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スリムでスタイリッシュなPIXUS iP90 |
カメラマンの世界にもデジタル化の波が押し寄せ、ここ一年で銀塩カメラの仕事とデジタルカメラでする仕事の比率が一気に逆転した。デジタル一眼レフの驚異的な進歩が、35mm銀塩カメラやブローニーサイズの中判カメラまでの仕事を押しのけたのである。もちろん、まだまだ銀塩にかなわない部分もあるが、多くの仕事先は、世の中のスピードの波にのるためにデジタルでの入稿を希望するのだ。そんな中、運良く私もデジタルカメラが登場した頃から触れさせてもらいデジタル化の波に乗れた。おかげで仕事にあぶれず済んだわけである(笑)。
デジタルの波はカメラだけではない。ご存じプリンタの世界もめざましい進歩を遂げている。そしてカメラマンにとってプリンタは欠かせないもので、デジタルカメラで撮影したデータのままでは作品ではない。プリントや印刷物になって初めて作品になるのだ。なので私にとってプリンタの活躍の場は、当然仕事現場ということになる。
以前の仕事現場といえば、撮影本番の前にポラロイドで撮影して、ライティングの具合や色味などの確認作業をしていた。もちろん私本人だけでなく、同行のディレクターやクライアントにも見せて相談し、関係者のコンセンサスを得てから実際の撮影に臨んでいた。
それが今ではデジタルカメラになり、カメラに搭載されている液晶画面で見せることも多いが、それではわからない部分が多々ある。なので私はほとんどの仕事で、ノートパソコンに繋ぎ、ダイレクトで転送して確認している。デジタルカメラで仕事しているカメラマンがよく使う手だ。しかし多くの人は気が付いていないが、液晶画面は所詮液晶であって、紙とは違う。雑誌など紙媒体の仕事では、液晶画面での写りを紙での印刷状態を想像しながら確認しなければならないストレスがある。実際、ノートパソコンの液晶画面で細部まで確認したはずなのに、校正刷りを見て「ここがつぶれちゃってたな……」ということもあったので、紙媒体の仕事では完全な仕上がりを求めてできるだけ撮影現場でプリンタで印刷して確認したいと思っている。スタジオ撮影ならすでにやっているが、屋外でのロケや海外ロケに大きいカラープリンタを持っていくわけにはいかないし、小さめのは色の再現性や階調性に満足がいかなかったりと悩んでいたところだ。
というわけで私が望む「ロケ用プリンタ」には、A4まで出せてしかも高画質であること、持ち運びが楽なコンパクトさと多様な電源に対応していること、さらにスタイリッシュであることという、わがままできびしい条件があるのだ。そしてついにその条件を満たして余りあるプリンタ、キヤノン PIXUS iP90が登場した。
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使用状態でもスタイリッシュ |
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充電式バッテリ(オプション)を装着可能 |
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バッテリ残量もLEDで確認できる |
前機種80iが出たときに「これぞ私の求めていたもの!」と思ったが、それがさらに進化してスタイルも洗練されて登場したのだ。表面塗装はニュートラルなシルバー塗装。サイドプレートがアクアブルーになってよりシャープな感じになっている。大きさもほどよい。A4が少し細長く変形した大きさなので鞄に入れて持ち運びできるのだ。
性能がよければスタイリッシュでなくてもいいのでは、という声があるかもしれないが、私はそれに大反対である。雑誌や広告などクリエイティブな仕事をしている以上スタイリッシュな道具でスタイリッシュに仕事をして、クライアントやディレクターはもちろん、モデルやスタッフにも良い印象を持ってもらって仕事したいのだ。それが次の仕事にも繋がると確信している。
私はiP90の登場で、カメラマンの三種の神器は「デジタルカメラ」「ノートパソコン」そして「プリンタ」だといいたい。これらの神器は、それぞれが孤立して働くのではなく、互いに連携してこそ威力を発揮する。デジタルカメラとノートパソコンとプリンタを全部接続することもあれば、デジタルカメラとノートパソコン、またはデジタルカメラとプリンタというように、現場の状況によってデジタルカメラに接続するものは変わる。iP90はデジタルカメラとパソコンをケーブル一本で直結できるピクトブリッジ対応なので、ノートパソコンに接続しなくてもOKである。紙媒体の仕事ではこれがほんとうにありがたい。デジタルカメラの液晶画面で判断して「いける!」と思ったら、ノートパソコンを介さずにすぐプリントして確認できるからだ。ポラロイドで確認していたときは、ほんとうに無駄が多かったが、iP90にしてからは必要なコマだけをプリントできるので大助かりである。
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オプションのシガーライターパワーユニットを使って車内でプリントの図 |
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バッテリ(オプション)によるPictBridge印刷の図 |
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ロケ現場でディレクターに確認
してもらってるの図 |
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クレードル上で待機(充電中) |
ロケ先でプリントを始めるとモデルさんもクライアントも驚愕のまなざしで見てくれた。スタジオではBluetooth(オプション)でワイヤレス印刷をしてみる。これぞマジック! テスト撮影したものがいきなりクライアントの前で印刷が始まるのだ。テーブルの上で何も結線していない状態でいきなり印刷……そりゃもう「格好いい!」の一言である。なんと言っても場所を取らないのがよい。休憩中にティーテーブルの片隅で……いや、膝の上でもできてしまう、スタイリッシュでスマートな奴なのである。
スタジオに帰って、オプションで購入したクレードルに縦に差し込めば、すぐに充電が始まる。その姿も格好いいのだ。その姿はどう見てもプリンタではない。次の出番を持っている、カメラマンの秘密のアイテムなのだ。
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さて一番肝心の画質だが、昨年末に発売された、「SUPER PHOTO BOX」の高画質を受け継いだ高品位なクオリティを持っている。最小2plの極小インク滴を正確に吐出し、4800×1200dpiのノズルから高精細な印刷を可能としている。コンパクトさゆえに4色インクとなっているが、さすがPIXUS、十分な階調を出しているのだ。新染料インクと純正写真用紙の組み合わせによる「ChromaLife(クロマライフ)100」に対応し、画像保存性が格段に向上した。驚異の「アルバム保存100年」を実現し、さらに、プロフェッショナルフォトペーパー使用時にはフォトフレームに飾った状態で耐光性30年、そのまま室内に飾った状態で耐ガス性10年、プリント後の美しさが長持ちするようになっている。 ※文中の各耐久年数はキヤノン測定条件による。保存・展示方法によってはその耐久年数に満たない場合もある
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3色一体インクタンクとブラックインクタンク |
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コンパクトながら2plの極小インク滴を正確に吐出するヘッド |
今回テスト機を持ってロケ先でプリントしてみた。冬の日差しの中、あえてコントラストの強い状態で撮影して、その現場で印刷したモデルの肌色や淡い色の服など見事に描写している。
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菜の花の中のモデル |
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肌色や額の髪の毛一本一本がよくわかる(赤枠内CLICKで拡大) |
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5mmほどの小さな花の集まりをマクロ撮影した物である。花びらの微妙な階調がよく出ている(赤枠内CLICKで拡大) |
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逆光で撮った水仙だが、予想以上に白の階調とともにおしべ周辺の淡い黄色がよく再現されている |
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オレンジと黄色の花が鮮やかに再現され、ボケ部分の花の色も破綻せずにきれいなボケを再現している |
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冬のコントラストの高い日差しに、飛びそうな淡い服もほどよく柔らかく質感がしっかりわかる |
データに手を加えずに、これだけ撮影時に見たとおりの階調や色を出してくれれば文句はない。そして現場でのテスト撮影をそのままプリントして見せることにためらいは感じない。また現場で編集者に撮影データを渡す場合は、プリントも渡してそのまま印刷見本にしてもらえるのである。これなら間違った色で媒体に印刷されることはまずないのだ。
その他の使い方も色々ある。取引先で見積書を急いで書かなくてはいけないときや、その場で必要な資料を印刷するなど、ビジネスユースでも大活躍できるだろう。しかも新機能として、普通紙での印刷時に「ブラックインクを節約する」モードと、CMYの3色でブラックを合成する「ブラックインクを合成する」モードを備え、ビジネス文書などの印刷時にブラックインクの非常対応ができる安心設計だ。
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側面にある赤外線とPictBridgeポート |
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携帯電話からの無線印刷を可能にしたプリントビーム |
また、ビジネスユースのみならず家庭で使うのにも問題はない。メーカー試算でのコストパフォーマンスは、L判一枚あたりのインクコストが、13.3円と、同じ「ChromaLife100」対応のiP9910(15.1円)よりも安い。そして赤外線転送やオプションでBluetoothにも対応し、家族中で携帯電話の写真画像などがワイヤレスで印刷できる。しかも携帯電話に登録されている電話帳をQRコード入りで印刷する機能も内蔵している。場所を取らずにスタイリッシュなこのiP90は家庭用プリンタとしても活躍できるはずだ。また家庭用としての楽しみ方では、キヤノンが実施しているWebサイト「Happy Photo Style」をのぞいて見るのもおすすめだ。グリーティングカードやフォトフレーム、その他お役立ち素材をダウンロード提供中。
さてさて、このiP90という強力なアイテムの登場によって、私の夢はiP90をもってアフリカに撮影旅行、撮影しながらすぐにiP90でプリントし、そして以前世話になったマサイ族の村での写真展を開くことへとふくらんだのである。
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A3ノビ・8色対応のiP9910 |
ここでもう1つ紹介したい新機種がある。A3ノビ印刷できるPIXUS iP9910である。なんといってもA3ノビでプリントできるのだ。昔から作品をプリントするのなら、基本は四つ切りである。A4ではちょっと小さすぎる。なのでA3ノビでの作品作りが好ましい。しかも現在のハイエンドデジタルカメラならば、A3ノビでも十分に印刷に耐えるだけの解像度を持っているのだ。作品作りならぜひA3ノビプリントだ!
今回、PIXUS iP9910も昨年秋に登場したiP8600と同じ8色インク「BCI-7」を搭載し、幅広い色空間に対応できるようになったのである。また新染料インクと純正写真紙との組み合わせで美しさ長持ちプリントができるようになり、A3ノビでプリントした作品が安心して保存できるようになった。
そうそう、もうちょっと伝えたいことがある。私はふだんから写真プリント用紙はプロフェッショナルフォトペーパーしか使わない。テストプリントを繰り返していると膨大な枚数が消費されている。しかしA4サイズは、12枚入りと少なく、あっという間に袋と型紙のゴミが増えてしまっていたのである。今回、このプロフェッショナルフォトペーパーに50枚入りが発売される。大容量なのだ。多少なりともコスト削減にもなるし、ゴミの削減にもなるのである。
プリント用紙も、世界のファインアート紙市場で支持されているハーネミューレ社の用紙をキヤノンで商品化した「ファインアートペーパー・フォトラグ」に対応しているのだ。コットン100%のアート紙がクオリティーの高い作りに貢献してくれそうだ。私は「ファインアートペーパー・フォトラグ」での作品作りをこれから始めようと思っている。マッチングされた専用紙が増えることはとても嬉しいかぎりである。
最後にキヤノンデジタル一眼レフカメラのユーザーに嬉しい機能がある。RAW現像専用ソフト「Digital Photo Professional」とピクサス同梱ソフト「Easy-Photo Print」との連携で、撮影時に色空間の広いAdobe RGBで撮影しておけば、専用ICCプロファイルとあいまって思い通りの色表現ができるのである。
つまり簡単に言ってしまうと、色空間の広い写真データを、iP90とiP9910はプリント時に忠実に再現してくれるということだ。そう! まさに思い通りの自然な写真がこれでできるのである。
注:ご覧になっているディスプレイの解像度や設定によっては作例の見え方が異なります。
注:写真はプリントをCanoScan9900でスキャニングしています。 |
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若林 直樹(STUDIO海童)
アフリカゾウから半導体まで手がけるカメラマン。インプレスのDOS/V POWER REPORTなどで活躍中。デジタルカメラマガジンではカラープリンタ、スキャナー等のレビューも担当。 |
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[URL]
■キヤノン ピクサスのホームページ
canon.jp/pixus
■Happy Photo Style キャンペーンのページ
canon.jp/hps
■【2005年01月28日】キヤノン販売、2004年は増収増益
〜インクジェットプリンタで8年ぶりの国内トップシェア
http://dc.watch.impress.co.jp/cda/other/2005/01/27/840.html
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