ついに7.1ch・HD オーディオに対応! ゲームモードで「迫力重視」の体験もOK

YSPシリーズ・フルスペックモデルの「YSP-4100」

YSP-4100では、ワンボディで7.1chサラウンド再生に対応

YSPシリーズといえば、フロントスピーカーからビーム状に音を飛ばし、壁面反射させることでリスニングポイントにいる人に「サラウンドの音場感」を楽しんでもらえる「デジタル・サウンド・プロジェクター」である。その点は、最新モデルであるYSP-4100も同じである。HD時代でのモデルチェンジということで、現在の映像・音楽シーンで求められるスペックをできる限り再現できるよう、前機種・YSP-4000から、大きな進化を遂げている。

最大の進化点は、「ブルーレイのHDオーディオを活かすスペックを備えた」ということである。具体的にいえば、DTS-HDMasterAudioやドルビーTrueHDといったロスレスHDオーディオのデコードと、7.1chサラウンドに対応した、ということだ。

7.1chサラウンドは、5.1chに比べ「広がり」を感じやすい。音が移動する際の「つながり感」がなめらかになるため、より自分がその場にいるような感触になる。サラウンドというと、音が右から左にガンガン動く、ある種アトラクションのような楽しさを思い出す人が多いだろうが、そういう映画は意外と少ないもの。映画の世界に包まれたような感触、登場人物の気持ちを伝えるような「場」を再現した音響作りをしている映画が中心である。また、コンサートの様子を収録したライブ映像の場合、より「その場にいるかのような感覚」の再現に心が砕かれる場合が多い。

それを再現するには7.1chサラウンドの方が理想的であり、だからこそブルーレイでは、音声フォーマットとして採用されたのである。

だが、実際問題として家庭に7.1chサラウンドのシステムを構築している人は、そう多くない。7本のスピーカー+サブウーファーとAVアンプを設置するのは大変だからだ。費用以前に、「8つのスピーカーを配置する」という行為とスペースの準備に気後れしてしまった、という人も多いのではないだろうか?このあたりの事情は5.1chサラウンドの時代から同じだが、7.1chサラウンドでは、さらにサラウンドバックスピーカーが2つ増えるわけで、ハードルはより高くなる。

そこで注目なのが、YSP-4100である。YSP-4100は、フロントに置くコンパクトなボディ一つで7.1chサラウンドを実現する。YSP-4000では5.1chだったが、4100では7.1chになったのだ。

すでに述べたようにYSPシリーズは、正面から音を「ビーム状」に飛ばす。そしてそれが壁などに反射して届き、サラウンドの臨場感を生み出す。従来は「5本の音ビーム」から「5ch」用の音場を作り出していたが、YSP-4100ではさらに細かな制御を加え、同じ5本のビームから、7chのサラウンドを生み出している。そのためヤマハでは、この仕組みを「5ビームプラス2」と呼んでいる。この仕組みで生み出される音場は、いかにも7.1chらしい「なめらかさ」「ひろがり」を持っており、5.1chとは明らかな違いが感じられる。特に、ミュージカルやライブ映像などでは、元気で臨場感のある音を楽しめるはずだ。

5本のビームから7chのサラウンドを生み出しているため、ヤマハでは「5ビームプラス2」と呼んでいる

YSP-4100はスピーカーシステムであると同時にAVアンプでもある。今回はロスレスHDオーディオのデコードにも対応したので、手持ちのブルーレイ・レコーダーや新型PLAYSTATION3(CECH-2000シリーズ)などのロスレス音声・ビットストリーム出力対応の機器をHDMIで接続すれば、それだけで「7.1chロスレス対応ホームシアター」ができあがる。この手軽さこそが、YSP-4100の美点である。

また、内蔵の「シネマDSP」を使い、映像の種類に合わせ、音場効果を切り換えて楽しむこともできる。注目は、今回新たに搭載された「ゲームモード」。最近は音声がサラウンド収録され、「敵の位置を音で把握しながら戦う」といったゲームも少なくない。そういった場合にはゲームモードにしておくと、より最適化された音場効果を楽しめる。ただし、シネマDSP利用時には、HDオーディオは利用できない。HDオーディオは7.1chで「自然さ」「広がり感」を楽しみ、アクション映画やゲームなど、「音の位置変化」を楽しみたいソースの場合には、シネマDSP+5.1chで楽しむ、という考え方がお勧めだ。(マルチチャンネルリニアPCMにはシネマDSPが利用できるので、次世代オーディオをヤマハ独自の音場空間で楽しみたい方は、プレーヤーの設定でPCM変換すると良いだろう)

今回からリモコンも一新。入力ソースの切り替え、シネマDSP切り替えなど、よく使う機能の操作ボタンがまとめられている

性能アップ、でもさらにコンパクト! ウーファーのワイヤレス化でレイアウトが楽に

液晶テレビと組み合わせた場合、YSP本体が出っ張ることのないように厚みが約9cmと薄くなった

ワイヤレスサブウーファーキット「SWK-W10」。これに市販のサブウーファーを接続することで、サブウーファーをワイヤレス化できる

別売りのiPod用トランスミッター「YIT-W10」を手持ちのiPodにつなぐことで、iPodの音楽をYSP-4100に飛ばし、ワイヤレスで楽しめるようになる

これらの機能が、テレビの下に配置するたった1個の機器で実現できる、ということが、YSP-4100の最大の魅力だ。前機種の人気も「手軽な高音質」という点にあったが、YSP-4100ではさらにその点に磨きがかかった。キーワードは「コンパクト化」と「ワイヤレス」だ。

YSPシリーズはワンボディでサラウンドを実現する、比較的コンパクトな製品ではあるが、それでも最上位機ともなれば、それなりの大きさ・重量となる。

だがYSP-4100では、前機種に比べ大幅な機能アップが行われたにもかかわらず、サイズは重量が15.5kgから10kgになり、前後の厚みも14.4cmから約9cmへと、劇的といっていいほど小型化している。コンパクトになったことで、設置がさらに楽になった。特にうれしいのが、テレビを「壁掛け」にしている場合だ。テレビを壁掛けにしたなら、せっかくだからスピーカーも壁掛けに……と考えるはず。

従来は、テレビよりもYSP側の厚みがあったため、特に薄さ重視のテレビと組み合わせた場合、YSPが出っ張ってしまうこともあった。だがYSP-4100の場合には、壁掛け金具と組み合わせても約11cm。液晶テレビを壁掛けにした場合も、壁からの厚みが11cm程度と言われているので、以前ほどYSPが前に出ることはないだろう。従来、設置時に問題となったのが、オプションであるサブウーファーの接続だ。これだけはYSPと別に存在する「スピーカー」となるため、従来はケーブルで接続していた。そのため、「ケーブルを減らしてシンプルなレイアウトで」ということにこだわる人には、少し制約が生まれていた。

だが、YSP-4100からは、オプションのワイヤレスサブウーファーキット「SWK-W10」を使うことで、サブウーファーを「ワイヤレス化」できるようになった。サブウーファーはリアスピーカーなどと違い、設置の自由度が高い。ワイヤレス化できれば、室内のレイアウトをあまり崩さず設置しやすくなる。ワイヤレス化というと音質が劣化するように思えるが、ヤマハは独自技術により、非圧縮かつ低遅延でLFEを伝送可能なので、問題は起きない。

もう一つ、ワイヤレスという点でおもしろいのがiPodとの連携だ。「AirWired」と名づけられたこの技術は、iPod用のトランスミッター「YIT-W10」(別売)を用意し、手持ちのiPodにつなぐと、iPodの音楽をYSP-4100に飛ばし、良い音で楽しむことが可能になる。音量調整などはiPod側の操作と連動するので操作もラクチン。iPhone 3G、iPhone 3GSに対応していることも嬉しい。テレビを見ていない時にも活用することができるのだ。

HDMI リンクで「普段も楽に使える」のが魅力 「家族誰もが高音質」を楽しめるホームシアター機器

YSP-4100は、4つものHDMI入力を装備している。ゲーム機やブルーレイ・レコーダーなど複数の機器をつないで、簡単に切り替えながら使える。特に、HDMI入力がまだ少なかった頃のテレビを使っている人にはありがたい点だろう。

もう一つ、HDMI関連で重要なのが、テレビとの連携だ。HDMICEC(HDMIリンク)を使い、電源や入力切り替え、リモコン操作などが連動していると、操作がかなり簡便化される。HDMICECというと、現在テレビメーカー各社は、自社製品同士をつないで使うことをアピールすることが多く、「他社製品は使えない」ような印象を受ける。だが、その点ヤマハはテレビメーカーではないので、できるだけ多くのメーカーと互換性を維持する、という思想を貫いている。カタログでは、パナソニック・東芝・日立・シャープ・三菱の5社機器と互換性があることを謳っている。なお、筆者側でチェックしてみた範囲では、PS3を含むソニー製品でもおおむね問題なく動作するようだ。すなわち、主要メーカー製のテレビやレコーダーならば、安心して便利に「連動」が使える、ということだ。普段テレビ番組を見る時でも、リンク機能さえつかっておけば、自動的に音声はYSP-4100側で再生され、迫力ある良い音で楽しめる。手動切り換えは面倒だが、リンク機能による自動選択ならば問題ない。

YSP-4100は、HDMI入力を4つ備える(出力1 系統)

入力端子名の変更も行える

なお、東芝と日立のテレビを使っている場合には、もう一つ機能が追加される。それは、テレビ番組の電子番組表(EPG)と連動し、シネマDSPが自動的に働くのだ。EPGの番組ジャンルを認識し、映画の場合には映画の、スポーツの場合にはスポーツのモードに、YSP-4100の側も音場効果を切り換えてくれる。リンクをめぐる新しい取り組みとして注目したい。(対象モデルはこちら)

テレビとの連動という点で、最後に紹介しておきたいのが「ユニボリューム」という機能だ。これは、CMと本編の間など、番組間での「音量の差」を補正し、常に聞きやすい音量に自動調節してくれるもの。最近、一部のテレビに同様の機能が搭載されはじめているが、YSP-4100を組み合わせれば、音量調節系の機能が搭載されていないテレビでも、より気軽にテレビを楽しめるようになる。

対象モデルのテレビと接続していれば、電子番組表(EPG)と連動し番組内容に合ったサラウンドモードに自動的に切り替わる

YSP-4100を内蔵したラックシステム「YSP-LC4100」も用意。こちらは、20万円を切る価格で販売される

いい音になるのはいいが、操作や設置が面倒な場合、「いい音」を享受できる人は少なくなる。あえて言うなら、「家庭でお父さんだけが楽しめる高音質」では、いまやなかなか購入の同意は得られない、ということだ。だが、音にこだわりたい人にはそのための機能を用意した上で、そうでない人にも「自動で使える機能」を用意すれば、「家族誰もが楽しめる高音質」になる。

YSP-4100は、そういった部分が、他のAVアンプとはちょっと違った部分、といえそうだ。しかも、YSP-4100は安い。前モデル・YSP-4000よりも2万円安い、16万円程度で販売されている。いまどきの時勢にあった、ありがたい「進化」である。

西田宗千佳
 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

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