ゆったりとした鳴りっぷりのよさ量感あふれる音質を実現
YAMAHA AVアンプ DSP-AX759/DSP-AX559/DSP-AX459
iPodとの連携

ミュージックエンハンサーで迫力アップホームシアター用のAVアンプとして定評のあるヤマハのAVアンプ。低価格ながらも非常にピュアなサウンドを楽しめるのとともに、数多くの入力端子を持ち、DVDビデオやBSデジタル放送、地上デジタル放送などのデジタルソースも網羅的にサポートしている。そのAVアンプにiPodとの連携機能を持った新機種がリリースされた。単に接続できるのに留まらず、ミュージックエンハンスモードという音質補正機能も搭載するなどAVアンプの新しい利用法を提案する。その新シリーズ3機種について実際に音をチェックするとともに、その機能面なども見てみた。

AVアンプ3機種が音質、機能を強化して新登場

今回主に視聴したDSP-AX559。キャラが立ったチューニングだ。

 ヤマハの定番のAVアンプ3機種がモデルチェンジし、より音質を向上させるとともに、機能も強化して登場した。今回登場したのはDSP-AX759、DSP-AX559、DSP-AX459の3機種。それぞれ1年前に登場したDSP-AX757、DSP-AX557、DSP-AX457の後継となるモデルだ。

 薄型テレビの普及にともない、AVアンプの有用性の理解はかなり進んできたが、あまりご存知ない方のためにあらかじめ簡単に説明しておくと、これは従来のように単純にオーディオ信号を増幅するための装置には留まらない。現在オーディオソースはCDやMDだけでなく、SACD、DVDオーディオといった新フォーマット、またiPodをはじめとするポータブルプレイヤーをソースとして使いたいというニーズも高まっている。またレコードやカセットテープという従来のアナログ機器を使っている人もいる一方、DVDビデオや、DVD/HDDレコーダー、地上デジタル/BSデジタルチューナー、VHSビデオデッキ、そしてDVカメラなど映像と組み合わさったオーディオソースも重要になってきている。

 これらを複数あるソースそれぞれと接続するとともに、簡単に切り替えられ、ステレオ、サラウンドなど各フォーマットに合った再生を可能にするのがAVアンプだ。

 そうしたニーズに合わせて音質、機能ともに進化させてきたのが、ヤマハのAVアンプの一連のシリーズ。今回の新機種はホームシアター用のアンプとして非常に完成度の高いものに仕上げられている。また注目したいのは、奥行きサイズ。DSP-AX459とDSP-AX559においてはそれぞれ391mm、393mmと400mm以下を実現している。これは現在主流の薄型テレビのテレビラックに収納できることを意味している。このことは薄型テレビとの組み合わせを考えているユーザーにとって大きなポイントになるはずだ。

バーブラウン製DACと大容量ブロックケミコンの搭載で高音質化を実現

バーブラウン製の高性能DAC

 3機種とも、見かけは従来のモデルと大きくは変わらないが、標準価格で50,400円という一番エントリー機種でもハイエンドオーディオ機器に迫る高音質を実現させている。その秘密は搭載された部品にある。

 まず1点目は、全チャンネルのDACにバーブラウン社製の高性能DACを搭載したことが挙がられる。すべて同一のDACを利用しているだけに、各チャンネルの音質が統一されたことに加え、デジタル入力での音質と音の透明度が向上しているのだ。

 さらに大容量のブロックケミコンを搭載したことも大きなポイント。DSP-AX459では8200μF、DSP-AX559では10000μF、そしてDSP-AX759に至っては12000μFという大容量ケミコンが搭載された。また、スリム&小型スピーカーとのマッチングがとられ、中低域の量感を重視した音作りになっている。

 実際に音を聞いてみても、この価格帯からは信じられないほどのサウンドが鳴り響く。3つを聞き比べてみると、やはり出音に特色が出るのも面白いところだ。当然のことながら、一番HiFi的なサウンドを出してくれるのは最上位のDSP-AX759だったが、DSP-459でも普通のユーザーなら十分過ぎるほどの満足感が得られるクリアなサウンドだ。またDSP-AX559は3モデル中最も迫力あるサウンドを楽しむことができ低域でいつも物足りなさを感じているユーザーにはお勧めできる製品だ。

低域の量感重視のDSP-AX559

 今回はそのDSP-AX559を中心にサウンドチェックをしてみたが、このアンプの特徴をひとことでいうなら「ゆったりとした鳴りっぷりのよさ」ということができるだろう。まさにたっぷりとした低域を演出してくれるのだが、だからといって低域に偏っているというわけではない。中高域においてもピリッとした強さを出し、非常にバランスが取れているのだ。

 基本的な機構はDSP-AX459と変わらず、主な違いはブロックケミコンの容量ということになるが、これが大きな音の違いを作り出しているようだ。

 今回はハイクラスのスピーカーを使って、その出音をチェックしてみたのだが、アンプの価格よりも高価なスピーカーの場合、やや低域が強調されすぎているようにも感じたが、5万円以下のスピーカーであれば、非常にバランスのとれた、かつ力強いサウンドになりそうだ。

 もちろん、機能のほうも充実。ステレオから6.1chまでのサウンド出力に対応するとともに、TBC(タイムベースコレクター)内蔵のデジタルビデオアップコンバージョン回路によって古いアナログ映像ソースも安定した高画質で楽しめる。また、DSP機能で、さまざまな音場を楽しめる一方、DirectStero機能によってそのDSP回路を停止させて、高音質のステレオサウンドを出力させるなど、多くの機能が満載されている。

目玉機能はiPodとの連携

DSP-AX559とDSP-AX759では別売りiPod Dockが接続可能

別売りのiPod Dock

iPod Dock用専用端子

 ところで、今回の3機種における目玉機能ともいえるのがiPodとの連携だろう。iPodをHiFiなオーディオソースと評価するか否かは人によって異なるだろうが、ここまで普及してくるとオーディオソースのひとつとして無視できない存在であることは間違いない。それならば、そのiPodの音をできるだけいい音で再生させようというのが、今回の新製品開発のコンセプトのひとつになっている。

 そのiPodとの接続の仕方は3機種それぞれで微妙に異なる。まずDSP-AX459ではフロントの右下にステレオミニの入力端子が搭載されているので、そこにつなぐという方法。またDSP-AX559ではそのステレオミニの入力に加え、リアにiPod Dockと接続する専用の端子が設けられており、そこを通じて接続することになる。このiPod DockはYDS-10という別売り製品で標準価格が10,500円というもの。これを利用することで、簡単にオーディオ接続ができるだけでなく、DSP-AX559のリモコンを使って、iPodの操作も可能になるのだ。

 操作画面はオンスクリーン表示させることができ、iPodをDSP-AX559の機能の一部として統合できるのだ。ただし、オンスクリーン表示されるのは英語となり、日本語の曲名などは文字化けしてしまう。まあ、文字化けしても再生自体に支障はないが、この点のみはあきらめざるを得ない。

 なお、iPod Dockを経由させた場合でも、接続はアナログとなっている。かなり高音質な再生が可能ではあるが、仕様面から考えて、この辺が限界といえそうだ。またこのDockを利用してiPodへの充電も可能になっている。

 なお、DSP-AX759もDSP-AX559と同様にiPod Dockを利用しての接続ができるが、フロントのミニジャック入力はなくなっている。その代わりに別のデジタル機器と接続するためにS/PDIFの光入力端子が用意されている。

ユニークで効果が分かりやすいミュージックエンハンサー

 iPodとの連携は、単にリモコンで操作して再生させるというところに留まらない。実は、この新シリーズ3機種にはすべてミュージックエンハンサーという機能が搭載されており、iPodなどの音をより聞き心地のいいサウンドで再生させることができるのだ。

 ご存知のとおり、iPodをはじめとするポータブルプレイヤーはMP3やAACなどの圧縮サウンドが利用されており、オリジナルのPCMの音と比較すると、高域が切れていたり、低域の迫力がそがれてしまっている。そこでそのようにそがれてしまったサウンドを補完し、よりよいサウンドに仕立て上げるというのがミュージックエンハンサーなのだ。

 このミュージックエンハンサーでは2つの方法で、音を補完している。まずは圧縮オーディオが持っている帯域の高域成分から、その倍音成分を作り出し、それを原音に加えること。これによって、伸びのある高域に補完することができる。一方、圧縮オーディオの低域から、超低域の成分を生成し、それを原音に加えることで、聴感上の音の厚みを加え、音楽全体の迫力や臨場感を向上させることができるのだ。

 周波数解析したグラフを見るとよくわかるが、本来欠けてしまっている高域の成分に10kHz前後の音の倍音を加えていることで、自然な波形へと変化している。また低域でも同様に1/nの成分が追加され、違和感のない形で厚みが増している。実際、音を聞いてみると、確かに元の音に比較すると、聞き心地のいいサウンドにはなる。ただし、これはあくまでも補正であって、原音へ修復するというものではない。まあ、消えた音の成分を修復する手段などもともとないわけだが、曲によって原音に近い雰囲気になるものと、多少違うニュアンスに仕上がるものとあるようだった。

 なお、気になるのは、ロスレスのサウンドなど補完の必要がないサウンドの場合の挙動だが、この場合は、DSPがきっちりとそれを把握し、無理に成分追加などはされないので安心だ。

 このミュージックエンハンサーは、iPod Dockの有無や入力端子に関わらず、どの信号にもかけることができる。つまりMDなどにその効果を発揮させることができるのだ。その一方で、ミュージックエンハンサーを利用した場合はシネマDSPは動作しない。つまりこのミュージックエンハンサーもDSPで実現させているため、シネマDSPのひとつのモードととらえると分かりやすいのかもしれない。

外部機器との連携と予算で考えるモデル選び

 以上、今回発表された3機種について、その特徴を紹介してみたがいかがだっただろうか?実際に聞いてみると、この価格帯のアンプでここまでの音が出るのかと驚かされるものであった。

標準価格で50,400円〜81,900円というレンジで3機種が並び、見た目にも似ているだけに、どれを選ぶか迷うところだが、どんなプレイヤーと接続させるのか、また利用を想定しているスピーカーがどんなものなのか、そして予算がどうなのかによって多少選ぶべきモデルが変わってきそうだ。そこで、最後に各機種のポイントを簡単に紹介しておこう。

DSP-AX459

 シリーズの中ではエントリーモデルの位置づけだが、音質的には高級オーディオアンプに匹敵するもの。iPod Dockとの接続ができないが、フロントにミニジャックでの入力があるので、iPod以外のポータブルプレイヤーとの接続ならこれがお勧め。コンポーネント入力は装備していないが、広帯域D4映像入力とS映像入力はそれぞれ3系統装備されているので、その点を考慮して選ぶといいだろう。

DSP-AX459 希望小売価格 50,400円(税込)

DSP-AX559

 基本機能はDSP-AX459と変わらないが、iPod Dockとの接続ができることと、オンスクリーン機能やコンポーネント入力を装備しているのが大きな相違点。ただ、出音はDSP-AX459とだいぶ異なり、低域のたっぷりした量感と、余裕が感じられるサウンドになっている。比較的安価なスピーカーとの組み合わせで、その良さが大きく実感できるはずだ。

DSP-AX559 希望小売価格 66,150円(税込)

DSP-AX759

 定評のあるピュアダイレクトモードを搭載していることで、デジタル・アナログを含むオーディオソースを非常に素直な音で再生させることができる。デュアル7.1chサラウンド(プレゼンス/サラウンドバック切替)に対応するとともに、DSP-AX2600でも評価の高いローノイズ電源やロージッターPLLモジュールを搭載するなど、とにかくHiFiサウンドを出力することにこだわったアンプだ。ただし、奥行きサイズが421mmと400mmを超えているため、薄型テレビ用のラックに納まらない可能性があるので、その点には注意が必要だ。

DSP-AX759 希望小売価格 81,900円(税込)


■関連リンク

□DSP AVアンプ http://www.yamaha.co.jp/audio/prd/dspav/
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