その目玉ともいえるのが、HDMI(High-Definition Multimedia Interface) ver1.1とi.Link Audioという2つの最新デジタルインターフェイスの高品位オーディオ入力に対応したことだ。まあ、まだ一般に広く普及している規格とはいえないが、これからのキーとなるデジタルインターフェイスであり、デジタルオーディオを高品位に聴く上で欠くことのできない規格である。これらにより、SACDのDSD信号やDVD-AudioのPCM信号を完全な形で捕捉できるようになり、高性能なプレイヤーをすでに持っている人にとっては、それらの実力を存分に発揮できるようになるのだ。 とくにHDMIは新しい規格であるために、まだ対応しているアンプそのものが少ないが、DSP-AX4600では、マルチチャンネルPCMにも対応したVer1.1仕様になっているので、デジタル音声信号をダイレクトに再生できるほか、ヤマハ得意のシネマDSP処理をデジタルのまま処理することができたり、デジタル映像信号のセレクトやディスプレイ機器への再送出もできるようになっている。
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ここで誤解のないように解説すると、HDMIは1本のケーブルで音も映像も両方流せる形になっている。それに対し、i.Linkはi.Link Audioであるため、あくまでも音声のみで映像は通すことができない。i.Link自体はIEEE1394なのでビデオ信号でもコンピュータ信号でもさまざまな信号を通すことが可能な規格だが、ここで対応しているプロトコルはオーディオだけであるというのがポイントとなっている。実は、この辺が最新デジタル機材の活用法としてちょっと面白いところでもあり、それをDSP-AX4600で体感することができた。そう、同じデジタル信号ではあるが、HDMIでの出音とi.Linkでの出音に差があるのだ。 結論から言ってしまうと、よりよい音で聴きたいのなら、i.Linkを用いるのが絶対にいい。同じソースを、それぞれの伝送路で聴き比べてみると違いが出てくる。i.Linkのほうが、音像がよりしっかりし、音の空気感がハッキリと描きだされるのだ。逆にいうと、HDMIのほうは、まだ改良の余地があるのかもしれないが、現状においては、明らかな差が出てしまうのだ。やはり映像と音声を1つのデジタル信号として流すためジッターが発生してしまっているのが原因なのではないだろうか。もっともこうした音の違いが分かるということ自体がDSP-AX4600の高音質性を物語っているわけだが……。 もちろん映像はHDMIで完全フルデジタルで送ることにより、鮮明な画像を描写できる。そのため、プレイヤー側の対応状況にもよるが、ベストは映像はHDMIで送り、音声はi.Linkで送り、HDMIの音声は捨ててしまうという方法。もちろん、DSP-AX4600なら、音声と映像を別ルーティングさせることが可能だから、こうした最高の環境での再生が可能となるのだ。 なお、最高音質の世界とはちょっと異なるが、結構便利なのが手持ちのヘッドフォンで5.1chが楽しめるサイレントシネマというモード。HRTF(頭部伝達係数)理論を応用したヤマハ独自のアルゴリズムにより、普通のヘッドフォンでシネマDSP効果を生かした5.1chサラウンドを実現できるのだ。実際に聞いてみても、かなりリアルなサラウンドで音を聴くことができるため、深夜の再生や周囲の騒音が気になる環境でもシアター鑑賞を楽しむことができる。 以上、DSP-AX4600の音を中心に見てきたが、使い勝手・操作感という面でも非常に優れている。搭載のFL表示部はなかなか大きく見やすいのが第1のポイント。また基本的には付属のリモコンを使って操作するわけだが、このリモコンはLCD表示やTV専用キーを装備したマクロ/ラーニング/プリセットリモコンとなっているため、自分の持っている各種プレイヤーやテレビもコントロール可能だ。また音場プログラムの選択や各種設定機能をオンスクリーン画面で快適に操作できるようになっており、この画面はDSP-Z9と共通の日本語対応アシストGUIとなっており、なかなか使いやすい。 こうした面を見ても、DSP-AX4600は高音質・高性能志向ユーザーに絶対的にお勧めできるAVアンプといえるだろう。 ■関連情報
■プロフィール 藤本 健 リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。 最近の著書に「ザ・ベスト・リファレンスブック Cubase SX/SL 2.X」(リットーミュージック)、「音楽・映像デジタル化Professionalテクニック 」(インプレス)、「サウンド圧縮テクニカルガイド 」(BNN新社)などがある。また、All About JapanのDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも勤めている。 |