◆プレミアム・ゲーミング・ブランドのAlienwareシリーズ
デルからラインナップされているAlienwareは、ゲーマー向けのハイスペックPCのシリーズだ。現在ラインナップされているデスクトップのモデルは「Alienware Aurora」、「Alienware Aurora ALX」、「Alienware Area-51」、「Alienware Area-51 ALX」の4種類。このほかにノートPCの「Alienware M15x」が用意されている。デルは、このAlienwareシリーズをプレミアム・ゲーミング・ブランドとして、個人向けのPCの中で最もハイエンドな製品と位置付けており、事実上のフラッグシップマシンと言えるだろう。今回はAlienwareの中で、エントリーマシンである、Alienware Auroraをお借りすることができた。エントリー向けと言ってもその性能は驚異的なものだ。まずは、その性能について見ていくとしよう。
◆宇宙最強の性能は?
デルのPCを知る上で押さえておきたい点が、Webの直販サイトでBTO方式による受注生産方式を採用しているところだ。Alienware Auroraでも、BTO方式を採用しており、かなり詳細なカスタマイズ項目が用意されている。まずはそれをふまえて、共通のベース部分と各パーツに何を選べるかを表にまとめてみたので、それを参考にしながら性能を見ていこう。
【共通仕様】
チップセット |
インテル X58 Expressチップセット |
電源定格出力 |
875W |
有線LAN |
1000BASE-T |
サイズ(幅×奥行き×高さ) |
250×645×426mm |
重量 |
約20.4Kg(システム構成により変化) |
【BTO】
カラー |
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OS |
- マイクロソフト Windows 7 Home Premium
- マイクロソフト Windows 7 Home Professional
- マイクロソフト Windows 7 Home Ultimate
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CPU |
- インテル Core i7-920(2.66GHz)
- インテル Core i7-960(3.2GHz)
- インテル Core i7-975 Extreme Edition(3.33GHz)
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メモリ |
- PC3-10600 DDR3 SDRAM 3GB(1GB×3)
- PC3-10600 DDR3 SDRAM 6GB(2GB×3)
- PC3-10600 DDR3 SDRAM 9GB(2GB×3、1GB×3)
- PC3-10600 DDR3 SDRAM 12GB(2GB×6)
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グラフィックス |
- NVIDIA GeForce GTX 260
- NVIDIA GeForce GTX 295
- NVIDIA GeForce GTX 260×2(SLI)
- ATI Radeon HD 5870
- ATI Radeon HD 5970
- ATI Radeon HD 5870×2(CrossFireX)
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ストレージ |
- 750GB SATA HDD(7,200rpm)
- 1TB SATA HDD(7,200rpm)
- 1.5TB SATA HDD(7,200rpm)
- 2TB SATA HDD(1TB×2、7,200rpm)
- 3TB SATA HDD(1.5TB×2、7,200rpm)
- 2TB SATA HDD(RAID 0、1TB×2、7,200rpm)
- 256GB SATA SSD
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光学ドライブ |
- DVDスーパーマルチドライブ
- ブルーレイコンボドライブ
- ブルーレイディスクドライブ
- ブルーレイディスクドライブ+DVDスーパーマルチドライブ
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サウンドカード |
- なし
- Creative PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium サウンドカード
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キーボード |
- なし
- Alienware TactXゲーミング日本語キーボード
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マウス |
- なし
- Alienware Tactxゲーミングマウス
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Alienware Auroraに採用されたプラットフォームはインテル(R) X58 Expressチップセットを搭載したLGA1366で、これはベース部分の共通仕様だ。インテル(R) X58 Expressは、インテル(R)がラインナップしているCPUのうち、現在最高のパフォーマンスを誇るインテル(R) Core i7シリーズを搭載することが可能な製品だ。LGA1366用のインテル(R) Core i7シリーズは、1つのCPUに4つのコアを搭載するクワッドCPUで、1つのコアで、一度に2つの作業を行うことのできるインテル(R)の技術、Hyper-Threadingによって、同時に8スレッドを処理することができる高性能CPUだ。現在、CPUはマルチコア化が進んでおり、対応するアプリケーションもかなり増えている。ゲームでも例外ではなく、高いパフォーマンスを得るための条件となってきた。ゲームというジャンルでは、非常に高いパフォーマンスをPCに要求するため、高性能CPUの搭載は必須といえる。この条件をAlienware Auroraは満たすことができる。
ゲーミングPCとして大事なもう一つの点はグラフィックスカードだ。BTOで選択できるグラフィックスカードは、現在主流のNVIDIAとAMDの二大メーカから発売されているミドルレンジからハイエンド製品をカバーしている。さらに、グラフィックスカードを2枚搭載するSLIやCrossFireXといった構成も可能で、究極のハイスペックPCを手に入れたいゲーマーにはぴったりだ。
メモリも最低でも3GB、最大で2GBのモジュールを6枚搭載し、計12GBまでを選択できる。ストレージも、HDD2台を使って読み込みや書き込みの速度を速めたRAID 0構成を構築した状態での注文が可能だ。また、ランダムリードで高い性能を発揮するSSDも選択でき、書き込みよりも読み込みが頻繁に行われるゲームにぴったりのストレージが用意されている。
また、これだけの性能を詰め込んでいるのなら当然ゲーム以外の作業も行いたいという人も出てくるだろう。たとえばビデオ編集などだ。ビデオの編集にはエンコードと呼ばれる作業が不可欠で、これにはCPUのパワーが重要だ。インテル(R) Core i7は周波数が高い上にマルチコア構成なため、ビデオエンコードなどの作業にも向いている。その場合、DVDだけでなく、急速に普及しつつあるBlu-rayにも対応しており、BTOで書き込み可能なBlu-rayドライブも選べる。Alienwareはゲーム以外でのパフォーマンスの必要な作業でも役立つことだろう。
これだけのハイスペックを詰め込むとなると、問題になるのが電源と排熱の性能だが、その点についてもモンスタークラスだ。Alienware Auroraでは875Wの定格出力を持つ大容量電源を採用している。これだけの容量があれば、SLIやCrossFireXといったビデオカードの二枚構成や排熱の大きなインテル(R) Core i7を搭載しても問題ないだろう。とくにCPUの冷却ユニットには「ハイパフォーマンスリキッドクーリング」と呼ばれる水冷システムが採用されており、冷却性能と静音性を高めている。
ケースの構造も少し特殊で、冷却性能と静音性を高める工夫がなされている。Alienware Auroraのケースは、サイドパネルを開けてもビデオカード部分や、ベイの部分はカバーで覆い隠されている。これは、空気の流れを意図的に作り、各パーツを冷却する仕組みだ。ファンも多数搭載されており、フロントから吸気した空気は効率よく各パーツを冷やし、背面に熱を伴い排出される。プリインストールされたソフトウェアのAlienware Command CenterからはAlienware Thermal Controlの機能を呼び出すことが可能だ。このThermal Controlには、内部温度を監視し、ファンの回転数をコントロールする機能がある。デフォルトの状態では熱が心配などという場合でも、このソフトウェアを使えばファンの回転数を規定値より上げたり、より静音性を高めるために回転を遅くしたりすることもできる。さらに、CPUの水冷ポンプの動作状況、各部の温度などをガジェットとしてデスクトップに置き、監視することもできる。PCの内部温度が気になる人にはうれしい機能だ。また、電源使用量を管理するAlien Fusion Power Managementは、Alienware Command Centerから呼び出せる。
カバーなどの存在から、写真で見ると閉塞感のあるこのケースだが、実際はかなり余裕をもって作られており、5インチベイが2つと、3.5インチベイが1つと、HDDなどを搭載するための3.5インチシャドーベイが4つ用意されている。将来の拡張の際にも困ることはなさそうだ。
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<側面開放状態>
5インチベイとグラフィックスカードの部分はカバーに覆われており、空気の流れをコントロールしている。カバーは横によけたり、外したりが簡単にできるので、内部へのアクセスは簡単だ。 |
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<NVIDIA GeForce GTX 260>
お借りしたモデルはベーシックモデルの構成で、グラフィックスカードはGeForce GTX 260が搭載されていた。ハイエンドカードや2枚差しの構成に変更することもできる。 |
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<マザーボード横の基盤>
サブボードとも呼べる基盤が、5インチベイ下にあり、ファンなどに繋がっている。細かい機能については分からないが、おそらくファンなどを制御する基盤と思われる。 |
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<水冷システムとメモリ>
「ハイパフォーマンスリキッドクーリング」は静音性を高めながらCPUを冷却する水冷システム。ゲーム用PCにありがちな爆音は発生しない。メモリは6スロット搭載されており、スペック上では最大24GBまで増設できる。 |
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<3.5インチシャドーベイとファン>
3.5インチシャドーベイは計4スロット。真ん中にはファンが搭載されており、HDDの冷却を行う。 |
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<875W電源とサイドパネル用の接点>
875Wの大容量電源にはサイドパネルに電源と信号を送る端子が備え付けられている。サイドパネルは発光機能を持つが、この端子のおかげで煩わしい配線はない。 |
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<Alienware Thermal Control>
Alienware Thermal Controlでは、温度やファンの回転数などのチェックが可能。指定すれば、頻繁に確認したい項目をガジェットとしてデスクトップに表示しておくこともできる。 |
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<AlienFX Lighting>
AlienFX Lightningは本体やマウス、キーボードの発光状態をコントロールするユーティリティソフトウェア。発光する色を20種類の中から選択し、好きな場所を好きな色に発光させられる。また、点滅などの設定も可能なので、ド派手にキメたいところだ。 |
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<Alien Fusion Power Management>
電源プランの設定画面も、視覚的に分かりやすい形で提供されている。プロファイルを作成し、電源プランごとに細かい設定ができるのは便利。 |
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<Alienware TactX Mouse CI>
キーボードの左側、縦一列にならんだ6つのキーはプログラマブルキーで、さまざまなキーを割り当てられる。複数のキーも記録でき、ゲーマーにとって大きな戦力になる。 |
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<Alienware TactX Keyboard CI>
マウスのDPIは細かい設定ができ、マウスのボタン操作で5段階の解像度を瞬時に選択可能。細かい操作が必要なときには解像度を低く、ダイナミックな操作をするときには高解像度とシーンに応じて使い分けるとよいだろう。 |
◆さまざまなギミックが、ゲーマーの遊び心をくすぐる
Alienware Auroraは非常に高性能なPCであることが、ここまで読んでくれた読者には分かってもらえたと思う。しかし、Alienware Auroraを特徴付けるもう一つの要素がギミックの多さだ。
まず、一番目立つのがボディの左右とフロントパネルの発光部だろう。フロントパネル部分は、下部と、エイリアンの頭部をかたどったボタンの2カ所が発光するようになっている。この発光部は、AlienFX Lightingというソフトウェアを使ってさまざまな色に変更できる。その色数はなんと20色だ。また、BTOでオプションとして選べるキーボードとマウスも、発光するようになっており、AlienFX Lightingで発光色を同様に変更できる。
このキーボードとマウスもゲーマーのためにデザインされている。そもそもが発光機能自体、暗い中でゲームをすることの多いゲーマーにはぴったりといえるだろう。遊び心を満たすだけでなく、実用的な部分もあるのだ。キーボードにはゲーム用のプログラマブルボタンや、誤ってWindowsキーを押してしまい、デスクトップに戻ってしまうことを防ぐ、いわゆるWindowsキーの無効化機能も用意されている。マルチメディアキーボードとしても利用でき、Windows Media Playerの再生や早送りなどの操作も行える。また、ゲーム画面からデスクトップに戻らなくても、音量調節が可能。マウスにもゲーマー向けの機能が搭載されており、5段階のDPI切り替えを、ボタンで簡単に行える。マウス下部のボタンを押すことにより、スクロールホイールの動作を、カチカチと段階的にスクロールさせる方法と、無段階にスムーズにスクロールさせる方法とに操作感を変更できる。このマウスではこの両方をシーンによって使い分けられるということだ。最近のマウスにはホイールが無段階の物が多いのだが、実際のところゲーマーにはカチカチと段階的に動く方が都合のよいことがある。たとえば、FPSなどにおける武器の切り替えだ。しかし、Internet Explorerなどを使ったWebブラウズでは、無段階でホイールが回った方が都合のよいことが多い。このマウスはそのどちらにも対応することができる。
このほかに、細かいところだとフロントパネルのエイリアンの頭部のモチーフはボタンになっており、このボタンを押すと5インチベイのカバーがゆっくりと開く。普段はカバーを閉じておけるので防塵効果も期待できる。また、筆者が感心したのは後部の発光機能だ。背面の拡張スロット部にボタンを押すと、少しの間、拡張スロットとバックパネル部分を白色LEDが照らしてくれる。何秒か経過すると自動的に消灯する仕組みも備わっている。この機能は机の下など暗い場所にPCを設置しているときに便利だ。ケーブルなどの接続で、バックパネル部分を照らす照明を片手に机の下に潜り込んだ経験のある読者も多いことだろう。中には探検隊が使うようなヘッドライトを用意している人もいるはずだ。この照明機能を使えば、暗くてどこにケーブルを接続すればよいか分からないということがなくなる。両手が使えて作業も行いやすいというわけだ。
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<エイリアンのボタン>
エイリアンの頭部をかたどったボタンを押すと、5インチベイのカバーがゆっくりと開く。 |
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<本体背面>
背面は割とシンプルで、拡張スロットが4つ。これはマザーボードにmicroATXを採用しているためだ。 |
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<本体背面>
お借りしたモデルはコズミック・ブラック。重量感があり、どっしりとしたイメージだ。発光部のアクリルパネルには、蜂の巣のような模様と独特のフォントでALIENWAREの文字が入っている。 |
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<上部インターフェース>
USBやIEEE1394、ヘッドホンやマイクの端子が、本体上部に用意されている。普段はフタをしておくことができるので、上部インタフェースにありがちな端子が埃まみれになるということもない。 |
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<本体上部>
本体の上部には蜂の巣模様の穴が空いており、デザインと排熱のための構造が共存している。 |
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<サイドパネル>
サイドパネルはドライバーレスで開けられる。2ロックを外してから後部のフラップを引き揚げるだけの2ステップだ。サイドパネルを支えずに開けても、手で引っ張るまでは勝手に外れないなど、細やかな作りだ。 |
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<周辺機器や付属品>
手前左の革張りっぽい質感のものがマニュアル。完全に日本語化されている。キーボードとマウスはオプション。トレードマークのエイリアンが入ったマウスパッドも用意されている。 |
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<バックパネル>
バックパネルはボタンを押せば数秒間光るようになっている。机の下などに設置してある場合に、重宝する機能だ。 |
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◆ゲーマーならハイスペック構成に!
ここまで紹介してきてAlienware Auroraがどれだけゲーマーのことを考えて設計されているかが分かっていただけただろうか? 非常に高い性能を持つだけでなく、飽きの来ないギミックの数々。見た目だけでなく実用性が高いのもポイントだ。もちろん、Alienware Auroraの用途はゲームだけでなくてもよい。先に紹介したように、高性能CPUを搭載した本機はビデオ編集などの作業でも役立つだろう。
冒頭に書いたとおり、Alienwareシリーズのデスクトップモデルには4つのラインナップがあり、今回紹介したモデルはエントリーモデルだ。価格は今回お借りしたベーシックモデル(モニタ別売り)で14万円前後。マウスやキーボードを付けても16万円前後と、性能の割にはリーズナブルだ。そのエントリーモデルでもこれだけの性能を擁している。さらに上のラインナップは、購入時からオーバークロックもサポートしているというモンスターぶりだ。ゲーマーの皆さんなら、このモンスターに購入意欲をさぞやかき立てられることだろう。
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