昨今、流行のスマートテレビ。
ネットワーク機能を応用した高度な情報機器としてのポテンシャルを持ち合わせたテレビのことを指すわけだが、どちらかと言えばこれまでのスマートテレビは、1つ1つの機能はスマートだったが、使い勝手がスマートではなかった。
さらに言えば、ユーザー側にも使いこなすだけのスマートさが必要だった。
パナソニックが放つ、今季のビエラシリーズは、このテーマに果敢に挑み、「スマートテレビの再定義」に挑んだ製品である。
スマートテレビは、簡単にいってしまえば、「情報端末的な機能を持ったテレビ」ということである。なので、用意されている多彩なアプリケーションを実行して、テレビ本来のテレビ番組視聴に加えて、情報端末としての利用もできるものである。
スマートフォンは、その1台が自分だけが使うパーソナルなものだから、使いやすいようにどんどん自分好みにカスタマイズするものだ。しかし、リビングに置かれるテレビの場合、家族が複数人いれば、その家族メンバーの一人が好き勝手にカスタマイズしてしまっては、他の家族から「使いにくい」と「勝手にカスタマイズするな」というようなブーイングを受けることになる。
そこで、今季のプラズマビエラ「VT60」「GT60」と液晶ビエラ「FT60」「DT60」「E60」では、家族メンバー一人一人が個別にカスタマイズしても他の家族に嫌がられない便利機能を搭載した。
それが「マイホーム」機能だ。
簡単に言えば、「マイホーム」とは、パソコンで言うところの、各ユーザーごとのデスクトップ画面のようなモノだ。
自分の名前を付けたマイホーム画面は、自分好みの画面構成にできるので、気兼ねなく自由にカスタマイズしてOK。使いたいアプリやWEBサイトのブックマークをたくさん並べてもいいし、必要最低限のアプリだけにしてすっきりとさせるのもいい。
ただ、その家族各人のマイホーム画面の切り替えが面倒だったら本末転倒だ。
しかし、今季発売した新・ビエラは「使いやすいスマート」がテーマとなっているだけあって、そのマイホーム画面の切り替え方も賢い。
最新型の新・ビエラ VT60には小型カメラがビルトインされており、これで撮影した家族の顔と、カスタマイズしたマイホーム画面をリンクさせる(紐付ける)ことが可能なのだ。
そう、今季スマートビエラ「VT60」「FT60」は顔認識対応なのである。(FT60は別売のコミュニケーションカメラ TY-CC20Wを接続すれば顔認識対応可)
なお、新・ビエラの「VT60」「FT60」に搭載されるタッチパッドリモコンは音声認識に対応しているので、このリモコンに「マイホーム」と話すだけで、顔認識が行われて、自分がカスタマイズしたマイホーム画面に瞬間に切り換えることができる。
新規に登録可能なマイホーム画面は4つ。更にデフォルトの「テレビのホーム」「くらしのホーム」「ネットのホーム」もカスタマイズできるので、登録可能なマイホーム画面は7つ。なので、おじいちゃんとおばあちゃんが同居しているような大所帯家族にも対応可能だ。
家族それぞれが個別に使えるマイホーム画面だが、アプリを活用することで、特定の情報を家族全員で共有することもできる。
帰宅時間がバラバラ、あるいは生活時間がバラバラでも、テレビの前には必ずやってくるのが習慣になっている…という家族ならば便利に使えそうなのが「スケジュール」と「ビデオメモ」のアプリだ。
「スケジュール」は家族全員の予定メモを共有するためのアプリで「飲み会があるので今日の夕食はいりません」とか「買い物に出ています。洗濯物を取り込んでおいて下さい」のようなメモをカレンダー上に書き込んでおくことができ、家族間で共有することができる。しかもそのメモはタッチパッドリモコンを使用し音声で入力可能だ。
「ビデオメモ」は、最大30秒のビデオレターを録画しておけるもの。新婚夫婦などで「残業お疲れ様。明日は朝が早いので先に休みます。アナタ愛しているわ」なんてメッセージが入っていたら愛もスマートに(?)深まるかも知れない。
なお、新・ビエラのビルトインカメラはSkype(TM)などを使ったビデオチャットにも利用できるわけだが、そうした用途だけでなく、カメラを前述の顔認識や、こうしたビデオレター機能用にも応用するアイディアは素晴らしい。テレビとカメラが融合することでできることはまだまだありそうな気がする。今後のカメラ機能を駆使したアプリ展開も楽しみだ。
新・ビエラは、テレビを見ながらのネット活用機能が充実している。
最近では、「手元のスマートフォンをいじりながらテレビを見る」という新しい形の「ながら見」が浸透しつつあるが、新・ビエラでは、このスタイルを「再定義」したいと考えているようだ。
具体的には、ビエラの大画面にテレビ放送画面とネット関連画面を同時表示させて使うことをアピールしており、そうした活用時に便利な機能が充実しているのだ。
まず新・ビエラでは、インターネット閲覧用のWebブラウザを起動しても、テレビ画面は消えずに、そのまま画面が縮小されて視聴を続けられるようになっている。
これまでにもWebブラウザを搭載したテレビは存在したが、その多くがネット閲覧中は、Webブラウザが全画面表示となってしまい、テレビ放送の映像は見えなくなっていた。
新・ビエラは、テレビ映像とWebブラウザの同時表示に対応しており、それこそテレビ放送を見つつ、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアが使えるのだ。
ブックマークは27個まで登録ができ、各サイトはサムネイル表示されるので、よく使うサイトであれば、一度登録してしまえばあとは簡単に呼び出すことができる。
テレビ視聴中、ネットを使いたくなる衝動として多いのは「検索」だ。
テレビ番組で紹介されている商品や店舗、あるいは番組出演中のタレントについてなど知りたくなったときには、スピーディにインターネット検索をしたくなる。しかし、いちいち、検索キーワードを文字入力するのは煩わしい。
そこでまたまた活躍するのが、前述のタッチパッドリモコンだ。
新・ビエラ(VT60、FT60)は、音声入力によるネット検索に対応しているのだ。それもかなり認識精度が高く、ほぼフリーワード検索が可能となっている。
例えば「綾瀬はるか インターネット」とか「綾瀬はるか 番組表」というような音声入力での検索が可能なのだ。ソフトウェアキーボードを出しての文字入力も行えるので、音声入力がうまくいかなかったときはこちらを活用することもできる。タッチパッドリモコンならばカーソル移動がマウス感覚で行えるので、ソフトウェアキーボードによる字入力も意外に楽だったりする。
ちなみに、タッチパッドリモコンの音声入力は、テレビチャンネルの切り替えや録画番組検索にも対応しているので、「8チャンネル」と話してチャネルを切り換えたり、「徹子の部屋を録画一覧から検索」といってハードディスクに録り溜めた録画番組から見たい番組を検索することも可能だ。
新・ビエラは、単体で使いやすいスマート機能を充実させているが、もちろん、手持ちのスマートフォンとの連携機能にも力が入っている。
なにげに便利なのがスマートフォンでのテレビ視聴機能。
新・ビエラは、デジタルチューナーを2系統備えたダブルチューナー仕様なので、リビングで家族が見ている番組とは別番組をスマホアプリ「VIERA remote2」を使用してスマートフォンにストリーミングさせて見ることができるのだ。もちろんスマートフォンでなく、タブレットでもOK。
今ではワンセグ放送を見られるスマートフォンも少なくないが、屋内では受信が安定しないことも多い。それに対し、ビエラからのストリーミング放送は、ハイビジョン(HD)画質で伝送されてくるので、非常に高画質。ストリーミングは無線LANを活用するので家屋内での受信品質は高品位となる。
最近のスマートフォンは高解像度ディスプレイパネルを採用したものが多いし、タブレットは画面サイズが大きいものも多いので、快適に美しいテレビ映像が楽しめる。端末が防水対応であれば、お風呂に浸かりながらのテレビ視聴も行けるはずだ。
もう一つ、新・ビエラで特記しておきたいのがデジタル写真の共有機能。
SDカードスロットを搭載したテレビ製品が普及してきたこともあって「大画面テレビでデジカメ写真をみんなで見る」という行動はけっこう一般的になってきた感がある。しかし、みんなで見ているとき、「この写真欲しい」と思っても、その場ではどうしようもないことが多く、「あとでメールで送るね」みたいな対応になりがちだ。
ところが、新・ビエラでは、対応アプリ「VIERA Remote 2」さえ、手持ちの端末(スマートフォンやタブレット)にインストールし、家庭内LANにつなげておけば、今その時点でビエラに表示されている写真を、スワイプ操作だけで手持ちの端末にコピーすることができるのだ。
この機能により、みんなでの写真閲覧が一層楽しくなるし、本当の意味での「デジタル写真の共有」が実現される。
もしかすると、この機能はプレゼンテーションにうまく使えるかもしれない。
講演者の提示しているスライドの図版が細かくて見にくいときには、聴講者がささっとスワイプして、そのスライドを手持ちの端末にコピーしてじっくり見る…なんていう活用もできるからだ。
新・ビエラ製品のうち最上位のプラズマモデル「VT60」と「GT60」は、タッチペン機能に対応する。
このタッチペンは、画面に触れるとその箇所にインタラクションができるユーザーインターフェースデバイスだ。
メニュー操作においても、メニューアイテムに対してタッチするだけで操作が行えるので非常に直感的だ(VT60のみ)。この操作系になれてしまうと、リモコンの十字キーを連打してカーソルマーカーを移動させていたころが懐かしく思えてきてしまうかもしれない。
「テレビって離れて見るモノでしょ。なのに画面に近づいて操作するなんてどうなの?」と思う人もいることだろう。ただ、最近では、大画面テレビとはいえ、以前のように「画面の高さの3倍離れて見る」ことを守っているユーザーは減りつつある。大画面テレビが安くなってきたためだろうか…、今や6畳、8畳といった部屋に50インチオーバーのテレビを設置している家庭は多く、コタツから手を伸ばして手が届く距離で見ている家庭もいまや少なくないのだ。
特に年配者などは、タッチペンの「触れたところが反応する」操作系は分かりやすくて歓迎されることだろう。もしかしたら、年配者にとってはタッチパッドリモコンよりも取っつきやすいかも知れない。
このタッチペン、ただのメニュー操作のためだけに用意されたものではない。
放送中のテレビ番組を静止させて、お絵描きやメモを楽しむこともできてしまうのである。
なお、テレビ放送画面に関しては著作権保護の観点から保存はできないが、SDカードに保存されたデジカメ写真に対してならば、落書きやお絵描きを加えた状態で保存することもできる。それこそ、みんなで写真を見ながら落書きをして、それを各自のスマートフォンに保存…というような、プリクラ感覚な遊びもできてしまうのだ。
タッチペンは1台のテレビに対して2本まで登録することができ、同時に2本の使用が可能だ。これはちびっ子には大人気だろうし、姉妹、兄弟のいる家庭ならば2本欲しくなってしまうことだろう。
なお、ゲームアプリの中には、ちゃんとこのタッチペンに対応しているものもある。55インチ、65インチの大画面でタッチインターフェースでゲームができるのはなかなかの感動体験だ。それこそタッチペンで遊ぶ某携帯ゲーム機の約144倍の大きさの画面なので、ちびっ子は、夢中になること間違いなしだ。
各社がスマートテレビの機能の高機能化と多機能化に向かう中で、パナソニックは「機能をスマートに使えること」をモットーにして、スマートテレビの在り方を再定義してきたといえる。
せっかくの機能も、誰からも使ってもらわなければ宝の持ち腐れ、無駄である。
だからこそ、新・ビエラは、機能を進化させつつも、その使い勝手を改善し、取っつきやすい使用感を提供することに力を注いだのだ。
今、ブームのスマートテレビ。今後は「メーカー独りよがりなスマート機能」ではなく、「ユーザーがスマートに使えること」に配慮したスマートテレビが必要なのかも…と、新・ビエラを触れて思った次第だ。
使い勝手の部分は、好みもあるので興味を抱いた人は、店頭で体験してみて欲しい。
特にタッチペン操作は、ちびっ子は大喜びのはずなので、ぜひとも子連れで最寄りの電器店に足を運んでみて欲しい。
トライゼット西川善司 大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。AV Watch誌ではInternational CES他をレポート。GAME WatchではPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。ブログはこちら。近著には映像機器の原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)、3Dゲームグラフィックス技術の仕組みをまとめた「ゲーム制作者になるための3Dグラフィックス技術」(インプレスジャパン:ISBN:978-4-8443-2755-4)がある。 |
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