【大画面のご意見番 西川善司の眼】AQUOSの画質がいろいろなものにつながる!
  液晶マルチモニター「液晶IT-TV IT-26M1」パソコンはもちろんDVD、ゲーム機など、どれを接続しても高画質で!!


いまどきの液晶ディスプレイ購入基本論

 液晶ディスプレイを購入しようと思ったときに、我々はどんな要素を選択基準に考慮するのだろうか。

 まず、このご時世、多くの人が最初に配慮するのがコストパフォーマンスだ。つまり、値段と機能、品質のバランスだ。映像機器は毎日接するものだけに、映像の美しさを体現できる製品でなければ、意味がない。ただ、値段が安いだけではだめなのだ。

 次に画面サイズ。幾ら高画質でも映像機器である以上は、ある程度の大きさの画面がほしい。しかし、基本的に価格と大きさは比例関係にあるので、大きくても高いのでは現実的に買いづらい。コストパフォーマンスと微妙なバランス関係を持った要素だと言える。

 以降は、人によって順位の逆転はあれど、大体こんな感じではないだろうか。

 接続性。PCはもちろんとして、DVDプレイヤーやゲーム機が接続できればそれに越したことはない。特に一人暮らしならば、基本的に見るのは自分1人なのだから、同時に使うのは1画面のはずで、部屋に何個も画面があっても扱いづらい。様々な用途でしっかり使える映像機器であることが望ましい。

 画質。接続性の部分にも関係の深い要素だが、PC、DVD、ゲーム機、どれを接続しても高画質でなければ、そもそもいろんなものを接続して使おうとは思わない。何を繋いでも高画質に映ること。接続性を多様化した映像機器の宿命であるともいえる要素だ。

 テレビが見られること。最近の液晶ディスプレイでは多くの製品に採用されつつあるアイディアとなっている。PCディスプレイとして見れば絶対的に必要な機能ではないが、映像機器としてみれば映ってくれた方が映らない機種よりも魅力的に思える。

 さて、今回シャープより発売された「IT-26M1」は、そうした液晶ディスプレイに求められる各要素を、高レベルで満足する待望の製品となっている。
 各要素別に深く見ていくことにしたい。


コストパフォーマンスと画面サイズ〜優れたコストパフォーマンスと絶妙な画面サイズ、必要十分な解像度/26型が約23万円!


画面部は左右あわせて90°方向に回転が可能。上下方向は上15°、下5°の範囲で傾きを変えられる。
 
奥行きはディスプレイ部が110mm、スタンド部を含めると256mm。テレビチューナーや接続端子パネルなどを一体化したボディデザインの割にはなかなかコンパクトだ。
 
  背面の規則正しく列んだ10個の穴は、VESA規格準拠の市販のアームや取り付け金具などを取り付けるためのネジ穴。

 IT-26M1の画面サイズは型番からも分かるように26型。表示画面サイズは横564.8mm×縦317.6mm。パーソナル向けの液晶モニタとしては最大級の画面サイズを持っている。

 実際に、IT-26M1の実機を自宅に借りて評価している段階で気が付いたのだが、26型という大きさは、実に具合の良い大きさなのである。

 PCディスプレイとして机に置いて使う場合、画面の位置は、目の位置からおよそ40センチ前後になるはずだ。この位置からだと26型という大きさは「画面が大きい」という実感が得られつつも、「大きすぎない」のである。PCディスプレイとして使う場合には、デスクトップ画面全域がぎりぎり視界内に収まり、画面全体の情報を掌握可能なのだ。これ以上大きいと…たとえば32型や37型クラスになると、画面までの距離40センチでは視界からはみ出てしまい、PCディスプレイとしては大きく感じてしまう(テレビとしては良いかもしれないが)。

 そして、一方、DVDやゲーム、テレビなどの観賞用映像を表示する目的で使う場合には、その「画面が大きい」という魅力の方を必要十分に享受できる。

 もちろん、26型という大きさは、ダイニングやリビングに置く大きさとしても、満足できる大きさであり、あえてPCディスプレイとしてではなく、テレビや汎用映像モニタとして活用しようとしているユーザにも不満はないはずだ。

 画面サイズは良いとして、解像度はどうか。

 PCディスプレイとしては、画面が大きいだけではダメだ。

 IT-26M1のパネル解像度は1366×768ドット。縦解像度はPC実用に十分なXGA(1024x768ドット)相当ありながら、横方向はSXGA(1280x1024ドット)を上回っている。一般的な縦長の文書ファイルを2ページ分、左右に並べて編集したり、横方向に長い表計算シートを全画面表示してスクロールバーのお世話にならずに編集できたり…と実用性は高い。グラフィックス制作系の用途においても、メイン編集画面を十分な大きさで取りながら、パレット群を余ったスペースに配置しておく…といった活用も見出せる。

 そして価格はどうなのか。IT-26M1の価格はオープンプライスという設定なのだが、シャープによれば大体23万円程度になる見込みだという。
(注 12月7日価格改定により、販売価格は\199,815となっている)

 これはいわゆる「1インチ1万円以下」であり、かなり「頑張っている価格」ということができる。

 パーソナルユースとしては絶妙な26型という画面サイズ、1インチ1万円以下の価格、それでいて十分な解像度。

 万人が最も重視するコストパフォーマンスと画面サイズの最重要要素において、IT-26M1は見事、合格点をマークしているのだ。


接続性〜PCはアナログ/デジタル2系統、ビデオはD4入力対応を含む全3系統
画面解像度1366×768ドットで表示させてみた
 
  もちろんアスペクト比4:3の従来の画面モードにも対応している。一般的な1024x768ドットモードもこのようにアスペクト比を正しく維持しての表示も行える。
 
  PC入力端子横にあるステレオミニプラグ形状の音声入力端子にも注目。映像だけでなくPCから音声もIT-26M1のステレオスピーカにて再生可能なのだ。
 
  ビデオ系の入力端子は正面向かって右側の側面部にある。アンテナ入力は出力端子もあるのでアンテナ分配機などを追加購入せずともビデオレコーダー等へアンテナ線を接続可能。
 
  フロントパネルの扉を開けるとここにもビデオ系入力が。抜き差しの機会が多いAV機器はここに接続するといい。

 IT-26M1は、PCと繋ぐ液晶ディスプレイとして、あるいは日々活用する液晶テレビとしてだけでなく、様々なAV機器からの映像出力を一手に引き受ける"映像センター"としての役割が果たせるよう、他に類を見ないほどの高い接続性をもたらされている。

 まずはPCとの接続だが、これはD-Sub15ピン端子によるアナログRGB入力と、DVI-D端子によるデジタルRGB入力の両方式に対応する。これらの接続端子をそれぞれ別々のPCに接続することで、2台のPCからIT-26M1を共有使用することも可能だ。表示の切り替えはリモコン上の[PC]ボタンで交互に切り換えられる。

 さて、こだわるPC上級者は、1280x768ドット、1360x768ドットといった画面解像度への対応状況を気にすることだろう。

 これについては実際に試してみたところ、アナログRGB入力においては1360x768ドットモードへの対応を確認できた。液晶パネル上の表示画素とPC側からの描画画素が1対1にマッピングされ、なおかつパネルのほぼ全域を活用して表示されるため、IT-26M1のポテンシャルを100%活かされる表示方法になる。

 一方、デジタルRGB入力では1280x768ドットの方に対応しており、左右あわせて86ドットを非表示にして正方画素系を維持する表示モードと、横方向に約7%拡大処理してパネル全域に表示するモードが選択できる。自分のPCシステムと表示嗜好に適合した表示方法が選べるのだ。

 ちなみに、アナログRGB入力で1360x768ドット対応、デジタルRGB入力で1280x768ドット対応という対応スタイルは、シャープの最新液晶テレビのAQUOSシリーズと同等の対応形式となっている。

 一方、ビデオ系入力は全部で3系統。これは一般的な液晶ディスプレイと比較すると破格に多い。これが、IT-26M1が「液晶ディスプレイ」ではなく「液晶マルチメディアモニター」と自らを呼称している所以だ。

 ビデオ入力1〜3の全てにコンポジットビデオ入力端子、ステレオ音声入力端子、1と3にS2ビデオ入力端子を装備。映像だけでなく音声も連動して切り替えられる仕組みが心憎い。

 ビデオ入力1と2に限ってはハイビジョン(HD)解像度の映像入力に対応したD4入力端子も実装している。DVDプレイヤーからのプログレッシブ映像、BS/CSデジタルチューナーからのハイビジョン映像も高品位に表示できるのだ。

 ビデオ入力3は、前面側にレイアウトされており、ここにはD4入力端子はない。ここは比較的抜き差しの機会が多いビデオカメラやゲーム機の接続を想定しているようだ。とはいえ、プレイステーション2、ゲームキューブ、Xboxといった現行ゲーム機は、コンポーネントビデオ出力に対応しているので、IT-26M1の高品位表示能力をしゃぶり尽くす意味では、やはりゲーム機もD4入力端子で接続したほうがいい。きっと1ランク上のゲーム映像をIT-26M1で体感できるはずだ。


高画質〜液晶ディスプレイとしては群を抜いた輝度性能とハイコンラスト性能/AQUOS譲りの高画質支援機能
画質調整用のテスト画面は本体付属CDROMに収録されている。
   

 IT-26M1の液晶パネルは、シャープ製の映像機器としては看板商品とも言えるAQUOSと同じASV方式の低反射ブラックTFT液晶パネルを採用している。

 ASVとは「Advanced Super V」の略で、簡単に言ってしまえばシャープブランドの液晶パネル。以前は、単なるブランディングとして使われてきたキーワードだが、最近ではシャープが開発したCPA(Continuous Pinwheel Alignment)方式の液晶パネルを指すようになっている。

 CPA方式とは、一般に広視野角液晶として知られるMVA(Multi-domain Vertical Alignment)方式の液晶のシャープ改良版に相当するもの。具体的には、1ピクセル内に形成した複数個のサブピクセル電極で、液晶素子を放射状に連続的に傾斜配向させて制御する。この仕組みにより、視線角度に依存しない光透過制御が行なえ、結果、CRT並の上下左右170度の視野角を達成する。最新AQUOSやIT-26M1に採用されている最新のCPA液晶では、開口率や応答速度を向上させる工夫も施してあるそうで、高レベルで液晶パネルの弱点を克服しているという。

 応答速度は16ms以内、IT-26M1の公称最大輝度は実に500cd/m^2。これは、最新の大型液晶テレビと同等であり、平均的な液晶ディスプレイ製品の2倍近い値になる。さすがに500cd/m^2の状態でPCディスプレイとして使うにはやや明るすぎる…と思われる場合は、もちろん暗くすることも出来るので問題ない。とはいえ、「絶対的な明るさ」は、色表現のダイナミックレンジに大きく影響するので、IT-26M1を映像観賞用に活用するときには、この最大輝度がアドバンテージとして生きてくる。

 発色の傾向は、まさにAQUOS譲りといった感じで、純色の発色が鮮烈で、なおかつ色深度が深く、微妙なグラデーションも疑似輪郭を感じさせず、美しく決まってくれる。

 階調表現も正確で、暗部から明部までがきめ細かくリニアになだらかに見える。このため、1ピクセル単位のディテール感が実感できるほどだ。これは、DVDによる映画鑑賞に効いてくるのはもちろん、デジカメ写真のレタッチ作業などにもありがたい性能だと言える。

 500cd/m^2の絶大なダイナミックレンジは、コントラスト性能にも効いてきており、IT-26M1のスペック上の公称コントラストは800:1。これまた、一般的な液晶ディスプレイとしては2倍程度の値だ。このハイコントラスト性能の恩恵で、IT-26M1の映像は非常に立体的に見える。

 ビデオ系ソースを入力して表示する際の高画質化支援機能も充実しているのもIT-26M1の特徴だ。

 インタレース映像に対しては、動き適応型プログレッシブ化処理、2-2/3-2プルダウン処理を、映像の種類に応じて適用し、高品位なプログレッシブ映像を出力する。動きの激しい映像に対しては、色ブレを軽減するために、液晶に過電圧を加えて駆動して応答速度を速める「Quick Shoot」機能が利用できる。これはスポーツ中継やアクション映画の視聴の際や、ゲームを楽しんだりするときに有効に活用できるだろう。

 ビデオ入力機能を持った液晶ディスプレイはIT-26M1の他にもあるにはあるが、ここまでのビデオ入力に対しての高画質化機能を搭載した製品はIT-26M1しかない。

 IT-26M1は、「AQUOS相当の液晶テレビの高画質を持ち込んだ液晶ディスプレイ」…こう喩えるのが一番分かりやすい表現だと思う。


テレビ機能〜ゴーストリダクション機能搭載のテレビチューナー/PC画面とテレビ画面を同時表示できるマルチ画面機能
リモコンはシンプルだが、使用頻度の高い入力切り替えやアスペクト比切り替えなどのボタンは独立ボタンとしてレイアウトされており、メニュー操作無しで一発で切り換えられる。このあたりの操作系はAQUOSよりもいいくらいだ。
 
  ヘッドフォン端子があるのも心憎い。PC、ビデオ系、テレビ、それぞれのソースに連動した音声がちゃんとここから出力される。
 
  子画面の画面サイズを一番大きくしたとき。
 
  子画面の画面サイズを一番小さくしたとき。
 
  2画面表示モード。PC画面とテレビ/ビデオ画面を半分ずつ最大表示する。
 
  マルチ画面のメニュー。ちなみにこの設定では、1024x768ドットの4:3画面をパネルの左側に原寸表示(拡大縮小処理を伴わないので高画質)しつつ、右端の余ったスペースでテレビ画面を"中"サイズで子画面表示…としている。

 IT-26M1は液晶ディスプレイ製品という括りではあるが、テレビ視聴も行える。アナログ地上波チューナーを内蔵しているため、PCを起動していなくても、IT-26M1の電源さえ入れれば、いつでもテレビが見られるのだ。

 液晶ディスプレイ製品の中には、すでにテレビ視聴が行えるものもあったが、IT-26M1はAQUOSのシャープが作った製品だけあり、テレビの表示品質もAQUOS譲りなのである。

 まず、その組み込まれているチューナーの品質が、一般的なテレビ機能付き液晶ディスプレイと違う。IT-26M1内蔵のテレビチューナーには高品位なテレビ映像表示には欠かせないゴーストリダクション機能を搭載しているのだ。これにより、アナログ地上波放送特有の、輪郭がぼけるような二重映りを圧倒的に低減することができる。

 もちろん、これだけでなく、テレビ映像は、前述したようなプログレッシブ化機能を初めとした、ビデオ系の高画質化支援機能を全て適用できるので、まさにフレーム単位で美しいテレビ映像が表示されるのだ。

 IT-26M1のテレビ視聴機能は"おまけ"ではなく、IT-26M1の看板機能といっていいと思う。

 とはいえ、IT-26M1のテレビ視聴機能は、ただ「見られる」だけではない。PCディスプレイならではのテレビ視聴機能が備わっているのだ。

 それはPC画面を表示したままでテレビ視聴ができる「マルチ画面」機能だ。

 PC映像を画面全域に表示して、テレビ画面を「子画面」にて表示できるほか、PC画面とテレビ画面を同等の画面サイズで2個並べての「2画面表示」もできる。

 子画面表示はパーソナルユースにおいて、PCでの作業をしながらテレビを「つまみ見」したりする用途に便利そうだ。また、あるいはリビングに設置した際などで、家族にテレビを見せつつ自分はPC画面で作業を続行する…という感じの1基のディスプレイをマルチユースする際にも重宝するだろう。

 この「子画面」「2画面表示」は、テレビチューナーからの映像以外に、ビデオ入力からの映像にも適用できる。よって、PC画面を出しつつ、DVDビデオの映像やゲーム機からの映像も同時表示できるのだ。


まとめ〜液晶ディスプレイとして液晶テレビとしても完成度の高い製品


液晶IT-TVの商品企画を担当する田邉啓介氏。
 
  液晶IT-TVの開発拠点、シャープ郡山工場。

 このように、コストパフォーマンス、画面サイズ、接続性、画質、テレビ機能…液晶ディスプレイ購入の際に重要視される全項目において、IT-26M1は掛け値無しに高レベルに要件を満たしている事が分かって頂けたと思う。つまり、液晶ディスプレイ製品としてIT-26M1が非常に優秀な製品であることが裏付けられたわけだ。

 そして、さらに、特筆すべきなのは、IT-26M1は「液晶テレビ製品」としてみた場合も、非常に優秀な点であることだ。

 高品位なテレビチューナー、高画質なビデオ映像表示機能、マルチ画面機能は、シャープの同画面サイズのAQUOSシリーズと比べても遜色ない。逆に、現行の同画面サイズのAQUOSが、「BS/CSデジタルチューナーがあるせいで割高に思える」という実感を持ったことのある人であれば、「自分には必要のない機能を取り去ったAQUOS」としてIT-26M1が逆に本家よりも魅力的に見えてくるかもしれない。

 また液晶IT-TVシリーズには法人向け操作制限カスタマイズが可能なIL-26M1などのラインナップも用意されている。ホテル、病院、店舗などで不特定多数の人が利用できるモデルとして操作スイッチや機能を制限できるよう、別途有償でカスタマイズできるとのことだ。

 「映像を高品位に表示すること」…という映像機器としての本質はそのままに、その他の機能を取り去った、求めやすい液晶テレビとしてもIT-26M1は十分魅力的なのだ。

 PCディスプレイの買い替え、テレビの買い替え、この両方の機会に選択候補として最有力候補なのがIT-26M1なのだ。



■SHARP PC ONLiNE
 https://www.sharppconline.jp/

■液晶IT-TV商品サイト
 http://www.sharp.co.jp/it-tv/

■シャープ、DVDレコーダ風デザインの「AVセンターパソコン」
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0930/sharp1.htm

■シャープ、TVチューナ内蔵23ワイド/20型液晶ディスプレイ
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0930/sharp2.htm