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海洋冒険物の巨匠 小澤氏の作品を「08小隊」の飯田氏がアレンジ!骨太の人間ドラマと胸の空くようなメカシーンを堪能できる作品
週に100本も放送されているアニメのなかでも際だつ注目の作品
 現在、地上波アナログ、BSアナログで放送されているアニメの数は、一週間で100本を楽に超えている。本数が多ければそれでいいかといえば、そうでもない。いまや萌えの花が咲き乱れる“萌え元禄時代”だ。それも悪くないが、メカ&ドラマ重視でキャラは二の次、という筆者の偏った嗜好にマッチする作品は少なくなってきた。

 ただ、新しいアニメ探しを辞めているわけではない。テレビ番組の改編期には、家にある10台近いHDD&DVDレコーダーをフル稼働して、新番組を片っ端から録画。その後、初回をチェックしてお気に入りを見つけようと努力はしている。しかしこれがなかなか難しい。自分の好みにはそぐわない番組が多いのだ。次週のストーリーに気を揉みながら、一週間を過ごせるような、アニメはないのだろうか…そんな矢先に見つけた作品がこの「タイドライン・ブルー」だ。

潜水艦の中から小型の水中作業艇が出てくるなど、小澤作品らしいギミックが満載。
各話の最後には謎の人工衛星が登場する。これの正体が気になって仕方がない。
海洋冒険物の巨匠 小澤氏の作品を「08小隊」の飯田氏がアレンジ!
 タイドライン・ブルーとは「青の6号」「サブマリン707」で知られる小澤さとる氏と、「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」の監督で知られる飯田馬之介氏が共同で原作を作り上げた、アニメ専用のオリジナル作品。ちなみに飯田氏は作品全体の監督でもある。

 コミックのアニメ化が主流の昨今において、オリジナル作品というのは貴重だ。オリジナル作品は、翌週までその内容が分からないということに魅力がある。原作物のように、佳境に入ってくると、その先が知りたくてマンガ喫茶に駆け込んでしまう、そんなことはできないのだ。「次週はどうなる?」そんな「宇宙家族ロビンソン」的な「to be continued・・・」を久々に味わえるわけだ。

 本作の内容は「海洋冒険物」の巨匠 小澤氏が関わるということで、潜水艦が中心だ。攻撃型原潜とミサイル原潜をくっつけた、現実ではあり得ない最強の潜水艦「ユリシーズ」が登場する。

 このところ劇場作品では「ローレライ」、「亡国のイージス」と海洋冒険物が目白押しで、年末には「男たちの大和」が控えている。本作はそんな時代にマッチしている。

 時代設定は、「ハンマー・オブ・エデン(エデンの鉄槌)」という、天変地異により、陸上の90%と一緒に60億の人類までもが消滅した地球。ハンマー・オブ・エデンについて、現時点で詳細は明らかになっていないが、水の惑星と地球がニアミスを起したことが原因で、地球の水位が上昇したものと思われる。いわゆる限られた陸地でしか人が生活できない“ウォーターワールド”で物語は進む。

グールドが艦長を務める米国の戦略潜水艦「ユリシーズ」。核ミサイルで地上を攻撃できる戦略原潜の下部に、小型潜航艇の格納庫に改造された攻撃型原潜を接続
魏の国が所有する攻撃型原潜「漢 Han」は無音潜航とロケット魚雷でユリシーズを狙う

主人公キールが暮らす「ヤビツ」の町。山の上に乗っかった空母の原子炉を使い町へ電力を供給している。周辺はハンマー・オブ・エデンにより水没している
最近の海洋冒険物には欠かせないイージス艦が本作にも登場。毎回ユリシーズを追いつめる宿敵だ
1話でヒロインが出産?驚きのスタート
 物語の主人公は別々の環境で育てられた14才の双子のキールとティーンだ。キールは新国連の事務総長アオイに奔放に育てられ、直情的な感情を抑えきれない破天荒タイプ。一方、兄のティーンは軍人のグールドに、幼い頃から軍人として育てられた優等生。幼少期は一緒に暮らしていた二人だが、ある出来事を機に生き別れとなり、別々に暮らすことになった。

 ティーンの育ての親であるグールドは米国海軍戦略潜水艦ユリシーズの艦長でありながら、アオイが代表を務める新国連を含む全世界に向けて宣戦布告をする。そして開戦。突然の戦火に巻き込まれたキールは、思いを寄せる未婚の妊婦イスラを連れて逃げようとするが、イスラの出産が始まり逃げ遅れてしまう。出産のピンチを救ったのが、新国連に宣戦布告を告げにやってきた双子の兄ティーン。医学の知識を備えるティーンの活躍でイスラは無事に出産を終える。ティーンの協力によりキールとイスラはグールドが待つユリシーズに乗り込み物語は動き始める。これが第一話の大まかなあらすじだ。

ヤビツの町でいかさまギャンブルなどに興じる主人公キール
新国連の事務総長アオイはキールの育ての親でもある。飯田監督曰く「子育てに失敗したキャリア官僚」という設定らしい

軍人として育てられた双子の兄ティーン。14才とは思えないほど冷静沈着。ユリシーズ艦長グールドの副官でもある
ユリシーズの艦長グールドはティーンの育ての親。顔には深い傷とともに悲しい思い出が刻まれている

大恋愛を経て妊娠し、シングルマザーとなったヒロインのイスラ。ちなみに16才! いきなり臨月姿で登場し、視聴者の度肝を抜いた。ユリシーズからの攻撃のさなか産気づき、男の子を出産することに。破天荒なようだが、人間ドラマを書ききろうという制作サイドの覚悟が伺えるシーンだ
初期の宮崎作品を思わせる作画も見どころ
 映像には「カリオストロの城」や「未来少年コナン」のような、初期の宮崎駿作品のようなほんわかとした雰囲気がある。海洋冒険物ということで、主人公たちが乗り込む潜水艦ユリシーズと敵対するイージス艦などの派手なドンパチを期待していた。確かにメカ好きが喜ぶ見せ場はあるが、それよりも人間ドラマに引き込まれてしまう。

 自分のしたいように振る舞うキールと、親代わりのグールドに認めてもらおうと、自分の感情を押し殺すティーン。何となくいまどきの子供を重ねてしまうのは筆者だけではないだろう。そして親の世代は、子育てに頭を悩ませるグールドとアオイに共感できるかもしれない。何となくだが「親と子」、「世代」、「国家」とそれぞれの反発と調和を考えさせられる作品ではないかと感じている。そんなテーマを考えると親子で楽しめる名作なんじゃないかと思えるのだが…放送時間が深夜なので、録画でもしない限り視聴は難しいのが残念だ。

グールドに対して常に忠実であろうとするジョゼ。凛とした性格のちょっとした隙にかいま見えるけなげさに、すでに多くのファンを獲得か!?
兵員輸送用ヘリコプター。どことなく「未来少年コナン」を思わせる懐かしいデザインだ

登場するキャラには人間臭さや体温を感じる
テレビ放送は不定期に近かった! 名作ながらも知名度は低い?
 本作はテレビ朝日系列で7月6日(毎週水曜深夜)からスタートしている。しかし途中、「世界水泳」や「東アジアサッカー選手権」の放送などにより、休止や番組の時間変更が発生した。正直、本気で見ようと思わない限り、番組を連続して視聴することは難しかった。8月25日現在では、テレビ朝日系列で6話まで放送済み。テレビ放送は全12話なので、物語は佳境へと向かおうとしている。8月11日からはスカパー!のキッズステーションでも放送が始まっている。もしスカパー!を視聴できる環境にあるなら、チェックしてほしい。

 これから本作をガッツリ楽しみたいなら、10月28日から発売されるセルDVDの発売を待つしかないようだ。全編ハイビジョン撮影されている本作の映像クオリティはDVDでこそ真価を発揮すると言っても過言ではないだろう。ユリシーズを始めとする原潜をすべてフルCGで描く海中シーンを大画面テレビで見れば迫力は満点だろう。さらに潜水艦物といえば、ソナーや潜水時の軋み音など、聞き所はたくさんある。

 DVDは全7巻。第一巻のみ1話収録で3,999円。特典映像としてテーマ曲のミュージッククリップやオープニング曲を歌う栗林みな実さん、エンディング曲を歌う鈴木達央さんのインタビューが収録される。2巻以降は2話ずつ収録し各巻5,777円で毎月発売される予定だ。最終巻にはテレビ放送後の話を描いた13話が収録される。
骨太のドラマを楽しみたければDVDを買うべし!
 本作品はいまどきのアニメには珍しく、人間ドラマを描ききろうとしている。主人公のキャラクターだけを見ると、いまどきのアニメ風なので、敬遠する人もいるかもしれないが、「未来少年コナン」、「ふしぎの海のナディア」などの作品に“ビビッ”ときてしまう向きには、ぜひチェックしていただきたい。

 前述したとおり変則的な放送時間により、本放送を見逃した人も多いはずだ。「タイドライン・ブルー」は全13話の中に、これでもかと、ドラマやエピソードが詰まっている。それだけに骨太の人間ドラマを味わうように楽しみたいなら“買い”の作品だ。

 余談だが、今回記事を執筆するにあたり、プロデューサーの杉山氏から最終回の内容を(残念ながら…)伺ってしまった。その際、打ち合わせ中にもかかわらず、目頭が熱くなり、危うく、仕事を忘れて涙を落とすところだった。さて、筆者の涙腺が元日テレの徳光氏並にゆるくなったのか、それとも作品の力なのか、放送後の皆さんの反応が楽しみなところだ。


Text by 鈴木桂水

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