|
|
|
「007」シリーズは'62年に第1作目が登場してから、現在まで続くスパイアクション映画。この作品のゲーム化は様々なプラットフォームで行なわれているが、今回紹介する「ゴールデンアイ」はこれまでの作品とは少々趣きが違う。
それは、プレーヤーキャラクタが「007」こと「ジェームズ・ボンド」ではなく、敵役の組織に所属するエージェントであることだ。悪の視点でゲームが進行し、007が介入する隙がほとんど無いダークサイドの世界となっているのだ。
さらに過去のシリーズで、特にファンの人気が高い悪役が登場するのも見所だろう。映画では見ること(そして体験すること)ができない、本作の魅力を紹介していこうと思う。
■過去の悪役達が織りなす裏社会が舞台
本作で登場する悪役(つまりプレーヤー側の勢力)は“ドクター・ノオ”や“ゴールドフィンガー”など。この名前でピンと来た人は、映画「007」シリーズのコアファンといえるだろう。「ドクター・ノオ」は、'62年に制作された「007」シリーズの記念すべき第1作「007は殺しの番号」(初公開時の邦題。それ以降は「ドクター・ノオ」)で登場した悪役だ。そして「ゴールドフィンガー」は'64年制作の3作目「ゴールドフィンガー」の悪役である。今から40年以上も前に公開された映画だけに、若い人にはわからないと思うので是非ともDVDでチェックしてみてほしい。今の“007”の敵役……テロリストやメディアキングといったリアリティ溢れるシチュエーションとは違った魅力がつまっていることに気付くだろう。
さて、ゲームを開始すると主人公は、あの「007」と同じ作戦を実行することになる。この時点で主人公は「007」と同じ諜報機関「MI6」に所属するエージェントなのだ。しかし、このミッションはシミュレーションであり、その結果、主人公は危険人物と判断され、諜報機関を追われてしまう(要するにクビ)。職を失った主人公は「ゴールドフィンガー」の誘いを受け、悪のエージェントとして裏世界の勢力争いに加わることになる。もちろん、登場する悪役は幹部だけではない。映画「ゴールドフィンガー」に登場する鋼鉄製のシルクハットを武器として使用する用心棒の「オッドジョブ」も登場するので、ファンは要チェックだ。
余談ではあるが、ゲームのタイトルにもなっている「ゴールデンアイ」も、'95年に17作目の映画として公開されている。今回のゲームとストーリーは異なるが、悪のボンドガールであるオナトップも登場することを考えると、こちらの映画のプロットもゲームに組み込まれているのがわかるだろう。ゲームをプレイしながら、DVDで映画を再度見て世界観をより深く味わうと、ゲームの面白さが増すのは間違いない。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
開幕に登場する007。容姿を見る限り、2代目以降のジェームズ・ボンド役の俳優がモデルなのだろう。ちなみに、このミッションはチュートリアル以外に、操作設定も兼ねている。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
諜報機関をクビになり、主人公は悪の道に身を投じる。その手助けをしたのはゴールドフィンガー。ここから主人公が悪の世界で頂点を目指すことに……。 |
|
|
|
■2丁拳銃が可能で射撃の爽快感が癖になる
ゲームはFPSなので、画面中央にあるガンサイトに敵を合わせて銃を発射していく、オーソドックスなスタイルである。銃によっては、両手に持つことが可能で、L1/R1ボタンでそれぞれの武器を使い分けられる。例えば、両手にサブマシンガンを装備しているなら、片方だけを連射して弾切れになったらもう一方を使って、リロードの隙をフォロー。または、両方の武器を同時に撃って、火力の強化といった戦術も考えられる。使用する武器によって弾数や威力などに違いがあるので、敵の数や地形によって武器を使い分けることになるだろう。また、後述する義眼“ゴールデンアイ”の能力と組み合わせることで、真価を発揮する武器もある。銃を撃つだけではなく、素早い状況判断も必要になるので、メリハリのある展開が期待できる。
ステージによっては、フィールドに仕掛けられたトラップを操作することで、クレーンを動かしたり落とし穴を作動させるなどの行動も可能。これらのトラップを利用することで、敵を罠にはめて倒すこともできるわけだ。トラップの操作などは、その場所に近づいてメッセージが出たら×ボタンを押すだけのシンプルなのもので、ゲームのテンポを崩さずに利用できる。その分、プレイ中は各種トラップや敵の配置などに気を配ることができるのもうれしい。
そして、敵の行動もただ銃を乱射するだけではなく、壁や柱の陰に隠れたり、仲間を盾にするなどの行動をとる。中には、1人が突っ込んできて、後方の敵が援護射撃するといった連係も見せる。そのためプレーヤーは、多対1の状況でどのように敵を倒すか考えなければならないし、壁や柱などの障害物を利用する必要も出てくるのだ。
一筋縄ではいかないが、様々なトラップを利用しつつ、銃器を駆使して戦う爽快感は十分に感じることができた。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
銃によってリロードのモーションが違う。また、両手に構えたときのみに行なうアクションもある。もちろん、リロード中は隙だらけになるので注意が必要だ。 |
|
|
|
トラップの近くに行けばウィンドウが出現するのでわかりやすい。 |
|
|
|
■義眼の能力を使うことで戦術の幅がさらに広がる
本作の特徴のひとつでもある義眼“ゴールデンアイ”の能力について触れることにしよう。映画「ゴールデンアイ」では、あらゆる電子機器を内部から破壊する秘密兵器だった。ゲームも似たような能力を持っているが、磁場フィールドを張るなどといった能力もあり、まさに主人公の持つ「奥の手」といったところ。使用できる能力は4種類で、ストーリーを進めていくことで徐々に増えていく。
序盤から使えるのは、障害物の陰にいる敵が見えるようになる「MRIビジョン」。透視できる距離が決まっているため離れた場所は無理だが、曲がり角やコンテナの多い倉庫などでの索敵に威力を発揮する。また、遮蔽物を貫通する「マグ・レール」を持っていれば、MRIビジョンと併用することで物陰の敵を撃ち抜くことも可能だ。他にも離れた場所にある電子機器を作動させる「EMハック」、自分の周囲にフィールドを発生させて弾をはじく「極性シールド」もある。
これらの能力を使用するためにはエネルギーを消費し、エネルギーが切れた場合は回復するまで使用することができない。エネルギーは自然に回復するが、そのスピードはそれほど速くないため、頻繁に使うことはできない。また、能力によって消費量も違うので、ここぞと言うときに使うのがメインとなる。
ステージによっては、この能力を使わないと先に進めない、もしくはクリアが厳しい場所もある。よって、銃だけではなく、能力を使うタイミングやエネルギー配分を考えつつプレイすることになる。能力によって戦術を考える楽しみもあるわけだ。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
機能の選択は方向キーに対応。使用したい能力の方向にキーを押して、L2ボタンで能力を発動させる。 |
|
|
|
[MRIビジョン]
このように遮蔽物の奥にいる人物が見える。隠れた敵を確認するのに重宝する能力。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
[EMハック]
パネルやスイッチなどを遠隔操作できる能力。これを利用し、離れた場所から仕掛けを作動させ、敵を倒すこともできる。また、敵の武器を一時的に使用不能にもできる優れもの。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
[極性シールド]
敵の攻撃をはじくだけではなく、近くに寄ってきた敵を吹き飛ばすことも可能。エネルギーの消費は激しいが、頼れる防御手段となる。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
[磁力フィールド]
離れた敵を吹き飛ばしたり、引き寄せたりできる能力。銃で攻撃しているときに別の敵を狙う攻撃手段として役立つ。 |
|
|
|
■利用できるモノであれば人ですら利用するダークエージェント
主人公は悪のエージェントであるため、正義の味方のような「モラルのある行動」というものは一切関係ない。本作ではそれを十二分に発揮できると言ってもいいだろう。その最たるモノが「敵を銃弾の盾にしてしまう」というもの。方法は簡単で、敵に接近してR2ボタンで殴りつける。2発ほど殴ると敵が気絶状態になるので、ここで×ボタンを押せば敵のクビを抱えて、自分の前面に立たせることができる。これで、正面からの攻撃に対してはほぼ防御可能となる。ただし、盾としている人間の体力が無くなると“盾”としての機能が失われるので、新たに盾を補充する必要がある。敵に近づくというリスクはあるものの、敵の攻撃が激しく遮蔽物が少ない場所では有効な防御手段だ。他にも一本道を突破するときにも重宝するだろう。
また、盾にした敵をビルの下に突き落としたり、仕掛けに投げ込んで始末するといった残虐な行為も、いくつも用意されている。これらの行為を行なうのは難しいが、逆に自分が「悪」であることを実感できるのは確かだ。
敵の倒し方にちょっとした変化があるので、ただ撃ち合うだけではなく、こういった戦い方を織り交ぜた戦いをすると、また違った戦術が見えてくる。ただし、これらはあくまでもゲームだけの行為と割り切って、楽しむためのエッセンスとしてほしい。過度な表現は無いので、見るに堪えないモノではないが、モラルを重んじるならこれらを使わずにクリアするのもいいだろう。悪の美学は人それぞれなのだから……。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
人を盾にした場合、自動的に左手の武器は解除され、右手の武器だけを使用することになる。両手に持つアサルトライフルの場合、自動的に武器をその場に捨ててしまい、デフォルトの銃に変わってしまう。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
盾が不要になったら×ボタンで突き飛ばせばいい。突き飛ばす場所によって、壁に激突したり高台から落としたりと、トドメの刺し方も思い通りだ。 |
|
|
|
■FPSとしての完成度は高く、マルチ対戦にも注目
プレイした感想としては、テンポ良くゲームを進められるFPSといったところ。敵の攻撃が激しくて、反撃の間も無くやられてしまうこともあったが、敵の出現する場所と周囲にある武器をうまく利用すれば、難しいところは少ない。仕掛けも周囲を見渡して、義眼「ゴールデンアイ」の能力を利用すれば大抵のものはすぐに利用できる。
何より、これまでのシリーズとは違い、悪役の視点でゲームが展開するのは面白い。悪役にも悪役の事情があるのだと、妙なところで納得してみたり、映画で見た組織のドリームマッチが見られる点で楽しめると思う。
FPSとしてのシステムも良くできており、サブマシンガンなどの連射性の高い武器では、連射することで集弾率が低下。ガンサイト以外の場所に弾がばらけてしまうなどの表現もしっかり行なっている。FPSをやり慣れた人でもそれなりに納得のいくバランス調整がされていると思う。登場する武器も豊富で、実在する銃がモデルになっている物から、レールガンなどのSFさながらの武器まである。これらの武器には一長一短があり、使いやすいモノをチョイスしていくセンスも必要になるだろう。その辺りは実際にプレイしていけば、自然と見えてくるのもうれしい。もちろん、普段使わない武器でも、使いようによっては有効な場合もあるので、武器によって戦術を考える面白さもある。
そして、これらの要素にネットワークの対戦が加わることで、CPUだけではなく、対人戦の戦術が加わる。生身の敵プレーヤーは、CPUでは見ることのできない戦術を使ってくるだろうし、また違った楽しみが出てくるはずだ。
FPSを嗜んでいる人はもとより、ゲームだけでなく「007」シリーズに興味のある人にはさらに楽しめる作品なのは間違いない。
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
かつてMI6に所属し“00”ナンバー候補だったが、ドクター・ノオとの戦いの後、“無謀で残忍”という理由からMI6を追放されてしまう。彼の右目を奪ったドクター・ノオを激しく憎悪しており、復讐を果たすべく、オーリック・ゴールドフィンガーに用心棒として雇われることになる。 |
1964年公開の映画「ゴールドフィンガー」で、米国が保有する金塊を放射能で汚染するという巧妙な計画を立てた伝説の悪役。今回のゲームでは、黄金よりも世界征服に情熱を注いでいる。 |
007のデビュー映画「ドクター・ノオ」に登場し、ジェームズ・ボンドに初めて戦いを挑んだ悪役として知られる。生物学、原子力研究、航空工学に造詣の深い科学者・発明家であり、優秀で憎悪に満ちた戦術家でもある。 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
1974年公開の映画「黄金銃を持つ男」にて007をターゲットにしたプロの殺し屋だが、一方でエレガントでチャーミングな一面も持つ。テクノロジーマニアで、“組織”にとって有益な最新技術や最新兵器を常に探し求めており、果てしなく広がる闇市場にも手を出している。 |
色香で男を惑わし破滅をもたらす悪女であり、1995年公開の映画「ゴールデンアイ」にボンドの強敵として登場した。ロシアの戦闘機パイロット兼暗殺者として訓練を受けていた。 |
映画「ゴールドフィンガー」に登場した、007シリーズで最も有名な悪役の1人。ゴールドフィンガーのいかついボディガードで、武器である鋼鉄の鍔つき帽子は彼のトレードマークである。 |
|
|
|
|
|
|
|
|