パイオニアから最新BD/DVD/CDライター「BDR-S08J」が発売される。今回発売されるこの光学ドライブは、何と最大で15倍速の書き込みにスピードアップ。また、nasneからネットワーク経由でBlu-rayメディアにテレビ番組を書き込むこともできるようになった「DiXiM BD Burner 2013 for pioneer」が付属しているのもポイントだろう。もちろん、Blu-ray、DVD、CD、すべてのメディアで高品質な読み書きを実現するパイオニア品質は健在。今回は本機の特徴や、いたれりつくせりの内部機構などを見ていこう。
徹底的な防振対策が
高速&高品質な記録速度を実現する
BDR-S08Jはパイオニアの最新BD/DVD/CDライターだ。他メーカーの製品と比べると少し高価な印象のあるパイオニアの光学ドライブだが、その書き込み品質や静音性により高い評価を受けており、安価な光学ドライブが氾濫する市場でも人気を博している。BDR-S08Jは、そんなパイオニアが市場に送り出す新しい光学ドライブで、品質を高めるために努力を惜しまないパイオニアDNAの詰まった製品だ。
なんといっても、11月28日時点では業界最速となる最大15倍速のBD-Rへの書き込みを実現した高速なBlu-rayドライブとなっている。ちなみに前モデルである「BDR-S07J」の最大記録速度は12倍速。12倍速の実現の時点で、速度はほぼ限界に来ていると思われていたが、BDR-S08Jで高精度な書き込み性能はそのままに、その壁を破って15倍速を実現している。 高精度を維持しつつ、この速度を達成するために、さまざまな工夫がされている。
そのひとつが、前モデルをさらに上回る、徹底的なディスク安定化対策だ。
パイオニアのドライブといえば、ディスクの回転により発生する風を利用して、ディスクを上部から抑え込み、安定化をはかるエアフロー制御が特長のひとつだ。
今回のモデルではそれに加えて、セットされたディスクを上から固定する「クランバー」と呼ばれるパーツを新開発。ディスク回転時の安定性を向上させることで、15倍速の高速回転時でも高精度なディスク記録を実現している。
クランバーにあわせて上部のカバーも新設計 |
各機構の新設計によりBD15倍速記録が実現されたことで、ユーザーにとってはディスク書き込み時間の短縮という直接的なメリットがあるが、副次的なメリットとして、BD15倍速記録時以外の安定性も高められている。その恩恵はBD記録にとどまらず、DVD、CDなど、すべての対応メディアでの読み書きで享受できる。「光学メディアの読み込み/書き込み」において、現状最高精度を実現したドライブが「BDR-S08J」だといえるだろう。
さて、上述の工夫は、主に書き込み精度を高めるためのものだが、この防振の効果が実はさまざまなメリットを生み出している。その一つが静音性だ。共振によるビビり音や、ディスクの回転で生まれる風切り音の防止。また密閉性が高いことから音漏れの防止にもなっている。エアフローによって、機器全体が効率よく冷却される効果もある。メディアへの書き込み精度は温度が高いと低下するというのは、光学メディアに少し知識があれば知っている人も多いが、冷却によって温度の上昇を抑える働きもあるのだ。
そして、密閉性を高めることによって生まれるのが防塵効果だ。精密な読み書きを行なうために、機器の中へのホコリの混入を極力避けているのだ。
パイオニアの純正ドライブといえば、細部にいたるまで徹底的に敷き詰められたスポンジやラバーパーツ、穴という穴をふさぐ厳重なシールなど、防音、防塵への徹底した対処もよく知られているが、今回のモデルはそれらの位置の調整や、各所の密閉化とパッドの最適化をおこない、さらなる防塵・防音性能の向上を目指している。
このように高精度な作りのBDR-S08Jは、日本国内にある十和田パイオニアの工場で生産されている。筆者は2009年に、この十和田パイオニアを見学させていただいたことがあるが、徹底的な品質管理体制から生まれる製品は、まさにメイドインジャパン・クオリティ!といえよう。環境対策として、外袋に、自然に帰るプラスチックを採用していたり、細部にも手を抜かない姿勢が貫かれている。
十和田パイオニア |
クリーンルームの生産ラインの様子 |
最終検査は、とても静かな場所で行い、静音を丁寧にチェックしている |
高精度を支える高い技能 |
また、ファームウェア面での工夫も忘れてはいけない。パイオニアでは長年のデータの蓄積と絶え間ない努力で、多種多様なメディアごとに最適な書き込み方法を常に模索している。BDR-S08Jに搭載されたファームウェアには、このデータベースが含まれており、メーカーや生産国によって異なるディスクメディアの特性に合わせた、最適な書き込みや読み出しを行なう仕組みになっている。
最大128GBのBDLXへの対応もトピックだ。書き込み可能なBlu-rayには容量の違ういくつかのメディアがあり、約25GBのBD-R(1層)や約50GBのBD-R(2層)のほか、BD-R XL規格では3層で100GB、4層では128GBのデータを記録することができる。データ個別のバックアップはもちろん、いまや主流になりつつある100GBクラスのSSDにインストールしたシステムを、まるごとイメージ化してバックアップすることもできる容量だ。付属ソフトのPower2Go 7 for PureReadには、光学メディアにバックアップを行なう際に、容量に応じて分割処理をしてくれる機能もあるので、バックアップの手間も低減してくれる。
もちろん、音楽CDを読み取る際に「原音」のクオリティを再現する「PureRead3+」、ピーク消費電力を抑える「PEAK POWER REDUCER」といった、前モデルからの好評機能は引き続き搭載されている。
基本機能の強化だけでなく、販売店やユーザーの要望にこたえる、細かな使い勝手のブラッシュアップも継続しておこなわれている。たとえば、挿入されたディスクの種類や状態、ドライブ内部の温度などを確認することができる「ドライブステイタス」。記録されたコンテンツ再生時に、それが映像か音楽か等、種類を見分けて自動的に速度を調整し、極力静音化する「アドバンスド静音機能」。さらに、映像ソフト再生時にめざわりなベゼルのLED点灯を抑制する「LED消灯機能」も新規に追加されている。
それらの機能は付属の「パイオニアBDドライブユーティリティ」から有効化できる。ほかにも消費電力を抑える設定も用意されており、低消費電力を目的に作成した自作PCなどで使いたい機能だ。パイオニア製ドライブを使いこなすなら、是非とも活用したいツールだ。
パイオニア謹製のドライブユーティリティではドライブの動作をカスタマイズ可能
レッツ分解!
こだわりの内部をチェック
さて、今回はBDR-S08Jの実機をお借りすることができたので、分解してその構造の秘密を暴いていこう。内部の写真を見てもらえば、非常に細かいところまで手の入った製品であることがわかるはずだ。
パイオニアの特徴とも言える大型ベゼル。写真はラバーブラックで艶消しの黒だが、クリアホワイトや光沢のあるピアノブラックなどが用意されている。 |
ハニカム部分やエアフロー制御のための凹部分など、特徴的な形状のシャーシ上面 |
シャーシにある、不必要なスキマはシールによりふさがれている。内部のエアフローを最大に活かすための工夫だ。 |
ハチの巣のようなへこみはハニカム構造と呼ばれており、主にシャーシの強度を高めるために採用されている。 |
ひととおり分解してみた。 |
各部には制振用のスポンジがしきつめられている |
Blu-ray、DVD、CD、すべてにわたって高品質な読み書きを実現する光学ピックアップ |
上部から円盤を抑え込む「クランバー」は新設計。ディスク回転時の安定性を向上させる効果がある。地味ではあるが、15倍速記録を実現した陰の立役者だ |
フロントベゼル部分の裏面にもスポンジが付けられている。トレイと接触する部分にも、細いゴムが装着されており、前モデルと比べてもさらなる密閉化が図られているという |
トレイ部分にもいたる所に穴やスリットが見える。これもエアフローの制御のために設けられた工夫だ。 |
制御基盤上のチップとシャーシ蓋は一部接触するようになっている。シャーシ全体でチップを放熱するつくり |
バンドルソフトはWindows 8に対応。
最新環境でも購入に不安はない
さて、Blu-rayドライブの使い勝手はソフトウェアしだいと言うところもあるため、付属ユーティリティについては読者諸氏も気になるところだろう。また、今回発売となったBDR-S08Jの目玉機能とも言えるnasneからのBD録画が可能なユーティリティも用意されている。
さらに、Windows 8にも正式に対応をうたっており、新環境でも安心して購入に踏み切ることができるだろう。
それでは、それらの付属ユーティリティを紹介していこう。
DiXiM BD Burner 2013 for pioneer
DigiOn社で製作された光学メディア書き込み用ユーティリティ。LANなどのホームネットワーク経由で、家庭用録画機器で録画した番組をBlu-ray Discに書き込むことができる。本機に付属する最新版のDiXiM BD Burner 2013 for pioneerでは、今までできなかったnasneからの書き込みも可能になったのが大きな話題になっている。
DiXiM BD Burnerは今までも家庭用録画機器からの書き込みをすることができたが、その方式によって、使用できる機器に制約があったのも事実だ。もうちょっと細かく言うと、従来はアップロード型ムーブに対応した機器しか使えなかったため、ダウンロード型ムーブという方式を採用するnasneでは利用することができなかったのだ。今回、DiXiM BD Burnerはダウンロード型ムーブに対応したため、nasneからの書き込みを行なえるようになった。また、今まで対応していなかった機器も対応したものが多い。15倍速書き込みと同様、魅力的な機能と言えるだろう。
PowerDVD10
PowerDVDは、PCでのDVD視聴黎明期から視聴ソフトを作り続けている老舗のCyberLinkのメディアプレイヤーだ。PowerDVD10では、Blu-rayディスクのコンテンツ再生はもちろん、Blu-ray 3Dの再生にも対応している。
また、2D映像を3D映像に変換する機能もあるため、2Dコンテンツを3Dで楽しむことも可能だ。通常のメディアプレイヤーとしての使い勝手も、長年の蓄積から使いやすいソフトだが、3D対応モニタやテレビを持っていれば、さらに魅力のあるユーティリティだ。
PowerDirector 9
PowerDirector 9もPowerDVD同様にCyberLinkの販売する動画編集ソフト。最近では軽量化されたフルHDビデオカメラが購入しやすい価格帯に落ち着いており、所有している読者も多いのではないかと思う。かく言う筆者も1年ほど前にビデオカメラを購入し現在にいたっている。今はデジカメやスマートフォンでもHD動画を撮れる機種が多くあり、日常的に動画撮影を楽しんでいるユーザーも多だろう。
たまった動画ファイルをどのように残すかは人それぞれだが、場合によっては家庭用のBlu-rayやDVDデッキなどで再生できるよう、光学メディアに書き込みたいシーンも出てくるだろう。筆者の場合、ビデオカメラの購入のきっかけは、やはり子供が生まれたことだ。そうなると、自分や妻の両親に見せられる形で光学メディアへの書き込みを余儀なくされる(笑)。もちろんその際にはある程度見栄えがよいように、動画の編集などを行なうが、そんなときに活躍するのがPowerDirector 9だ。必要なシーンを選んでつなげたり、テロップを入れたり、シーンのつなぎ目にエフェクトを加えたりといった操作を行なえる。写真などの静止画からフォトムービーを作成することも可能だ。
PowerProducer 5
PowerProducer 5はBD-MVやAVCHDに対応したCyberLinkのオーサリングソフト。オーサリングソフトとは、動画などのファイルを家庭用のBlu-rayプレイヤーやDVDプレイヤーで見られる形式に変換し光学メディアに書き込みを行なうソフトのことだ。キャプチャごとのシーンを切り取って自動的にメニュー画面を作成してくれる機能なども付いており、慣れていなくても見栄えがよく使い勝手がよい編集を行なうことができる。
また、BDXLに対応しているため、通常のBD-RやBD-R DLなどよりも容量の大きな書き込みもできるのが特徴。BDXLに対応したBDR-S08Jにピッタリのオーサリングソフトだ。
InstantBurn 5
光学メディアへの書き込みを簡略化することが目的で使われるのがInstantBurn 5だ。通常、光学メディアへの書き込みはPower2Goのようなライティングソフトを使って行なうのだが、Instant Burnをインストールしておけば、ライティング用の専用ユーティリティを使わなくても、WIndowsのエクスプローラーでメディアへの書き込みを行なうことができるようになる。
また、BD-REなどの読み書きだけでなく消去もできるメディアでは、通常のHDDやSSDのように、ドラッグ&ドロップで単体のファイルや複数のファイルを操作することができるようになる。
光学メディアはストレージのように使いたい人は、あると便利な機能だろう。
このように、BDR-S08Jには、本機の性能をフルに引き出すことのできるソフトウェアが用意されている。上記で紹介したユーティリティ以外にも、BDR-S08Jで利用できるすべてのメディアに対応したライティングソフトの「Power2Go 7 for PureRead」、データのバックアップや修復を行なえる「PowerBackup 2」、画像や動画を整理するのに役立つ「Medi@Show6」、プリンタブルメディア(メディアに直接印刷可能なメディア)のラベルデザインを行なうことのできる「LabelPrint 2」が付属している。もちろん最初に書いたように、すべてWindows 8に対応しているので、安心して利用できる。これらの豊富なユーティリティはBDR-S08Jを使っていれば、きっといろいろなシーンで活躍するだろう。あってよかった、使って便利と思えるソフトウェアが豊富に付いているのもBDR-S08Jの特徴の一つだ。
「いたれりつくせり」のドライブを
求めるならコレに決まり
ユニークなフロントベゼルは撮影に使用した艶消しの黒のラバーブラックのほか、光沢のあるピアノブラック、白がまぶしいクリアホワイトの3種類が用意されており、それぞれの型番はBDR-S08J-KR、BDR-S08J-BK、BDR-S08J-W。デザインに優れているだけでなく、防振や内部の空気の流れを作るため、高い気密性も実現している。日本の十和田パイオニアで生産されていると言うのも、信頼性を高めている一つのポイントだろう。また、フロントベゼルは、本気の販売元であるエスティトレードに連絡すれば、薄型ベゼルに交換することもできるので、光学ドライブ用ベイにフタが付いているタイプのPCケースでも使用することができる。価格はそれなりだが、高い技術に裏打ちされた高性能で高機能なBlu-rayドライブが欲しいと言う人にはピッタリだろう。
カラバリは3色展開
DiXiM BD Burnerが必要ないと言う人なら、BDR-208JBKという製品もほぼ同時期に販売が開始されている。こちらは、後編で詳しく説明するDiXiM BD Burnerは付属していないものの、15倍速記録、ハニカム構造やディスクの回転を利用した冷却機構などは受け継がれており、Windows 8での動作も問題ない。実売価格が約17,000円前後と、比較的購入しやすい価格になっているので、用途によってはBDR-208JBKもお勧めだ。
(Reported by 山本倫弘)
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