新生活シーズン到来で、さらに8月には北京五輪開催もあり、テレビの買い替えを真剣に検討している人も多いんじゃないだろうか。そうでなくても、2011年の完全地デジ移行化が近づいてきているし、それにこの春という季節はテレビの新製品ラッシュの時期でもある。フルハイビジョン対応製品は既に手の届く価格になってきているし、今世代のゲーム機の映像もハイビジョン前提となってきたため、ブラウン管テレビではゲーム画面の文字やゲージすら読みづらい。そろそろブラウン管を使い続けるのが苦しいと感じている人も少なくないはずだ。
せっかく買う、新しいテレビ。どうせだったら、その新しいテレビを中核にして、現在提供されている最新AVテクノロジーを全て楽しめるシステムにしたいとは思わないだろうか。
さらに、もうひとつ。新しいテレビを買う時のメジャー級の悩み事。それはテレビのもうひとつの顔となるテレビ台(ラックシステム)をどうするかという問題。やはり見た目に格好いいモノが欲しいところ。
今春、ヤマハから発売された「YSP-LC3000」はこの両方の要望をかなえてくれちゃう製品なのだ。
今回、大画面マニア系AV評論家であるボク、西川善司は幸運にもこの「YSP-LC3000」を評価する機会を得たのでレポートをお届けしたいと思う。
大画面テレビの普及速度は目覚ましく、まだ持っていない人は、いつブラウン管テレビから乗り換えようかと、さまざまなメーカーや機種で悩んでいることだろう。またすでに持っている人も、画質の向上や機能追加などで買い換えを考えている人も少なくない。
大画面テレビの購入を考えるとき、同時に買うべきものは何か。それは絶対にテレビラックなのだ。大画面テレビは、大画面テレビ用に設計されたラックなしに設置できないと考えたほうがいい。実際の視聴位置を考えて設置を考えると、床からの高さやレコーダーなどのAV機器の収納も考慮しなければならない。事実、ほとんどの人が、大画面テレビと同時にラックも購入している。
さらにテレビの外観デザインとのマッチングも重要だ。なにしろリビングでいちばん目立つ位置に鎮座するのがテレビだ。家族だけでなく、お客に見せても自慢できるようにしたい。しかし、気に入ったデザインのラックになかなか出会えないのも事実だ。
ここまで書いてきて、非常に重要なことが抜け落ちていることにお気づきだろうか。それはサウンドである。大画面テレビには、そこそこいいステレオスピーカーが内蔵されている。テレビメーカー純正のラックや自分の好みにあったラックを選べば、設置については問題解決だが、それだけではテレビのサウンドはまったく向上しない。
大画面のテレビで大迫力の映像に不可欠なのは、それに見合った、またはそれを超えるサラウンドサウンドなのだ。しかしサウンドを追求するとなると、5.1chサラウンドシステムを買い、6本かそれ以上あるスピーカーを設置し、それを接続し……。気が遠くなるような作業だ。ならばテレビラックにサラウンドシステムが備わっていれば、最もシンプルに、最もラクに、最もスタイリッシュに大画面テレビライフが楽しめる。そこへの最短距離、それが、ヤマハのデジタル・サウンド・プロジェクター「YSP-3000」をラックと一体化した「YSP-LC3000」なのだ。
一台でテレビラックとサラウンドサウンドシステムを実現できるのが、「YSP-LC3000」だが、サウンド体験はあとにさせていただいて、まずはラックの質感から見ていこう。
とにかく「黒」が違う。どのテレビメーカーも、主力としているテレビの本体カラーは圧倒的に黒だ。アクセントとしてシルバーなどをあしらっているメーカーもあるが、大画面テレビは黒のかたまりなのだ。それに似合うラックは当然黒が候補になるが、黒とは実に難しいカラーである。だがヤマハの黒は、ピアノの黒といえば、一発でわかってもらえると思う。深みをもち、重厚感をたたえながらも高級感あふれる光沢を放つ、あの黒を連想させる仕上がりなのだ。
なので、黒のかたまりである大画面テレビを載せると、この上ない一体感が得られるのだ。テレビの視聴位置から見ると、ラックはまったく自己主張していないように見える。それでいてラックを近くで見ると、ピアノのような光沢をもつ高級感ある仕上げに満足することだろう。テレビラックは単なるテレビ台ではなく、機能家具として考えるべきなのだ。すなわち、大画面テレビを支え、関連AV機器を収納し、大迫力サウンドも鳴る、高品位家具なのだ。
ラインアップとしては、オーソドックスなデザインで大画面テレビを「どっしり」と支えるピアノフィニッシュの「YSP-LC3000」と、強化ガラス天板をパイプで「すっきり」と支える先進デザインの「YSP-LCW3000」の2種類がある。「YSP-LC3000」は全体が高級感あふれる黒で、前述のとおりピアノを思わせるデザインだ。付属品としてピアノ用ポリッシングクロスも付いており、メンテナンスも行き届いている。組み込まれた「YSP-3000」もフロントグリルが黒のものとなっており、テレビとの一体感をねらったモデルだ。一方「YSP-LCW3000」では「YSP-3000」のフロントパネルはシルバーで、ガラス天板を支えているパイプの金属色が一部見えていることもあり、大画面テレビのなかでも、ベゼルや台座に銀色の部分が目立つモデルや、最近増えだしたカラーベゼルのテレビと組み合わせるとスタイリッシュ。また、ガラス天板を採用しているため、「YSP-LCW3000」には防振マットが付属する。どちらもテレビラックとしての使い勝手もよく、収納部にAV機器を2台並べられるようになっている。さらに、いずれも背面のコーナー部分を斜めにカットするコーナー対応となっており、設置性も高く部屋を広々と使えるような設計となっている。
ヤマハのラックシステムには、37〜52型のテレビ向けで、30畳までの広さに対応できる上位機種の「YSP-LC4000」というモデルがある。「YSP-LC3000」の位置づけとしては、ラックの品質やサウンドはほぼそのままで、32〜46型テレビ、20畳までの広さに対応したコンパクト版だといえる。実際に売れているテレビのボリュームゾーンは40型前後なので、「YSP-LC4000」をコンパクトにして40型前後のテレビに最適とし、さらに価格を抑えて(実勢価格は15万円前後)、テレビといっしょに買いやすくなったのはうれしい。
実際にテレビといっしょに購入して、いざ設置、というときに、かつてサラウンドシステムを使っていたときの暗い記憶がよみがえってくる人がいるかもしれない。そう、初期設定だ。ところが「YSP-LC3000」では付属の測定マイクで設置する部屋の広さや壁の反響などを計測し、最適なサウンドに自動で設定。背の高い家具があろうが、カーテンがあろうが、そんなことはまったく気にしなくてもいい。
またAV機器につきものの悩みが接続と操作だ。機器どうしを接続するケーブルがこんがらがり、テレビとサラウンドシステムで別々のリモコンを操作……なんてことは過去の話。「YSP-LC3000」ではテレビと「YSP-LC3000」の接続はHDMIケーブル1本のみ。パナソニックの「ビエラリンク」、東芝の「レグザリンク」、日立の「Woooリンク」に対応しているので、これらのテレビと組み合わせて使うなら、テレビのリモコンで「YSP-LC3000」の操作も可能だ。大画面テレビと組み合わせるサラウンドシステムはマニアックなAV機器であってはいけない。HDMIケーブル1本で接続、リモコンひとつで操作できるべきなのだ。「YSP-LC3000」には悪いが、大画面テレビのみを操作している感覚だ。これこそが理想の操作感でしょう。ヤマハによると、テレビとのリンク対応メーカーは今後も拡大していくそうである。
設置はあっという間に完了したので、お楽しみの視聴といこう。テレビはパナソニックのビエラ「TH-42PZ750SK」、BDレコーダーはディーガ「DMR-BW800」を用意して、各種BDソフトやゲームソフト、テレビ番組を視聴開始。 BDソフト1枚目は音楽系ソフトの「LEGEND OF JAZZ with RAMSEY LEWIS」を視聴。これは「YSP-LC3000」のサウンド性能を推し量る目的で用意したソフトだ。
そのサウンドはさすがはヤマハ、高音域がスッキリ、中音域はナチュラル、低音も力強く全体としてバランスのよいチューニングで聞きやすい。ハイハットの高周波音も抜けが良くて実にリアル。低音はサブウーファーがなくても十分パワフルだ。いうまでもないことだが明らかにテレビ内蔵のスピーカーよりも音楽を聴いていて楽しくなるサウンドだ。
もうひとつBDソフトは「スパイダーマン3」。これはサラウンド音質を評価するために選択した。激しい効果音の連続が印象的な冒頭付近のスパイダーマン対ハリー・オズボーンの空中戦シーンで評価したが、縦横無尽に立体的に動きまくる音像表現がちゃんと感じられるのにびっくりさせられる。とてもテレビの下に収まった「YSP-3000」だけで鳴らしているとは思えないほど、音像が部屋一杯に広がって動くのだ。
ゲームソフトはXbox 360用「TUROK」を使用。ゲームサウンドはプレイヤーの行動で任意かつ動的に音像が動かせるので、仮想的に出現させられたリアスピーカーの音像の評価に適当だ。実際に、ゲーム内シーンを歩き回ってみたが、正面にある音像を後ろ側に回り込むように回転移動して聞いてみると、ちゃんと視聴位置から左右側面やや後方あたりに回り込んだように聞こえる。技術はここまで来たのだ。
また「YSP-LC3000」の真価は、テレビ番組で発揮される。セリフの聞き取りやすさがテレビ内蔵のスピーカーとは比較にならないほど向上している。BD再生では当然実感できたが、ニュースやドラマでもそれが感じられるのだ。野球やサッカーなどのスポーツ番組では臨場感がすばらしく、一度味わってしまうと、テレビ内蔵のスピーカーにはもう戻れない。
これから薄型テレビを買おうという人で、システムラックをどうするか悩んでいて、なおかつ、「せっかく新しくテレビを買うんだからこの導入の機会に5.1chサウンドシステムも導入したい」、「だけど部屋の景観を崩したくない」という人、アナタにピッタリなのは「YSP-LC3000」です。
(トライゼット西川善司)
■関連情報
□デジタル・サウンド・プロジェクター 特設ページ
http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/ysp/index.html
□YAMAHA Audio & Visusl
http://www.yamaha.co.jp/audio/
□Digital Sound Projector YSP-3000
http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/ysp/ysp-3000/index.html
□YSP Theater Rack System YSP-LC3000
http://www.yamaha.co.jp/audio/prd/ysp/ysp-lc3000/index.html
□YSP Theater Rack System YSP-4000
http://www.yamaha.co.jp/product/av/topics/ysp4000/index.html
□Yダイレクト
http://ydirect.yamaha-elm.co.jp/
■関連記事
□ヤマハ、新サラウンドモード搭載サウンドプロジェクタ
−VIERA/REGZA/WoooとHDMI連携。AVラックセットも (AV Watch)
http://www.watch.impress.co.jp/av/docs/20080117/yamaha.htm