急遽プロジェクトがスタートしたECサイトのテスト環境、思いついたアイデアを試してみるための実験環境、現状のWebサイトに追加予定の機能を実装してみるためのテスト環境や、ソーシャルゲームの開発環境など、Web関連のビジネスでは急遽サーバー環境が必要になるケースも珍しくない。
しかしながら、コストを考えると物理的なサーバーを用意するわけにもいかないうえ、ホスティングされたサーバーを用意すると言っても、契約などに時間がかかってしまう場合がある。だからといって、トラブルが発生する可能性がある開発やテスト環境を、OSやサービスを他のユーザーと共有する共用サーバーサービスで動作させるわけにもいかないだろう。
そこで活用したいのが、NTTPCコミュニケーションズの「WebARENA CLOUD9(ウェブアリーナ クラウドナイン)」だ。クラウド技術を活用したパブリッククラウドサービスで、CPUやメモリ、ディスク容量など、サーバーに必要なリソースを柔軟に変更できるのが特長だが、申し込みから最短3分で開通するという手軽さも備えている。手軽にサーバーを準備したいという場合に、最適なサービスだ。
具体的な開通までの流れを見ていこう。まずは、WebARENA CLOUD9のWebページにアクセスし、[Webからのお申し込み手続きへ]ボタンをクリックして、利用規約を確認する(図1)。
続いて、契約情報の入力だ。契約コースで「クレジットカード支払いコース(月額税込み4,800円)」か「請求書・口座振替支払いコース(月額税込み5,640円)」かを選択し、スペック変更オプションを選択する(図2)。
標準ではディスク容量50GB、メモリ1GB、CPU1コア共有となっているが、ディスク容量は150GB〜1000GBまで、メモリ/CPUは、2GB/1コア共有〜16GB/4コア共有までリソースの変更ができるようになっている。もちろん、最初から必要なスペックが明らかな場合は、そのスペックで申し込むことができるが、後から自由に変更することができるうえ、追加料金は日割りで計算される。このため、最初は標準スペックで申し込んでおき、必要に応じて拡大・縮小を検討するといいだろう。
■ディスク容量の変更 (税込)
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■メモリ/CPUの変更 (税込)
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このほか、契約者の氏名や住所、管理用のパスワードなどを入力すれば契約情報の入力は完了だ。次に支払情報としてクレジットカードの情報を入力し(図3)、契約情報を確認して内容を送信すれば契約が完了する(図4)。
驚くべきは、その後の迅速さだ。契約完了の画面が表示された後、実に1分と経たずに「WebARENA CLOUD9開通のご案内」と題されたメールが届き(図5)、メール内のリンクから、即座に開通したサーバーのコントロールパネル(http://vpanel.jp)にアクセスすることができた(図6)。
開通案内の到着直後の場合、サーバーが起動中となっている場合もあるが、コントロールパネルのステータスを見ながら3〜4分も待てば、サーバーの起動が完了し、実際に使えるようになる。
もちろん、申し込みの時間帯や混雑状況などによって開通までの時間が異なる可能性はあるが、申し込みボタンのクリックからサーバーにログインできるまでの時間は5分程度と考えて良いだろう。極端な話、新しい企画について打ち合わせをしている会議室などから、その場でサーバーを用意することもできてしまうほどだ。
サービスによっては、申し込みからサーバーの開通まで数時間、書面申し込みの場合数営業日、などという場合もあるが、WebARENA CLOUD9でクレジットカード支払いであれば、思い立ったらすぐにサーバーを使える状態になる。この手軽さと迅速さは、スピードが求められるWebビジネスの世界では大きな魅力と言えそうだ。
このスピード感は、1997年から14年間ハウジング・ホスティング事業を続けてきた、累計契約数9万件以上を誇る「WebARENA」ならではと言ったところだろう。高い品質と信頼性を保ち、高く評価され続けてきたNTTPCコミュニケーションズのサービスだからこそ、使いやすいのも納得だ。
実際、マニュアルを参照しながら、サーバーの初期設定をしてみた。まずは、サーバーにログインするための環境を整える。標準では外部からの不正アクセスを防止するためにsshdのアクセスが制限されているので、管理用PCからの接続を許可する。
ID(サーバーのIPアドレス)とパスワードを入力してコントロールパネルにログインし、「SSHのアクセス制御」を選択すると、現在接続元となっているIPアドレスが表示される。この状態で「アクセス制御」ボタンをクリックすると、これが/etc/hosts.allowに書き込まれる(図8)。
続いて、「sshdの起動」からsshdを起動し、さらにポートマップの設定を変更する(図9)。WebARENA CLOUD9では、セキュリティを確保する目的から、仮想サーバーがプライベートネットワーク空間に設置されている。つまり、標準では外部からのアクセスが遮断されており、必要なサービスポートだけを公開することで、意図しない接続やセキュリティリスクを避けることができるようになっているわけだ。
すべてのポートが公開されている場合、セキュリティを確保するのにさまざまな設定をするために、かなりのスキルと時間が要求されるが、WebARENA CLOUD9のように標準でアクセスが遮断され、必要なポートだけ開けるという方法であれば、余計な心配をする必要がないうえ、時間的なロスもない。開発やサービスの設定など、サーバーを本来の目的に使うために多くの時間を割けるのもWebARENA CLOUD9のメリットというわけだ。
これでサーバーにアクセスできるようになる。管理用PCでSSH用クライアントを起動し、サーバーのIPアドレスとポート(22)を指定してアクセスすれば、「root」でログインすることができる(図10)。
もちろん、rootでログインすることは、普段の運用を考えると好ましくない。このため、通常は別のユーザーアカウントを作成し、rootでのログインを禁止するのが一般的だが、この方法も同マニュアルでしっかりと説明されている。
また、万が一、ユーザーを作成する前に、rootでのログインを禁止してしまうと、サーバーにログインできないことになってしまうが、この場合、コントロールパネルから「SSH設定ファイルの初期化」を実行することで対処可能だ。
こういった実運用上の注意点や運用ミスをカバーする対策などがしっかりと用意されているあたりも、WebARENA CLOUD9を使うメリットだ。オンラインマニュアルも充実しており、NTTPCコミュニケーションズならではのサポート体制の良さがうかがえる。
Apache自体はすでにインストールされているので、sshでログイン後、vi(ヴィーアイ:テキストエディタ)で/etc/httpd/conf/httpd.confの最低限の項目を編集し、「service httpd start」でApacheを起動。最後にSSHのときと同様にコントロールパネルでポート80をマップすれば、ブラウザを利用してWebサーバーにアクセスすることができるようになる。viの使い方さえ理解していれば、はじめてWebサーバーを構築するという場合でも、迷わず、短時間で作業ができるだろう。
構築したサーバーは、コントロールパネルから全体的な管理が可能だ。たとえば、「プロセスの表示・停止」から起動中のプロセスを確認したり、外部からの接続状況やリソースの使用状況も確認できる(図12)。前述したポートマップの設定やRPMのアップデートなどもコントロールパネルから実行可能だ。
もちろん、サーバーを再起動したり、OSを再インストールすることもできる。インストールできるOSは、現状、標準のCentOS 5のみだが、将来的には別のOSも利用可能になるかもしれない。
なお、サーバーのスペック変更は、コントロールパネルではなく、契約情報変更ページから設定する(図13)。ディスク容量やCPU、メモリ容量などを変更したりできるので、サーバーの用途や現在の利用状況を確認して拡張するといいだろう。
また、別途オプションサービスとして用意されている「Web改ざん検知サービス(株式会社セキュアブレイン提供)」なども利用可能となっており、Webサーバーを外部に公開した場合のセキュリティ監視などもできるようになっている。構築から運用まで、幅広くサポートされているのも大きなメリットだ(図14)。
「クラウド」と言うと、どうしても敷居が高そうなイメージがあるかもしれないが、実際に試してみて、「WebARENA CLOUD9」はすぐに利用を開始できるうえ、初めて仮想サーバーを利用する場合でも迷わず使える工夫がなされている。はじめての導入から、既存のWebサービスの移行など、あらゆるニーズに応えることができるサービスと言える。
段階的にサーバースペックを向上させることができるクラウドサービスなので、将来的なサービス拡大をにらみつつも、リーズナブルに始められるのメリットだ。ちなみに、いまなら他サーバーからの乗り換えの場合には4月28日まで初期料金無料・月額基本料金最大3カ月無料の「サーバーお乗り換えキャンペーン」を行っているので、この機会に導入を検討してみる価値は十分にあるだろう。
また、WebARENA CLOUD9の基本機能を10日間無料で試すことができる「無料お試しサービス」が提供されている。WebARENA CLOUD9のWebページから、申込書(PDF)をダウンロードし、必要事項を記入の上、NTTPCコミュニケーションズにFAXすると、5営業日以内にデモ用のID情報がメールで通知される(図15)。10日間、このIDを使って、実際のサーバー構築や管理などを試すことができるので、まずは、自社のサービスやWebサイトに利用できるかどうかを試してみるといいだろう。
(Reported by 清水理史)
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