8000万人を超えるユーザーが利用するケータイ。それもただケータイを持つだけでなく、誰もがごく自然にケータイを使い、メールやコミュニケーション、コンテンツを楽しんでいる。今やケータイはコミュニケーションの道具から私たちの生活に欠かすことができない身近なデジタルデバイスになりつつある。しかし、そんなケータイもある日、突然、現在のようになったわけではない。サービスや端末がさまざまな進化を遂げ、現在に至っている。
その進化のプロセスにおいて、ひとつのキーワードになっているのが『解放』だ。「ケータイ」という言葉を耳にするよりもはるか前、電話は一家にひとつ備えられていおり、いわば、家族や世帯を代表するものとして扱われてきた。それが自動車電話から持ち歩きが可能な「携帯電話」の登場により、家族から個人を代表する電話になり、同時に「場所」という束縛から解放されている。 ケータイそのものもこうした解放によって、より使いやすい環境へと進化している。初期のケータイは通信をするのに、通話と同じように回線交換で接続していたため、接続時間に応じた通信料が課金されていた。せっかく便利なコンテンツが提供されていても料金が気になってしまうため、じっくりと楽しむことができなかったわけだ。 そこで生まれてきたのがパケット通信だ。パケット通信はデータを細切れにして転送する通信方式のことだが、通信料は転送したデータ量に応じて課金されるため、画面に表示されたコンテンツをじっくりと楽しむことができる。つまり、パケット通信の登場によって、ケータイは場所に続いて、「時間」という束縛から解放され、コンテンツやメールをじっくりと利用できるようになったわけだ。 そして、次なる解放として、注目を集めているのが「パケット通信料」だ。auが2003年11月、CDMA 1X WINで提供を開始したパケット通信料割引サービス「EZフラット」では、パケット通信料の定額化を実現し、いよいよユーザーを「パケット通信料」から解放している。EZフラットは月額基本料金に加え、月額4410円(税込)を支払うことで、メールやEZWebでのパケット通信料を定額化している。 さらに、今年8月からはこの定額制サービスを二段階構成にする「ダブル定額」にリニューアルしている。定額料金が4万パケットまでが月額2100円(税込)、4万パケットを超え、8万4000パケットまでが1パケットあたり0.0525円(税込)、8万4000パケットを超えたときは月額4410円(税込)という構成になっている。つまり、その人の使い方に応じて、パケット通信料が月額2100円〜4410円の範囲内で利用できるわけだ。もちろん、上限は月額4410円までなので、どんなに使ってもパケット通信料の最大支払額は変わらないわけだ。
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ケータイは音声通話のための道具からメールやコンテンツを見るための道具へと進化を遂げたと言われるが、最近ではメールやコンテンツ閲覧以外の使い道も増えている。こうした新しい使い道にもダブル定額は非常にメリットが大きい。 たとえば、auは昨年から端末上に地図を表示しながらナビゲーションを行なう「EZナビウォーク」のサービスを提供している。EZナビウォークでは現在地を測定するのに、GPS衛星からの信号と基地局からの電波を利用し、ルート案内をしている間はGPS衛星からの信号で現在地を表示するしくみを採用している。ただ、実際の利用では地図データをサーバ上からダウンロードする必要があるため、ここにパケット通信料が発生する。しかし、そんな場合でもダブル定額なら、パケット通信料を気にすることなく、思う存分、EZナビウォークが利用できるわけだ。ちなみに、EZナビウォークではリアルタイムの地図表示、ルート案内、音声ガイダンスといった基本機能の他に、道路交通情報や乗り換え検索、終電・始発検索といった交通メニュー、地図上に表示されるアイコンを変更する「着せ替えナビ」、雑誌などに掲載された住所情報が入ったバーコードをケータイで読み取るだけでナビゲーションを設定できる「バーコード連携」機能なども用意されているため、これらもフルに活用できるわけだ。
また、EZアプリもお得に使うことが可能だ。EZアプリにはゲームなどのエンターテインメント系だけでなく、メールサービスのような実用系のものも増えているが、前述の着うたの例を見るまでもなく、コンテンツ利用料の他にアプリケーションそのものをダウンロードするために、パケット通信料が掛かる。さらに、ゲームなどのアプリケーションではデータ更新のために、もう一度、ダウンロードが必要になるケースもある。しかし、こうしたアプリケーションでもダブル定額なら、パケット通信料を気にすることなく、安心して楽しめるのだ。面白そうでゲームを始めてみたが、気が付いたら、パケット通信料が……なんていうことも防げるわけだ。ちなみに、EZアプリ(BREW®)では『ドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』の配信も開始されており、今まで以上に楽しく遊べる環境が整っている。 ここまで紹介してきた使い方は、いずれもダブル定額を利用することにより、従量制のときよりも割安かつ安心して使えるというものだ。しかし、ダブル定額が利用できるCDMA 1X WINには、ダブル定額ならではのコンテンツも提供されている。それが動画を含んだコンテンツの番組配信サービス「EZチャンネル」だ。EZチャンネルにはテレビのようなバラエティ番組からクイズ、映画などの情報番組などがラインアップされており、見たい番組を登録しておけば、あとは深夜の内に自動的に番組が端末にダウンロードされる。番組のラインアップにはこの他にもマンガや雑誌といった電子書籍、英会話のレッスン番組などもあるうえ、無料の番組も配信されている。
EZチャンネルで配信される各番組のファイルサイズは動画や音声なども含まれるため、数MBもの容量になるが、ダブル定額であれば、パケット通信料が定額なので、登録した番組の視聴料のみで楽しめる。また、ダブル定額が利用できるCDMA 1X WINは、最大2.4Mbpsもの速度でダウンロードが可能なため、深夜の番組配信に何時間も掛かるということはまずない。つまり、EZチャンネルはダブル定額ならではのサービスというわけだ。 |
コスト的にも内容的にも魅力あふれるダブル定額だが、これを活かすための対応端末はどうなっているのだろうか。 CDMA 1X WIN対応端末は昨年11月のサービス開始以来、すでに「W11H」(日立製)、「W11K」(京セラ製)、「W21H」(日立製)の3機種がリリースされており、今年7月から新たに「W21S」(ソニー・エリクソン製)、「W21SA」(三洋電機製)、「W21K」(京セラ製)の3機種がラインアップに加わっている。最新の3機種の特長について、簡単にまとめておこう。 まず、W21SはEZアプリ(BREW®)に対応し、EZナビウォークの利用が可能な端末だ。電子コンパスも搭載しているため、EZナビウォーク利用時は地図が方角に合わせ、自動的に回転させることが可能だ。特徴的なのはセンタージョグでの操作性を考えた「クロスメニュー」で、センタージョグをクルクルと回すことで、クロスメニュー内の項目を選択できる。赤外線通信ポートも装備しており、テレビリモコンとして利用したり、他の端末とデータのやり取りをすることもできる。 W21SAは最近、増えてきている二軸回転式ヒンジを搭載した端末だ。この端末もEZアプリ(BREW®)に対応し、EZナビウォークでは電子コンパスを利用することができる。閉じたままで大画面でコンテンツが楽しめるフロントスタイルも魅力的だが、オートフォーカス付き2メガピクセルカメラ、着うたダウンロードに対応したFMラジオチューナー、テレビ画面でムービーやフォトが楽しめるTV出力機能など、AV周りの機能も充実している。 W21KはWINのブロードバンド環境を手軽に楽しめる端末で、ボディもコンパクトにまとめられている。131万画素のメガピクセルカメラで撮影した顔をパーツごとに変形させたり、キャラクターと組み合わせることができる顔変形モードなど、撮った後の楽しみも充実している。メニュー画面も背景画面やアイコンが動く独特のデザインを採用しており、自分好みのメニュー画面にカスタマイズすることもできる。ジョン前田氏のデザインによる「ムービングクロック」も個性的で楽しい。
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「解放」というキーワードで進化を遂げてきたケータイ。ダブル定額はユーザーをパケット通信料という束縛から解放することにより、今までのケータイとは違った使い方を可能にしており、ユーザーがケータイに使うことができるリソースを十二分に活かすことができる。ダブル定額という絶好のチャンスを活かし、ぜひケータイを幸せに使ってみて欲しい。そこにはケータイを軸にした新しいライフスタイルが見えてくるはずだ。 |
■関連情報 ・「W21S」製品情報 ・「W21SA」製品情報 ・「W21K」製品情報
・クロスメニューで使いやすい「W21S」 ・200万画素カメラやFMラジオなど盛り沢山の「W21SA」 ・メニューカスタマイズが可能なスタンダードモデル「W21K」 |
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法林岳之 1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindowsXP基本編完全版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。(impress TV)も配信中。 |