Core i7は大きな転換点

自作PCを楽しむ上で、インテルの新プラットフォーム移行は、PC環境を再構築するのに絶好のタイミングといえる
 PCの自作というのは、とてもエコなホビーだ。たとえば、手元でメインに使っているPCのミドルタワーケースは、たぶん、5年以上前に購入したものだ。ビデオカードを交換したり、ハードディスクを交換したり、また、マザーボードを入れ替えたりと、タイミングを見ながら手を入れてきたので、中身は最新鋭のプラットフォームに丸ごと入れ替わってしまってはいるが、見かけは5年前と何も変わらない。PCを自作するようになってすでに10年以上になるが、自在にすげ替えのきく業界標準の規格のリーズナブルさは、今も昔も変わらない。

 そんな自作ユーザーにとって、インテルの戦略は目を離せないひとつの指針でもある。インテルの動きを注意深く追いかけていれば、これからPCがどのような方向に向かっているのかが理解できるし、最小限の投資で手元の環境をうまくスライドさせ、テクノロジーの美味しいところを確実にリアルタイムで自分のものにできる。

 そして、Core i7の登場は、環境をフルに再構築するための絶好の機会になりそうだ。ケース以外は総入れ替えに近い大手術になるが、それを前提にしても、インテルプラットフォームにとっての大きな転換点だといえる。

自作するなら、今? ―インテルの「チックタックモデル」

 コードネームNehalemで呼ばれてきた新プロセッサCorei7は、インテルの「チックタックモデル」における「タック」に当てはまる製品だ。

 プロセッサのチックタックでは、まず「チック」でプロセス技術を革新し、その翌年「タック」として新たなマイクロアーキテクチャを導入する。つまり「チック」だった45nmのPenrynを進化させ、「タック」として新たなマイクロアーキテクチャを導入したのがNahalemというわけだ。

 プロセッサのプロセス技術が進化し、PCの消費電力が大幅に下がるというのは、グリーン意識の高まる昨今では、とても重要なことだが、自作派にとっては、それだけではあまりおもしろくないというのも正直なところ。せっかく新しいプロセッサを手に入れるのなら、アーキテクチャの変更による処理速度の向上など、目に見えて、そして体で感じられる変化が欲しいと思う。

 本当は「チック」と「タック」、両方のタイミングをフォローアップできればいいのだが、台所事情がなかなかそれを許さない。どちらか片方というのなら、「タック」のタイミングを選ぶのがPC好きの性だろう。むしろ、愛用システムの再構築のために、「タック」としてのCore i7出荷開始を待っていたというユーザーも決して少なくないはずだ。賢い自作ユーザーなら、このチャンスを逃すはずがない。

 インテルがチックタック戦略をとるようになって、プロセッサのマイクロアーキテクチャは2年おきに刷新されるようになった。チックとタックが1年ごとに繰り返されるのだから当たり前だ。ということは今、最新のプロセッサとしてCore i7を手に入れても、1年後にはプロセス技術が刷新され、2年後にはさらに新しいアーキテクチャが生まれる。技術の進化は慌ただしいが、そのことがわかっているなら計画も立てやすい。

 だから、せっかく新しいプロセッサを手に入れるのであれば、その2年間をフルに満喫できるようにしたいものだ。時計の振り子というよりも、縄跳びみたいなもんだろうか。チックとタックにうまく合わせてタイミングよく波に乗っかるのが賢い自作ユーザーだ。人柱の様子を見て…なんていっていると、確実にタイミングを逸してしまう。それに今回の「タック」は、FSBの撤廃やノースブリッジ機構の統合など、刷新の度合いとして、ちょっと振り幅が大きい。

 ぼく自身、PCはまだまだ遅いと思っている。だから、もっと速くなってほしい。もちろん、PCのスピード感を決めるのはプロセッサだけではなく、ビデオカードやハードディスクの読み書きスピードなどの要因も重要なのだが、やっぱり、パソコンに待たされる時間は短ければ短い方がいい。

 Windows 7の状況も少しずつわかってきた。Core i7とWindows 7。果たしてふたつのセブンは偶然なのだろうか。いずれにしても、PCの新たな時代が、今、まさに始まろうとしていることは間違いなさそうだ。

[Reported by 山田祥平]