「タイフーンロボ」の名称で「VC-75TC」を発売しました。これもフィルターの自動チリ落としの機能を付けた業界初のモデルでした。また、2010年に遠心分離方式の「トルネオ」1号機「VC-CG510X」の発売後、2012年3月にはサイクロン部フィルターレス方式の「トルネオW」(VC-SG711)を発売しています。
確か、タイフーンロボのあと、音の静かな「クワイエ」や、小さくて軽い「トルネオミニ」もありましたね。
(千田氏)はい、クワイエは音の静かな掃除機でしたが、その分本体重量が重く、ユーザー目線が足りなかったと反省したモデルです。その後「とにかく軽くていちばん使いやすいものを作ろう」と考えて誕生したのが2011年9月に発売した「トルネオミニ」なんです。おかげさまで大反響をいただき、サイクロンの構成比が上がってきました。そしてそれをさらにサイクロン部フィルターレスにしたのが現在のトルネオVです。トルネオミニ以降、好評の軽い本体と使い勝手の良さが東芝の特長として確立しています。開発も「より強力に」「より軽く小さく」「より掃除しやすく」を目指しています。
掃除機選びのときに「使い勝手の良さ」は確かに重視したいポイントですが、具体的にどんな機能に表れていますか。
(千田氏)使い勝手という意味では軽さに特化した点です。特に、カーボン素材を多く採用しているところだと思います。どこのメーカーよりも軽い延長管にしようとし、使い勝手を追求するためにも、グリップデザインを改善し、より負荷のかからないようにしました。「お掃除疲れをなくそう」を標語に、いかにユーザーの方のストレスを軽減していくのかを追求しています。
なるほど、ではその掃除のストレスというのは、どういうところを指しているのですか?
(千田氏)そうですね、掃除好きな方ってどれくらいいらっしゃるでしょうか? 嫌いな方の方が圧倒的に多いですよね。掃除が好きだという方も、掃除機をかけるのが好きなわけでなく、掃除をすることによってキレイになることが好きなんだと思います。掃除機をかけるのは、棚から出してくるのが面倒、コードを延ばしてコンセントに差すのが面倒、それぞれにストレスがあります。さらに、掃除中もイスをどける際の「邪魔だな」と思うストレスや、家具を傷つけるストレスなど、さまざまな場面でストレスがかかります。
確かに掃除機は「重くて面倒」というイメージがありますね。
(千田氏)実は掃除機は、手に持って扱う家電の中で一番重たいんです。冷蔵庫や洗濯機は置いて使うものですから。逆に言えば、ユーザーの方の満足度を上げるためには軽さが重要になるのだと思います。トルネオも軽さや持ちやすさなど、さまざまな視点で見直しをかけています。
(井上氏)掃除中のストレスでは、パワーブラシの改良もあります。パワーブラシが登場したころはまだバブルの時期で、家庭内に毛足の長いじゅうたんやカーペットが増えた時期でした。しかし、当時のブラシだとじゅうたんをかきむしってしまう。また、パワーブラシが吸い付いてしまうと重くなる。そうなると腰を“くの字型”に曲げることになり、ヘッドの操作が重いと不満に思われます。この重さの改善も日本のメーカーがやってきたストレスを軽減することの一環です。
確かに重すぎるとエクササイズしてるみたいですもんね。私も個人的にトルネオを使っていますが、ストレスはまったくありません。腕に力がかかってないと感じます。パワーブラシは本当に進化してると思います。つまり、掃除機選びの際は重さやパワーブラシの操作の軽さを重視すべきということですね。
(井上氏)さらに軽い掃除機をお求めの方には、トルネオではVC-S43がおすすめです。これは完全に掃除機本体を持って移動される方を想定して、軽さと小ささにこだわってデザインしました。本体重量が2.9kgで、サイクロン部にお手入れの面倒なフィルターが無いサイクロン式としては最軽量(※)です。
※2013年11月18日現在
いまフィルターレスの話が出ましたが、このフィルターレスかどうかもイメージがあやふやな人も多いと思うんです。
(井上氏)ユーザーの方はどちらも一緒にとらえられているかもしれませんね。簡単に言えば、フィルターの無いサイクロン式の場合はサイクロン部にお手入れの面倒なフィルターを搭載していませんので、物理的にメンテナンスがほとんど必要ないんです。そしてもちろん、目詰まりによる吸引力の低下が少ないというのがフィルターレスです。
(大嶋氏)トルネオも一部排気に関するフィルターがあるだけで、サイクロン部にはフィルターはありません。
(井上氏)サイクロン部にフィルターがある場合、メンテナンス後は購入時と比べて100%吸引力が戻るわけではありません。わずかに目詰まりが残ってしまいますし、逆に洗ったことで目詰まりの原因になることすらあります。プリーツフィルターに詰まった汚れが残ると逆に固まってしまうんです。
(大嶋氏)店頭で「メンテナンスがラクですよ」と言われてフィルターつきモデルを購入された方も、実際はやはりある程度お手入れしなければいけない。フィルターレスとフィルターつきの差が認知されていれば、そんなことも起こりません。そこはもっとアピールしたいですね。
確かにフィルターつきでもお手入れは各社だいぶラクになりましたが、やはりフィルターレスでお手入れが必要ないのは本当にラクですね。なぜ各社フィルターレスにしないのでしょうか。
(千田氏)実はフィルターレスに踏み切るには、やはり勇気が必要なんです。というのも、これまで掃除機選びの際にパワーを表すスペックとして使ってきた「吸込仕事率」が半分程度に落ちてしまう。実はこの数値が大きく変わっても、サイクロン式の場合はあまり使用感には影響しないのですが、実際にどう伝わるのか心配もありました。しかし今回は、ユーザーの使い勝手を最優先した結果、ユーザーのみなさんに直接使ってもらって、良さを実感してもらえばいいと思い切りました。
この吸込仕事率に関しては、いま本当に混沌としていますよね。
(千田氏)海外のメーカーはダストピックアップ率を基準にしていますからね。他社大手がフィルターレスのモデルを発表されないのは、たぶんこの吸込仕事率にこだわりがあるからだろうと思います。やろうと思ったらすぐに商品化できると思いますよ。
サイクロン式の場合、実は100W程度あれば十分普通の掃除機として能力的に問題ないと聞いたこともあります。ヘッドの作りでもまったく変わってきますし、サイクロン式の場合は、吸込仕事率よりもフィルターレスかどうかを重視した方が良さそうですね。
もうひとつ、最近やけにふとん専用クリーナーに人気がありますが、個人的にあまりメリットを感じないんです。実際に効果あるのでしょうか。
(井上氏)ゴミを吸う力で言うと、キャニスター型の掃除機の方がパワフルですから、ふとん用ブラシをつけて掃除をしてもらった方が効果的だと思います。ただ、ダニの死骸もふとんのゴミも、基本的に目には見えないものが多いので、ゴミがあるときはランプが点灯する「ゴミ残しまセンサー」で確認いただくと視覚的にわかりやすいと思います。東芝のふとん用ブラシは、1回転で16回、ビーズ状の大きなたたき玉でたたく仕組みで、かなり効果的ですよ。
なるほど。やっぱりそうですか。このふたつを組み合わせることで、ゴミ残しまセンサーの良さがグッとわかりやすくなりますね。使っていて安心感や達成感があるんです。掃除機をかけるのは面倒なものですから、なんらかのモチベーションを上げてくれるこの仕組みはいいですね。
(井上氏)VC-SG513の場合、6.5cmの高さがあればベッドやソファの下にも入り込むことができますので、暗くて見えない、直接目で確認できない場所を手元のゴミ残しまセンサーにより視認していただけます。また、高いところにも便利ですよ。VC-SG513のアタッチメントセットでエアコンと天井のすきま掃除をする場合も、手元のランプでキレイになったかどうかをチェックできます。このときグリップをハンドバッグのように腕に通すと、さらに片手がフリーにできるのでおすすめです。
なるほど! 思いつきませんでしたがすごく便利そうですね。早速やってみます。
トルネオのVC-SG513や、軽量タイプのVC-S43はずいぶんアタッチメントが多いですよね。最初からこれぐらいある方が、掃除機は便利に使えるんでしょうか。
(千田氏)実はこれまではこんなに付属するアタッチメントは多くありませんでした。今回は「家中まるごとお掃除」を少しでも実現するために必要だと考えました。年に1回しか使わないかもしれませんが、あってよかったと思われるものをセットしました。
私みたいに掃除が嫌いな人間でもかなり掃除をする気になるんです。うちは夫が掃除好きで、「トルネオ以外で掃除したくない」と言っています。やりたい掃除にぴったりなツールが必ずあるのがいいと。「家中まるごとお掃除」は確かに実感できました。アタッチメントも掃除機選びのポイントかもしれません。トルネオではゴミ残しまセンサーは1回慣れてしまうと戻れない機能ですね。本体が軽いVC-S43も魅力的ですけど、この機能が搭載されていないのがすごく残念です。
(千田氏)VC-S43は、軽さにこだわったモデルで、本体を手に持ったまま掃除される方の重量的な負担軽減と、タイヤが衣類に触れにくいよう、タイヤカバーをデザインしました。デザイン性ではスリムで凹凸の少ない側面なので、家具にあたってもすり抜けやすいよう配慮しています。VC-SG513でできるサイクロンの丸ごと水洗いも、コンパクトタイプのVC-S43は部品の点数が増えるので、対応していません。
「丸ごと水洗い」はあまり使用しないんですが、こまめにした方がいいんでしょうか。
(千田氏)いえ、正直言ってあまり水洗いする必要性はないですね。ただ、サイクロン式の性質上、細かいチリが目に見えるので、洗いたいという要望は多くいただきます。
なるほど。では将来的には、VC-S43が水洗いに対応し、ゴミ残しまセンサーを搭載したものを目指されるのでしょうか。
(千田氏)そうですね、今後ご期待ください。
操作が軽い自走式ブラシや、床、畳、じゅうたんといろいろな床面に対応する日本の掃除機は本当に使いやすいと思います。今後の進化にも期待します。