お馴染みとなったサイクロイドスタイル

 昨年10月、ソフトバンク向け、NTTドコモ向けに続き、au向けにも端末の供給を開始したシャープ。初のカメラ付きケータイや高品質なカラー液晶ディスプレイの搭載など、常に国内外のケータイ市場をリードしてきたSHシリーズだが、シャープのアドバンテージは、カメラや液晶パネルといったデバイスだけで積み上げられてきたものではない。市場に登場する新しいサービスやトレンドを確実にキャッチし、それを活かすためのケータイを生み出してきたからだ。たとえば、カメラ付きケータイでもカメラを搭載するだけでなく、カメラを活かす液晶ディスプレイ、撮った画像をメールに添付するための機能、それらをユーザーにわかりやすく見せるユーザーインターフェイスを作り上げたからこそ、ユーザーの高い支持を得たわけだ。

au初のSH端末となったW41SH

第2弾となるW51SH

 そして、この春。シャープはau向け端末第2弾となる「W51SH」の供給を開始し、いよいよ店頭でも販売が開始された。昨年、初のau向け端末として登場した「W41SH」は、スタンダード路線の端末だったが、今回のW51SHはシャープ製端末の真打ちとも言えるサイクロイドスタイルを採用したワンセグ対応端末「AQUOSケータイ」だ。

 ワンセグは昨年4月に正式サービスが開始された携帯機器向け地上デジタル放送で、通常の地上デジタル放送と同じ内容の番組をノイズのないクリアな画質で楽しむことができるサービスだ。ケータイの新しいエンターテインメントとして定着しつつあり、新たに購入するときの欲しい機能のひとつとして、必ず挙げられるほど、注目度が高い。

 こうした新しいサービスやトレンドが普及するとき、ケータイには新しい端末デザインが登場し、少しずつ形を変えてきた。SHシリーズで採用されているサイクロイドスタイルは、ワンセグをはじめとする映像エンターテインメントを快適かつ自然に見られるスタイルとして考えられている。

 たとえば、ケータイでは何かの機能を起動するとき、メニュー画面から項目を選ぶという方法が一般的だが、使い勝手を考えれば、利用頻度の高い機能はワンアクション、ツーアクション程度で操作できた方が望ましい。サイクロイドスタイルのW51SHは、待受画面で液晶ディスプレイを回転させ、サイクロイドポジションに切り替えるだけで、au Media Tunerを起動し、ワンセグを視聴できる。ちなみに、回転動作で自動起動する機能については、テレビだけでなく、「フォトカメラ起動」(静止画)や「ムービーカメラ起動」(動画)、「何も起動しない」から選んで設定することも可能だ。W51SHでのワンセグ起動は、サイクロイドポジションへの切り替えだけでなく、[Task]キーの長押し、メニュー画面やTask bar機能からの呼び出し、待受画面の下方向で呼び出せるショートカット機能(要登録)なども利用できる。

 サイクロイドスタイルでワンセグを視聴しているときの操作については、ダイヤルボタンの[1]〜[0]、[*][#]でチャンネルをダイレクトに切り替えられるほか、方向キーの左右でも切り替えることができる。つまり、サイクロイドポジションに切り替えて机の上などにW51SHを置いた状態でも操作しやすいわけだ。音量の調節も方向キーの上下でできるが、片手で持ったときの操作を考慮して、側面のサイドキーでも操作できるようにしている。

 また、ワンセグ視聴時の表示切替もわかりやすい。画面表示については[開始]ボタンを押すたびに、横画面の全画面表示、横画面の等倍表示、縦画面の通常表示を切り替えることができる。サイクロイドポジションからオープンポジションに切り替えれば、画面が自動的に縦表示に切り替わり、画面の上半分にワンセグの画面が表示される。下半分はワンセグのデータ放送、もしくはテレビ操作画面が表示され、左上の[アプリ]キーで切り替えることができる。字幕表示にも対応しており、対応した番組なら、音声が出ていない状態でもニュースなどを視聴することが可能だ。

 ワンセグ視聴中の動作については、音声着信があったときはそのまま応答し、通話終了後、ワンセグ画面に戻る。メールの着信については、画面上にピクトが表示されるので、必要に応じて、Task barで機能を切り替え、メールを読んだり、返信することが可能だ。いずれもワンセグ視聴への影響を少なくしたユーザーインターフェイスだ。

microSDメモリカードは2GBまで対応。スロットなどは本体右側に集約されている

 サイクロイドスタイルを採用したau向けAQUOSケータイ「W51SH」だが、サイクロイドスタイルであることだけがAQUOSケータイのアドバンテージではない。

 ワンセグはいつでもどこでも番組を視聴できるが、せっかくだから、番組を録画して、外出先で録画した番組を見たいところだ。W51SHに限らず、ほとんどのワンセグ対応端末は「録画機能」をサポートしており、録画した番組を視聴することが可能だ。しかし、そのほとんどの録画機能がいわゆるリアルタイム録画であり、番組を見ているときに録画操作をしなければならない。

 これに対し、W51SHはリアルタイム録画だけでなく、番組表からの録画予約にも対応しており、2GBのmicroSDメモリーカードに最大10時間40分もの番組を録画することが可能だ。たとえば、深夜の時間帯に放送されている番組や早朝のニュース番組などを録画予約しておき、通勤や通学途中に録画した番組を視聴するといった使い方ができるわけだ。

 予約については、1回のみの予約だけでなく、毎日や毎週の繰り返し予約にも対応する。録画・視聴の予約をしたときは、予約時刻の2分前にアラーム・バイブが5秒間、鳴動し、予約時刻が近づいたことを知らせてくれる。アンテナを伸ばし、電波状態のいい場所に置いておけば、録画が実行されるしくみだ。ちなみに、録画予約中も音声通話はもちろん、発着信履歴差や電話帳の参照、電話帳の編集、Eメール/Cメールの送受信などができるため、実用上はほとんど問題なく使うことができる。録画した番組の再生については早見早聞き再生にも対応しており、再生中に方向キーの左右を長押しすることで、約10倍速の早送り/巻戻しが可能なほか、1分単位で再生箇所を指定するジャンプ再生にも対応する。

EPG予約対応で、観たい番組を逃さない

「AQUOS」の名を冠する、3.0インチワイドQVGAモバイルASV液晶

ワンセグ視聴の楽しさを盛り上げるフロントスピーカー

 また、AQUOSケータイならではこだわりも随所に見られる。液晶ディスプレイは業界最大級となる3.0インチのワイドQVGA液晶を搭載。肌や表情を美しく見せる「SV(Super Vivid)エンジン」を採用するほか、屋外でも色鮮やかな「6色カラーフィルタ」、映像の明暗にかかわらず、色飛びを抑える「色飛び抑制機能」、節電効果の高い「明るさセンサー」など、液晶テレビAQUOSで培われた技術やノウハウが注ぎ込まれている。  画質については視聴する番組に合わせ、「標準(明るさ自動)」「標準(明るさ固定)」「ダイナミック」「映画」「節電モード」の5種類から選んで設定することができ、メールやEZwebなどの画面とは独立した画質設定が可能だ。サウンドも「標準(DBEX)」「スポーツ」「ニュース」「映画・ドラマ」「オフ」から選ぶことができ、それぞれのコンテンツに合わせた視聴環境を実現できるようにしている。

 3.0インチのワイドQVGA液晶はワンセグやデジタルラジオ、EZチャンネルプラスなどを視聴するときはもちろん、オープンスタイルではメールやEZweb、PCサイトビューアー、EZナビウォークなどを利用するときも画面が広く利用でき、視認性も非常に高い。これだけ画面が広く、視野角も広いと、メールを利用しているときののぞき見が気になるが、メール画面で[Task]キーを長押しすることで、画面全体のコントラストを一時的に下げることができる「プライベートフィルタ」が搭載されており、安心して利用できる。

 また、ユニークな機能としては、TV出力機能が挙げられる。同梱のTV出力ケーブルをW51SHに接続すれば、AV入力のあるテレビにワンセグの映像や録画した番組を映し出すことができる。映し出すテレビが地上デジタル放送に対応しているときは不要だろうが、逆にAV入力のあるカーナビやモバイルノートPCなどにも出力ができるため、外出先やドライブで移動中、友だちなどと番組を楽しむといった使い方もできる。さらに、AV入力がない環境のときは、サードパーティから発売される予定の「VHFトランスミッター」を利用することにより、ワイヤレスでワンセグを視聴することができる。

 

デジタルラジオ相関図

 サイクロイドスタイルが印象的なW51SHだが、ワンセグ以外にもエンターテインメント機能が充実している。

 まず、東京、大阪で実用化試験放送が開始されたデジタルラジオにいち早く対応している点が挙げられる。デジタルラジオは視聴エリアが限定されるが、CD並みの美しい音質のサウンド、今までのラジオにはなかった映像を含んだ番組などを視聴できるほか、放送波を利用した着うたやビデオクリップのダウンロードも提供される。放送波でダウンロードしたコンテンツについては、W51SHの通信機能でサイトに接続し、ライセンスを取得すれば、暗号が解除されるというしくみだ。コンテンツのダウンロードにパケット通信を利用しないため、ユーザーとしても通信コストを節約できるなどのメリットがある。デジタルラジオについては、J-POPや洋楽だけでなく、つい最近も主にクラシック音楽を扱うチャンネルなどもスタートしており、多様な音楽ジャンルを楽しみたいユーザーには非常に気になる存在だ。もちろん、従来通り、EZ・FMにも対応しているため、全国各地でFMラジオを楽しむことができる。

 また、音楽と言えば、auの十八番だが、W51SHではビデオクリップ対応のLISMOが楽しむことができる。さらに、ワンセグやデジタルラジオと並ぶ形でau Media Tunerで再生できるのが「EZチャンネルプラス」だ。月額315円の通信料を支払うことで、すべての番組の情報料は無料で高品質な映像コンテンツを視聴できるサービスだ。auが提供するコンテンツサービスとしては、従来のW41SHに引き続き、画面デザインや着信音などをカスタマイズできる「EZケータイアレンジ」、情報料無料で毎日のニュースや天気予報、占いが自動的に配信される「EZニュースフラッシュ」にも対応する。

楽曲情報が表示されたり、着うたフルやチケットの購入もできる

例えば「かみきり」を「噛み切り」と誤変換しても「髪切り」に再変換できる

 SHシリーズと言えば、カメラや液晶ディスプレイが注目されるが、ユーザビリティの良さにも定評があり、今回のW51SHも使い勝手のいい環境が提供されている。

 W41SHに搭載され、従来のau端末にはない使い勝手として注目を集めた「Task bar」も継承されている。メールやEZweb、スケジュールなど、W51SHに搭載されているいろいろな機能を使っているとき、ダイヤルボタン右下の[Task]キーを押すことで、他の機能を呼び出すことができる。たとえば、メールの閲覧中、「カレンダー」を呼び出して、スケジュールを確認したり、EZwebに接続中にデータフォルダを確認したり、電卓やメモ帳を利用するといったことができる。日本語入力もW41SHの「ケータイShoin4」から予測変換がさらに賢くなった「ケータイShoin5」へバージョンアップしている。誤変換時にUNDO(アンドゥ)をして、再変換する「変換UNDO機能」もサポートされている。

例えば、ワンセグ視聴中にメールを画面に切替えて作業ができる

 ボディデザインはサイクロイドスタイルという基本構造こそ、他事業者向けに供給されているAQUOSケータイと同じだが、トップパネル側のアーム部分をアシンメトリー(非対称)カーブでカットし、左側にWINのロゴとサブディスプレイを並べるなど、少し違ったセンスでまとめられている。トップパネル側の仕上げもブルーはウェーブパターン、シルバーとピンクはクロスラインで仕上げるなど、それぞれに個性を出しながら、高級感のあるデザインにまとめている。

 この他にも高速赤外線通信「IrSimple対応」、サイクロイドポジションでワイド撮影も可能な「約203万画素カメラ」、待受画面でダイヤルボタンを押して、電卓やスケジュールを呼び出せるSHシリーズおなじみの「クイックメニュー」など、基本的なケータイとしてのスペックや機能も十分に取り揃えている。  ワンセグやデジタルラジオ、EZチャンネルプラスといったケータイにおける最新のエンターテインメントを楽しみながら、定評のあるSHシリーズのユーザビリティを体験したいユーザーなら、W51SHはぜひチェックしておきたい端末だ。

   

有効画素数約203万画素のCMOSカメラを搭載

 
カラーバリエーションは、オーシャンブルー、スターリーシルバー、オーロラピンクの3色



□関連情報

・W51SH 製品サイト(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/w51sh/

・W51SH 製品サイト(SHARP)
http://www.sharp.co.jp/products/w51sh/

 

□関連記事

・au、AQUOSケータイ「W51SH」を10日から順次発売
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/33548.html

・W51SH開発者インタビュー AQUOSケータイとしてこだわって作ったワンセグケータイ
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/interview/33386.html

・デジタルラジオ対応のAQUOSケータイ「W51SH」
http://k-tai.impress.co.jp/cda/article/news_toppage/32737.html

 

法林岳之

1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、PDAに至るまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP SP2対応 基本編 完全版」や、「できるブロードバンドインターネット Windows XP対応」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。