
日本HPの「HP Pavilion Notebook PC dv7」(以下、dv7)は、インテル Core i7-820QM プロセッサー(以下、Core i7)と、NVIDIA GeForce GT 230M(以下、GeForce GT 230M)を搭載するハイパワーノートだ。そんじょそこらのハイパワーノートと異なるのは、システム用に何とSSDを採用し、データの保存用にHDDまで搭載している点にある。ハイパワーノートを名乗るにふさわしい隙のないスペックに、ちょっとワクワクしてしまう人も多いのではないだろうか。
このdv7は、日本HPのノートの中で最上位に位置し、“高性能”+“エンターテインメント性”+“デザイン性”の3つの特徴をウリにしている。この3つの特徴を押さえれば、dv7の全体像が見えてくるので、各特長について簡単に説明しておこう。
まず、“高性能”に関しては前述したとおり隙のないスペックとなっており、正に言葉通りだ。下手なデスクトップPCを上回る性能を持っている。
次に“エンターテインメント性”については、ノートにしてはかなり大きな17.3型のワイド液晶の搭載と、ノートにしては珍しい、サブウーファーを備える2.1chスピーカーの搭載があげられる。この組み合わせで、大画面の迫力と、低音の利いた迫力サウンドを楽しめるわけだ。しかも、これだけではない。ブルーレイディスクドライブを備え、本体に収納できるAVリモコンまで付いている。これだけ豪華だと、dv7自体をミニホームシアターと表現しても良いかもしれない。
最後の“デザイン性”は、結構大事な部分でありながら、ハイパワーノートの分野ではどうも軽視されがちな部分だ。日本HPは、ハイパワーノートでもデザインを軽視することなく、しっかりと仕上げてきた。写真を見ていただければ分かると思うが、ボディの表面に柄(デザインパターン)が入っており、無機質なノートを、あたかも表現力あふれる作品のように見せている。この柄とボディの表面は、「HP Imprint」技術と「VMフィニッシュ」技術により実現しており、はげてしまうことがなく、さらに傷が付きにくいという特徴も持っている。
以上が、dv7の概要だ。どうだろうか、なかなか凄いノートが出てきたと思われた方も多いのではないだろうか。dv7は、日本HPの直販WebサイトでBTOによる販売を行っているので、各搭載パーツは自分で変更できる。本記事では、もっともハイスペックの構成で用意したdv7を紹介していく。では、dv7の細部を見ていこう。
HP Pavilion Notebook PC dv7スペック表
モデル |
HP Pavilion Notebook PC dv7 |
価格 |
139,650円〜 |
OS |
Windows 7® Home Premium
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CPU(選択可能) |
・インテル® Core™ i7-820QM プロセッサー
(1.73GHz/TB時最高3.06GHz、スマートキャッシュ8MB)
・インテル® Core™i7-720QM プロセッサー
(1.60GHz/TB時最高2.80GHz、スマートキャッシュ6MB)
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チップセット |
モバイル インテル® PM55 Express チップセット
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グラフィックス機能 |
NVIDIA® GeForce® GT 230M(GDDR3 SDRAM 1GB) |
メモリ(選択可能) |
・PC3-8500 DDR3 SDRAM 4GB(最大8GB)
・PC3-8500 DDR3 SDRAM 2GB(最大8GB) |
ストレージ(選択可能) |
・SSD 128GB+HDD 500GB
・HDD 500GB×2
・HDD 320GB |
光学ドライブ |
DVDスーパーマルチドライブ(ブルーレイディスク読み出し対応)
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液晶 |
17.3型ワイドウルトラクリアビュー液晶(1,600×900ドット) |
ネットワーク |
IEEE802.11a/b/g/n、1000BASE-T、Bluetooth 2.0+EDR |
バッテリー駆動時間 |
約3.5時間 |
サイズ |
横414×奥行き278×高さ33〜46mm |
重量(バッテリー搭載時) |
約3.38kg |

dv7が搭載するCore i7は、ほかの多くのノートが搭載しているインテル Core 2 Duo プロセッサー(以下、Core 2 Duo)と異なり、CPUコアを4つも内蔵しているマルチコアCPUだ。しかも、擬似的にコア数を増やす、インテル ハイパースレッディング・テクノロジーに対応しているため、OSから見えるCPUコアの数は8つにもなる。
Windowsのタスクマネージャーを表示すると、実際に8つ分のコアの動作状況をリアルタイムで確認できて、かなり楽しい。Webブラウザで動画を見たり、MP3形式の音楽ファイルを再生したり、この文章を書いたりしている程度では、CPUコアは3つか4つ程度しか動かず、CPUパワーは余りまくりだ。上記処理を全て同時に行っても、CPU全体の使用率は20%にも届かない。さすがCore i7である、Core 2 Duoとは格が違う。
さらに、Core i7はインテル ターボ・ブースト・テクノロジー(以下、ターボ・ブースト)を搭載しており、Core 2 Duoとは一線を画している。ターボ・ブーストとは、CPUへの負荷が高まったときに、自動でCPUの動作クロックをオーバークロックする技術だ。dv7が搭載するCore i7の場合、低負荷時には省電力モードの1.2GHzで動作しているが、負荷がかかると定格の1.73GHzまでクロックが上がる。そして、その時点でCPUの動作温度に余裕があった場合には、最高で3.06GHzまでターボ・ブーストによってオーバークロックが行われる。
ターボ・ブーストが動作する様子は、インテルが配布している「Intel Turbo Boost Technology Monitor」で見ることができる。普通に使っているだけでは、滅多にターボ・ブーストが働いている様子を見られることはないが、それは、Core i7がそれだけ余裕たっぷりで動作しているということを表わしている。CPUパワーの限界時にだけターボ・ブーストしてくれるCore i7は、省電力とハイパワーを両立した、ハイパワーノートにピッタリなCPUなのだ。
dv7のハイパワーは、CPUパワーだけではない。グラフィックス機能もCPUと同様にハイパワーだ。dv7が搭載するGeForce GT 230Mは、3Dゲームを難なく実行できるほどの性能を持ったGPUである。動作クロックは1.1GHzもあり、ビデオメモリには1GBのGDDR3 SDRAMを搭載する。実際、最新のラリーカーレースゲームである、Codemastersの「Colin McRae: DiRT 2」で遊んでみたが、テストであるということを忘れて1時間もやり続けてしまったほど、普通に遊べる。
さらに、GeForce GT 230MはNVIDIA PureVideo HDに対応しているので、H.264、VC-1、MPEG-2の各動画をGPU側でデコードすることが可能だ。たとえば、ブルーレイディスクで映画を見るときに、CPUにほとんど負荷をかけることなく映像をスムーズに再生できる。dv7の場合にはCPUパワーも凄いので、CPUに負荷がかかっても大したことはないわけだが、そこはやはり専用の機能を搭載しているGPUに処理してもらったほうが効率が良い。
ほかにも、GeForce GT 230MはNVIDIA CUDAにも対応しており、NVIDIA CUDAに対応する動画編集ソフトなどで、CPUとGPUの両方を連携させて高速に処理を実行できる。これは、いわゆるGPGPU(General Purpose GPU)と呼ばれている技術だ。GPUが得意な演算はGPUに任せることで、CPUだけで処理を行うよりも圧倒的に高速に処理を行える。GPUを単体で搭載しているノートでしかできないことなので、多くのノートではこのような処理は行えない。dv7のようなハイパワーノートならではの機能と言える。
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グラフィックス機能には、高機能なGeForce GT 230Mを搭載している。ビデオメモリとしてGDDR3 SDRAMを1GB搭載しており、3Dゲームも楽しめる
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Futuremarkの3DMark06の結果も、ノートとしてはかなり高い値を叩き出した。このベンチマークソフトを実行できるだけでも、さすがハイパワーノートと言える
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dv7ならではの部分と言えば、高速なSSDと、大容量のHDDを両方搭載していることが大きな特徴となっている。OSのインストールドライブは、アクセス速度がPC全体の動作速度に大きく影響するため、できるだけ高速なほうが良い。そのため、dv7ではOSのインストールドライブに、128GBのSSDを使用している。しかし、SSDだけでは容量が心もとないので、データ保存用として500GBのHDDも搭載しているわけだ。実際に使ってみれば分かるが、これは素晴らしい組み合わせである。全ての動作が、HDDだけを搭載するノートよりも1段速いように感じられる。高速なSSDと高速なHDDの組み合わせということで、さすがハイパワーノートと言える部分だ。

dv7は、ハイパワーに加えてエンターテインメント性が高いノートでもある。まず、17.3型のワイド液晶の迫力はなかなか凄い。最近の液晶テレビ事情を考えると、17.3型ワイドでは小さく感じてしまうかもしれないが、実際にはそんなことはない。ノートの場合、目と画面の距離が近いため、サイズ以上に画面が大きく感じるのだ。
ブルーレイディスクの映画1本と、アニメを1本の計3時間ほどdv7で映像を見てみたが、画面が近いので没入感はかなりのものだった。画面解像度は、1,600×900ドットなのでアスペクト比は16:9。つまり、ワイドテレビと同じだ。ビスタサイズの映画なら、ほぼ全画面で表示できる。液晶は、画面の表面に光沢があるタイプなので、発色も鮮やかで画質も鮮明に見える。
また、dv7はブルーレイディスクの読み出しに対応した、DVDスーパーマルチドライブを搭載している。当然再生ソフトも付属しているので、そのままブルーレイディスクの映画などを見ることができる。ブルーレイディスクのHD画質の映像なら、目と画面の距離が近くても粗さを感じることはなく、高精細でキレイに見える。
映画を見ているときに気付いたのだが、dv7はなかなか良い音を鳴らす。それもそのはず、dv7が搭載するスピーカーは、定評のあるALTEC LANSING製だ。しかも、キーボードの左上と右上に1つずつと、本体の底面に1つの計3つのスピーカーを搭載する2.1ch構成を採用している。底面のスピーカーはサブウーファーで、このスピーカーのおかげで、dv7はノートにも関わらず比較的しっかりとした低音を鳴らすことができている。ステレオスピーカーも、ノートとは思えない程、細かい音をキチンと表現できていて、気持ちよく音楽を聴くことができる。ただ音が鳴るだけというレベルのノートが多い中、これは結構驚かされた。
映画を見たり音楽を聴いたりしているときには、トラックの移動や音量の調整などを付属の小型リモコンで行える。リモコンは、本体の左側面にあるExpressCard/54/34スロットに収納できるので、使わないときにも邪魔にならない。また、キーボードの上にもトラック移動や音量調節などを行えるタッチボタンが搭載されており、そこを指で触れるだけで操作を行える。映像の迫力、良い音、気のきいた操作性など、エンターテインメント性の高いノートとして、使う側がストレスなく楽しめるようによく工夫されている。まるで、自分だけのホームシアターのようだ。

エンターテインメント性と言えば、dv7には、買ってすぐに使える便利でお得なソフトが標準で付属している。自分でソフトを買わなくても、動画編集や写真の加工、オリジナルDVDやオリジナルCDの作成が可能だ。
具体的には、動画編集ソフトとしてはCorelの「VideoStudio 12 Plus」が付属している。このソフトを使えば、ビデオカメラから動画を転送〜編集して、自分だけのオリジナル動画を作成できる。もちろんDVD-Rにも保存できるし、iPodに最適なMPEG4動画や、YouTubeなどに最適なflv動画を作成したりすることもできる。パッケージ版では2万円くらいするソフトなので、それが標準で付属しているのはかなりお得である。
また、写真の加工を行える画像加工ソフトには、Corelの「Paint Shop Pro Photo X2 Ultimate」が付属する。画像加工ソフトなので、画像のリサイズや明るさの調整、傾きの修正などを行えることはもちろん、写真の中の不要な部分を不自然にならないように消したり、肌をキレイに見せたりすることなどが行える。こちらも、パッケージ版なら2万円ほどするソフトだ。
どちらのソフトも機能限定版のようなものではなく、全ての機能を使えるフルバージョンなので、ずっと使い続けることができ、搭載機能も簡単には使い切れないほどに豊富だ。ほかにも、オリジナルDVDやオリジナルCDの作成や、DVD-Videoの再生なども行える「CyberLink DVD Suite Deluxe」や、写真の管理や音楽ファイルの管理ができる「HP MediaSmart」が付属している。どれも結構使えるソフトなので、エンターテインメント関連の作業は、大抵のことは別途ソフトを購入しなくても、dv7だけでできてしまう。

日本HPは、実はかなりデザインにこだわっているメーカーだ。それは、このdv7でも変わらない。たとえば、dv7の液晶カバーには、ユニークなデザインパターンが入っている。これは、日本HPが「ZEN-design」と呼んでいるデザイン手法で、デザインチームが世界中の自然や文化などを原案にしてデザイン化を行ったものだ。dv7が採用するデザインパターンは「kirameki(煌)」と呼ばれているもので、ハデでもなく地味過ぎることもなく、上質な雰囲気を出している。
この独特のデザインパターンは、樹脂を流し込んだフィルムを対象物に転写する「HP Imprint」という技術を使用して実現されており、はげることがないという特徴を持っている。HP Imprintは、キーボードのキートップ部分にも使われているので、通常のノートのように、キートップの文字がはげてしまうということがない。また、HP Imprintによるデザインパターンは液晶カバーだけでなく、パームレスト部分にも施されており、ノートを使っているときも使っていないときもデザインパターンが見えるようになっている。さらに、パームレスト部分と側面の塗装の仕上げ工程には、真空圧着による金属加工処理である「VMフィニッシュ」を利用することで、金属風の光沢と高級感を持たせている。VMフィニッシュには、傷を付きにくくする効果もあるので、この高級感を長期に渡って維持できる。
液晶カバーには、使用時に白く光るHPロゴも付いていて、さりげなくかっこいい。光ると言っても、ハデに光るわけではないので全体の高級感を壊すようなことはなく、デザイン上のワンポイントとしてうまく配置されている。ハイパワーノートと言うと無骨なデザインのものが多い中、dv7はデザイン性にもこだわっている希少なノートだ。

dv7のキーボードは、キーピッチ19mmのフルサイズキーボードを搭載している。しかも、数字の入力時やゲームを遊ぶときに便利なテンキー付きだ。大きさといい、テンキーの搭載といい、ほぼデスクトップPCと同じような感覚で使用できる。キーストロークも、ノートにしては深い2.5mmを確保しており、長文の入力でもストレスを感じない。
タッチパッドは、右はじに上下のスクロール機能を搭載する大きめのもので、ボタンがやわらかくてストロークも深いので使いやすい。長時間使っても指が痛くなるようなことはないだろう。dv7のタッチパッドの場合、キーボードを打っているときに手と干渉することはないが、干渉しても問題が起らないように、タッチパッドの機能をオン/オフするボタンをタッチパッドのすぐ上に搭載している。入力インターフェース周りはできがかなり良く、快適な使用感だ。
エンターテインメント性のところでも紹介したが、キーボードと液晶の間部分に付いているタッチセンサーもかなり便利だ。音量の調整とミュート、音楽などの再生/停止、トラックの移動、無線機能のオン/オフを指で触れるだけで行える。

最後にまとめると、dv7はかなり完成度が高いハイパワーノートと言える。何でもサクサクこなせるCPUパワー、3Dゲームも遊べるグラフィックスパワー、高速なSSDと大容量HDDの理想的な組み合わせ、ミニホームシアターと呼べるほどの大画面と迫力ある2.1chスピーカー、無骨さがない高いデザイン性、気持ち良く使えるインターフェース、どこをとってもハイレベルで隙がないノートに仕上がっている。
ほぼ万能のノートなので、ノートの性能に不安がある人や、デスクトップPCでは大き過ぎると感じている人、何にでも使えるノートが欲しい人などにオススメだ。
プロフィール
小林 輪
バイク好き、車好き、パソコン好きのライター。パソコンのハードウェアを中心に、レビュー記事などを執筆中。
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