獰猛で凶暴な化け物みたいな巨大な爬虫類を、命を掛けて狩り立てるスリルとロマン…。男性に眠るといわれる狩猟の本能がビリビリと刺激されちゃうのが「恐竜ハンティング」。この興奮を味わったら、職業を「恐竜ハンター」にしちゃおうかな、って思ってしまう人、続出の予感。
この「恐竜ハンター」を実際に楽しめるゲームがあるのだ。その名は「恐竜ハンター・テュロック」!古いゲームファンならば分かるだろう。しかし、今回、発売されるゲームタイトルは一言ジャスト「TUROK」…。
え? 今回発売されるTUROKはもう「恐竜ハンター」じゃないの!?
こ、これは…なにやら事件の予感がするぞ!
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初代「テュロック」では恐竜達はモンスター、兵器として登場していた。 |
「テュロック」はもともと同名のコミックが元ネタとしてあり、これをベースにしたゲームが約10年前の1997年「ダイナソアハンター・テュロック」としてアクレイムからPCとニンテンドー64向けに発売された。初代テュロックの舞台は恐竜と人類が共存する超時空間「ロストランド」。この世界で突如目覚めた伝説の破壊神。これに立ち向かうのが、プレイヤー扮する、超時空戦士「テュロック」。初代「テュロック」では基本的に恐竜は破壊神の使い魔として銃器を持って登場する。コミック原作のゲームということもあってか、初代テュロックの物語はやや荒唐無稽であった。
で、今回、10年の時を超えてXbox 360とPS3をプラットフォームに発売される「TUROK」は、名前こそ同じだが、まったく設定が異なっており、超リアリズム志向のハードコアSFに生まれ変わっているのである。
人類が恒星間航行技術を身につけている未来。「ウルフパック」とよばれる政府の闇部隊が存在した。そのリーダーのローランド・ケーンはあらゆる戦闘術に長けた軍人であったが、任務のためには女子供の非戦闘員までを虐殺するような残虐非道な戦士でもあった。プレイヤー扮する主人公の名前はジョセフ・テュロック。テュロックはかつてウルフパックに属していたことがあり、ローランド・ケーン直々に戦闘術を伝授されたエリート戦士であった。しかし、彼はある戦闘で起こった事件をきっかけにして、ウルフパックを脱退する。
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ウィスキー中隊の乗る宇宙揚陸艦 |
ゲーム史的に見ると希少なモヒカンの主人公テュロック |
常軌を逸した派手なモヒカンのヘアスタイルは、主人公であることへの反骨精神の現れなのか、それとも未だ忘れ得ぬ自分の過去とケーンへの反目なのか。時は流れ、ケーンがウルフパックごと姿を消すという事件が起きた。テュロックは奇しくも、ケーンの捕獲任務に参加することになったのであった。
ケーン捕獲作戦を担当することになったのは、連合軍きってのエリート特殊部隊「ウィスキー中隊」。テュロックは「ケーンをよく知る参考人」としてウィスキー中隊に配属になるが、大虐殺を行ってきたウルフパック部隊に属していたことをウィスキー中隊の面々はよく思っていない。
ケーンの潜伏先は、複合軍事企業「メンデルグルーマン(MG)」社が兵器開発を行っているという辺境の実験惑星。
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バラバラになってしまったウィスキー中隊を待ち受けていたのは恐竜達であった |
1人の脱走兵の捕獲には規模の大きすぎるほどの戦力を載せた宇宙揚陸艦は、この実験惑星への大気圏突入の折に、地上からの謎のミサイル攻撃をうけて大破してしまう。バラバラになった揚陸艦の破片はこの実験惑星上の各地に墜落、その乗組員のほとんどが死亡してしまう。わずか十数名となり戦力がそぎ落とされてしまったウィスキー中隊だが、仲間たちの死を無駄にしないためにも任務の続行を決意する。
しかし、まず、彼らを出迎えたのはローランド・ケーンでもMG社の傭兵部隊でもなく、巨大な爬虫類達…そう、恐竜達なのであった!!
この時代、人類は死の惑星を居住可能に変換する生態系の超進化技術を獲得しており、この実験惑星はその急速テラフォーミングの副作用によって恐竜が異常繁殖してしまっていたのだ。
かくしてウィスキー残存部隊のサバイバルは始まるのであった。
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テラフォーミングの副作用で恐竜惑星化してしまったMG社の兵器開発実験惑星 |
…と、まぁ、こんな感じで、普通のハリウッドSF大作映画っぽい設定になってしまっていて、びっくり。
初代テュロックから受け継がれているのは「主人公の名前」と「敵として恐竜が出てくる」ということ、そして後述する特殊武器として「弓矢」が出てくることくらい。
そうそう、そして今作の「恐竜ハンティング」要素にも不安なし。これまでのどのテュロックシリーズよりも恐竜描写が過激なのでご安心を!
※以下の操作説明は、すべてXbox 360 版のものとなります。
ゲームは基本的に一人称視点3Dシューティング…いわゆるオーソドックスなFPS(First Person Shooter)ゲームスタイルを踏襲する。このタイプのゲームが好きであればすんなりと入っていけるはず。
基本操作は左スティックで移動、右スティックが視点操作で銃撃は右トリガーだ。Aボタンでジャンプができるが、サイドステップ+ジャンプ(A)ボタン長押し操作で、スペシャルな横っ飛びアクションが出せる。これは、通常移動ではかわしきれないような恐竜の突進攻撃を受け流すのに非常に役立つためゲーム序盤から意識的に練習しておきたい。
武器システムは「HALO2」から流行になった感もある二丁拳銃スタイルに対応。片手携行可能な小型銃器であれば、それらを両手に持つことができ、ジョイパッドの左右両方のトリガでダブル撃ちが可能となっている。武器の切り替えは左スティック下にあるデジタル十字パッドで行う方式。これも一般的なスタイルでなじみやすい。
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実は敵の中にはナイフでないと倒せないものも! |
弾薬が無くなったらナイフで戦え! |
他のFPSとは違ってテュロックには高速移動手段のダッシュの操作はなし。しかし、その時に装備している武器の重量によって移動スピードが変わってくるというユニークな移動システムが採用されている。最も高速なのは格闘武器のナイフを装備しているとき。格闘武器としての性能を活用するときだけでなく、装備時の移動速度の速さを活用して、複数の敵に取り囲まれたときの戦線離脱手段としてナイフに装備を切り換えるのは有効だ。ちなみにガトリングガンやロケットラウンチャーなどは重い武器なので携行時は移動速度がかなり遅くなる。注意されたし。
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拠点防衛に大活躍するチェインガンだが移動が不可能になる。 |
固定設置型ロケットラウンチャー。こちらも威力は強力だが移動不可 |
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射撃精度は低いが圧倒的な数の弾を射出するマシンガン。動く敵にはけっこう有効だったりする。 |
高台からの狙撃にはこれ。スナイパーライフル |
また、武器を右手のみに装備したとき、左トリガは精射モードへの移行スイッチになる。スナイパーライフル装備時はターゲットスコープ視界に切り替わるが、その他の銃器でもズーム視点に切り換えられるので、身を隠しつつ敵をねらい撃ちたいときには積極的に活用しよう。
装備として持てる銃火器は2つまで。ただし、テュロックシリーズの伝統武器である弓は標準装備される(ゲーム序盤のイベントで入手)。ゲーム中、「弓矢攻撃なんて」と部隊の仲間にバカにされるやりとりが挿入されるが、実際のところは、発射音をさせないで静かに敵を葬り去ることができるため、スニーキング系ミッション(敵の目に触れず任務を遂行していく)では非常に重宝する。
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テュロックの象徴的な武器「弓矢」。矢は通常の矢の他、炸裂弾付きのものがある。 |
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手榴弾は広範囲に攻撃力を及ぼす。3つまで携行可能 |
張り付く炸裂弾を射出できる特殊銃、スティッキーガン。 |
なお、弓矢の攻撃システムは普通の銃器とは異なり、右トリガを引いている時間が長ければ長いほど威力が増すようになっている。いわゆる溜め撃ちに相当する操作系を採用しているのだ。若干の放物線弾道を描くので精度の高い射撃をするにはけっこう慣れが必要。しかし、そのじゃじゃ馬ぶりを手なずけられるようになると、このゲームの楽しさが倍増する。
弓矢の他に、常に携行できる武器としてナイフがある。もちろん、これは何も高速移動手段のためだけの武器ということはなく、右トリガで振り下ろし刺し、右サイドボタンで横切り刺しの操作に対応した、立派な攻撃武器だ。小型の雑魚恐竜や、ボーっとしている敵兵などに忍び寄り、その近辺でタイミング良くナイフ攻撃操作をすることで格闘アクション付きで瞬殺が可能だ。弾薬が残り少なくなってきたときには積極的に活用したい。
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近距離攻撃には有効なショットガン。セカンダリ攻撃では恐竜の意識を惹き付けるフレア弾が射出可能。 |
ハンドガンは攻撃力は大したことはないが、軽いため移動速度を犠牲にせずに攻撃できる。 |
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ゲーム後半では主力武器として活躍するパルスライフル。セカンダリ攻撃ではエネルギー炸裂グレネードを射出可能。 |
ボス戦前には入手しておきたいロケットラウンチャー。 |
ゲーム進行は基本的にはストーリーに沿った展開を見せる。プレイヤーは敵を撃ち倒しながらゴールへ向かって歩を進めていけばいい。
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背後から忍び寄ってナイフで暗殺! スニーキングミッションもあり! |
マップも基本的には一本道なのだが、それを感じさせないステージ構成がお見事。植物がうっそうと茂り、斜面が多く崖がせり出していたり、狭い空間を長々と通されたかと思えば、突然開けた空間にたどり着いたり…と、ジオメトリ的にも視覚的にもバリエーションに飛んだステージ構成に飽きが来ないのだ。方向感覚を迷わせようとする罠が至るところにあるので、うっかりすると迷ってしまうほど。ただ、「一本道である」という大前提が、プレイヤーにとっては心の支えとなり、プレイ中にイライラすることはあまりない。例え迷ってしまっても、うろうろとしているうちにハっと気がつくとちゃんと目的地に着いていたりする。このあたりのステージデザインのセンスも秀逸だ。
敵は圧倒的な数であり、そしてなかなかに賢い。攻撃の手を緩めると側面や背後に回り込んできたりするし、あるいは物陰に隠れつつ狙撃にいそしんでいると、こちらのあぶり出しを狙ってか的確に手榴弾を投げ込んできたりするほど。ゲーム中、緊張感は常につきまとうのだ。
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敵は執拗にプレイヤーを追い詰めてくる |
しかし、こうした、こざかしい敵に対して有効な戦略はいくつかある。
一つは、ステージ中に設定された、プレイヤーにとって圧倒的に優位な地理的条件の攻撃ポイントにたどり着くこと。そうしたポイントは大抵が高台であり、そこから見下ろすような感じで…そう、敵の射程距離外から一方的に敵に対して攻めることができるのだ。そうした高台ポイントと地上とはハシゴで結ばれているので、新しい戦場にやってきたらまずはハシゴの位置を確認するといいかもしれない。
二つ目は共倒れを狙う作戦。
この辺境惑星には恐竜が棲息しているのは既に述べたとおり。恐竜にとってはMG軍もウィスキー中隊も関係なく、「人間は食べ物」という動物的本能で攻撃をしてくる。目には見えないが、この恐竜達には出現ポイントが定められており、「人間(プレイヤー含む)がその場所の近くに行く」、「恐竜の卵を銃撃して刺激する」といった行動を取ることでそのシーンに恐竜を呼び寄せることができるのだ。この恐竜達をMG軍の方に誘導できれば、恐竜達はMG軍の方を食べようとしてくれる。そう、混乱を意図的に作り出してやれるのだ。MG軍は自軍陣地に恐竜が出現してしまうと、もはや意識は恐竜の方に向いてしまうため、プレイヤー側を攻撃している余裕が無くなってしまう。
こうした「三つ巴戦」の楽しさは「ハーフライフ」シリーズや「HALO」シリーズで実証ずみ。テュロックの場合は、特に、恐竜が敵を襲っているさまが面白く、見ていて笑ってしまうほど爽快なのだ。プレイヤー自身がジャングルを突き進んでいるときはあんなに怖かった恐竜達が、MG軍を襲っているさまを見ていると不思議と心強く感じでしまうから面白い。「敵の敵は味方」の法則だ。
また、ゲーム開始時にはバラバラとなっていたウィスキー中隊の面々が、ゲームを進めるごとに次々とプレイヤーに加勢してくれるようになるので、シングルプレイヤー・ゲームにおいても「複数対複数」の団体戦が展開していくさまも面白い。
オリジナルシリーズのファンにとっての心配事は「恐竜ハンティングはちゃんとできるのか」という素朴かつ重大な疑問。確かにMG軍の相手をすることも多いのだが、ゲーム中、終始、多彩な恐竜を相手にすることは間違いなく、プレイヤーはちゃんと「恐竜ハンター」として活躍できる。
なにしろ登場する恐竜の種類が多い。
映画「ジュラシックパーク」ですっかりお馴染みとなった素早く賢い悪役恐竜の定番「ヴェロキラプトル」(ラプター)は今作でも大暴れ。強烈なジャンプアタックや突進攻撃を仕掛けてくる。出現頻度も高く、ゲーム中、MG軍をパニックに陥れるのには定番的な存在ともなっている。
中ボス的にプレイヤーを苦しめてくれるのはディロフォサウルス。ちょっと大きなラプターという出で立ちだが、通常戦闘時に登場する恐竜としては最強の部類で油断は禁物。同ステージ内にラプターなんかも同時出現してくると、まともに相手していては身が持たないため、前述したように、地形的に優位なポイントを発見して戦う必要がある。
そしてなんといっても大迫力なのがステージの最後に待ちかまえている大ボス的な恐竜の数々。定番のT-REXことティラノサウルスは、ここぞと言うときに登場してきてくれるし、その巨大版にも見えるギガノトサウルスなんかも出てくる。地底ステージでは触手付きのエイリアンチックな不気味な海蛇型の新種の恐竜も出現したりする。
ボス戦ではただ狙って撃つだけでは倒せないヤツラがほとんどで、弱点を探し、その弱点を突くような、そのボス専用の戦略と攻撃方法を探し出さなければならない。ボス戦はある意味、パズルゲーム的要素が盛り込まれている特設ステージ…といってもいいくらい。ボス恐竜との戦いは特に恐竜ハンターとしての実力が試される瞬間である。
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プレイヤーを苦しめてくる恐竜の数々 |
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ヴェロキラプトルはこの実験惑星には数種の亜種が棲息している。その種類によって戦闘能力が微妙に違っている |
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ティラノサウルスは当然ボスとして登場する! |
FPSといえばネット対戦も楽しくなければならない。
今作のテュロックにも当然、ネットワークを利用したオンライン対戦モードが用意されている。最大16人までのマルチプレイが可能で、ウィスキー中隊、MG軍の勢力に分かれて、シングルプレイヤー以上のド派手な戦闘が楽しめる。もちろん、マルチプレイ用のマップにも恐竜は出現するので、オンライン対戦でも恐竜に敵を襲わせることもできるし、「恐竜ハンティング」をすることもできる。
対戦モードへの移行はメニューの「マルチプレイヤー」を選ぶだけで簡単に始めることができる。特別にカスタマイズしたネット対戦を行いたいというのでなければマルチプレイヤーのメニューから「クイックマッチ」を選択して待っていればすぐに対戦が始められる。難しい操作はなし。
用意されているゲームモードは、バトル・ロワイヤルな「デスマッチ」、そのチーム戦版「チーム・デスマッチ」、各軍の象徴となる旗の争奪戦「キャプチャー・ザ・フラッグ」といった、一般的なFPSネット対戦モードは全て搭載。また、これら以外に、4人小隊(フォーマンセル)を組んでミッションを遂行する「協力バトル」モードや、そのマップ特有の専用任務を遂行する「ウォーゲーム」モードというのもある。例えば「ウォーゲーム」モードは、そのステージに隠された爆弾の除去任務、敵基地への侵入任務、拠点防衛任務…などが用意されており、シングルプレイヤー・ゲームの1ステージをネット対戦に対応させたようなゲームモードとなっている。
それと今作のテュロックは、今世代機ゲームエンジンとしては最も知名度の高い米EPIC GAMES社の「UNREAL ENGINE3.0」(UE3)を採用している。そのためグラフィックスは、今世代機としてはトップクラスの完成度を誇っている。
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テュロックの美麗グラフィックスはUE3によるもの! |
優に100万ポリゴンを超える情報量の多いジオメトリ表現、法線マップによる微細凹凸ディテール表現、焼き込みではない動的な影生成、美しい光のあふれ出しが印象的なHDRレンダリング、効果的な合焦演出による映画的なカメラワーク(被写界深度エフェクト)、速い動きに印象的な残像が出るモーションブラーなどなど、1つ1つ挙げていてはきりがないほどの最先端ゲームグラフィックス技術が詰め込まれており、プレイして楽しいだけでなく、「目にも美味しい」ゲームとなっている。その映像美はPS3やXbox 360といった今世代機でゲームプレイをしていることの幸福感を改めて満たせてくれるはずだ。
新世代ゲーム機買ったはいいけど「いいゲームがない」とお嘆きのアナタ、美しくも恐ろしいテュロック・ワールドでの恐竜ハンティングを、この春、ぜひとも体験されたし。
(トライゼット西川善司)
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