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藤本健のDigital Audio Laboratory EXTRA!

どんな音源もデジタルに!
USBオーディオインターフェイスで広がるPCサウンドの世界[後編]


96kHz対応のオーディオインターフェイス「UA-25」
96kHz対応のオーディオインターフェイス「UA-25」

 先日発表されたRolandのUSBオーディオインターフェイス、UA-25が話題を呼んでいる。そのコンパクトさや洗練されたデザインもさることながら、低価格なのに24ビット/96kHzを実現し、かつUSBバス電源供給なのにコンデンサマイクも利用可能な完全にプロ仕様の高性能な製品であるからだ。前回、サンプリングビット数が16ビットと24ビットで何が違うのかを見てきたが、一方のサンプリング周波数96kHzというのは何を示しているものなのだろうか?そして96kHzであることによって得られるユーザーのメリットとはどんなことなのだろうか?今回はこのサンプリング周波数に着目し、オーディオインターフェイスの選び方について考えてみたいと思う。



■ 人間の可聴範囲とサンプリング周波数の関係

 オーディオインターフェイスの性能を示す2大要素は、サンプリングビット数とサンプリング周波数の2つだ。このうちサンプリングビット数というのは16ビットだとか24ビットという数値で表すものであり、このサンプリングビット数の違いによってダイナミックレンジに違いが出ることを前回紹介した。つまり、非常に小さい音をどこまで正確に表現できるかがビット数の違いであるということをグラフも使って示してきた。
 では、もう一方のサンプリング周波数のほうは、どうなのだろうか?サンプリング周波数はサンプリングレートとも呼ぶが、単位は通常kHz。よく使われるものとしては、32kHz、44.1kHz、48kHz、96kHzといったものがある。
 前回紹介したRolandのオーディオインターフェイス、UA-1XやUA-3FXまた、UA-1D、UA-20といったものはいずれも44.1kHzと48kHzに対応したモデルである。

UA-1X dal_4007_s.jpg dal_4002_s.jpg UA-20
UX-1X UA-1D UA-3FX UA-20

 ご存知の方も多いと思うが、デジタルオーディオの代表といえるCDは44.1kHzに対応したものであり、44.1kHzあれば、あのクリアなサウンドが表現できるのだ。しかし、なぜ44.1kHzなのか。ここには医学的に考えてもハッキリした根拠がある。それは人間の可聴範囲、つまり聴くことが可能な周波数帯域との関係である。
 一般的に、表現可能な最高の音の高さはサンプリング周波数の半分といわれている。つまり44.1kHzならば22.05kHz、48kHzなら24kHzまでということになる。その一方で、人間が聴くことができる音域は、健康な人で20Hz〜20kHzであるといわれている。したがって、その理論からすれば20kHz以上をレコーディングしたところで人間には感知できず、無意味ということになる。とはいえ若干のマージンを考えて、22.05kHzまで表現可能としたのがCDの規格である、というわけです。もっとも、なぜ44.1kHzなどという中途半端な数字になったのかというと、CDが規格化された当時、デジタルレコーディングに用いたのがVTRであり、テレビの水平垂直同期信号が44.1kHzであったので、それを利用したためだと言われている。



■ 20kHz以上の音は本当に人間に感知できないのか?

 しかし、本当に20kHz以上が聴こえないのだとしたら、それ以上の周波数を捉えたところで無意味といえる。でも、それは本当なのだろうか?
 その答えは、CDより高音質なDVDオーディオなどが登場してきたことからも明白だ。そう、単独の信号としては、確かに20kHz以上は認識しにくいが、音楽のようなさまざまな周波数の信号が重なり合って表現されたとき、20kHz以上が出ているか出ていないかで聴こえる音の雰囲気に差が出てくるのだ。CDとアナログのレコードを聴き比べて、レコードの音のほうがいいと感じることがあるが、これもアナログの場合周波数に上限を設けていない結果ともいえるだろう。
 ここで、先ほどの「表現可能な最高の音の高さはサンプリング周波数の半分」というのが本当なのか、ちょっと実験をしてみよう。

48kHz 96kHz 48kHz 96kHz
48kHzのサンプリング周波数でホワイトノイズを表現したもの(左)と、96kHzのサンプリング周波数で表現したもの(右)。48kHzの場合はちょうど24kHz付近までしか音が出ていないが、96kHzの場合はフラットにすべての音が出ている。 先ほどの2つのグラフでは横軸を最大48kHzまでしかとっていなかったので96kHzの場合、完全にフラットに見えたが、横軸を最大96kHzまでとるとともに指数表記で表すと理論値とほぼ同等の48kまできっちり出ていることが分かる。

 低い音から高い音まで満遍なくまざったホワイトノイズを48kHz、96kHzで作成し、それで表現されている周波数がどこまであるかを示したのがここに掲載したグラフだ。これを見るとサンプリング周波数が48kHzのほうは約24kHzまで、96kHzのほうは48kHzまで出ていることが確認できるだろう。もっとも右側2枚のグラフは横軸の目盛りが指数になっているので、それほど大きな差には見えないかもしれないが、数字的には倍ものレンジを持っているわけだ。
 これが48kHzと96kHzの差、ともいえるわけである。



■ 最終的にCDにするのなら、24ビット/96kHzのスペックは不要?

 ところで、ここまでの話にちょっと疑問を感じた人もいるのではないだろうか? そう、アナログのレコードやテープをデジタル的に録音し、最終的にCDにしたいと思っているのだが、CDそのものが16ビット/44.1kHzならば24ビット/96kHzなどという仕様はオーバースッペクであり、不要ではないか、ということである。
 確かに、録音したものを何の加工もせず、そのままCDに焼くのならば、不要かもしれない。でも、実際に作業をしてみれば分かるとおり、録音した後、音量をいじったり、ノイズリダクション処理を行ったり、場合によってはコンプレッサやイコライザなどのエフェクトをかけるなど、ある程度の加工することで、よりよい音に仕上がっていく。
 こうした編集はすべてPC上で演算によって行われるため、処理すればするほど、音の解像度は落ちていく。したがって、アナログからデジタルへ取り込む際はなるべく、24ビット/96kHzといった高解像度で行い、その後編集処理が終わってから、16ビット/44.1kHzへ変換してCDに焼くことにより、CDの表現できる限界まで使い切ることができるというわけだ。
 また最近ではDVDビデオやDVDオーディオなど、より高解像度な形のままデジタルメディアに焼くことが一般ユーザーでもできるようになってきたので、劣化の進む手持ちのレコードやカセットテープなどの資産をデジタル化するのであれば、なるべく早めに、そしてできる限り高音質な状態でデジタル保存することをお勧めしたい。



■ UA-25の高音質性と高機能性

 さて、ここでもうひとつ気になるのは、24ビット/96kHzというスペックであれば、どれでも同じなのか、ということだろう。結論からいってしまうと、同じ24ビット/96kHzというオーディオインターフェイスでも、ものによって音質はかなり異なる。それはアナログ性能部分やその他の設計の違いからくるものだ。
 現在、USBオーディオインターフェイスは各社から発売されているが、このUA-25が注目されてるのは、やはりプロのレコーディングの世界での実績が大きいRolandが開発した製品であるという点からだ。とくにこの製品では、USBバス電源供給でありながらも、内部的に電源を再構築し、PC側からノイズが回り込まないような技術が使われていたり、PC側から来るクロックを元に特別な技術を使って精度の高いオーディオクロックを作り出すなど、いろいろな工夫が凝らされている。(※詳しくは、こちらのページをご覧ください)

UA-25正面 UA-25背面 コンパクトボディに高機能が詰まっている
UA-25正面 UA-25背面 コンパクトボディに高機能が詰まっている


 もちろん、アナログ回路のほうは、これまで培われてきたプロ用機材の技術がそのまま受け継がれているので心配はいらない。
 また、使い勝手という面で非常に便利なのが、リミッタ機能。これをオンにしておくと、外部から突然大きな音が入っても音割れしないようになっており、非常に重宝する。ベースやギターなどの楽器を直接接続してレコーディングするときはもちろん、レコードやカセットテープなどから録音する際にも大きく役立つ。さらに+48Vのファンタム電源というものを搭載しており、微細な音の表現をとられることができるコンデンサマイクが利用可能だというのも大きな特徴。通常、ファンタム電源を使う際には、外部電源が必要となるが、UA-25の場合は、USBバス電源で動作するので、屋外でも気軽に使えるというのは、うれしいところだ。
 しかも、コンパクトでデザイン的にもカッコイイのだから文句のつけようがない。

 ちなみに、前回も少し触れたとおり、RolandのUSBオーディオインターフェイスには、UA-25よりも上位機種として位置づけられる、UA-1000、UA-700、UA-5といった製品も存在している。これらについても簡単に紹介するとUA-1000はUSB 2.0に対応したもので、やはり24ビット/96kHzに対応しているが、入出力が10ポートずつあり、より本格的なレコーディングシステム用として利用するためのものとなっている。またUA-700はギターやベースと接続して使うことを前提に設計されたもので、24ビット/96kHzのオーディオインターフェイスであることに加え、ギター用、ベース用のさまざまなエフェクト機能が搭載されている。一方、UA-5はUA-25と非常に近い製品であるが、コアキシャル(同軸)のデジタル入出力を持っているのが特徴。ACアダプタを必要とするもので、UA-25よりも一回り大きいが、コアキシャルにこだわるのであれば、検討する価値があるだろう。

UA-1000 UA-700 UA-5
UA-1000 UA-700 UA-5

 なお、もう一つ特筆すべきは、SONYのVAIOの現行機種にバンドルされているオーディオマスタリングソフトウェア、SonicStage Mastering Studioの推奨機種として、従来からあったUA-5に加えてUA-25が追加されたということ。プロユーザーからも絶賛されているSonicStage Mastering StudioとUA-25を併用することで、その可能性はさらに大きく広がりそうだ。

SonicStage Mastering Studio
SonicStage Mastering Studio

 以上、いろいろあるRolandのUSBオーディオインターフェイスについて見てきたがいかがだっただろうか。型番だけでは、どう違うのか分かりにくいが、サンプリングビット数やサンプリング周波数などスペックを見ていくと、その表現力や性能の違いが見えてきたのではないだろうか。
 具体的にいえば、手軽に音をPCに取り込んで保存したいというのであれば、UA-1Xを、単純に音を取り込むだけでなく、エフェクトを使って音質補正したり、ノイズリダクション処理をリアルタイムに行いたいのであれば、UA-3FXを、さらに微細な音のニュアンスを原音のまま忠実に、そして高音質で取り込みたいという人ならUA-25をお勧めする。
 自分の用途に合った、機種を選択するとともに、ぜひ手元にあるレコードやカセットテープなどを、できる限りいい音で、しかも手軽にデジタル化してみてはいかがだろうか?





□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報(UA-25)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-25.html
□製品情報(UA-1X)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-1X.html
□製品情報(UA-3FX)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-3FX.html

□関連記事
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USBオーディオインターフェイスで広がるPCサウンドの世界[前編]
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http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20030519/dal100.htm


(2004年7月19日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。
藤本健

[Text by藤本健]


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