10月20日にYAMAHAから
- DSP-AX3800
- DSP-AX1800
という2モデルのAVアンプが登場した。そのネーミングからも想像できるとおり、DSP-AX1800はDSP-AX1700の後継、DSP-AX3800はDSP-AX2700の後継モデルで、その外観はほぼ同じとなっているが、やはりそれぞれ大幅に機能強化されている。新機能の一例をあげると、まずは最新規格であるHDMI 1.3aのサポート。また新サラウンドデコーダーを搭載し、
- Dolby Digital Plus
- Dolby TrueHD
- DTS-HD Master Audio
- High Resolution Audio
といったHD環境に対応するようになった。そのほか映像系ではアナログ映像信号を1080p HDMIにアップスケーリングできるようになるなど、まさに欲しい機能が多く搭載されるとともに、より高音質化が実現されている。
定価で見るとDSP-AX3800が257,250円、DSP-AX1800が173,250円で、当然DSP-AX3800が上位モデルである。実際、機能面においては3次元CINEMA DSPに対応するとともに、ネットワークやUSBの接続にも対応していたり、また操作面ではGUI対応とDSP-AX3800の優位性があるが、実は音を聴いてみると、DSP-AX1800のほうが結構よかったりするのだ。まあ、これは好みの問題もあるが、低域感があり、元気のいい音がするのだ。
しかも価格的にはDSP-AX1800のほうがずっと安いため、3次元CINEMA DSPなどが目的でなければ、かなりのお買い得感もある。
そこで、ここからは、DSP-AX1800のオーディオ系の機能を中心に見ていくことにしよう。
Pure Direct機能
従来のアナログ入力、デジタル入力に加え、HDMIの入力に対してもPure Directが使えるようになった
デジタルオーディオの音を濁らせる大きな要素であるジッターを取り除くことで、高音質を実現させている
YAMAHAのAVアンプの音質を語る際、非常に重要になるのがDSP-Z9にルーツを持つPure Direct機能だ。AVアンプは映像と音の両方を通すとともに、さまざまなデジタル回路を経由させるという特性上、どうしても音質が損なわれるという問題があった。そこで、オーディオだけを出したいという場合、インジケータなども含むオーディオ本来の機能以外の回路をすべて落とし、できる限り入出力を直結させて高音質化を図るというのがPure Directというものだ。
実際、このPure Directにより、非常に音質が向上する。そして、こうした考えからPure Directが利用できるのは当初はアナログの入力のみ、その後S/PDIFの入力にも対応したが、今回のDSP-AX1800ではなんと、すべてのオーディオ入力に対応するようになった。
つまり、アナログ、デジタルに加え、HDMIでの入力でもPure Directが使えるようになったのだ。ある意味、Pure Directの考え方が変わったともいえるが、不要な回路の電源を落とし、ストレートに接続するというコンセプトはもちろん生きている。ためしに、HDMIで使ってみても、かなりいい音で再生できるのだ。
この高音質化の背景には、単に回路の切断というだけでなく、デジタル入力信号の高音質化というものも関連している。つまり、デジタルクロックの揺らぎであるジッターをLow Jitter PLL回路によって大きく低減しているのだ。
先ほども触れたとおり、このDSP-AX1800の新機能として大きいのはHDMI経由で入力されるHD Audioへの対応だ。Dolby TrueHDやDTS-HD Master Audioなどロスレス圧縮でのHD AudioもPure Directが利用できるというのは、非常にうれしいところではある。
しかし一方で、YAMAHAのAVアンプのオーディオ部分での大きな魅力がDSPプログラムにあることも事実だ。かなりの演算性能が要求されるDSPプログラムであるが、DSP-AX1800ではHD Audioに対しても従来のオーディオ信号と同様にDSPプログラムを適用することが可能になっている。もっとも、この際のサンプリングレートが48kHzに下がるため、CINEMA DSPをかけると、HD Audio品質とはいえなくなってしまうが、やはりソースがいいだけに、高音質で楽しめることは間違いない。
さらに従来モデルでの2音場処理を廃止し、CINEMA DSPはすべて3音場処理となっている。2音場処理とは2chのソースに対して、Dolby Pro Logicまたは方向性強調回路を適用して4ch信号を生成した後、それらの信号からプレゼンス音場とサラウンド音場を生成する処理であるが、DSP-AX1800ではDolby Prologic IIxを適用して5chまたは6ch、7chの信号を生成した後、3音場処理で、プレゼンスとサラウンド左、サラウンド右音場を生成する処理となっている。
なお これらを処理するDSPには当然高い演算能力が必要になるわけだが、実は従来モデルであるDSP-AX1700/DSP-AX2700とはDSPの構成も変更されている。従来はデコーダーにDA70Yというものが、その後のDSP処理にYSS930というものが2つ使われていたが、DSP-AX1800/3800ではCINEMA DSP部分にも高い演算処理性能を持つDA70Yが搭載され、計2つが直列につながった形になっているのだ。
マルチチャンネル出力が可能になったCompressed Music Enhancer
マルチチャンネルの信号に対して、そのままCompressed Music Enhancerを適用させることができる
2chに対しては従来どおりだが、そのアルゴリズムが変更になり、より自然な感じで再生できる
もうひとつ特筆すべき機能がCompressed Music Enhancerだ。これは圧縮オーディオによって欠けた高音域を補完する技術で、従来モデルでも搭載されていたが、そのプログラムが大きく変わっているのだ。
機能的にいうと、従来はどのような信号もすべて2chにダウンミックスされた後に、2chでCompressed Music Enhancer処理が掛けられていたのだが、今回はマルチチャンネルはマルチチャンネルのままこの処理ができるようになったのだ。もちろん2chの場合は従来どおりであるが、実際の音を聴いてみると、従来のCompressed Music Enhancerのような派手な音の変化はなくなっている。
従来はある意味、EQ処理をしたように高域がもちあがり、その効果が極端に見えるモードが用意されていたが、今回はそうしたモード選択もなくなり、素直に音質が自然な感じになるのだ。もちろん、iPodなどに接続して使う場合にもその効果を実感できるが、結構有効なのが地上デジタル放送などのサラウンドサウンドだ。やはり地上デジタル放送は、転送レートが低いこともあり音質劣化が目立つが、このCompressed Music Enhancerを適用させることで、かなり音質がよくなるのだ。この辺はまさにAVアンプとしての本領発揮といったところだろう。
このように、さまざまな用途に対してさまざまなソリューションで高音質化を図ってくれるDSP-AX1800。AVアンプを取り巻く環境変化がようやく落ち着いてきたので、これまで躊躇していた人も、そろそろ新たに購入するタイミングとして検討してもいいのではないだろうか?
■関連情報
□DSP AV Amplifier DSP-AX1800
http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/dspav/dsp-ax1800/index.html
□YAMAHA Audio & Visual
http://www.yamaha.co.jp/audio/
□DSP AVアンプ ホームシアター・AV関連
http://www.yamaha.co.jp/product/av/prd/dspav/
□Yダイレクト
http://ydirect.yamaha-elm.co.jp/
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□ヤマハ、3次元シネマDSP搭載AVアンプ「DSP-AX3800」 −TrueHD/DTS-HD MA対応。
17万円台のAX1800も(AV Watch)
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/36809.html