2008年11月、ヤマハがiPodオーディオ市場へ堂々の参入を果たした。ヤマハのオーディオ技術入りiPodオーディオ製品が出るっ、キターッ!! と喜んでいる人も多いんではなかろうか?
かくいう拙者も期待していたひとり。実際にいくつかヤマハ製のiPod対応オーディオを試してみたが、どれも魅力的だ。満足感とともに使えますな。
例えばミニコンポタイプのMCR-330。iPod用ドックとUSBポートを搭載したCDレシーバーで、本体上にiPodをセットでき、USB対応音楽プレイヤーも接続可能。奥深のスピーカにより、ハリがありかつ繊細な中〜高音、そして想像以上の重低音を堪能できる。小型だけど高音質。また、ヤマハ製だけに、細部の作りがヒッジョーにイイのも特徴的。本体前面は黒く落ち着いたアルミヘアライン仕上げで、スピーカーのピアノブラック調で深みのある輝きを見せる。
さらにもうひとつ、オールインワンタイプのTSX-130。iPod用ドックとUSBポートを搭載するほか、CDプレイヤーも内蔵した一体型のコンパクトオーディオですな。上面がウッドテーブル=小物を置けるユニークなデザインで、リビングや寝室などにさりげなく置けるインテリア性がナイスですな。堅苦しくなく、気軽&カジュアルに音楽を楽しめる製品だ。
ほかにも魅力的なiPodオーディオ系製品が多々あるが、拙者的に目をヒン剥いちゃったのがポータブルプレーヤードックPDX-50。使った瞬間、絶対購入するッ!! てな気分に。拙者的結論から言えば、コレ、世界最強のiPod用ワイヤレス・スピーカー。使うほどに、触るほどに、画期的な製品であることがよくわかる。
てなわけで、以降、PDX-50に的を絞って、その機能や使用感を見ていこう。
「PDX-50」は、iPodやiPhone 3Gに対応したデジタル・ワイヤレス・スピーカーだ
トランスミッターを装着するだけで、全ての操作をワイヤレスでiPodやiPhone 3Gだけで行えるのだ!!
ポータブルプレーヤードックPDX-50は、iPodやiPhone 3Gに対応したデジタル・ワイヤレス・スピーカー。パッケージには、本体、トランスミッター、充電器、ACアダプター×2個(本体用と充電器用)が含まれている。
使い方は激カンタンで、iPodやiPhone 3Gにトランスミッターを装着……するだけ。無線機器間での接続設定は一切不要。本体の電源オンオフ操作さえ要らない。トランスミッターを装着したiPodやiPhone 3Gで曲を再生すれば、スピーカーから音楽が流れるのだ。
で、まず一発目に「スゴい!!」と感じてしまうのは、操作性の良さ。
前述のとおり、付属トランスミッターをiPodやiPhone 3Gに装着して使うわけだが、ジョリーグッド過ぎるのが“全ての操作”を“ワイヤレス”で“iPodやiPhone 3Gだけで行える”という点。トランスミッターを装着した時点で、iPodやiPhone 3GにPDX-50というスピーカーが内蔵されたというイメージになる。
具体的には、iPodやiPhone 3Gを使い始めれば、PDX-50にも電源が入る。音楽を再生すれば、PDX-50から高音質なサウンドが流れる。iPodやiPhone 3Gでボリューム調整すれば、PDX-50の音量も変わる。もちろん、PDX-50はワイヤレス・スピーカーなので、iPodやiPhone 3Gを操作中にPDX-50の前に貼り付く必要もない。
例えばほかのiPod用スピーカー製品とかって、まず有線接続だったりするので、スピーカーの近くにiPodなどを置く必要がありますな。また、曲の再生はiPodを操作、電源オンオフや音量調整はスピーカーを操作、とか個別に操作したりネ。スピーカーにリモコンが付属していても、結局、いつものiPodとは全然違う操作感覚となり、どうしても違和感が生じた。
しかしPDX-50の場合、iPodやiPhone 3GがPDX-50のリモコンとしての役割まで果たすようになる。結果、いつもの操作をすればスピーカーから音が出る。やったコトはiPodやiPhone 3Gにトランスミッターを装着しただけ……なのに、これまでのiPod用スピーカー製品に絶対あった“あの違和感”が全然ナイ!! 従来製品とPDX-50の狭間にある、この操作感のギャップ。これが拙者における巨大な痛快感となった。
ワイヤレス伝送には、ヤマハの独自技術である「AirWired」を利用している
ここしばらくPDX-50を試用している拙者。「これやっぱ超便利〜!!」と喜びつつ使用中だが、誰かに使わせると、ほとんどの人が欲しがりますな。もはや俺は買ったけどね。ていうか2台も買っちゃったけどネ!!
主にiPhone 3Gを組み合わせて使っているが、数日使って「むむむ!!」と改めて感じたのは音の良さ。非常にクリアなんですな。てのは、PDX-50、AirWiredというヤマハの独自技術で音源(iPodやiPhone 3G)から本体に、音声をデジタル・ワイヤレス伝送しているからだそうだ。
AirWiredによるオーディオ伝送は、ステレオ2chを48kHz/16bitの無圧縮で送っている。iPodなどからのアナログ・オーディオ出力を、トランスミッター部でデジタル信号に変換し、これを2.4GHz帯の電波に乗せて送り、PDX-50がこの信号を受信してオーディオ信号に変換・再生している。
ぶっちゃけ、iPodなどから出た音は、空中を飛んでスピーカーに届いても、デジタルデータとして劣化することがナイ!! 理想に近い状態で音を送れているので、例えば、FMトランスミッター系のワイヤレス機器と比べちゃうと、天と地ほど音のクリアさが異なるのだ。
それから、かな〜り驚いたのが音声の遅延時間の短さ。
ワイヤレス・スピーカー・システムの場合、どうしても遅延(音源から音声信号が出てスピーカーで再生されるまでのタイムラグ)が生じてしまう。例えば、最近はワイヤレス・オーディオ伝送の代表格になりつつあるBluetoothの場合、100〜200msの遅延が発生すると言われている。一方、AirWiredの遅延は、たった12ms!!
ミリ秒って言われても……ですよね。そこで、この数値を感覚的に理解しやすいものに換算してみよう。音源から自分までの距離と、音が発生してから聞こえるまでの時間だ。
当然だが、実際の生活上でも“音の到達遅延”は起きている。音の速度は秒速で約340m(海面上で気温15℃)。約340m遠くで音が発生したら、1秒後じゃないとココで聞こえない。1秒遅れで聞こえるので、この場合の音の遅延は1000msというわけだ。
では、Bluetoothの100〜200msの遅延って、どのくらい遠くで音が発生した感覚? 計算してみると、だいたい34〜68m遠くで音がした状態。発生した音が聞こえるまでに0.1〜0.2秒かかるので、意識せずともフツーに遅延を感じちゃうレベルだ。
同様の計算で、AirWiredの12msは、約4m離れた位置で音が発生した状態となる。オフィスで課長とかに「ぉーぃ、スタパくん、ちょっと来て、おーい!!」的な距離。遅延が全然気づかないレベルですな。専門家によれば、12msの遅延を何となく認知するのは例えばドラマー。音源が目の前にありかつ、音が出る瞬間を目撃するのがドラムを叩く環境。そのドラマーの10%の人だけが遅延に気づく程度だという。
ともあれそのくらい、AirWiredは超音速転送で遅延が短いのだ。結果、例えばPDX-50でiPhone 3Gなんかのサウンド系アプリを使っても違和感ゼロ。ピアノアプリや打楽器アプリなんか使っても、打鍵すると同時に音が出てるなぁ、と感じる。
また、iPodやiPhone 3GでビデオクリップとかYouTube動画を観た場合も、動きよりプチ遅れて音が聞こえる(例えば口の動きと歌がビミョーにズレている)ことがナイ。結果、非常に気持ち良く動画コンテンツも楽しめるというわけだ。
この遅延の短さと非圧縮でのデジタル伝送、ていうかAirWired技術。拙者的にはゼヒ!! ほかのハードウェアにも投入しまくって欲しい!! 音声伝達が必要な機器なら何でも。PCの音声出力をAirWiredでスピーカーに飛ばすとか、シンセの音をAirWiredでアンプやミキサーに伝達するとか、いや単純にポータブル音楽プレイヤーの音をAirWiredでヘッドフォンに送るとか、どんどんAirWiredにして欲しいッ!! と思って止まない拙者なり。
付属の充電台には、トランスミッターを装着したiPodやiPhone 3Gをそのまま置けるので、設置位置の自由度が高い
充電台にセットしたまま横置きで使うこともできるので、Webページや動画などのながら見もしやすい
PDX-50を使い始めて、もうひとつ意外な快適さが得られた。てのは、外から帰ってきて、家に入ったときの、iPodやiPhone 3Gのシームレスな使用感だ。
外出時は、iPodやiPhone 3Gをイヤフォンとセットで使っている。ま、フツーのスタイルですな。そして家に戻ったら、iPodやiPhone 3Gをスピーカーで使う……のだが、従来はiPodやiPhone 3Gをスピーカーとケーブルで接続するなどの小さな手間があった。また、その手間の向こうに、スピーカーの前でiPodやiPhone 3Gを操作するという足かせ的面倒がつきまとった。
ところがPDX-50の場合、外でも家でも同じ感覚でiPodやiPhone 3Gを利用できる。家に戻ったら、iPodやiPhone 3Gからイヤフォンをはずし、PDX-50のトランスミッターを装着するだけでいい。以降、外と同様、iPodやiPhone 3Gを操作するだけで、スピーカーから音楽を楽しめたりする。
これね、文章で読むと単純だし当然のコトだと感じるかもしれないんですけどね、実際体験すると「おーっ、これ、ラクぅ〜!!」てな感じっスよ。イヤフォンからも接続コードからも解放された感覚なのだ。
とは言え、iPodやiPhone 3Gって充電する必要がある。しかし、PDX-50に付属する充電器は、上記のシームレス感喪失を最小限に抑え、かつ、スゲく快適に使える機構・形状だったりする。
第一に、この充電器には、トランスミッターを装着したiPodやiPhone 3Gをそのまま置ける。充電台とPDX-50スピーカー部は同じ場所にある必要がないので、例えばiPod用充電器とオーディオ機器をケーブル接続した状態よりもずっと設置位置の自由度が高いのだ。
またこの充電器が便利でして。ひとつは、Dockコネクタ対応の充電関連製品のどれよりも、サクッと台座に乗せやすい。ちょうど、コードレスフォンとその充電台のように、スッとはずせてスコッと置ける感じ。この充電器にiPodやiPhone 3Gを置いた状態では、それらの表示部が程良く傾いてこちらを向くので、充電しながらの操作や視聴も快適だ。
それと、驚いたことに、充電台にセットした状態でiPodやiPhone 3Gを横置きにして使うこともできる。コレって、iPhone 3GやiPod touchを横にして、WebページやYouTube動画などコンテンツを利用しやすくするため、敢えて充電器を横置き対応にしたんだそうで。細かいところまでビシッと設計してありますな。
てなわけで、拙者的には理想的なワイヤレス・スピーカー・システムと思えるPDX-50。値段も実売3万円を切り、お買い得感満載。ホントに良い、というか、突出した製品なので、iPodやiPhone 3Gをお使いの方はぜひ一度チェックしてみて欲しい。
■関連情報
□ポータブルプレーヤードック PDX-50 http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/pdx-50/index.html
□マイクロコンポーネントシステム MCR-330 http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/mcr-330/index.html
□デスクトップオーディオシステム TSX-130 http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/tsx-130/index.html
□YAMAHA Audio & Visual http://www.yamaha.co.jp/audio/
□Yダイレクト http://ydirect.yamaha-elm.co.jp/
■関連記事
□ヤマハ、iPodを音源兼リモコンとして使えるオーディオ
−再生音をPCMで伝送。無線を省いたiPodスピーカーも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20081003/yamaha.htm
スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。