2013年11月から東芝の「家電コンシェルジュ」がスタートした。「外出先から冷蔵庫の中身がチェックできる」とか、「室温が上がりすぎるとエアコンから連絡が来る」といった他社とはちょっと違う便利さで注目されたが、どうやらかなり可能性を秘めたサービスのようだ。私が肩書きに“家電コンシェルジュ”と名乗って数年経つが、くしくも同じ名前のサービスが登場したことにも興味津々。東芝の家電コンシェルジュは具体的にどんなことができるのか、このサービスにはどんな可能性があるのか、話をうかがってみた。
2013年11月から東芝の「家電コンシェルジュ」がスタートした。「外出先から冷蔵庫の中身がチェックできる」とか、「室温が上がりすぎるとエアコンから連絡が来る」といった他社とはちょっと違う便利さで注目されたが、どうやらかなり可能性を秘めたサービスのようだ。私が肩書きに“家電コンシェルジュ”と名乗って数年経つが、くしくも同じ名前のサービスが登場したことにも興味津々。東芝の家電コンシェルジュは具体的にどんなことができるのか、このサービスにはどんな可能性があるのか、話をうかがってみた。
東芝の2013年冬の新製品である冷蔵庫「VEGETA(ベジータ)」は、発表会で驚かされた製品だった。冷蔵庫に「庫内カメラ」を取り付けることが可能で、外出先からカメラで庫内をチェックできるという。東芝の製品には昔から“初もの”が多いが、これも予想外の新機能だった。この機能を実現しているしくみである「家電コンシェルジュ」は冷蔵庫以外にもエアコンや洗濯機にも対応しているのだ。
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スマホで見た庫内カメラの映像。「卵あといくつかな」とか「牛乳あったっけ」という疑問に答えてくれる |
家電コンシェルジュは東芝ホームITシステム「FEMINITY(フェミニティ)※1」へ接続し、対応する家電と専用のホームゲートウェイをBluetooth®でつなぎ、スマホやタブレットで家電を操作できるというしくみ。
まずは気になった庫内カメラ対応のVEGETAについて東芝に聞いた。
『庫内カメラユニットは、冷蔵庫の冷蔵室のドアポケットに取り付けます。FEMINITYに加入いただくと外出先からスマホで冷蔵室の中身を確認できますから、食材の買い忘れや買いすぎを防げます。店頭で料理のメニューを考えるときにも便利ですよ』
実際に体験させてもらうと、本当にスマホで中身が見える。とうとう冷蔵庫にカメラが付いた! という驚き。まるで子どもの頃アニメで見た“未来の冷蔵庫”のようだ。
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庫内カメラユニットは上部の庫内のサイドポケットに取り付け可能 | 野菜室にも取り付け位置がある。こちらは1日1回定刻撮影 | 『正面からの画像を見ることで奥にあるものも思い出せたりします』との説明に納得 |
※1:FEMINITYの利用には「フェミニティ倶楽部」への登録が必要。登録料1,050円(税込)、月額利用料525円(税込)
『ほかにもエアコンであれば外出先からのエアコンのオン・オフ、温度設定などさまざまな操作ができますから、最寄り駅で運転を開始して、ドアを開けた瞬間から快適な温度の部屋にしておく、ということも簡単です。洗濯機も運転終了をタブレットやスマホにメール通知できますので、本体の終了音が聞こえなくても大丈夫です』とのこと。スマホ連携の便利さにワクワクさせられる!
この家電コンシェルジュの対応製品は、基本的には東芝の2013年冬の新製品である冷蔵庫「VEGETA(ベジータ) GR-G56FXV/GR-G51FXV」、エアコン「プラズマ空気清浄エアコン 大清快 GDRシリーズ」、ドラム式洗濯乾燥機「ヒートポンプドラム ZABOON(ザブーン) TW-Z96X1L/TW-Z96X1R」の3種類。サービスを利用するには、ホームゲートウェイ(HEM-GW13A※2)を自宅のブロードバンドルーターに接続し、各家電にはHAアダプタ(HNW-ADB1※3)を、冷蔵庫には庫内カメラユニット(HNW-RCB1※4)を取り付ける。
この家電コンシェルジュは東芝が以前から提供している東芝HEMSのサービスの一部。東芝の『家電コンシェルジュの開始で、このシステムの便利な部分を利用していただけるようになりました』という言葉通り、太陽光発電を導入していない戸建てやマンションなどでも家電機器のコントロールが身近になった形だ。これまで一部の人だけが使っていたシステムが、より開かれたサービスになったわけだ。
また、家電コンシェルジュの一部のサービスにはなるが、液晶テレビレグザのクラウドサービス「TimeOn」※5にも対応し、より手軽にスマート家電の魅力を体験できる。
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エアコンは2004年に発売されたモデルからすでに対応しているだけあって、運転モードや温度管理などできることが多い | エアコンの場合、HAアダプタは右奥に取り付ける。内部なので専門業者による取り付けが必要だ |
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洗濯機は運転状況のお知らせのほか、衣類の種類や洗い方で運転の設定ができる | 最新モデルではタッチ式になっている東芝の洗濯機。操作しやすく工夫されている。家電コンシェルジュのようにアドバイスをもらいながら設定できるとさらに便利 |
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東芝レグザで利用できるレグザクラウドサービス「TimeOn(タイムオン)」からも家電コンシェルジュの一部のサービスが利用ができる |
※2:HEM-GW13A 希望小売価格 31,500円(税込)
※3:HNW-ADB1 希望小売価格 9,800円(税込)
※4:HNW-RCB1 希望小売価格 19,800円(税込)
※5:Z8シリーズ、J8シリーズ
それ以外にも、印象的だったのがいわゆるプッシュ型のサービスだ。『エアコンには、部屋の温度が32℃以上になるとメールでお知らせが届く「見守りサポート」の機能があります。洗濯機の場合も排水フィルターの詰まりなどをメールで知らせる「故障予知機能」を搭載しています。これは、洗濯機だけでなく冷蔵庫やエアコンにも搭載しています。大型家電は修理にも持ち込みにくいですし、一日でも止まってしまうと困ってしまいますよね。この故障予知機能では、なるべく故障する前に原因を取り除き、適切なメンテナンスを促しますので、より家電を快適に長く使っていただける効果があります。また、ユーザーの方でメンテナンスできない故障であれば、PCやタブレットから直接修理センターに修理を依頼していただけるのも便利な点です』と説明を受けて、「家電コンシェルジュ」の名称に納得がいった。外出先からの家電のコントロールができるという点で使い勝手が大幅に便利になるため、そこに気をとられていたが、このプッシュ型サービスこそが、ほかと違う家電コンシェルジュらしい特長と言えそうだ。
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冷蔵庫「VEGETA」、エアコン「大清快」、洗濯乾燥機「ZABOON」の最新モデルが家電コンシェルジュに対応。ホームゲートウェイとHAアダプタとの間で、Bluetooth®による通信を行う |
当初、失礼ながら家電コンシェルジュのしくみを発表会で聞いたときにはわからない部分も多かったが、説明を受けてどういうものかはだいぶ見えてきた。家電がインターネットにつながる例が増えてきて、家電を外出先や室内の離れたところからスマホでコントロールすることに違和感はなくなってきている。そんな現在の「家電との快適なつきあい方」を提案してくれているサービスなのだ。
最初に説明したとおり、家電コンシェルジュは家電とスマホだけあればいいというシンプルなものではない。導入するには少し手間がかかるが、一度導入すると、確かに「小さな家電のコンシェルジュさん」が常駐してくれるようなしくみができあがる。「ちょっと部屋が暑すぎてワンちゃんがへばってるよ」とか、「そろそろ洗濯機の糸くずを取ってください」とか、「なんだか冷蔵庫の冷えが悪いから修理依頼したほうがいいよ」とつっこんでくれる。そう思うと愛着が沸いてくる。
冷蔵庫も庫内が確認できるといっても、本当ならもっと360°ぐるぐる回して3Dですべての庫内を見回したいぐらいだが、カメラからの庫内の写りはいまでもかなり広角だし、食材の一部でも見えると「そういえばアレがあった」と思い出せる。実際、そういう使い方をするためのツールなのだそうだ。となると、“じゃがいもが2個とニンジンが1個と豚肉が200gあるので今晩はカレーにしてはどうですか。近所のスーパーでカレールーが安売りになってますよ”と提案しつつ、レシピサイトのおすすめレシピを表示するぐらいまで進化してくるとすごいな、などと夢見てしまう。
現在の家電コンシェルジュは、まだ東芝が実現させたい大きな夢の入り口なのだろうなと感じる。なんだか“いますぐさわれる、家電の未来”のようなイメージだ。いまは先取り機能ではあるものの、それでも十分に便利で、少し先の未来への期待でワクワクさせてくれる家電コンシェルジュの今後の展開に期待したい。
福武書店、サンケイリビング新聞社勤務を経て、フリーランス・ライターに転身。マーケティング会社での企画・広報などを兼務した後、顧客視点アドバイザー&家電コンシェルジュとして独立し、2008年に株式会社神原サリー事務所を設立。
「企業の思いを生活者に伝え、生活者の願いを企業に伝える」ことをモットーに顧客視点でのマーケティングを提案している。