鮮明で迫力のある地上デジタル放送、見開きで眺められる電子雑誌、見るだけでなく編集までしっかりできるビジネス文書。13.3型ワイドという大きく美しい画面を得たことで、単なる情報端末の枠を超えて大きくその用途を広げようとしている東芝「レグザタブレット AT830」。高解像度ディスプレイ、Tegra 3、Android 4.0搭載で新世代へと生まれ変わった新レグザタブレットのフラッグシップモデルを実際に試してみた。

新世代タブレットを開拓した「レグザタブレット」

 もしも、近い未来、Androidを搭載したタブレット製品の歴史を振り返えることがあったとしたら、おそらく今回、東芝から登場した「レグザタブレット AT830」は、新しいジャンルを開拓した存在として、その歴史の中に大きく名前が刻み込まれることになるのではないだろうか。

 13.3型ワイド、1600×900ドットのTFTカラーIPS液晶。ひときわ目を引くレグザタブレット AT830に搭載された大型のディスプレイは、それほどまでに大きなインパクトを備えた、これまでになかったまったく新しい存在だ。

 そもそも、今回、東芝から新たに登場したレグザタブレットシリーズは、どのモデルも、他の製品にはない東芝ならではと言える特長を備えている。

 13.3型ワイド液晶搭載でフルセグ地デジチューナーを搭載した「AT830」、薄型軽量というモバイル用途にこだわった10.1型モデルの「AT700」、同じ10.1型でもリーズナブルな価格と使いやすさにこだわったスタンダードモデルの「AT500」、さらに7.7型の有機ELディスプレイ搭載の軽量・コンパクトモデル「AT570」と、いずれも特徴的な製品ばかりだ。

左から「AT830」、「AT700」、「AT570」、「AT500」

 もともと備えていた高い画質と音質、同社製の液晶テレビやレコーダーとの連携機能を搭載という特長に加えて、今回の新シリーズでは、さらにAndroid 4.0の採用、高性能なCPU(AT830/AT570/AT500がNVIDIA Tegra 3、AT700がOMAP 4430)の搭載、東芝ならではの映像処理技術「レゾリューションプラス」などによる高画質化、音響処理技術により聴き取りやすい音を出力する機能の搭載、といった数々の新機能を搭載している。

 中でも、今回取り上げるAT830は、前述したように、13.3型ワイド HD+(1600×900ドット)の大画面の高精細&広視野角のIPS液晶を搭載したのが大きな特長だ。これは、内蔵チューナーで地上デジタル放送を楽しむという目的だけでなく、電子書籍端末として雑誌サイズの電子書籍を見開きで楽しんだり、メールの文字入力、文書や表計算の作成が楽にできるなど、高い注目を集めている。

 「REGZA」というイメージから、東芝製の液晶テレビやレコーダー向けの製品のようなイメージを持っている人もいるかもしれないが、それだけではなく、タブレットならではの新しい使い方を開拓し続けているのが「レグザタブレット」というわけだ。

13.3型ワイド液晶、1600×900の大画面、地デジチューナー搭載のAT830 A4変型の雑誌と大きさを比較
直径20mmの1円玉と比較 本体天井部にボリューム調整ボタンなどを配置 左側面に電源ボタン 右側面にSDメモリーカードスロットや、各インターフェイスを装備
13.3型ワイド、1600×900の大画面を採用。テレビの視聴はもちろんのこと、広い画面を活かしたさまざまな活用が可能
REGZA Tablet AT830
OS Android 4.0
CPU NVIDIA Tegra 3 1.4GHz
ディスプレイ 13.3型ワイド HD+ TFTカラー IPS液晶(1600×900)
メモリ 1GB
内蔵フラッシュメモリ 64GB
TVチューナー 地上デジタル放送/ワンセグ放送対応
Webカメラ 前面(約200万画素)/背面(約500万画素)
バッテリー駆動時間 約13時間(動画再生時)/約5時間(テレビ視聴時)
サイズ 約343.8(幅)×211.3(奥行)×9.9(高さ)mm
質量 約1.00kg
通信機能 IEEE802.11b/g/n、Bluetooth
メディアスロット SDカードスロット×1
インターフェイス USB2.0(micro-AB)×1、ヘッドホン端子×1、
microHDMI出力端子×1、アンテナ入力×1

スマートなテレビの世界を一足お先に

地デジのアンテナは右上に格納されている。引き出してから折り曲げて調整する 13.3型ワイドの大画面でテレビを楽しむことが可能

 それでは、実際の製品について見ていこう。東芝の「レグザタブレット AT830」は、これまでの主流だった10.1型タブレットより、一回り大きな、幅343.8×奥行き211.3×高さ(薄さ)9.9mmのサイズと1.00kgの質量を持ったタブレット端末だ。

 最大の特長は何と言っても、地上デジタル放送をその大画面で楽しめることだ。本体に内蔵した地上デジタル放送/ワンセグ放送対応TVチューナー(1基)と、側面から引き出すことができるロッドアンテナによって、地デジのテレビ番組を受信することが可能となっている。最近では、これまで専用OSだったSTBやテレビなどがOSにAndroidを採用し始めたことが話題になりつつあるが、言わば、このAT830は、もともとAndroidを採用した端末にテレビ機能を搭載した端末というわけだ。

 もちろん、これまでにも、ワンセグが楽しめるスマートフォンやタブレットは存在した。しかし、実際に試してみたことがある人はわかると思うが、その画質はかなり制約されたものでしかなかった。画面は荒く、その動きもスムーズさに欠けるため、スマートフォンの小さな画面ならまだしも、大画面のタブレットでは決して美しいとは言えない画質でしか楽しめなかったわけだ。

 これに対して、AT830では、前述したように大型、高解像度の液晶を搭載し、地デジの電波が届く場所であれば、高精細な映像を余すところなく楽しめるようになっている。

 13.3型ワイドの画面は、手に持ったり、同梱の卓上スタンドを使って目の前に設置したときに、ちょうど良いサイズでテレビの画面が目に映るようになっており、まるで家庭用のテレビを眺めているかのような迫力の映像を楽しめる。東芝が液晶テレビ「レグザ」で培った高い映像処理技術(レゾリューションプラス)が採用されていることもあり、映像も非常に鮮やかで、クッキリとした印象だ。

 これまでのタブレットは、テレビを楽しむと言っても、どちらかというと「画面をのぞき込む」という感覚で見ることが多かった。10.1型クラスのタブレットでも、地デジの画面は上下に帯が入った小さなサイズとなってしまうため、どうしても画面が小さく感じられた。しかし、13.3型ワイドのAT830は、画面自体が大きいことに加え、地デジを画面ぎりぎりまで使って表示できるため、まさに「ゆったりと観る」というイメージで楽しむことができる。

実際の1/4サイズで、13.3型ワイドと10.1型のテレビ再生画面を比較した図。13.3型ワイドのAT830は、単純に画面が大きいだけでなく、画面サイズを有効に使ってテレビを表示することができる

 サイズに無理がなく、画質にストレスを感じることがないこともあってか、1時間以上、しっかりとテレビを視聴しても、目が疲れるようなこともないうえ、番組表も大きな画面に大きな文字で表示できる。単に美しいだけでなく、「楽に」テレビを楽しめるというのは大きな収穫だ。広い視野角で見やすい液晶を採用しているので、複数人で一緒に映像を楽しむこともできるだろう。

 また、どこでもテレビを楽しめるのもAT830ならではの特長だ。大容量のリチウムイオンポリマーバッテリーを搭載し、動画再生で約13時間、テレビ視聴で約5時間の連続駆動が可能になっているため、家の好きな場所でテレビを楽しめる。書斎や勉強部屋の自分専用のテレビとして活用したり、ベッドやベランダなどでリラックスしながらテレビを楽しむのに最適だ。

 電波の届きにくい場所では自動的にワンセグに切り替わるので、外出先などでも好きなときに好きな番組を楽しむこともできる。

RZプレーヤーを利用すると、ネットワーク上のレグザやレグザブルーレイで録画した番組も無線LAN経由で再生できる

 このほか、レグザタブレットならではの特長として、テレビやレコーダーとの連携も可能となっている。標準でインストールされている「RZプレーヤー」を使って、レグザやレグザブルーレイ/レグザサーバーの対応機種で録画した番組を、ホームネットワーク(無線LAN経由)を使ってAT830で再生したり、「RZポーター」を使ってレグザブルーレイに録画した番組をAT830にダビングして持ち出したりすることができる。

 すでに家庭用のテレビ環境にレグザやレグザブルーレイを使っている場合は、これらの機器との連携させ、大画面で録画した番組を大画面のタブレットで楽しめるのも大きな魅力と言えそうだ。

見開きで雑誌を楽しめる

 13.3型ワイドの高精細液晶が活きるのは、テレビなどの映像だけに限らない。たとえば、電子書籍などは、思った以上に大画面のメリットを享受できる。

ブックプレイスやミュージックプレイスなど、タブレットの楽しみ方を広げることができる東芝プレイス

 レグザタブレットシリーズには、話題の新刊やマンガなどをすぐに楽しめる「ブックプレイス」、映画やドラマの豊富な映像コンテンツを楽しめる「ビデオプレイス」、音楽をダウンロードして楽しめる「ミュージックプレイス」、カジュアルゲームを気軽に楽しめる「ゲームプレイス」、便利なアプリがすぐに使える「アッププレイス」、ファッションやグルメなどの生活に役立つサイトを集めた「ショッピングプレイス」、付属品などのアクセサリーを購入できる「アクセサリープレイス」など、タブレットの楽しみ方を広げるためのオリジナルストアが用意されている。このうちの「ブックプレイス」では、いつでもどこでも簡単に、好きな電子書籍を購入することができる。

 小説やビジネス書、漫画など、さまざまな電子書籍を24時間、読みたいときにすぐにダウンロードできるのが魅力だが、AT830ならではのメリットが活きるのは、やはり雑誌だ。

ブックプレイスを利用すると手軽に電子書籍を購入可能。特に雑誌は見開きでも楽に読めるのでオススメ

 AT830を横向きにすると、雑誌を見開きで表示しても余裕で画面内に収まるうえ、縮小も最低限で済むため、実際の誌面と同じような感覚で、雑誌を楽しむことができる。ファッションや小物、グルメなど、写真が多く掲載されている雑誌を読むのに最適だが、見開き表示でも文字がつぶれて読みにくくなることがないので、拡大、縮小の必要もなく、ビジネス誌なども快適に読むことができる。

 製品写真や記事を補足するための図版など、見やすいようにレイアウトされた誌面イメージをそのまま表示できるのはAT830ならではの特長と言える。電子書籍というと、現状は小説やマンガなどが主力のコンテンツとなっているが、AT830のような大画面の端末が登場したことで、今後は、雑誌なども当たり前のように電子版で楽しむ時代が訪れそうだ。

文書を作るビジネスツールとしても使える

 このほか、どちらかというと地味な特長だが、メールなどの文字入力がしやすいという特長もある。画面サイズが大きくなったおかげで、文字入力が必要な際に表示されるソフトウェアキーボードの一つ一つのキーが大きく、余裕を持って配置されている。

 このため、同梱の卓上スタンドを使って、テーブルに対して少し斜め手前に傾くように設置すると、ちょうどパソコンのキーボードを打つような感覚で、両手を使ってサクサクと文字を入力していくことができる。もちろん、ある程度の慣れは必要だが、これまでのタブレットのように、指と指、キーとキーの間隔から感じる窮屈な印象がないため、長文を入力しても苦にならない印象だ。

スタンドが付属する 大画面を活かして、大きなボタンと余裕のある配列となるキーボード。パソコンのようにタイプできる   文書作成や表計算なども思いのまま。ちょっとした表やグラフなら、ストレスなく作れる

 また、ビジネス文書を扱うためのソフト「シンクフリーモバイルオフィス(R)」も標準でインストールされているため、「Write」で文書を作成したり、「Calc」で表やグラフを作ったりすることが可能だが、これも見やすい画面と大きなキーボードのおかげで作業が苦にならない。

 これまで、タブレットは、パソコンなどで作成されたデータを閲覧するためのビューワー的な位置づけであったが、AT830は、大きな画面と打ちやすいキー、高速な処理性能のおかげで、データを作成・編集することがさほど苦にならないようになっている。

 休日などに、会社でやり残した仕事をAT830で片付けたり、次の課題のための準備をしておくといったパソコン的な使い方も可能だ。こういった使い方ができるというのは、予想外の収穫と言って良いだろう。

オールマイティの万能タブレット

 このように、東芝のAT830は、13.3型ワイドという大きく、高解像度のディスプレイを搭載したことで、これまでのタブレットでは力不足な印象があった用途にも積極的に使える製品になっている。

 これまでのタブレットは、リビングに置いておいて、みんなが使えるテレビやパソコンのサブ端末的に使うという用途が適していたが、AT830は「サブ」という間隔ではなく、コレ一台である程度のことを完結させることができるメイン端末的な使い方が適しているだろう。

 どこでも使える自分専用のテレビとして購入するのもオススメだが、この画面の大きさであれば、家族や友人と一緒にコンテンツを楽しむことも可能になる。また、電子書籍を楽しんでみたいという人にもぜひオススメしたい端末であるうえ、メールや文書作成といったパソコンライクな使い方を求める人にも適した製品で、オールマイティな端末と言える。

 持ち運ぶことを考えるのであれば、10.1型のAT700やAT500、さらには7.7型のAT570が適しているが、大画面で、様々な用途に使用できるメイン端末を求めているのであれば、AT830の購入を検討してみるといいだろう。

(清水 理史)

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