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藤本健のDigital Audio Laboratory EXTRA!

どんな音源もデジタルに!
USBオーディオインターフェイスで広がるPCサウンドの世界[前編]



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パソコンに音を取り込もう
 今、USB接続のオーディオインターフェイスが売れている。ユーザーの目的はそれぞれだが、大きくはいい音でCDなどの音楽を再生させるための再生目的、クリアなサウンドで録音するための録音目的の2つに分かれる。ただ、最近とくに注目されているのは、昔のレコードやカセットテープをデジタル化し、CDとして保存させるための録音目的のほう。そこで、よりよい音でアナログ素材を録音するには、どんなオーディオインターフェイスを選べばいいのかという視点で、今回と次回の2回にわけて、オーディオインターフェイスの基本や活用方法などについて考えてみたいと思う。


■ USBオーディオのEDIROL、UAシリーズ

 いまPCショップなどの店頭にいくと、各社のUSBオーディオ製品が並んでいる。中でもよく売れているのがEDIROLブランドのRoland製品だ。ご存知のとおり、Rolandは楽器メーカーであり、レコーディング機器メーカーである。そしてEDIROLはPC用のレコーディング機器のブランドとして広くユーザーに知れ渡っているわけだが、多くのユーザーがこのEDIROLブランドのUSBオーディオ製品を選択するのは、やはりレコーディング=録音においての性能や信頼性が高いことが背景にあるようだ。

 ただ、困るのがこのEDIROLブランドのUSBオーディオ製品が1,2種類ではなく、本当に数多くあることだ。現行機種だけでも8種類もあり、旧製品も含めるとさらに多くの種類になってしまう。また、その名称もすべてUA-○○となっており(UAはUSB Audioの略)、かつ○○の数字が大きければ高スペックだとか、最新機種だといった決まりがはっきりしているわけでもない。そのため、それなりにEDIROLブランドの製品を知っている人でも、何がどう違うのかわからなくなってしまうほどだ。

 現在、Rolandでは、同社サイトの中で、現行機種についてのスペック比較表を掲載している。それを見てみると、違いが見えると思うので、興味のある方は参照してみるといいだろう(http://www.roland.co.jp/DTMP/comparison/AudioInterface.pdf)。ただし、この表の中にあるFA-101はFireWire(IEEE1394)接続のもので、UA-1000はUSB 2.0接続とほかの機種とは異なる。スペック的にも非常にハイグレードで価格的にも高価なので、一般ユーザーはとりあえず除外して考えてもいいだろう。またUA-700はエレキギターとの接続をメインに考えて設計されたものなので、これもはずしてみても

  • UA-1D
  • UA-1X
  • UA-5
  • UA-3FX
  • UA-20
  • UA-25
の6種類あることになる。

 いったいこれらはどう選べばいいのだろうか?



■ USBオーディオを利用して手軽に高音質化

 具体的な選択法を考える前に、なぜこうしたUSBオーディオ機器が必要なのかを改めて考えてみよう。

 現在のPCならば標準でオーディオ機能が搭載されている。この出力端子にスピーカーを接続すれば音を鳴らすことができるし、入力端子に外部のオーディオ出力を接続すれば録音が可能だ。しかし、この再生音を聞いてみてどうだろうか?確かにCDでもMP3でも音はでるが、鑑賞するという世界からは程遠い貧弱な音質だ。なぜなら、PC本体においてオーディオ機能はあくまでもオマケ機能であり、できるだけコストを抑え、音が出ればいいという程度の設計であるからだ。逆にいえば、そこに力を注げば音質は飛躍的に向上し、鑑賞できるものとなる。同様にPC搭載の録音機能でレコードやテープを録音したのでは、元のアナログ素材の音より遥かに劣る陳腐な音になってしまうのだ。

 そうした状況を手軽に解決する手段がUSBオーディオというわけだ。USBならばデスクトップPCでもノートPCでも簡単に接続することができるし、PCの外部に設置できるため、PCによるノイズを軽減できるというメリットもある。しかも、最近では非常に低価格化が計られているので、気軽に購入できるのもうれしいところだ。



■ 16ビットと24ビットの音質差

 さて、ここで、選択法について話を戻そう。上記製品の中でもっとも低価格なのがUA-1XとUA-1D。ただし、UA-1Dは完全にデジタルの入出力専用なため、レコードやテープなどのアナログ素材を録音するのならUA-1Xということになる。見た目からもわかるとおり、単純なケーブル感覚で利用できるUA-1Xは、誰にでも分かりやすく、接続するだけで、すぐに使うことができる。そして、これを使った音は、PC標準の機能で再生したり録音する音と比べると飛躍的に音質が向上する。そのため、とにかく安く手軽にいい音を実現したいのであれば、UA-1Xを選択するのが無難だ。

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ケーブル感覚で最も手軽に使えるUA-1シリーズ

 でも気になるのは、このUA-1Xを利用するのと、ほかの機種を使うので何が違うのか、ということだろう。価格的にいえばUA-1Xが9,500円程度で、UA-3FXが18,000円程度だから、価格差からいえばそう大きくはない。しかし、ここにスペック的な大きな違いがあり、これが音質的に大きな違いをもたらすのだ。

 オーディオインターフェイスのカタログなどを見ていると必ず出てくるスペックにサンプリングビット数、サンプリング周波数という2つの数値がある。この2つによってデジタルオーディオとしての音質が決まるのだが、UA-1Xの場合、最高で16ビット、48kHzとなっており、UA-3FXでは24ビット、48kHzとなっている。したがって、その差はサンプリングビット数が16ビットであるか、24ビットであるかということになる。ちなみに、CDの場合、16ビット、44.1kHzであるためUA-1XでもCDを上回る性能を持っていることになるので、そこそこのクオリティーを求めるならUA-1Xでも十分といえる。

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UA-3FXは24ビット入出力対応の高音質追求モデルだ

 ただ、言葉で16ビットだとか24ビットといってもなかなか分からないので、グラフでその差を見てみよう。画面1はCDで表現できるぎりぎりといってもいいほどの小さい音(-80dBの正弦波信号)を16ビットで表した場合のもの。また画面2は同じ信号を24ビットで表したものとなっている。このグラフを見れば一目瞭然であるが、16ビットではガタガタになっている波形が24ビットなら滑らかに表現されている。これが16ビットと24ビットの性能差なのだ。これが、顕著に現れるのはクラシックのレコードなどを録音する場合。たとえば非常に小さいバイオリンの音から入ってくる曲の場合、そのバイオリンの音質に大きな差が出てしまうわけだ。まあ音量が大きくなると、それほど違いは感じないのだが、これはひとつの大きい違いだ。

16ビット 24ビット

 

UA-1XとUA-3FXの差はほかにも、エフェクトの搭載の有無というものがある。数多くのエフェクトが用意されているが、とくにこうしたアナログ素材を取り込む際にノイズを軽減させるエフェクトがあるのも大きなポイントだ。また価格的に18,000円程度するUA-20の場合はMIDI機能が搭載されており、DTMでMIDIを扱いたいといったユーザーにはお勧めできる製品となっている。そのほか、UA-3FXもUA-20もドライバとしてASIO、WDMというものに対応しているので、やはりDTMを利用する際に有利な内容となっている。

 以上、今回はEDIROLブランドのUSBオーディオ製品郡の概要を紹介するとともに、その差のキーとなるサンプリングビット数の違いが何を意味するかを見てみたが、次回はサンプリングレートが違うとどう違いが出てくるのかについても考えてみることにしよう。


□ローランドのホームページ
http://www.roland.co.jp/
□製品情報(UA-1X)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-1X.html
□製品情報(UA-3FX)
http://www.roland.co.jp/products/dtm/UA-3FX.html

□関連記事
【2003年6月21日】【DAL】究極のUSB 1.1対応インターフェイスとなるか?
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http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040621/dal150.htm
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http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20040614/roland.htm
【2003年8月18日】【DAL】ユニークで便利な機能を満載したUSBオーディオ
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(2004年7月12日)


= 藤本健 = ライター兼エディター。某大手出版社に勤務しつつ、MIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL」(リットーミュージック)、「MASTER OF REASON」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。
藤本健

[Text by藤本健]


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