iiyamaは日本の老舗ディスプレイブランドである。皆さんはiiyamaと言えば、どんな製品を思い浮かべるだろうか。飾り気のない質実剛健な、ビジネス用途向け風の液晶ディスプレイを思い浮かべる人が多いかもしれない。または少しPC使用歴が長い人なら、国産でありながら高いコストパフォーマンスを実現していた、液晶同様に質実剛健なブラウン管ディスプレイを思い浮かべるだろうか。どちらにしてもiiyamaは、良い意味であまりデザイン面での主張をしない、昔ながらのマニア受けするタイプのディスプレイを数多く発売してきたディスプレイブランドだ。
そんなiiyamaが新機軸として打ち出したのが、今回ご紹介する27型WQHD(2,560×1,440ドット)解像度の液晶ディスプレイ「ProLite XB2779QS」である。
まるで大型タブレットかのような、ベゼルがないスマートなデザイン。画面の下にスタイリッシュに入れられたシルバーのライン。明らかにデザイン性を意識した、下から上にスラッと伸びるスタンド。さらに、この液晶ディスプレイが本当にiiyamaのものなのかを疑いたくなる光沢パネルの採用。古くからiiyamaを知る人ほど、この“らしくない”製品に驚いてしまうだろう。それはiiyamaの担当部署がある社内でも同様で、この製品の試作品が届いたときは、「それ、どこの液晶?」と他部署の社員が何人も聞いてきたほど。
iiyamaの液晶ディスプレイということで、iiyamaらしい、そつがない性能面をまず紹介したいところだが、今回の製品はとにかくデザインが最大の特徴ということなので、分かりやすくフォトレビュー形式で紹介していきたい。
本当にデザインが良い製品というのは、見た目だけでなく使いやすさも同時に備えているものだ。たとえば本製品の場合には、スタンドに縦長の穴を空けることでスタンドをよりスマートに見せている。これはデザイン上の工夫だが、実はこの穴はケーブルホルダーの役目を兼ねている。本体の背面に接続する電源ケーブルや映像ケーブルをこの穴に通すと、雑多なケーブルをスマートに後方に出すことができる。穴の大きさには余裕があるので複数の映像ケーブルを接続する場合にも簡単に配線することができて使い勝手も上々だ。
このスタンドは見た目はシンプルだが結構多機能で、iiyamaコダワリのスタンドでもある。首を左右に45度ずつ振ることができ、上下の傾きは奥側に17度まで傾けることが可能だ。自分の目線に合わせてかなり自由に調節できる。また、27型液晶ともなると結構な重量があるわけだが、130mmの範囲で上げ下げできる昇降機能は、かなり軽い力でスムーズに動かせるように絶妙な調整がされている。軽く動くにもかかわらず、思い通りの位置でピタッと止めることができ、大変使いやすい。画面の位置を一番下げた状態でスタンドに付いているボタンを押すと昇降機能をロックすることもでき、たとえば液晶を移動させたいときなどにスタンドが勝手に伸びてしまうことを防ぐことができる。使う人のことをよく考えている、見た目だけではない使いやすいスタンドだ。こういった細かい部分の満足度を高めているところが使っていてとても気持ちいい。
スタイリッシュかつ使いやすい機能としては、OSDメニューの操作ボタンも上げられる。映像入力信号の切り替えや各種色調などの調節を行えるOSDメニューの操作は、画面右下にあるタッチボタンで行う。ボタンと言ってもタッチセンサーなので、表面にボタンの種類が印刷されているシンプルでスタイリッシュなものだ。タッチセンサーの反応は機敏で、ストレスなく操作できる。電源ボタンだけは押しボタンのような形状をしているが、実はこれもタッチセンサーなので指で触れるだけで電源のオン/オフを行える。スッキリとした未来的なデザインの中、電源ボタンだけが少しレトロ調なのが良い雰囲気を出している。
最近の液晶ディスプレイ市場は価格競争が激しく、一部のビジネス向けモデルやゲーム用モデルを除けば大変安価に入手できるようになっている。また、液晶ディスプレイメーカーに対して液晶パネルメーカーの数が少ないので、メーカーは異なっていても同じ液晶パネルを使用する製品が多く、性能もほぼ同じものが多数販売されている。そうなると、メーカーはさらなる価格競争のために細部のコストダウンを行い、ますます似たり寄ったりの製品だらけになってしまう。これが、現在の液晶ディスプレイ市場の状態だ。
どれを買っても大して変わらないのだから、より安い製品を選ぶことになる。でもちょっと待ってほしい。液晶ディスプレイは、PCと比べたら長い期間使い続ける製品だ。だからこそ、少しの金額の差を気にするのではなく、自分が本当に満足できる製品を選んでほしい。たとえば画面の高さや角度をよく動かす人なら、今回紹介したiiyamaの製品のように、その部分の品質にこだわった製品を選ぶべきだ。安いだけの液晶ディスプレイを選んだ結果、高さを調節するたびに少し気分の悪い思いをしてしまうというのはバカバカしい。せっかく買うのなら、気持ちよく使い続けられる製品を選ぼう。
iiyamaのProLite XB2779QSは、前述したスタンドの調節機能が優秀というのもワンランク上を感じさせる部分だが、やはり何と言ってもそのスタイリッシュなデザインが満足度を高めてくれる。筆者は普段、ベゼルと液晶パネルとの段差が7mmもある少し古めの27型液晶を使用している。今回、その液晶とiiyamaの液晶を置き換えてしばらく使ってみたわけだが、もっとも違いを感じたのは部屋に入るときだった。
液晶を変えただけなのに、ちょっと部屋がオシャレになったかのような気持ちになるのだ。ベゼルフリーの27型液晶というのは、その強烈な黒い板感というか、スタイリッシュ感というか、デザイナーが使っていそうなオシャレ感というか、とにかく目を引く。ハデというのとは違い、どちらかと言えば落ち着いた雰囲気なのだが、存在感が凄いのだ。オシャレなカフェなんかに置いてあったら絵になりそうな雰囲気を持っている。筆者の部屋には似合いそうもないデザインなのだが、意外にも違和感なく馴染み、部屋の雰囲気が良くなったかのような気持ちにすらなった。
散らかった筆者の机でもこれなのだから、机の上のごちゃごちゃしたものを片付けて、この液晶ディスプレイとキーボードとマウスだけで使ったら、相当にデキル男風の部屋になるのではなかろうか。最近は、ノートPCを液晶ディスプレイに繋げて、広い画面でノートPCを使う人が増えている。この液晶ディスプレイに合ったシルバー系のスリムなノートPCを繋げたら、凄くかっこいいだろう。実際のところ、この製品がそういった用途も想定してデザインされていることは間違いないだろう。それくらいシルバーのノートPCが良く似合う。
べた褒めになってしまったが、事実今回は液晶ディスプレイにとってデザインが大変重要なものだということに改めて気付かされた。部屋にいる間は必ず目に入るものだし、PCを使っているときにも常に見ているものなのだから、気持ちや気分にも影響しやすい。iiyamaのこの新しい液晶ディスプレイは、見て使っているだけで高い満足感を得ることができ、自分がデキル男になった気がしてくる。デザインの力とは凄いものだ。
最後にスペックについて見ていこう。細かいスペックはスペック表を見てほしいが、目立った部分を簡単に紹介していく。ProLite XB2779QSは、27型ワイドサイズで2,560×1,440ドットの表示が可能な高解像度液晶ディスプレイだ。27型は大き過ぎると感じる方もいるかもしれないが、それは一昔前の話で、現在は各社から同サイズの製品が販売されていて結構人気も出ている。仕事にも使いやすく、動画やゲームでは迫力ある画面を楽しめて1度使うと24型や21型には戻れない魅力がある。
●スペック表 | |
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製品名 | ProLite XB2779QS |
画面サイズ | 27型ワイド |
最大表示解像度 | 2560×1440 |
液晶パネル | AH-IPS |
画素ピッチ | 0.233mm |
視野角 | 左右各89°、上下各89° |
応答速度 | 5ms(G to G) |
輝度 | 工場出荷状態:350cd/m2、標準:440cd/u |
コントラスト比 | 1000:1(ACR使用時5,000,000:1) |
表示色 | 16,777,216色 |
広色域対応 | NTSC比 82%(CIE1931)、sRGBカバー率116% |
映像入力端子 | DisplayPort、HDMI、DVI-D、D-Sub 15ピン |
オーディオ入力端子 | φ3.5mmステレオミニジャック |
オーディオ出力端子 | φ3.5mmステレオミニジャック |
スピーカー | 2W×2 |
昇降調節 | 130mm |
スウィーベル調節 | 左右各45° |
上下角度調節 | 上方向17° |
消費電力 | 工場出荷状態:55W、標準:68W、最大:95W |
サイズ | 幅650.0mm×奥行き230.0mm×高さ434.5〜564.5mm |
重量 | 8.2kg(スタンドなし6.0kg) |
2,560×1,440ドットという高い高解像度も同様だ。より広い解像度というのは、1度使うとより狭い解像度には戻れない快適性を持っている。使ってみてとくに快適に感じたのは縦の解像度で、筆者が普段使っている1,920×1,200ドットと比べて、縦にわずか240ドット増えただけで、こんなにも使い勝手が変わるとは思っていなかった。WebブラウザーやExcelを普段よりも下まで表示でき、情報の一覧性が大きく増す。横方向の解像度も、WebブラウザーとWordやExcelというように横に2つのウィンドウを並べて表示させても狭さを感じず快適に作業を行える。今までにも液晶ディスプレイを紹介するときには書いてきたことだが、やはり解像度は高ければ高いほど快適だ。今から新しく液晶ディスプレイを買うなら、これくらいの解像度は欲しい。
使用する液晶パネルは、左右上下89度の広い視野角と、高いコントラスト比が特徴のAH-IPSパネルだ。視野角が広いので、余程変な角度から見なければ、大きく色調などの見え方が崩れるということはない。AH-IPSパネルは低消費電力ということも特徴だが、本製品では明るさを抑える3つの低消費電力モードを搭載することで、工場出荷時状態の55Wから、Ecoモード1で約5.4%、Ecoモード2で約19.3%、Ecoモード3で約30.9%の省電力化を実現している。通常モードが十分に明るいため、筆者の場合にはEcoモード3で使用してちょうど良い明るさだった。大画面でも低消費電力なので、24型や21型からの買い替えの場合でも電気代をそれ程気にしなくてもよいのはうれしい。
インターフェースは、DisplayPort、HDMI、DVI-D、D-Sub 15ピンの4種類を用意しており、PCのほかにゲーム機やHDDレコーダーなどを接続して入力を切り替えて使用できる。液晶素子の動きを速くして残像感を軽減するオーバードライブ回路を搭載し、グレー to グレーの応答速度は5msを実現している。これなら、動画やゲームも快適に楽しめる。また、出力2Wのステレオスピーカーを本体の後ろに搭載しているので、別途スピーカーを用意することなく音を出すことも可能だ。映画モードやゲームモードなどのプリセット画質モードも搭載しており、Webブラウザーや文書作成などの通常の用途はもちろん、エンターテイメント液晶としても高い実力を持っている。
iiyamaらしい高い性能と、iiyamaらしくないスタイリッシュなデザインを持つProLite XB2779QSは、液晶ディスプレイの新しい選び方を提案する意欲的な製品だ。各社横並びで価格競争を行っている液晶ディスプレイ市場において、付加価値としてのデザインを前面にアピールするというのは確かにアリである。デザインと共に、スタンドなどの細部の品質と使い勝手に配慮している点も高く評価できる。そして、それらの要素が実際に製品の大きな魅力へとしっかりとつながっている。
この液晶ディスプレイを買った人は、きっと机の上に設置したときに高い満足感を得るだろうし、実際に使い始めたときにさらに満足し、1年後にもその満足感は変わっていないだろう。しっかりとした性能と、美しく、かっこよく、スタイリッシュなデザインを備えているProLite XB2779QSは、価格重視で選ぶ液晶ディスプレイでは得ることができない満足感を得ることができる。長い間使える液晶ディスプレイを真剣に探している人には、このProLite XB2779QSをぜひオススメしたい。
(小林 輪)