今回は、この「BDR-S05J」の製造現場に乗り込み、「国産モデル」のクオリティの秘密を探ることに!
青森県の十和田市にある十和田パイオニアは、1973年に創業した、パイオニアグループ内での生産を担当する子会社だ。ここでは、光学ドライブやカーナビゲーション、住宅用のAV機器など、パイオニアの主力製品が生産されている工場だ。
今回はこの十和田パイオニアの生産現場におもむいた。前回記事で触れたとおり、堂々たる「国産モデル」ブランドをひっさげるBDR-S05Jは、この十和田パイオニアにおいて徹底した品質管理のもと製造されている。
まず案内されたのは、十和田パイオニアの本社工場。エントランスは1階だが、いきなり階段があり、そこをのぼった2階の事務所前の自動扉が本当の入り口となる。また、並べられたスリッパはすべて静電気防止対策が施された特殊なものだ。これらは工場に静電気や埃などを持ち込まないための工夫と言うことで、精密機器の生産現場ならではだ。
入り口には数々の認証取得の証明書や受賞した賞の賞状や盾が置かれている。実を言うと、筆者はこのあたりから十和田パイオニアの方が取材慣れしていることに驚いていた。それもそのはず、十和田パイオニアは後述のVM活動をメインに、その生産体制や管理体制が評価されており、テレビ局や雑誌・新聞の取材を受けたという、いわゆるモデル工場的存在だったのだ。
十和田パイオニアでは、社長である佐藤馨氏をはじめとして、10名近くのスタッフに歓迎を受け、会社の紹介や案内をしていただいた。お忙しい中、時間をさいてくれた方に、この場を借りて感謝したい。

実際の工場内の取材ということで、まず第二工場から案内された。第二工場は、ドライブに限らず、十和田パイオニアが扱う各種製品の基板実装をしているのだという。
第二工場も本社工場と同様、埃などを工場内に持ちこまない工夫がされている。静電気防止のスリッパは当然として、工場入り口の扉を開けるとシューズクリーナーがあり、スリッパに付着した埃やゴミを入念に取り除く。その横には静電気のチェックと除去を行う導電靴チェッカーが置かれており、除電プレートの上で静電気を除去。さらに帯電の状況をチェックする機器まで置かれており、これをパスしなければ工場内に入ることはできない。この除電用のプレートは工場の至る所に置かれており、作業をする人が立つであろう要所要所に配置されている。さらに、髪の毛や服の繊維なども品質に影響するため、帽子やマスク、クリーン服の着用などを行う。また工場内の天井のいたる所に、湿度をコントロールするための水蒸気を散布する噴霧器が設置されている。こちらも、静電気が発生しにくくなるよう、湿度を管理するためだ。
さて、ここまで静電気を気にするのには二つの理由がある。もちろん一つは静電気による埃の付着だ。静電気を除去せずに帯電していれば、それだけ埃を吸着しやすくなる。精密機器の工場において、埃が大敵というのはだれにでも予想が付くところだ。
そしてもう一つが、精密電子部品等の破損防止だ。人間の体は帯電しやすく、静電気をため込みやすい。帯電量が多い状態で金属の扉などに触れたときにパチッとくるのが静電気の放電だ。ICチップなどの精密部品は、それなりに静電気印加対策が施されているものだが、それでも人間の帯電量の大きさに負けて壊れてしまうことがある。ましてやアースなどが取られる前の組み立て途中のパーツでは、静電気を逃がすところも無いため、非常にデリケートな状態になっている。これを防ぐための徹底した静電気対策なのだ。この徹底した静電気対策が、クオリティの高い製品の生産に結びつく一つの理由というわけだ。
取材時にはちょうど、基板実装とチェック作業が行なわれていた。各種製造機械は独自のものというわけではなく、一般的な生産現場で使用されているものだとのことだが、内部のいたるところに独自のノウハウが施されているという。基板のチェックは、大半が機械によって何重にも行なわれるとのことだが、機械でチェックしきれない箇所については、人が目視でチェックしている。製品の基板に関して言えば、様々なパーツがその上に実装される、文字通り「基」であり、その基板のクリーンさは、製品そのもののクオリティに直結する。上述の静電気対策や厳重なクリーニング/チェック工程は、まさにパイオニア製品自体のクオリティを保証するものだと言えるだろう。
第二工場を一通り取材したのち、次は本社工場2Fの生産現場に通された。こちらのフロアでは、前回の記事で紹介した「BDR-S05J」の組み立てがまさに行われていた。ピックアップの製造や組立、さらに先ほどの第二工場で製造された基板を使っての製品組み立てなどが流れ作業的に行われている。
第二工場では厳重なチェックをくぐりぬけて実際の製造現場への入室を許可されたわけだが、光学ピックアップをはじめ、他の製品にも増してデリケートな精密部品が組み込まれる「BDR-S05J」製造現場に関しては、透明なフィルム状のカーテン越しでの見学となった。
各ブースの上にはモニターが表示され、ラインの生産数やその日の目標数などの状況のチェックがリアルタイムで見えるようになっているほか、一つの製品にかける時間の目安も分かるようになっている。たとえば、一つの製品にかける作業時間が30秒だとすると、25秒あたりからカウントダウンが始まって、その時間の終了を教えてくれるのだ。作業者はこの作業時間の目安に従って作業を行っており、それより遅いか早いかなどが分かるようになっている。もちろん遅い場合には、何か問題が発生しているので、早急な処置を施す。また、早すぎてもよくない。作業の目安の時間は適切な作業時間でもある。それよりも早いと言うことは、なにかのチェックや部品の組み込みが抜けていたりする場合があるのだ。あくまでもクオリティ。生産時間の短縮に注力するだけではクオリティを維持することができない。このモニターでは状態をチェックすると同時にクオリティをアップする目的も同時に果たしているのだ。

十和田パイオニア生産拠点のメンバーの後ろに見えるのが、リアルタイム品質監視システムのモニタリング用ディスプレイだ。ここで、日本、中国双方の生産状況・品質を監視できる
パイオニアには、独自の「リアルタイム品質監視システム」が存在し、各工程、装置別の生産状況を集中的にモニタリングしたり、性能を自動でグラフとして確認したりできるようになっている。これにより、工場全体の状況を把握することが可能だ。 さらに、このシステムはパイオニアの中国工場にも導入されており、十和田パイオニアで集中してモニタリング、管理が可能とのことだ。なるほど、これなら工場がたとえ地球の裏側にあるとしても、その工場のクオリティを管理することができる。中国の工場には日本から技術者などが指導に当たっており、海外生産品だからと入ってクオリティが落ちるというようなことが無いように管理されているわけだ。
「BDR-S05J」をはじめとする日本向けのリテール製品などを中心にさまざまなドライブを製造する十和田パイオニアに対し、中国の工場では主に量産タイプのドライブを製造している。日本よりも工場規模が大きく、人員も生産ラインの数も多いという中国の工場において生産のクオリティをコントロールすることは、普通に考えれば至難の業だが、パイオニアの場合は前述のリアルタイム品質監視システムにより、遠い中国のラインの効率化とクオリティの維持を図っているのだ。
ちなみに「BDR-S05J」は、製品の基板をはじめとする各種パーツの組み立てから梱包まで、すべてこの十和田パイオニアで行なわれている。一貫した生産・管理体制が、製品パッケージにもある、「日本製」クオリティの所以だ。ただ中国の工場にしても、可能な限り日本からクオリティをコントロールしようとする体制になっているわけだ。

十和田パイオニアでは作業の効率を高めるためにVMという管理方法を用いている。VMとはVisual Managementの略で、目で見える管理のことだ。
十和田パイオニアの中を見ていると気がつくのが、いたるところに設置されたVMコーナー。よく見るとここには、作業員一人一人が現在行っている作業のほか、目標や進捗状況などが一目で分かるように書いた紙が貼られている。生産を管理する立場から見た場合、管理者が作業の状況を口頭で説明されずとも一目瞭然で把握できるのがメリットだ。また、この場所での立ち話が簡易的な会議体の役割を果たすこともある。十和田パイオニアでは、VMコーナーを作る前は803時間だった会議室の使用時間が125時間に減少し効率化したそうだ。
また、作業状況をひと目で把握できることは、作業員の立場から見ても利点がある。今回取材した第二工場は、大型連休以外は基本的に24時間、不眠不休で稼働している。当然、作業員は交代制で、ローテーションが組まれ入れ替わって勤務している。結果、同じ作業を別の人が行う際の引き継ぎが必要になるわけだが、それもVMコーナーを採用したことでスムーズに行うことができる。前任者の状況がVMコーナーを見るだけで分かるからだ。もし万が一、引き継ぎ等のミスで作業現場に「穴」が空いた場合も、表を見れば瞬時に、視覚的に把握することができる。また、作業員の自意識向上という部分でも役立っているはずだ。
VMのほかにも、工場内で目に付くのは、共用品・消耗品の徹底した管理だ。これは、作業の流れを円滑にするほか、消耗品のコスト削減にもつながる施策だ。
「エコエリア」は、工場内で出た廃棄物をリサイクルするために設けられたスペースだ。昨今、よく話題になる企業のエコへの取り組みだが、十和田パイオニアでも高度なレベルで実現されており、環境にも配慮した管理体制が取られていると言える。
製品のクオリティを維持するのは、なにも機械の精度や検査体制の強固さだけではない。ここで挙げたような管理体制の合理化や作業状況の改善が、結果的に十和田パイオニアの「メイド・イン・ジャパン」クオリティを創り出しているのだと言えそうだ。

徹底した防塵や静電気除去による、製品のクオリティアップ。作業内容をチェックし、各員の目的意識向上や連携を取りやすくするVM。中国の工場を監視し、十和田パイオニアと同じレベルの高いクオリティの製品生産を維持するモニタリング。そして高度なレベルでの環境への取り組み。
すべてが新しい「モノづくり」を実現するための製造技術ノウハウを会社の上層部から社員の一人一人が一丸になって、努力し、積み上げてきたものだ。前回の記事で、「モノづくり」に対するこだわりがパイオニアDNAとして技術者に受け継がれていることを書いたが、生産の現場でもある十和田パイオニアの工場にも、そのパイオニアDNAがしっかりと受け継がれているのを感じられた取材であった。
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