Blu-rayディスクドライブに、セットトップボックス、PlayStation 3、HDDレコーダー、さらには最近電源は入れていないけどVHSデッキなどもテレビの下に置いてあって、必要に応じて繋ぎ替えている……というような人も多いのではないだろうか? 最近の大型液晶テレビであれば、ある程度の入力系統数があるので、3、4台なら接続できるとは思うが、HDMIは1つだけとか、D端子がない……といろいろな制約があるのも実情だ。最近よくこうした機材を接続するために、「HDMI切替器を探している」というような声も聞くが、HDMI切替器も意外と高価だし、ここにはアナログ機材を接続できないというネックもある。
こうした問題を解決するための本命機材が、AVアンプだ。AVアンプならデジタル機器でもアナログ機器でも数多くの機材と接続し、切り替えて使うことができる。もちろん、アンプなので、その中枢は音であり、オーディオ機器。音楽でも映画でもゲームでも、高品位な音を出すことができるので、テレビの小さなスピーカーで聴くのとはまったく異なる世界を体験することができるのだ。
ただAVアンプは、見た目にも大きく、ガッシリとした機材であるだけに、「自分には関係のないもの…」と最初から思い込んでいる人がいるのも実情。いかにもオーディオマニアが好む、高価な機材、というイメージがあるからだろう。ところが、最近のデジタル技術の進化に伴い、手ごろな価格のAVアンプがいろいろと登場している。その中でも、ちょっと信じられないほどの低価格で登場したのがヤマハのRX-V373だ。5.1chのサラウンドスピーカー、NS-P285とのセット価格で実売5万円台と、従来のAVアンプの価格帯とは明らかに違う手ごろな製品となっているのだ。また奥行きも315mmとヤマハのAVアンプの中でもっとも短く、テレビのラックの中に置いても出っ張らず、ケーブル配線しても、ラック内にしっかりと収まる機材となっているのだ。
価格が安いからといって侮ってはいけない。ここから飛び出す音は、驚くほどの高音質。これまでテレビのスピーカーから出ていた音は何だったんだろう……とショックを受けるほどだ。確かに最近のテレビは薄型化に力を注いでいて、音については軽視されている傾向がある。どうしてもスピーカーの構造上、音質を上げるためには奥行きが必要になるため、薄型化のためにはここをあきらめざるをえないからだ。だからこそ、RX-V373で音を出すと、そのあまりにも大きな差に驚くわけだ。
では、肝心の入力端子はどうなっているのだろうか? リアパネルを見ると分かるとおり、数多くの機器と接続できるように、たくさんの端子が設けられているのだ。具体的には映像でいうと
- HDMI × 4
- コンボジットRCA × 3
を装備。またオーディオでいうと
- HDMI × 4
- アナログ × 3
- 光デジタル × 2
- 同軸デジタル × 2
- AM/FMチューナー ×1
- USB × 1 (フロント側)
ととにかくいっぱい用意されている。まあ、これだけあれば普通は手持ちの機材のすべてが接続できるのではないだろうか? ちなみに、ここにあるUSBというのが、切替器という概念からは異色に映るかもしれないが、現在オーディオにおいては非常に重要な入力端子となっている。そう、USBメモリーに入れたMP3やAAC、WAVのオーディオファイルの再生ができるのはもちろん、iPodやiPhoneと接続してその音を再生することができるようになっているのだ。
やはりAVアンプ経由で再生するiPodの音は格別で、ヘッドフォンで聴くのとは明らかに違う音の広がり、ゆとりが感じられるのだ。アウトドアではヘッドフォンでも、自宅ではスピーカーでゆったりと聴くというのもiPodの楽しみ方のひとつではないだろうか。
このRX-V373にはヤマハのAVアンプならではの機能も満載されている。そのひとつがシネマDSPだ。シネマDSPとはヤマハが25年もの期間、積み上げてきた音場創生技術のこと。たとえば映画のサウンドデザインされた音場空間を再現するプログラムであったり、ヨーロッパのコンサートホールで聴いているような音にしてくれるプログラム、スポーツスタジアムで歓声の中に包まれているような雰囲気を演出してくれるプログラム……などなど数多く用意されているプログラムを選択するだけ、まるでその場にいるかのような音場に変換してくれるシステムなのだ。この機能を使って映画を見たり、音楽を聴いたり、ゲームをすると、従来自宅ではありえなかったような音を体験することができるはずだ。
もうひとつがミュージックエンハンサー。これはMP3やAACなどの圧縮音源をより豊かなサウンドで再生できるように音質改善するシステムのこと。これをオンにしてMP3などを聴くと、明らかに通常の再生よりいい音で鳴らすことができるようになるのだ。
しかもシネマDSPとミュージックエンハンサーを同時に利用することができるため、音を存分に楽しむことができるのだ。
シネマDSP プログラム一覧
映像コンテンツに適した音場プログラム(MOVIE)
MOVIE(ムービー) | |||
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Standard(スタンダード) | Spectacle(スペクタクル) | Sci-Fi(サイファイ) | Adventure(アドベンチャー) |
Drama(ドラマ) | Mono Movie(モノムービー) | - | - |
ENTERTAINMENT(エンターテイメント) | |||
---|---|---|---|
Sports (スポーツ) |
Action Game (アクションゲーム) |
Roleplaying Game (ロールプレイングゲーム) |
Music Video (ミュージックビデオ) |
映像コンテンツに適した音場プログラム(MOVIE)
CLASSICAL(クラシカル) | |||
---|---|---|---|
Hall in Munich(ミュンヘン) | Hall in Vienna(ウィーン) | Chamber(チェンバー) | - |
LIVE/CLUB(ライブ/クラブ) | |||
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Cellar Club (セラークラブ) |
The Roxy Theatre (ロキシーシアター) |
The Bottom Line (ボトムライン) |
- |
STEREO(ステレオ) | |||
---|---|---|---|
5ch Stereo(5ch ステレオ) | - | - | - |
でも、これだけの機材になると、消費電力も大きいのでは……と思うかたもいるだろう。もちろん、大音量を出せば、それなりの電力を食うわけだが、普段の消費電力は小さめ。しかもECOモードというものもついており、これをオンにすると20%の電力削減が可能になっているのだ。ECOモードがオンだと、最大出力が低減されるが、家庭でそれほど大音量を出すことはあまりなさそうなので、通常はオンにしたままの状態でいいと思う。
また便利なのがリモコンだ。RX-V373に標準添付されるリモコンはHDMI CECという規格に則った双方向でのコントロールに対応したものになっている。そのためBlu-rayプレイヤーやHDDレコーダーなどと連携させて、RX-V373のリモコンで操作することが可能になる。CECの仕様上、全部の機能を使えるわけではないが、テレビのオン/オフといったことまでできるので、便利に活用できそうだ。
以上、ヤマハのAVアンプのエントリーモデル、RX-V373について紹介してみたがいかがだっただろうか? 流行のサウンドバーと比較しても価格的に大きな差はないし、リアルな5.1chだけに迫力、臨場感でも大きく上回る。そして数多くの機器と自在に接続ができるなど拡張性の面で優れているのがAVアンプとしての魅力だろう。初めてのAVアンプとして価格的に見てもお勧めできる製品だ。
藤本健リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。
著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン 」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto。
関連情報
□AVレシーバー RX-V373
http://jp.yamaha.com/products/audio-visual/av-amplifiers/rx-v373_black__j/?mode=model
□スピーカーパッケージ NS-P285
http://jp.yamaha.com/products/audio-visual/speaker-systems/speaker-packages/ns-p285_black__j/?mode=model
□YAMAHA ホームシアター/オーディオ
http://www.yamaha.co.jp/product/av/
□Yダイレクト
http://ydirect.yamaha-elm.co.jp/
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−HDオーディオやiPod接続対応。使用中でも省電力
http://av.watch.impress.co.jp/docs/news/20120315_518667.html