松村 弘典 (まつむら ひろふみ)
マイクロソフト社のプログラムマネージャ。「Rise of Nations : Rise of Legends」の日本語版開発コーディネーション全般を担当する
  2003年に発売された「Rise of Nations」(以下RoN)は、世界的なゲームデザイナー、ブライアン・レイノルズ氏率いるBig Huge Gamesが開発したリアルタイム ストラテジー(RTS)ゲームだ。世界の民族と、その文明の進化をテーマにした作品で、世界中で高い評価を受け、数々のゲーム賞を受賞している。

 そして、その正統な続編となるのが、この「Rise of Nations : Rise of Legends」(以下RoL)である。日本語版の発売も間近に迫り、ユーザーからの期待が最高潮に達している本作。今回は、RoL日本語版のプログラムマネジメントを担当したマイクロソフト社の松村氏に、その特徴と魅力について語ってもらった。




 RoLの詳細が発表されたとき、まず我々を驚かせたのは、ゲームの世界観だった。実際の歴史をベースにしたRoNからガラリと変わり、RoLの舞台はSFとファンタジーが同居する世界になったのである。松村さんはこれについて、「開発スタッフには、この変更は非常に好評でした」と話してくれた。

「史実をベースにしていると、ユニットにしても、それらが繰り広げる戦闘にしても、実際にあったものを描くわけですから、表現できるものがどうしても限られてしまうんです。架空の世界を舞台とすることで、その枠がなくなり、鮮やかなイマジネーションを最新の技術で表現できるようになったんです」

 最新の描画エンジン、物理シミュレーションエンジンによって描かれるグラフィックスは、実に緻密で美しい。光の当たり方や気象の変化にはつい見とれてしまうし、しっかり計算された各オブジェクトの動きには感心させられる。もっとも目を引くのは、画面上で繰り広げられる“実際にはありえないはずの戦い”だ。


「機械文明と魔法文明の戦い」がテーマとなっているRoL。最新のグラフィックスエンジンにより、実際にありえないはずの戦いが再現される
写真は機械文明ヴィンチの最終兵器、無敵の蒸気機関・巨大カニ型メカ
建物の壊れ方やユニットのやられ方にも注目。オブジェクトの動きは、すべて物理エンジンによって計算されている

 巨大な多足歩行機械に、悠然と飛行するドラゴン。飛び交うレーザー光に炸裂する魔法。ファンタジーの産物であるはずの機械文明と魔法文明の戦いが、圧倒的なリアリティを持って迫ってくる。非常に想像力を刺激される映像だ。

「今回、マルチプレイヤー モードには、他者の戦いを観戦するだけという 『オブザーバー モード』 があるんですが、ぜひ一度それでゆっくりグラフィックスを堪能してほしいですね。自分でプレイしているときには、細部まではなかなか目を配れないですから」

 RoLに登場する文明は3種類。スチームパンク的な機械文化を持つ「ヴィンチ」、オリエンタルな雰囲気の魔法文明「アリン」、超科学と古代文明の融合といった趣きの「コートル」である。

「ヴィンチは、レオナルド・ダ・ヴィンチの名前から取られています。蒸気機関がそのまま進化、進歩していったら……というような世界ですね。アリンは、アラビアンナイトの世界観がモチーフになっています。コートルは、マヤなどの古代文明がデザインのベースとなっていますね」


●ヴィンチ
蒸気機関がそのまま進歩した、スチームパンク的な文明を持つ陣営。もっとも我々の文明に近いが、車輪よりも「脚」で歩行するユニットが多い。ローターで飛行する空中ユニットも特徴的だ
●アリン
魔法文明を持つ陣営。魔法と言ってもヨーロッパのそれではなく、アラビアンナイトの世界に近い雰囲気がある。ドラゴンやサラマンダーといった魔法生物を召還し、戦わせていくことになる
●コートル
古代文明と超科学が融合したようなデザインの文明。動物を模したロボットユニットや、飛行ではなく浮遊する空中ユニットなどが特徴的。どこか神秘的な雰囲気を漂わせている

 しかし、前作やほかのRTSと比べてみた場合、3種類という数は少なく感じられたりはしないだろうか? そんな疑問に対しても、松村さんはあっさりと否定する。

「それぞれ完全に異なった、際立った特徴を持つ文明にしたために、この数になったんです。どれを選ぶかによってプレイスタイルが根本から変わってしまうほど、特色ある文明になってますので、物足りなく感じることはないでしょう」

 実際、開発途中までは4種類だったのが、最終的にさらに絞って3種類になったという経緯があるとのこと。3つの文明は、外見的な部分はもちろんのこと、実際のプレイ感覚においても、ユニットの種類から内政の方法まで、かなり根本的なレベルで異なっている。


松村さんお気に入りのグラスドラゴン。透明な羽で飛行する姿はなんとも優雅だ
「ひとつの文明での戦い方を十分にマスターしても、別の文明を始めると戸惑ってしまいますね。その分、3回たっぷり楽しんでいただけるはずです」

 ちなみに、松村さん自身のお気に入りの文明、ユニットを聞いてみた。

「好きな文明はアリンですね。ユニットで言うとグラスドラゴン。見栄えが好きなんです(笑)。実は、私はあまりゲームが上手くないんですが(笑)、グラスドラゴンは見ているだけで楽しいですね」

ヴィンチのユニット。蒸気機関が進化した世界観そのままに、二足歩行のロボット兵器も蒸気を噴き出しながら歩く
アリンのユニット。魔法文明らしく、ファンタジー世界から飛び出てきたような魔物が中心
古代文明という位置づけのコートルの空飛ぶ要塞。マヤ文明などを彷彿とさせる幾何学図形的なデザインだ



「RoLは、とにかく遊びやすいゲームですね。RoLの基本コンセプトは、『ユーザーを煩雑なルーティンワークから解放して純粋に戦闘を楽しんでもらおう』ということなんです」と、松村さんは話す。

 RTSは、非常に高いゲーム性を持つジャンルではあるが、その分プレイヤーは素早い操作や高い状況判断力などを要求され、結果として「敷居が高い」ゲームとして認識されることが多い。RoLは、そういった常識に真っ向から歯向かっている。

「マニュアルも見ず、ルールを知らずに始めても、それなりに楽しめてしまう。知れば知るだけプレイの幅が広がる。それがRoLの強みだと思います」

 RoLをプレイすると、進化システムの簡略化、資源の単純化など、ほかのRTSに比べ、内政部分が全体的にシンプルになっているのに気づかされる。RTSには、スタート直後からとにかくプレイが忙しいというゲームも多いが、RoLではまったくそんなことはない。じっくりと、本来の目的である敵陣営との戦いに集中できるのだ。

「決して内政を捨てたというわけではなく、主役である戦闘部分を重視した結果ですね。やはり、ユーザーさんに一番見せたい、楽しんでもらいたいのは、戦闘シーンですから」


主な資源として登場するのは、チモニウムと呼ばれる鉱物と、財貨の2種類である
RoLには、RoNのような「時代」で区切られる発展システムはない。その代わり、文明ごとに4系統のテクノロジーが設定されており、それらを研究していくことで自国のパワーアップを行なう
建物は、資源さえあればすぐに建てられる。労働用のユニットなどは必要ない

 また、手軽に楽しむという意味では、1プレイにかかる時間の問題も重要だ。RoNもかなり短時間でプレイできるゲームだったが、RoLではそれをさらに推し進めている。もっとも簡単にゲームを楽しめるクイックバトル モードで1プレイした場合、時間は20分ほど。昼休みなど、ちょっとした休憩時間でも十分だ。

「ゲームをしようかと思っても、ひと区切りつくまで2時間かかるとなると、なかなかプレイできない。そんなユーザーさんは多いと思います。そういった人たちにも気軽に遊んでもらえるように、ということです」

 もちろん、シンプルになった部分ばかりではない。たとえば、RoNの大きな特徴であった国境システムは、新要素「中立施設」の追加により、より奥深いものに進化している。

「中立施設は、獲得すると一気に自国の境界を広げられるので、戦略的に重要な意味を持っています。ただ、これを獲得する方法はひとつだけではない。お金を支払うのか、攻め込んで強引に奪い取るのか、交易で時間をかけて併合していくのか。それぞれの方法に一長一短がある。戦略の幅が広がる部分ですね」


クイックバトル モードでは、1マップ単位で簡単に遊べる。マップやプレイヤーの数にもよるが、2〜30分あれば十分ひと勝負ついてしまうほどのお手軽さだ
国境は、RoLでも重要な要素。基本的に、自陣営の領土にしか建物は建設できないのだ。また、敵の領土内では、ユニットが徐々に損耗していくという
マップ上にいくつも存在する中立施設。これらをどのように手に入れていくかが、戦略上の大きなポイントになる

 さらに、特殊ユニットであるヒーローの存在がある。

「ひとりひとり違った能力を持つヒーローは、ゲームの奥行きを深くする存在です。どのヒーローの、どの能力を使うかで、戦い方は大きく変わってきます。ただ、ヒーローは、同時にゲームの間口を広げる効果もあると考えています。強力な特殊能力に頼れば、初心者でも有利にプレイを進めることができますから」

 ヒーローという存在は、キャンペーン モードをプレイするときにより重要になってくる。

「クイックバトル モードは、簡単に遊びたいときのゲームモード。腰を据えてじっくり遊びたいときには、キャンペーン モードで楽しんでください。音声付きのチュートリアルは丁寧に順を追って初心者に操作方法やゲームの進め方を教えてくれるでしょう」

 キャンペーン モードは、壮大なストーリーに沿って、クエストを遂行させていくというもの。プレイヤーはヴィンチの若き発明家ジャコモになり、兄の仇を追って戦いを繰り広げていくことになる。ちょうど、RoNでの「世界征服キャンペーン」によく似た構成だ。

「キャンペーンは3つの章に分かれており、舞台はヴィンチからアリン、コートルへと移っていきます」

 ストーリーが進展するにつれて、ジャコモと共に戦ってくれるヒーローが増えてくる。そういったヒーローたちは、戦果によって獲得したポイントを割り振って、パワーアップすることも可能だ。

「たくさんのヒーローをまんべんなく育てることもできますし、ひとりのヒーローを重点的に強化することも可能です。プレイヤーの好みを自由に反映できるわけです」

 クイックバトル モード、キャンペーン モードの話が出たので、ゲームモード最後のひとつであるマルチプレイヤー モードにも触れておこう。これはその名のとおり、インターネットやLANを介して、最大8人までのプレイヤーが同時にプレイできるモードだ。

「ゲームの発売時にはゲームサーバーも稼動していますから、購入してすぐに不特定多数のプレイヤーと戦うことが可能です。『今すぐプレイ!』を選択すれば、自分にマッチする相手が自動的に選ばれ、細かい設定なしにすぐに対戦が可能です。マルチプレイについても、手軽にプレイできる環境が整っているわけですね」


キャンペーン モードでは、大地図での移動と戦闘を繰り返しながら、ストーリーを進行させていく。移動地域や、戦闘の結果によって、ストーリーが変化することも
キャンペーン モードでは、戦闘の結果得たヒーローポイントを割り振ることで、ヒーローをパワーアップさせることが可能。育成の楽しみも味わえる
インターネット上のサーバーに接続すれば、離れたプレイヤーとも対戦できる。自分で相手を指定したいなら「他プレイヤーとプレイ」を、対戦用のマップやルールを細かく設定したいなら「カスタムゲーム」を選ぼう




とにかく先入観なしで、一度見て、触れて欲しいと語る松村さん。RoLに対する熱い想いと自信が感じられた
「ゲームの本来あるべき楽しさを積極的に追求しているところですね。開発している最中にも、こうやったらユーザーに楽しんでもらえるんじゃないかと、次々とアイディアが出てくるんです」松村さんは、開発元であるBig Huge Gamesについてそう語る。

「企画段階ならともかく、もう開発が進んでいるのに、作品がどんどん育っていくんです。許されるギリギリまで改善、改善、また改善という具合になって、こちらはそれを追いかける立場だったんですが、とにかく大変でしたね」

 一般にゲームの日本語化を行なう場合、モノをこちらに渡して「あとは任せた」といった対応をとる開発元も多いが、Big Huge Gamesはそれとは正反対だったという。

「日本語版をより良くするための修正や機能提案などにも、実に積極的に対応してくれるんですね。日本語化をするというだけじゃなく、一緒に製品を作っているという感覚があって、非常に充実していました」

 要するにそれは、ユーザーに少しでもいいものを楽しんでもらおう、という気持ちの表れなのだ。

「RoLが遊びやすいゲームになっているというのも、結局はそういうことでしょう。できるだけ多くのユーザーに、自分たちの作品であるRoLを最大限楽しんでほしい、と」

 その思いは、もちろん松村さんも一緒だ。

「幅広い層のプレイヤーに遊んでもらえるゲームだと思います。これまでこういうゲームをあまりプレイしなかった。あるいは、遊んでみたけどちょっと合わなかったという方に、ぜひプレイしていただきたいですね」

 とにかく、まずは先入観なしで見てほしいと、松村さんは力説する。

「前作 RoN がどうだった、一般的に RTS とは、そういったことを全部抜きにして、ありのままを見てみてください。公式サイトのムービーを見ていただくだけで、あるいはゲームの記事を読んでいただくだけで結構です。それらを見て、ちょっと気になるなと感じたら、遊んでみてください。きっと満足していただけると思います」

 さらに、前作RoNを楽しんだユーザーにも、ぜひとも遊んでほしいと言う。

「前作から間が空いていますが、そのブランクの間にBig Huge Gamesが、あるいは我々が、どんなことを考え、どういったゲームに仕上げたのか。そういう部分をぜひ見てください」

 松村さんのその言葉からは、自分の関わった作品に対する強い自負が感じられた。

「RoNのいいところを残しつつ、どのように進歩させて新しいゲームを作り上げたのか、その目で実際に確かめてください」

 

(Text by 澤村 健)

 



   関連リンク
    「Rise of Nation : Rise of Legends」の公式サイト
    http://www.microsoft.com/japan/games/rol/

    Microsoft Gamesのホームページ
    http://www.microsoft.com/japan/games/




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    http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20060515/ron.htm

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    http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050918/roli.htm

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    ブライアン・レイノルズ氏の新たな一面を見せる架空世界を舞台にしたRTS
    http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050522/e3_rol.htm

 

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