小型、静音、低消費電力のNUCをネットワークで活用!
どこからでも使えるもう1つのデスクトップとして使う

インテルから発売されている「NUC(Next Unit of Computing)」は、小型、静音、低消費電力でありながら、高性能なプロセッサを採用した注目のPCだ。通常のPCとして利用するのはもちろんだが、ネットワークに接続して、どこからでも使えるもう1つのデスクトップとして活用したり、サーバー的に使うとなかなか面白い。その活用例を紹介しよう。

使えるまでのプロセスを楽しめるNUC

インテルのNUC。左奥がDC5342HYE、手前がDC3217IYE、右奥がDC3217BY。このほかに、Celeron847を搭載した「DCCP847DYE」もラインナップする

 インテルから発売されているNUCは、手のひらサイズの小型自作PCキットだ。ハードウェアの詳細なスペックに関しては、こちらの記事を参考にしてほしいが、幅116.6×奥行き120×高さ39mmというコンパクトなサイズながら、Core i3/Core i5/Celeron847を搭載し、インターネット関連の各種サービスの利用はもちろんのこと、Officeアプリケーションの利用など、さまざまな用途に活用できるPCとなっている。

 PCと言っても、メモリやストレージを自分で組み込んで利用するベアボーンタイプの製品となっており、実際に利用するには、一般的なノートPCでも採用されているSO-DIMMタイプのメモリ、mSATA接続のSSDを用意、さらには付属のACアダプタをコンセントに接続するための電源ケーブル(3芯のいわゆるミッキータイプ)が必要となる。

 そう聞くと難しそうに思えるかもしれないが、実際の組み立ては、底面のネジを緩めてケースを開け、内部にメモリやSSDを装着するだけと簡単だ。自作はおろか、PCのケースさえ開けたことがないという人でも手軽に組み立てられるように工夫されているので、ちょっとした自作気分を味わえるうえ、内部のしくみを直接目にすることができる。

ほとんどリスクなく、組み立てのワクワク感を味わえるのもNUCのメリット

 PCに限らず、最近のデバイスは、箱から出して電源を入れればスグに使えるようになっている。もちろん、その手軽さも大切だが、使えるようになるまでに、いくつかのステップが必要なものの方が、製品としてのワクワク感がある。リスクをほとんど負うことなく、その気分を手軽に味わえるのがNUCというわけだ。

 組み立てだけでなく、OSのインストールも必要となるが、Windows 8など、最近のOSはインストールも簡単できるようになっており、特に苦労なくインストールできる。ハードウェア、ソフトウェアともに、使える環境を整えていくプロセスを楽しめる製品と言えるだろう。

もう1つのデスクトップとして活用

 NUCは、ユーザーの好み次第で、いろいろな用途に使えるPCだ。普通にPCとして使うも良し、改造するもよし、AV用途に使うもよしと、さまざま活用ができる(詳しくはこちらを参照

 個人的には、コンパクトなサイズと、高い静音性、そして省電力という特徴を活かして、「Next」ならぬ「"Network" Unit of Computing」として活用するのが面白いのではないかと思える。もちろん、Linuxなどをインストールしてバリバリのサーバーとして使うのも手だが、Windows 8のようなコンシューマー向けのOSでも、工夫次第で、いろいろ遊ぶことは可能だ。

 たとえば、筆者は、NUCをどこからでもアクセスできるリモートデスクトップ端末として使っている。

NUCにWindows 8をインストールし、リモートデスクトップを有効化。ルーターの近くや棚の上など、目立たない場所に置いておけば、もう1つのデスクトップとして活用できる

 NUCにWindows 8をインストール後、「システム」の「リモートの設定」から、「リモートデスクトップ」の設定で、「このコンピューターへのリモート接続を許可する」を有効にしておく。この状態で、ネットワーク上のPCからリモートデスクトップで接続すれば、今使っているPCとは別の”もう1つのデスクトップ”ができあがる。

 実際に何につかっているかというと、転送に時間がかかりそうなファイルをダウンロードするときにNUC上で実行させることが多い。仕事柄、光ファイバーは1人では使い切れないほど自宅に引き込まれているので、普段は使っていない回線にNUCをぶら下げておき、大きなファイルをダウンロードする場合に、NUCにリモートデスクトップでアクセスして、ファイルをダウンロードさせておく。

 こうすることで、仕事で使っているPCや回線に負荷をかけることなく、大きなファイルもダウンロードできる。

ファイルのダウンロード、ソフトウェアやサービスのテスト、といった用途にNUCを活用。メインPCに負荷をかけることなく、いろいろテストできる環境として重宝する

 まあ、あまり一般的な例えではなかもしれないが、普通の環境でも、たとえば、会社に行っている最中に、OSのプレビュー版などがリリースされた際、自宅にリモートアクセスして、NUCでファイルをダウンロードしておく、などといった使い方もできるだろう。

 また、本番環境で使う前にアプリをインストールして試すテスト環境として活用したり、年賀状ソフトなど決して使用頻度は高くないものの使えるようにしておきたいアプリを入れておくという使い方にも向いている。

 仮想環境を用意しても良いのだが、そこはやはり実機のNUCの方が制約は少ないうえ、ホストPCにも負荷をかけずに済む。また、実際に試してみるとわかるが、NUCのストレージがSSDである恩恵もあり、PCからのアクセスは極めて快適だ。

 OSの操作やアプリの利用で、サクサクとローカルのように操作することができる。Windows 8のRDPでは、通信にUDPを利用することで、ネットワークの帯域があまり確保できなくても高速なリモートデスクトップ接続が可能になっていることもあり、サブデスクトップと言わず、メインのデスクトップとして使ってもいい環境と言えるだろう。

 なお、Windows 8からは、ユーザーアカウントにMicrosoftアカウントを利用することが可能となっている。NUCのアカウントとしてMicrosoftアカウントを利用している場合は、リモートデスクトップ接続時に「○△□@live.jp」などをそのまま指定すれば接続できる。一方、ローカルアカウントを利用する場合は、「PC名\ユーザー名」というように、ユーザー名の前にNUCのPC名を付けてローカルアカウントであることを明示しないと認証に失敗するので注意するといいだろう。

タブレットや外出先から利用可能にする

 このように設定したNUCのデスクトップは、もちろんPCだけでなく、タブレットなどからも利用可能だ。

AndroidやiPad用のRDPアプリを利用すれば、タブレットからもWindows 8を利用可能
外出先からアクセスする場合は、ルーターでポート3389をフォワードしたり、DynamicDNSを利用して外部からのアクセスを可能にする

 たとえば、「RDP Windowsリモートデスクトップ(Android)」、「Jump Desktop(iOS/Android)」などは、Windows8に対応しているうえ、リモートデスクトップのNLA(ネットワークレベル認証)もサポートされる。また、Android版の「RDP Windowsリモートデスクトップ」に関しては、最新のRDP 8.0やRemote FXにも対応する。

 タブレットからの接続の場合、スタート画面などをそのままタッチで操作できるわけではないが(マウススクロールやカーソルキーで操作)、タブレットからWindowsを操作できるので、前述したダウンロードを実行させておくといった使い方には十分活用できる。

 また、条件さえ整えば、外出先からのアクセスも可能だ。セキュリティ上、設定や常用には注意が必要となるが、事前にNUCを接続しているルーターでポート3389をポートフォワードで設定したり、DynamicDNSなどでアクセスできるようにしておけば、タブレットでも外出先からNUCのデスクトップを利用できる。

 もちろん、接続するにはNUCの電源をオンにしておく必要があるが、NUCの消費電力は稼働時でも16W前後と、通常のPCに比べてかなり低い。もちろん、使いたい時に電源をオンにしても、すぐに起動するため、その運用も実用的だが、発熱も気にならず、音も静かなので、常時運用で使うことも検討するといいだろう。

ファイルサーバーとしても活用できる

 このほか、単純にファイルサーバー的に使うことも可能だ。写真など、家族で共有したいデータをNUCに保存し、ホームグループなどでファイル共有の環境を整えておけば、家族で簡単にデータを共有することができる。

 NUCの場合、ストレージがSSDとなるため、大量のデータを保存するには、外部にストレージを接続する必要があるが、USB3.0(DC5342HYE)、Thunderbolt(DC3217BY)を搭載したモデルを利用すれば、高速な外付けHDDなどを利用して、大量のデータを保存することも可能だ。

 また、デスクトップ用のSkyDriveアプリをインストールしておけば、NUCに保存したデータをSkyDriveと同期させることができるだけでなく、外出先からNUCの他のフォルダ(デスクトップやCドライブなど)にブラウザ経由でアクセスすることも可能になる。

 単なるデータの保存場所としてだけでなく、クラウドと連携するネットワークストレージとして活用する場合も、NUCという小型で、静かで、低消費電力のプラットフォームならではの特徴だ。

USB3.0を搭載したDC5342HYEなら外付けのHDDを利用してファイルサーバーとして活用することも可能
SkyDriveのデスクトップアプリをインストールしておけば、NUCのすべてのフォルダに外出先からアクセス可能

好きな場所に配置して活用しよう

 以上、インテルのNUCの活用方法の1つとして、ネットワーク経由でのデスクトップやストレージの利用方法を紹介したが、このPCのイイトコロは、やはりどこにでも置けるコンパクトさにある。

 今回紹介した活用方法では、電源が確保でき、ネットワークに接続さえできれば、家の中のどこに設置してもかまわない。棚の上、テレビの裏、家具と家具のすき間、さらには電源さえ確保できれば押し入れやクローゼットの中に設置してもかまわない。このため、アイデア次第で、今までのPCとはまったく違ったスタイルで楽しむことができるようになっている。

棚の上、押し入れの中など、いろいろなところに設置できるのがNUCのメリット

 自作PCというと、今までは、パーツを選んだり、組み上げたり、ベンチマークを計測したりすることが、メインの楽しみ方であったが、NUCは、どちらかというと、どのように活用するか?、どんなスタイルで楽しむか? という、そのさらに先の楽しみ方を目指した製品と言える。

 これまで、10回以上にわたって、いくつもの活用方法を紹介してきたが、NUCの使い方は人それぞれ、自分ならではの楽しみ方を見つけられるかどうかがポイントになる。「何に使おうか?」と、買う前に頭をひねる時間まで楽しめるデバイスと言えそうだ。