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多くの人にとって、タイヤは数年間使い続ける寿命の長い製品。しかも簡単に脱着することもかなわない。それは僕も同じで、路面を捉える上で重要な仕事をしているのだから、当然、タイヤの違いが乗り味に大きな影響を与える……。と、頭の中ではわかっていだけど、じゃぁ、それぞれタイヤのフィーリングってどう違うの?というと、乗り比べる機会も滅多にないから、モヤモヤとしたイメージばかりで具体的な答えは持ち合わせていない。
これがサーキット走行を意識したスーパースポーツクラスのタイヤなら、きっと走行会を走るユーザーたちの声が多数見つかるだろうが、一般走行向けタイヤとなるとブランドごとの違いを一般の消費者が感じられる機会はとても少ない。
そんなわけで、ごく一般的な自動車ユーザーの筆者にとって、過日行われた「ベストカー タイヤ体感試乗会 supported by MICHELIN」のレポート記事執筆という機会は、仕事をまったく抜きにして、いち消費者として興味深い経験となった。まさか、あれほどタイヤごとに強い個性があるとは想像もしていなかったからだ。というわけで、5年目を迎えた愛車のタイヤにヒビを見つけていた筆者は、体験会での経験を元に新しいタイヤを物色して……と、そんなときに編集部S氏が、ロードスターにミシュラン・パイロットスポーツ3(以下PS3)を履いているのを発見。峠道でPS3を履いたロードスターを試乗させてもらうことになった。

体験会レポートの中でも、ミシュランのタイヤって少し不思議な感覚、ということを書いた。筆者の場合、ミシュランのPS3を味わったのは体験会が初めての経験。正直、とても戸惑う運転感覚だったのだ。
といっても、決してネガティブな印象ではない。短い走行の中でも、剛性感はしっかりと感じることができたし、ウェット路面でのコントロール性は未体験ゾーン。さらにプロドライバーの助手席同乗では、限界域でもしっかりと剛性感があることを感じた。日常走行とスポーツ走行のバランスを重視したタイヤとして、十分に楽しめるスポーツ性を持っていることはしっかり理解できた。
しかし、それよりも“あれ?これって、もしかして?”と、個人的に興味を持ったのは、スポーティなのに、コンフォート。タイヤが発揮している性能はスポーツタイヤらしいものなのに、そこにスポーツタイヤ独特のゴツゴツした感触が含まれていないことが興味深かった。
ということで、PS3を履いたロードスターでそのフィーリングを再確認させてもらったというわけ。体がロードスターの中に入っていないって? 大丈夫、横に乗ってもらったカメラマンさんの機材とで左右バランスは取れていますから!
とそれはともかく、久々に初代ロードスターに乗って「やっぱり軽いクルマは楽しい!」と感じつつ、自分のクルマでもないのにコーナーではややアグレッシブに走ってみた。
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| 久しぶりに乗ったロードスターは……、あれこんなに小さかったっけ? | やはり軽いクルマは軽快だと思ったが、S氏曰くPS3にしてからさらに応答性が増したとか | タイムを削るというよりこういう走りを楽しむクルマとの相性がすごくよさそう |
まず感じるのは“路面を捉えて離さないぞ!”という感じが少ないこと。これはPS3最大の特徴だと思う。こう言葉で聞くと、どこか頼りない印象を持つだろうが、そうではない。スポーツタイヤにありがちな、タイヤが路面を踏みしめるような感触がなく、スルッとスムーズにタイヤと路面がコンタクトしていく。
横Gが掛かった時に感じる感触も違う。これまでに使ってきたスポーツタイヤは、足を拡げて踏ん張るという印象。グリップのレベルは異なるが、Sタイヤからスーパースポーツ、スポーツとタイヤカテゴリを変えても、踏みしめや踏ん張りの度合いこそ異なるものの基本的なテイストは似ている……。と思っていたのだけど、PS3はその“足を拡げて踏ん張る”感がない。いつもと同じ姿勢で横Gを受け止め、さらに荷重がかかっても姿勢が崩れない。“踏ん張る”というより“受け止めている”という表現がしっくりくる。
ハンドリングも同様。PS3のハンドリングは基本的に軽快。ロードスターの場合、そもそもクルマ自体が軽快なのもあるが、スムーズな操作感。なのに決してユルユルのハンドリング感覚ではなく、クルマからの情報がハンドルを通してシッカリ伝わってくる。こう書き進めていくと、筆者が感じているミシュランタイヤの不思議感覚をいくらかは理解してもらえるだろうか?
さて、こうした軽快・快適な操作感で峠を抜けつつ、徐々にロードスターにも慣れてきた。ひとつ低めのギアを選びながら、少しばかりアグレッシブにコーナーに入っていく。しなやかな感触はアグレッシブさを増しても変わらない。
前後の加重変化を多めにすることを意識しながら、どのぐらいでタイヤが流れ始めるかを探ってみたけれど、軽くスキール音が聞こえるようになるまでの“奥”は深い。やはりスポーツタイヤはスポーツタイヤだなぁと思いながらワインディングを楽しんだ。
グリップのレベルは十分に高いのだが、僕が楽しいと感じたのは、限界の高さよりも限界付近での挙動だ。タイヤの流れ始めがスムーズで、踏ん張るだけ踏ん張って“我慢できません!”とばかりにダー!っと流れる、なんてことにはならない。スッと流れ始め、その先の挙動も変化が穏やかなので、思い切った運転が楽しめる。
ウェット性能に関しては、天気の良い中での走りだったのでわからないのだけど、編集S氏によると「あれはスゴイですよ」とのこと。「僕のロードスターはABSがついていないから、フルブレーキングすればタイヤはロックします。もう10年以上乗っているから、雨の中でどれだけブレーキペダルを踏めばタイヤがロックするかは、体に感覚として染みついていますけど、PS3を雨の中で試してみると、ここでロックするはず、というところを過ぎてもタイヤがロックしない(編集S氏)」とのこと。
“たおやかさ”とは、女性的で動きがしなやか。そして上品さを表現する単語だそうだ。本来なら、スポーツタイヤとは縁遠い言葉だが、PS3にはたおやかな雰囲気が感じられた。あるいは、ネコ科の動物に感じられる、しなやかな俊敏性と強さ。しっかりしているのに、たおやかなタイヤだ。
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| 結構グリップも高いので、ロールして泥よけを擦ってしまうことも | オーナーの見えないところで結構攻めてみたり | 限界付近でもピーキーな動きがないので初めてのクルマでも安心して走れる |

と、こんな風に落ち着いて書いているが、PS3に買い換えたばかりのS氏、カメラマンY氏とともに、その日、取材を終えての会話が盛り上がったのは言うまでもない。タイヤのフィーリングは、助手席で写真を撮影しながらでもわかるようで、スポーツタイヤらしからぬ快適性と優しさを感じさせつつ高性能なPS3のユニークな感触をカメラマンY氏も共有できていたようだった。これならば、スポーティな走りを楽しみたい気持ちはあるけれど、家族優先でファミリーカーを選んでいる、という人にもきっと楽しんでもらえるに違いない。
ちなみに、ウチの嫁さんは、一般的なコンフォート系のサスペンションセッティングが嫌いという珍しい主婦。自分でも運転するのだけど、コーナリング時の応答性が悪かったり、ロールやピッチの収束が素早く収束しないと気持ちがわるいと言い始める。そのくせ、ゴツゴツした筋肉質の走り味はイマイチという、なんとも相反する要素を求める人なのだけど、PS3ならきっと気に入るだろう。ファミリーカーだけどスポーティ、日常の足だけど走りそのものも楽しむ。そんな我が家の愛車にはピッタリだ。
それに体験走行会でも書いたように、今なら満足保証期間中。もし、自分のクルマには合わないとなっても、60日以内なら返金してもらって別のブランドを選ぶことだってできる。
編集S氏にミシュランのホームページにある乗用車用タイヤ販売店ガイドから最寄りの販売店検索が行えることを聞いていたので、まずは近所のお店をいくつか検索。僕の予定と販売店のピット空きスケジュールを摺り合わせ、矢東タイヤ王子店でタイヤを交換した。矢東タイヤは都内では他に、板橋・ 練馬・ 杉並・ 目黒・ 江戸川に店舗があり、僕が住んでいる地域に数多く店舗があるというのも決め手でお願いする事に。
実は僕の場合、タイヤはいつもディーラーで交換していたので、専門店は初めて。しかもメーカー直系ではない矢東タイヤさんが、タイヤ専門店としてどんなところを支持させているのだろう?と、なぜかジャーナリスト魂に火が点いたというのもある。都心に多くの専門店を抱えているということは、それだけ利用者も多いってことだからね。
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| 東京都北区にある矢東タイヤ王子店。メーカー直営店ではないのでほぼすべてのメーカーのタイヤを取り扱う | 5年前にできたとのことで、タイヤチェンジャーやアライメントテスターなど新式のものが揃っている | |||

ということで、タイヤ交換で待っている合間、空き時間を狙って、タイヤ一筋17年という矢東タイヤ王子店の店長 篠本晃さんに、いろいろと話を伺ってみました。いや、ホント、お忙しい中、ご対応、ありがとうございます。
---- 実はタイヤ専門店を使うのは、メーカー系列以外だと初めてなんですが、いちクルマファンとしてタイヤ専門店を使う利点って何でしょう?
「タイヤのあらゆることについて、網羅的に知っていることですね。ひと言でタイヤと言っても、お客様ごとにニーズは違います。まずはお客様のイメージを聞いて、車種とサイズを勘案した上で、ニーズを満たすにはどうすればよいかを見極めながらベストチョイスを提示します。また、外観を重視されるお客様の場合、フェンダーとタイヤとの位置関係をぎりぎりまで追い込んで合わせたいといったときにお役に立てると思います。実は同じサイズのタイヤでも、メーカーごとにごくわずかなサイズの違いなどもあるので、そこは経験を活かせるところですね」
---- クルマとの相性というのは、具体的にはどんなことでしょう?
「あくまでも経験上としてですが、欧州車に柔らかいタイヤを入れると乗り心地が悪化したり、偏摩耗が増えるといったことがあります。おそらく道路事情の違いだと思いますが、一般に欧州ブランドのタイヤの方が剛性が高いことが多いですね。もちろん、剛性の高いタイヤを国産車に履かせても大丈夫ですよ」
---- そんな店長のミシュランタイヤへのイメージは?
「どんなメーカーのタイヤも、プレミアム、スポーツ、コンフォートのいずれかに分類できるのですが、ミシュランのタイヤはその区分けがしっかりとされているイメージです。PS3に関しては、スポーツタイヤなのに、トレッドパターンは普通のタイヤ。普通のミニバンやファミリーカーに履かせても、違和感ない印象ですね。実際に会社のクルマに履かせて使っているのですが、ウェット時の排水性能に驚きました。ウェット性能はすばらしいですね。しかも、グリップの限界は高く、スポーツタイヤらしくないのに、きっちりスポーツしている。あと、走行音が静かなんですよ。ミシュランらしく、高い剛性感を感じるハンドリングもよいですよ」
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| これから装着するミシュラン・パイロットスポーツ3 | 新式のタイヤチェンジャー。ほとんど人力を使わないので超低偏平タイヤやランフラットタイヤでも交換可能 | タイヤバランサーも液晶モニター付きの新型だ |
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| 外したタイヤはささくれとひび割れが酷い状態。スリップサインが出ていなくても要交換の状態 | 驚いたのはタイヤ交換にインパクトレンチを一度も使わなかったこと。丁寧な作業はうれしい限り | 最後はきっちりトルクレンチで本締め |
---- 矢東タイヤさんのホームページを見て、チッ素充填無料キャンペーンをやってますね。あ、コレお願いできます?(すみません、最初に言い忘れていました……)
「はい、もちろん。チッ素充填、普段は2100円(4本)の料金を頂いています。チッ素にすると空気の抜けが遅いのが利点ですね。空気圧はタイヤ性能を引き出す上で重要なポイントなのですが、なかなか日常的にチェックはしにくい。最近は低偏平タイヤばかりになって、エアがあまり入っていなくても通常の速度域では、あまり違いがわからないんです。しかも、もともとが平たいので、見た目にもわかりにくいですし。そういったことからもチッ素充填すると、エア管理が多少ルーズでもトラブルになりにくいという意味でオススメですね」
---- 再充填にも窒素を入れる必要があるんでしょうか?
「窒素充填はタイヤの空気を完全に抜いてから窒素を入れ直す機械もありますが、一般には普通に空気を抜いて窒素を入れるという行程を数回繰り返して入れます。だんだん窒素濃度が高くなるのですが、それでも窒素以外の元素も残る。これがそれら窒素以外の元素が抜けて空気圧が下がるのですが、空気圧が下がっていたら、そこで窒素を追加で入れてください。すると窒素濃度が上がります。何度か充填していると、空気圧の低下速度がグッと落ちてくるはずです。うちの店の場合、タイヤ交換時に窒素充填すると、再充填はいつでも無料ですよ」
---- 今ならアライメントの無償チェック(通常5,250円)もしていますよね。通常、ディーラーと付き合っているだけだと、アライメントをきちんと調べる機会はほとんどありません。
「実はアライメントを計測しなくても、ズレていることはタイヤを見ればわかります。偏摩耗が起きてますから。内側あるいは外側ばかりが減っていると、タイヤの性能や寿命にも影響しますが、ハンドルが取られたり、ブレーキでロックした時に片側に流れるといったこともあります。車輪の方向が合っていなくて引きずる感じになるため、若干ですが燃費にも影響します。以前はタイヤの高さがあったので、アライメント調整のズレに対しても寛容だったのですが、最近は低偏平タイヤばかりですから、アライメントのズレには敏感なんですよ」
ということで、最後にアライメントもチェック……………
ええと、このチェック結果、掲載するの??(編集Sさん〜)と、少し恥ずかしくなるぐらいのズレで、確かに偏摩耗しているタイヤの様子とも状況は一致する。タイヤ交換後、さらに有料のアライメント調整を依頼して、さてさてやっとPS3への交換が終了。ちなみにこのチッ素充填とアライメント測定が無料になるタイヤ交換キャンペーンは、7月現在も矢東タイヤ王子店で実施中。同店のWebサイトでクーポンが手に入るのでチェックしてみよう。
さて、新タイヤを履いての最初の感想は「走り出しが軽い!」ということ、スルスルっと走り始める。コロコロコロ〜と転がる感じや乗り心地の変化は、これまでの試乗でも感じていたけど、自分のクルマだとより明確に感じる。あらためて、こんなに違うものかと実感しながら、ドライブ計画を頭の中に描きつつ帰途についたのでした。
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| サービスキャンペーンとしてチッ素充填も無料でサービスしてもらった。最初は入れて抜いてを繰り返しタイヤ内のチッ素の割合を増やしていく | 最後に別のゲージで空気圧をチェックして終了 | トーやキャンバーなどアライメントが狂っていないかもチェック。これもキャンペーン中でサービスだった |
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| アライメントテスターも新式なので作業時間が大幅に短縮できるのだとか | 測定してみると結構狂ってた。普通に走ってるだけでも狂ってくるんですね | もちろんアライメント調整してもらいました。トー、キャンバー、キャスター1台分調整して2万1000円なり。偏摩耗してタイヤの寿命が短くなることを考えればやったほうがよいでしょ |
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| 最後に試走して問題がないことを確認して終了 | アライメント調整前後。特にズレの大きかったトーがキレイに揃っている | ということでいよいよ愛車にPS3を装着。詳しいレポートは次回お届けするのでお楽しみに!! |
(本田 雅一)