ビデオレコーダーといえば、ご存じの通り、テレビ番組を録画し、時にはライブラリ化するための機械である。そこで注目されるのは、画質にハードディスクの容量、本体の価格といったところだろう。もちろん、それらの価値は大きなもので、今後も変わることはない。
Everyone だけでなく Only One  VARDIAの価値を再認識するだが、ビデオレコーダーの価値はそれだけではない。「テレビ番組を見る」というシンプルなニーズであっても、どのような形でそれを満たすべきかは、ユーザーの生活スタイルや嗜好により、大きく違うのが実情だ。ビデオレコーダーには、その違いをカバーしてくれるものであることが望ましい。
VARDIAは、様々な機能を備えていることから「マニア向け」などと呼ばれることも多い。では、なぜそう呼ばれるのか? またその本質とはなんなのか? ライフスタイルを見直すことで、なぜVARDIAがマニアに支持されたのか、そして、これからどのような人に受け入れられるべきなのかを探ってみよう。

あなたは「番組との出会い」を見逃している!   多チャンネルを生かすEPGの力

フラッグシップモデル「RD-X7」

ハイスペックモデル「RD-S502」

 普段みなさんは、どのような番組を録画し、どのようなチャンネルを見ているだろうか? もちろん、多くの人が頻繁に見るのは、もっとも身近な地上波の放送だろう。だが、デジタル放送の普及に伴い、我々が接することのできる「放送」は、より幅広いものとなった。地上デジタル放送はもちろん、BSデジタル放送にe2 by スカパー!、そして、外付けチューナーによるスカパー!の受信と、その気になれば常に100を優に超える番組が視聴可能となっている。

 だが残念ながら、我々はそのほとんどを知らない。地上波ですら、自分の好きな番組を見逃したり、録画し忘れたりすることが多いはず。テレビ情報誌などをくまなくチェックする人であっても、専門チャンネルの番組まではフォローしきれないはずだ。 「最近テレビがおもしろくない」という人も少なくない。だがそれは実は、「自分がおもしろいと思える番組に出会えていない」だけなのかも知れない。あなたの知らないところで、あなたが好きだと思える番組が放送され、それを見逃しているとすれば、なんとももったいないことである。

 新聞のラテ欄や電子番組表(EPG)を自分の目でチェックして録画予約をする、という流れでは、こういった「番組との出会い」を見失いがちだ。ならば、人間の目だけでは至らないところを、機械の力でカバーし、番組を見つけられるようにできないだろうか?

 VARDIAの、最大の特徴はここにある。地上波からBS、CSまで、すべての番組表を同列に扱い、ユーザーが望む通りに情報を探し出して番組を「探せる」こと、ユーザーの嗜好にあわせて番組を「見つけ出す」ことを助ける、様々な機能が搭載されている。

ワンタッチで「見やすく変化」するEPG   「内容」から番組を見つける機能も

VARDIA最大の特徴のひとつ、縦横無尽に変化するEPG

 例えばEPGの表示方法。VARDIAでは、受信可能なすべての放送の番組表を、一つにつなげて表示する。これは、放送の種別を気にすることなく、スクロールしながら好きな番組を探すための工夫である。だが、すでに述べたように、放送の数はとにかく多い。単に一覧表示するだけでは、探し出すのが大変だ。そこで、VARDIAのEPGでは、ボタン一つで表示の「絞り込み」「切り替え」ができるように工夫されている。ある局に注目、その局で一週間にどんな番組があるのか、という見方をすることもできれば、自分がよく見るチャンネルに絞って見ることもできる。表示方向も、ラテ欄感覚の縦表示とPC感覚の横表示の両方が可能。EPGの表示方法を、ここまで柔軟に切り替え、自分にあわせて使えるのはVARDIAくらいのものである。

 豊富なEPG情報は、目で見て探すだけの存在ではない。EPG内の文字情報を検索に利用することで、自分が好きな番組を見つけることができるようになっている。「検索により番組を見つける」という方向性は、なにもVARDIAだけのものではない。「ジャンルによる絞り込み」や「キーワードによる自動録画」といった機能は、他社製品にも見られるものだ。だが、VARDIAではよりユニークなアプローチが行われている。

 EPGの中には、放送局や番組名といった基本的な情報はもちろん、番組のジャンルや概要、出演者、はては制作スタッフといった、膨大なテキスト情報が含まれている。VARDIAでは、それを解析、相互の関連をピックアップして、自動録画や検索に使う「キーワード」として利用できるようになっている。それが「人名/テーマ検索」だ。

 検索用の人名は、表から選ぶことで、自分で入力することなく指定ができる。ここで提示される人名はすべて、EPGの情報を解析し、そこから得られたものである。そのため、俳優などの「いかにもありそうな名前」だけでなく、監督などの制作スタッフ名や、スポーツ選手などもリストアップされる。

【動画:(株)東芝 デジタルAV事業部 片岡秀夫氏が語る「スカパー連動」】

 よりおもしろいのがテーマ検索。こちらは「グルメ」「ニュース・情報」「エンタメ」といったテーマに応じ、EPG内の情報を分析、キーワードリストにして表示するものだ。そこには、現在テレビでどのような話題が取り扱われているか、という「今」が見えてくる。特におすすめは「エンタメ」。ドラマやアニメ作品名だけでなく、監督や脚本、声優などのスタッフの名前が事細かにピックアップされるので、「自分好みの番組が隠れていないかどうか」が探し出しやすい。思いもよらないキャストの名前を見つけ、思わずそこから予約録画してしまう、などという経験は、VARDIAのEPGならではのものだろう。

スカパー!も「RD-X7」で簡単録画   「連動」で複雑な操作を排除

「X-7」の背面。スカパーチューナー用端子やLAN端子を装備している

 また、RD-X7に関しては、スカパー!のチューナーと連動する機能を持っていることも見逃せない。

 内蔵チューナーで録画ができるe2 by スカパー!と違い、スカパー!の録画は面倒な場合が多い。チューナーが外付けであるため、スカパー!のチューナーとレコーダーの両方で録画予約をせねばならないからだ。

 そこで役に立つのがスカパー!連動だ。X7の場合には、スカパー!のチューナーとケーブルで接続することで、スカパー!チューナーの制御を、すべてX7側から行える。すなわち、録画予約作業が、すべてX7だけで完結するのだ。EPGも、もちろんX7のEPGとして表示される。ここまで解説した検索機能などは、もちろんスカパー!連動でも有効だ。

 この機能は、スカパー!のヘビーユーザーにとって、換えの利かない「オンリーワン」の存在といっていいだろう。

「パソコンの力」をレコーダーで生かす   LAN連動機能「ネットdeナビ」の実力

【動画:(株)東芝 デジタルAV事業部 片岡秀夫氏が語る「ネットdeナビ」】

 家電にとって最大の問題点は、「テレビというモニターとリモコンというUIの壁」だ。誰もが気軽に、簡単に使える一方で、大量の情報を見たり、素早く文字を入力したりするのは難しい。そのあたりは、やはりPCの独壇場といえる。

 ならば、PCが得意なところはPCにやらせてしまえ、と東芝は考えた。それが、VARDIAの「ネットdeナビ」だ。

 ネットdeナビは、VARDIAを家庭内LANに接続、同じLAN内につながったパソコンからウェブブラウザを使い、VARDIA側の操作をする、という機能である。

 ネットワークで家電を操作、というとなんとなく小難しい印象を受けるが、ネットdeナビはきわめてシンプルに使えるものだ。現在は、ブロードバンド回線を利用する目的から、パソコンを家庭内LANで接続している人も少なくないだろう。それらと同様、VARDIAの背面にあるイーサネット端子に接続すれば、あとはPC側でウェブブラウザを開き、URLの代わりにVARDIAの名称を入力してやるだけである。

 ネットdeナビでは、番組予約のほか、すでに録画済みの番組名を変更したり、キーワードによる「おまかせ予約」の設定を行ったり、といったことが可能だ。特に、大量の番組名を修正するような場合には、リモコンよりも圧倒的に便利である。また、パソコンを赤外線リモコンの代わりに使うことができるため、ネットdeナビ利用中は、いちいちPCとリモコンを行ったり来たりして操作する、といった必要もない。特に、ノートパソコンを無線LANで接続して使う場合には、まるでパソコンが、「VARDIAの巨大な万能リモコン」に変化したかのような印象を受ける。

 この快適さは、一度体験してみないとなかなかピンとこないかも知れない。録画番組の整理や大量の録画予約、といった作業は、せいぜい月に1、2度しか行わないようなことだろう。だが、その時の「ストレス」が劇的に改善されるのは、やはり「オンリーワン」の価値といえる。

時間短縮にも、簡単編集にも   多彩な実力を持つ「マジックチャプター」

【動画:(株)東芝 デジタルAV事業部 片岡秀夫氏が語る「マジックチャプター&おまかせプレイ」】

 たくさんの番組に出会えるようになることは、確かにうれしいことだ。だが他方で、多忙な人はこうも思うだろう。 「そんなに録画しても、見ている時間がない」と。

 確かにその通り。番組の中で、すべてのシーンがあなたにとって重要、というわけではないかも知れない。特にニュースや歌番組、スポーツ番組などでは、「さっさと自分が必要としている部分だけが見たい」と感じることも少なくない。

 そこで必要になってくるのが「番組内容の解析」だ。VARDIAでは、映像や音声の情報を手がかりに、番組内に自動的に「区切り(チャプター)」を設定する機能が存在する。それが「マジックチャプター」だ。

 出荷時設定の場合、マジックチャプターの機能は、主にテレビ番組の本編とCMを自動的に切り分けるよう設定されている。番組を再生中、不要な部分にきたら「チャプター送り」のボタンを押すことで、次の区切りへとジャンプする。これでも時間はそこそこ短縮できるはずだが、マジックチャプターの懐はもう少し深い。

 番組再生を始めるまえに、リモコンの「おまかせ」ボタンを押してみよう。するとVARDIAは、マジックチャプターの情報を使い、「本編と思われる部分」だけを集めたプレイリストを自動作成し、再生を始める。こうすれば、チャプターを自分で進める必要すらなくなるわけである。残念ながら、本編とCMの判別精度は100%ではないが、それでも、「チェックしたい番組を短時間で見る」には非常にありがたい機能であることは間違いない。

 また、マジックチャプターの設定を変更すれば、チャプターの区切りとして、CMと本編だけでなく、「番組内のコーナーの区切り」や「シーンの切れ目」にもチャプターが設定される。例えばニュース番組であれば、話題の切れ目にチャプターが設定されるので、興味のある話題以外は飛ばしながら見る、といった使い方も可能だ。

 マジックチャプターは、なにも「時間短縮」だけに使える機能ではない。編集の手間を大幅に緩和するものとしても有用である。

 例えば音楽番組の場合、トーク部分と演奏部分の切り分けに役立つ。すべてを手動で行うと大変だが、マジックチャプターを使えば、大まかな切り分けは自動化できる。あとは、調整が必要な部分だけを修正するだけでOK。修正は、一時状態でスキップすると分割されている点で止まるので、そこで「チャプター分割/結合」ボタンを押すと結合し、フレーム単位で位置調整して再度「チャプター分割/結合」ボタンを押すだけの簡単さだ。

 自動チャプター設定、という機能そのものは、VARDIA以外にも存在する。しかし、それを「編集の手間を減らす」という方向性にも生かしているのはVARDIAらしさだ。時間短縮とマニアニーズの両方に向いた仕様といえる。

安価なDVDの力を最大限に活用   ハイビジョンもBSデジタルも生きる「HD Rec」

【動画:(株)東芝 デジタルAV事業部 片岡秀夫氏が語る「HD Rec」】

 録画番組のダビングは、ビデオレコーダーにとって必須の機能である。ハイビジョン番組の比率が増え、録画番組をディスクへハイビジョンのまま残したい、というニーズが増えるのも、また当然のことだろう。

 VARDIAは「DVDレコーダー」である。以前のデジタル放送対応DVDレコーダーの場合、ハイビジョン放送は標準解像度(SD)にダウンコンバートされて記録されていたため、「DVDにはハイビジョンが残せない」と思っている人も多いようだ。だが現在のVARDIAは、圧縮効率の良い「H.264/AVC」で映像を圧縮し、ハードディスクやDVDへと記録する機能が搭載されており、ハイビジョンの解像度を保ったまま、DVDへとダビングすることが可能となっている。

 残念ながら、AVCでの圧縮には若干の画質劣化を伴うため、映画のように長時間のハイビジョン映像を、一切の劣化なくDVDに記録することは難しい。しかし、1層のDVD-Rなら100円以下、2層のDVD-Rでも200円から300円という、非常に安価で「枯れた」メディアに記録できるということには十分な価値がある。特に、元々情報量の少ない地上デジタル放送で、ドラマなどを保存する場合であれば、画質面での不満を感じることは少ない可能性が高い。

 また、BSデジタル放送やe2 by スカパー!のファンにとってもうれしいことがある。それは、これらの「デジタル放送」を、完全無劣化でDVDに記録することができるようになったからだ。従来のDVDレコーダーの場合には、BSデジタルやe2 by スカパー!の番組を録画する際には、映像の形式を「MPEG-2 PS」に変更して書き込む必要があった。ハードウエア上の制限から、この変換の際、画質は若干劣化してしまっていた。だが新VARDIAでは、放送から受信した「MPEG-2 TS」形式のままディスクに記録できるようになったため、画質劣化もなく、音声多重放送や5.1chサラウンドの音声もそのまま残せる。

 これらの改善は、DVDに対し、「HD Rec」という形式で記録する機能が搭載されたことによるものだ。「MPEG-4 AVCでふつうのDVDにハイビジョンを録画する」という意味では、他社製品にも対応例はあるが、地上デジタル、BSデジタル、e2をそのままの画質で残せるという点では、確かにHD Recに軍配が上がる。

 HD Recは、現在のところ、残念ながら一般的なDVDプレイヤーなどで再生することはできない。しかし、新VARDIAで「自分のための映像ライブラリを作っていく」という用途であれば、安価なDVDをより多彩に使える技術として有用だろう。

誰かにとっての「ワン・アンド・オンリー」   多チャンネルの「多様な価値観」が生きる

 ここまで解説してきたように、VARDIAには、「ほかのレコーダーにはない価値を持つ機能」がたくさんある。非常に細かくて少々マニアックなもの、と思われるかも知れない。だが、そのどれもが、他社製品では実現されていない「ワン・アンド・オンリー」。自分の利用スタイルにガッチリはまったら、ほかは選べない魅力になる可能性を秘めている。

 テレビ録画を巡る価値観は多様だ。画質で選ぶのも結構、記録時間で選ぶのもまた結構。同様に、「操作性」や「編集機能」で選ぶ、という考え方もあっていい。  現在のVARDIAは、そういった「多様なビデオの楽しみ方」を求める人に向けたレコーダーといえるのではないだろうか。

西田宗千佳
 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、月刊宝島、週刊朝日、週刊東洋経済、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、家電情報サイト「教えて!家電」(ALBELT社)などに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。

■関連情報
□東芝 http://www.toshiba.co.jp/
□VARDIAサイト http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/
□東芝直販サイト「Shop1048」 http://shop1048.jp/

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