カメラを持ち歩くときは、レンズの選択はその目的によって違う。気楽な旅をしたければできるだけコンパクトなレンズにしたくなる。しかし写真を撮ることも目的の一つなら、それなりの性能が要求されてくる。「A005」はこのクラスでは高性能でコンパクトと望遠系はこの1本で十分そうだ。
この「Model A005」は12群17枚のレンズ構成で、新規開発したレンズ設計と、特殊硝材XLD(Extra Low Dispersion)レンズを導入することで高コントラストでシャープな画質を実現しているという。また、タムロン初の超音波モーター「USD(Ultrasonic Silent Drive)」を搭載して素早いピント合わせが可能だ。70mmから300mmまでピントを合焦するのに手間がかかることはなくスムーズに動作してくれる。
この二つの特記すべき性能は、レンズ価格が10万円を軽く超す高級レンズに搭載されている性能と同じだ。
もう一つ忘れてはいけないタムロン独自開発の“手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」”を搭載している。この手ぶれ補正機構は、まずレンズ内にあるジャイロがブレを感知しそのブレ幅を駆動コイルに伝える。駆動コイルは3つあり、3つのスチールボールを介して手ブレ補正レンズ(VCレンズ)を電磁的に駆動させるものだ。すでに搭載されている18 -270mm[B003]、28-300mm[A20]、17-50mm[B005] によって実証済みだ。使用してみると「VC」をONにすれば、ファインダー内の被写体は手から伝わる細かい振動によるブレはほとんどなく、望遠での撮影時に被写体があまりブレないのでフレーミングしやすくなる。
では実際に手ぶれの限界を見てみる。室内にある時計を「VC」スイッチをONで3回、OFFで3回ずつ撮影してみた。シャッタースピード1/8、絞りをF8に固定。持つ手は通常通り両手でしっかり構えている。
70mm シャッタースピード 1/8
VC-ON
VC-OFF
300mm シャッタースピード 1/8
VC-ON
VC-OFF
さすがに300mmでの撮影では手ブレ補正ONでもややブレが見られるが、1カットはしっかり止まっている。それに比べOFFでは2枚が酷いブレになってしまっている。また70mmでは手ブレ補正ONは3枚とも止まり、OFFでは3枚ともブレてしまっている。
このテストを条件を変えて試してみたところ、私は300mmでは1/8、70mmでは1/4でのシャッタースピードで撮影可能だった(限界値に近いシャッタースピードで撮る場合は、しっかり構えて数枚撮れば必ず完璧な写真が撮れる。なお使用者や条件によってシャッタースピードの限界は違うので、いろいろ試して自分の限界を掴んでいると良い作品作りに役立つだろう)。
細かく強く振りながらの撮影実験 シャッタースピード 1/8
下の写真はまた縦方向や横方向に小さな振動を与えながら撮影したところ、シャッタースピード1/8で「VC」OFFでは酷いブレだが、ONでは微かなブレが止まり、等倍で見ない限りわからない範囲であった。これならば三脚を持ち歩かなくても良さそうだ。
ズームしても安定した画質
70mmと300mmでの写る範囲を確認してみる。
デジタル一眼レフカメラにも動画撮影機能が付加されるようになってきた。私のニコンD90やキヤノンEOS 5D Mark2にもあり、使ってみると従来のビデオカメラとも違う感覚で撮れてこれまた楽しい。「A005」を使ってみるとどうであろうか。手ブレ補正「VC」があるから望遠での動画が手持ちでもできそうだ。
※プレイヤーで再生可能な動画は低解像度のダイジェスト版となっています。
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ペットを撮る
身近な被写体となると家族やペットだろう。「A005」が手元にあると普段の思いがけないシーンを撮ることができる。広角系ズームと合わせて用意するとよいだろう。
高原の花を撮る
これから写真撮影を学びたい人はまず花で練習するといいだろう。フレーミングでの絵作りから始まり、背景をボカしたり、風による被写体ブレと戦ったりとよい被写体になる。
緑を撮る
今回の撮影は夏の終わりと一番緑が濃すぎて絵にしづらい季節だった。そのため逆光で葉に光が透過して美しく輝いた葉を主に撮ってみた。
水辺の撮影
海や湖そして小さな池でも季節や天気によっていろいろな表情を見せてくれる。とくに天気が良いと水の色が鮮やかになったり、映り込みが綺麗だったりと撮影が楽しくなる。
動物園で動物を撮る
群馬サファリパークで許可を得て動物を撮ってみた。サファリパークは車の窓は開けられないので、入園前に窓をよく拭いておくことが必要だ。UVカットの窓だとやや色が違ってしまうが、RAW現像時に色補正をしてやるとよい。
※撮影協力:群馬サファリパーク http://www.safari.co.jp/
今回、「A005」を使用しての感想は、初めてファインダーを覗いた時にピタッとすいつくような手ブレ補正「VC」で画面構成がしやすかったのに驚いた。そして、安定したファインダーで被写体を観察しながら撮影できることは新鮮であった。出来上がった作品を見ると、コントラストのしっかりとした絵作りは特殊硝材XLD(Extra Low Dispersion)レンズのおかげかもしれない。
この70-300mmというズーム幅は日常のあらゆるシーンで活躍するだろうし、高性能な手ブレ補正「VC」と容易なピント合わせを実現した超音波モーター「USD」を装備した「A005」はとにかく「便利」で「楽」。そんな感じであった。タムロン創業60周年記念モデルだけあって、そうとう気合が入っているレンズだと感じた。
雑誌、広告等の仕事の傍ら、ライフワークとして自然や癒される空間を求めて国内外を旅している。 撮影対象はICチップからアフリカ象まで幅広い。デジタルカメラは1995年からコンパクトからプロ機までテストレビューに携わる。 自宅ではフェレットをこよなく愛し、我が家で生まれた5匹と暮らす。
いつかフェレットの写真集を出そうと企み中。HPは http://homepage2.nifty.com/nao-w/
デジタルカメラマガジン2010年11月号(10月20日売)ではタムロンのSP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD (Model A005)で撮影した作例と共にカメラマン製品レビューを行います 。
またGANREF(http://ganref.jp/)では選定されたGANREFユーザー6人によるタムロンのSP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD (Model A005)を使ったモニター企画を10月中旬から実施いたします。詳細についてはGANREFにてご確認ください。