ロボット掃除機に飛躍的な進化をもたらす TOSHIBA Smarbo 〜アナタのライフスタイルに癒しの時を作る掃除機

 「面倒な家事をすべてロボットに任せられたら……」そんな思いを抱いている主婦や共働き世帯、独身者は多いだろう。いや、忙しい現代人なら誰もが思う理想像だろう。それに応えてきたのは「一度使ったら手放せなくなる家電」——洗いから乾燥までボタン1つでできる全自動洗濯・乾燥機や食器洗い機だ。そして数年前に登場したのが全自動の掃除ロボット。かくいう筆者も、この夢のようなロボット掃除機を購入しようと思い、販売店に出向いてデモンストレーションを見てみたが、いまいちロボットとは思えない非効率的な動きにガッカリして購入を見送っていた。

 しかし2011年10月1日に東芝から発売されるスマートロボットクリーナー「Smarbo(スマーボ)」は、日本の住宅に特化されたロボット掃除機なのだ。リビング・ダイニングのように部屋にはテーブルや家具が置かれ、フローリングの一部には絨毯が敷かれていたり、一部が畳になっている日本の住宅向けに特化されている。しかも実にロボットらしく合理的な動きを見せ、素早く部屋を掃除するのが印象的だ。

 ここでは、発売前に東芝からお借りしたスマーボを徹底的に使い込んで、いかに日本の住宅事情に適しているかを検証していこう。そして、「スマーボだけがなぜ効率よく全自動で掃除できるのか?」という疑問を技術面からも紹介してくことにしよう。

2011年10月1日に東芝ホームアプライアンス社から発売されるスマートロボットクリーナー「Smarbo(スマーボ)」(VC-RB100)

スマーボの付属品。本体に専用充電器、から拭き掃除ができるモップに、お手入れブラシ、洗って何度でも使える予備のフィルター。右奥のプリンのような形をしたものは、スマーボを侵入させない見えない壁を作るバーチャルガード。そして遠隔操作できるリモコンも付属している

速い! 静か! 正確! 安全! スマート! それが「スマーボ」

 店頭デモのような2m四方の真四角のワクの中でなく、実際に自宅で使ってみて感じたのは、以下の4つのキーワード。

 スマーボでの掃除は4つの軸に支えられ、その名の通りスマートなロボット掃除機として機能している。ここでは、それぞれのキーワードごとの特徴を紹介しよう。

 スマーボの凄さを知るには、筆者も驚いたその動きを見るのが一番だ。基本動作は、次の4つがある。

動作モード 自動モード スポット 念入り 手動
説明 充電器を出発して部屋の隅々まで掃除して再び充電器に戻る。通常使うモード。 部屋の一部分で飲み食いや作業をしたときなどに出たゴミを1.5m四方に渡り掃除する。 自動モードでは部屋を一方向にジグザクに掃除するが、念入りモードにすると縦横から掃除する。 リモコンを使ってラジコンのようにスマーボを操作する。スポットモードで掃除する場合は、手動で汚れた場所まで移動できる。
移動パターン

スマーボ本体のスイッチ。モードボタンで動作モードを切り替え、スタートボタンを押すと掃除を始める

 次のムービーは、家具などを差し引くと実質8畳の部屋を自動モードで掃除したものだ。リモコンのボタン一発で運転を開始し、部屋の輪郭を正確にトレースしながら掃除していく様子がよく分かるはず。注目して欲しいのは、右側にあるソファーの下にもスルスルと入り込み、一般的な掃除機では届かないような場所でもキレイにしているところ。また掃除を終えると、左側にある充電器に自動的に戻っていくのも分かるだろう。なおムービーは12倍速となっている。

毎日掃除している部屋なのに、スマーボに掃除してもらったらこんなにゴミが! おそらくソファーの下の奥にあったものだろう

 この部屋は毎日欠かさず掃除機をかけているのだが、掃除を終えたスマーボのダストボックスを見てみると「こんなにもゴミがっ!」と声を上げてしまうほど、キレイにしてくれた。

 また便利なスポットモードは、次のように機能する。

 こちらは子供が工作して遊んだ後や、ポテチを食べながら映画を見た後の片付けに最適だ。

 掃除機で気になるのは動作音だ。壁の薄い集合住宅では、夜に掃除するのさえためらってしまうが、スマーボは驚くほど静かで、テレビを見ていてもほとんど気にならない程度。

 一般的な掃除機とともに動作音を調べてみたところ、次のようになった。

掃除機・運転モード スマーボ・ターボOFF スマーボ・ターボON 一般的な掃除機・標準
運転音 42dB 60dB 58dB

 いずれも音を反射しやすいフローリングで、掃除機の脇に立ち耳の辺り(高さ120cmほど)で測定してみたが、違いは一目瞭然だ。またスマーボには、吸い込み力を重視するターボモードが搭載されているが、この機能をONにしても一般的な掃除機を標準(中)の強さで使った程度。メーカー発表では、ターボOFF時のフローリングでの動作音は52dBとなっているが、これは静かなオフィス程度の音でしかない。

 次に、スマーボの動作音をカーペットの部屋で測定したところ、次のような結果となった。

掃除機・運転モード スマーボ・ターボOFF スマーボ・ターボON 一般的な掃除機・標準
運転音 40dB 45dB 56dB

 また同様にして、動作音の周波数成分(高い音と低い音の成分がどれぐらい出ているか)を調べたところ、次のようになった。なお緑の線は瞬間の運転音、赤の線はピークを表しているので、赤い線を見比べるといいだろう。グラフの横軸は、左側が低い音(20Hz)で、右が高い音(22kHz)となっていて、ヒトが音として聞こえる範囲の周波数を表示している。また縦軸は、その周波数がどれだけ大きな音かを示し、上に行くほどウルサイという意味だ。

【フローリングでの測定】

スマーボ:ターボOFF

スマーボ:ターボON

一般的な掃除機:吸引力標準(中)

 スマーボはターボをONにすると、20Hzほどの低音が少なくなるが20kHz(右端)の音が少し大きくなっていることが分かる。これは回転ブラシを高速に回しているからだろう。右の一般的な掃除機は、スマーボに比べると低い音から耳をつんざく高い音まで、可聴範囲のほとんどで大きな騒音を立てている様子が見て取れる。

【絨毯での測定】

スマーボ:ターボOFF

スマーボ:ターボON

一般的な掃除機:吸引力標準(中)

 絨毯の部屋では、いずれも運転音の周波数は変わらないがフローリングに比べ、全体的に静かになっているのが分かるだろう。

 なおグラフの青い部分はヒトの声の周波数で、100Hz〜400Hzを示している。床の素材に関係なく、スマーボはターボをOFFにすれば男性〜女性の声まではっきり聞こえるだろう。ただしターボをONにすると一般的な掃除機も含めて女性の声が聞きづらくなるようだが、スマーボは高い「キーン」という音の成分が少ないので「テレビを見ていても気にならない」と思われる。このように、耳をつんざくような高い音を出さないのもスマーボの特徴だ。

 また全部屋のドアを開けて自動モードで掃除をさせれば、部屋の外も掃除してくれるので、睡眠の邪魔をされることなく、リビングからキッチン、廊下までキレイに掃除してくれる。ちょっとしたSFの家事ロボットの世界がそこにある。

 52dBという静かなオフィス並の動作音なら、寝ている邪魔もされないのでは?と思い、タイマーをかけて寝ている間に部屋を掃除させてみることにした。ただし、詳細は後述するがスマーボが苦手な、立て掛けてあるモップなどは片付けておいた。結果は、スマーボが掃除中でも目を覚ますことなく、筆者は朝まで爆睡(笑)! ただ眠りの深さは人によりまちまちなので、中には動作音で起きてしまう場合もあるかもしれない。とはいえ筆者の眠りの深さは震度3の地震があると目が覚める程度なので、一応人並みと言えるだろう。おそらく夜中に寝室を掃除させたとしても、大半の人は睡眠を邪魔されることはないはずだ。

スマーボは、部屋をおよそ20cmのマス目に区切って掃除をする

どこに行ったのかな? と思ったら、ひょっこりソファーの下から顔を見せるお茶目な面も

 部屋にはさまざまな家具があり、複雑な形になっている。コーナーに置いたAVラックは部屋の一部が斜めになってしまい、机や椅子の足は丸い形をしている。さらに床に固定されたドアストッパーもロボットには難題だ。

 スマーボは部屋をおよそ20cmのマス目に区切って掃除をするが、内蔵された障害物センサーと接触センサーを併用して、部屋が斜めになっている部分も余すところなく掃除。また机や椅子の丸い脚、ドアストッパーも「どこにどれだけの太さのものがあるか?」をしっかり見極め、回りを上手に掃除してくれるのだ。

 さらに一般的な掃除機ではなかなか掃除できないソファーの奥や、ラックと床の隙間にもスイスイ入り込み「なにやら一生懸命働いているな」と見ていると、奥の壁際までしっかり入り込み掃除を終えて、ひょっこり顔を出すという、なかなかお茶目な一面も見せてくれるところが楽しい。

 さらに賢さに魅せられるのは、掃除が終わったそのときだ。クルクルと回り出し、出発点の充電器を探している。そして充電器を見つけると最短距離で充電器の正面に回り込み、距離が近くなると速度を落としてソフトにドッキングする。その誤差1cm以内! まるでスペースシャトルと国際宇宙ステーションのドッキングのようで、メカ好きは何度見ても飽きないだろう。それもそのはず、スマーボは2つのビーコン(直進する信号)を捉えて位置補正するので、基本はシャトルのドッキングと変わりないのだ(シャトルは高さのビーコンも持つ)。

 SF好きなら誰しも知っているロボット系SF作家のアイザック・アシモフの言葉に「ロボット工学3原則」というものがある。

第1条:ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。

第2条:ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第1条に反する場合は、この限りでない。

第3条:ロボットは、前掲第1条および第2条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

 もちろんロボットであるスマーボにも、この3原則は適用されている。

 まず第1条は安全性だ。スマーボのようなアイテムは、まず子供の興味をひく。ウチの場合も例外に漏れず、小学生がスマーボを追いかけて遊んでいた。しかしスマーボには、障害物との距離を測る障害物センサーがすぐさま反応し、人やペットにぶつかったりしない。またブラシにモノが絡まってしまった場合は、ブラシの回転を停止して音声でそれを知らせてくれるのだ。さらに子供が遊び半分でスマーボを持ち上げると、直ちに駆動輪の回転を停止するので、指を挟まれてしまうこともない。

 第2条は、すこし拡大解釈になるが「人に危害を与えないというもとに、人が便利に使えなければならない」という意味を持っている。これはここまでで紹介した機能からも明らかだが、障害物があればそれを避けて掃除を続けたり、電線などの多少の段差を乗り越えたり、フローリングの一部にカーペット(厚さ1.5cm程度、毛足の長さ2cm以下)を敷いていても、しっかり部屋を掃除できるというものだ。しかも、段差を乗り越えられずに立ち往生してしまった場合などは、無理に動こうとせず、その旨を音声でお知らせして人の判断をあおぐようになっている。つまりモーターなどが加熱して第1条に抵触しそうな危険な事態を自ら避けるのだ。

侵入させたくない領域にバーチャルガードを置くと、スマーボはその手前で向きを変え中に入らない。写真の場合は、バーチャルガードから手前4mに向かって見えない壁を作っている

 また付属のバーチャルガードを使うと赤外線の見えない壁で、スマーボを侵入させないエリアを作れる。赤ちゃんを寝かせてる場所や梅干しを干している場所、作業中で部品が置いてある領域などは、このバーチャルガードを使うと、スマーボはその領域に侵入することがない。それだけでなく、風通しをよくするためにドアは開けておきたいが、スマーボを廊下に出したくない場合などは、ドア前に設置すると仮想の壁が作れたりと、工夫次第でいろいろな使い道がある。

 侵入させたくない領域にバーチャルガードを置くと、スマーボはその手前で向きを変え中に入らない。右の写真の場合は、バーチャルガードから手前4mに向かって見えない壁を作っている。

 第3条は、ロボットは自身の身を守るというものだ。スマーボには、落下防止用の段差検出センサーが底面にあり、2階の廊下を掃除させても階段から落下することもないし、玄関の段差を落ちてしまうこともない。意地悪して狭い机の上を掃除させてみたが、落ちそうになってドッキリ! というシーンはまったくなく、確実に段差を見分けていたことも書き添えたい。

 このようにロボット工学3原則に則っているところが、スマーボが「スマートロボットクリーナー」たるゆえんである。

スマーボを賢く使うテクニック

 もともとロボット工学出身の筆者だけに、スマーボの魅力を熱く語ってきたが、カタログだけでは分からない使い込みのテクニックを紹介しておこう。

デイリータイマーで毎朝5時に掃除をするようにセット。これなら日も出ているのでCCDカメラの動作にも影響しない

 ロボットをロボットらしく使えるのが、毎日同じ時刻に掃除をし始めるデイリータイマー予約だ。家族が寝静まった夜中にセットしておけば、人という動く障害物がないのでスマーボが効率的に仕事をできる。ただスマーボには小型のCCDカメラが装備され、一度掃除した場所を記憶するので、常夜灯をつけておくといい。試しに真っ暗闇の部屋を掃除させてみたが、さほど同じ場所を掃除するような動きは見せなかった。また起床時間が6〜7時という場合は、日の出の時刻にデイリータイマーをセットしておけば、常夜灯をつけておく必要もない。

 また毎日ではなく1回のみのタイマー予約運転も可能となっている。

ターボモードとかべぎわモードはリモコンで切り換える

 フローリングや畳などの掃除は、運転音が52dBのターボモードオフでもじゅうぶんキレイになる。しかし厚めの絨毯などをしっかり掃除したい場合は、ターボモードで運転するといい。ゴミをダストボックスに集める底面の回転ブラシ(ファンモーターでの吸引も行っている)が高速回転するため音は若干大きくなるが、一般的な掃除機のように耳をつんざく騒音を出さないので集合住宅でも気兼ねなくターボモードが使える。

 スマーボは障害物センサーで壁との距離を測り、ブラシが壁に軽く触れる程度まで壁際を掃除できる。とはいえ部屋の4隅などのコーナーは、数cmと僅かながらだがブラシが届かない場所ができてしまう。筆者のようにズボラで「そんなの気にしないよ」という人は通常モードで掃除させるといいだろう。しかし壁際までしっかり掃除したいという人は「かべぎわ」モードで運転するといい。このモードで運転すると、スマーボは壁に軽く接触するまで壁際を進むので、コーナーから壁際ギリギリまでしっかりとブラシが届き、よりいっそうキレイにできる。

がべぎわモードOFFだと僅かだがコーナーにゴミが残る

かべぎわモードONにすると、コーナーの隅までキレイにしてくれる

 集めたゴミは後方のダストボックスに溜まるので、ダストボックスのカセットを取り外して中のゴミを捨てられるのはもちろん、ダストボックス上にあるフタを開け、掃除機のホースを当ててればまったく手を汚さずにゴミを吸い取ることができるのだ。

上部のフタを開け掃除機のホースを密着させると、ゴミ箱に捨てるよりもキレイで簡単にゴミを片付けられる。

 カセットを取り出してゴミ箱のフチでトントンと中のゴミを出すと、奥に詰まってしまった綿ホコリがどうしても残ってしまうが、掃除機で吸い取ると、洗ったかのようにキレイになる。

 またダストボックスとフィルターは水洗いが可能。外国製の掃除機は、水洗いできるものが少ない(皆無?)なので、日本ならではの掃除機と言えるだろう。

 筆者の自宅はさほど広くないので、廊下とリビング・ダイニング・キッチンを掃除させてもバッテリー切れすることはなかった。しかし数十人以上が机を並べるようなオフィスを掃除させたら、さすがのスマーボでも途中でバッテリー切れしてしまうだろう。

 しかしスマーボの賢さは並じゃないので、バッテリー切れを起こしそうになると、その位置を記憶していったん充電器に戻る。そして2時間ほど充電すると、記憶した場所まで最短距離で移動して、掃除を再開するというから凄い! ただし充電器から5m以上離れてしまうとスマーボが充電器を見失い充電器に戻れない場合もある。

 ヒトにも不得手があるように、スマーボにもいくつか苦手なところがある。毎日使ってみて、分かった苦手なものは、次のようなもので、それぞれヒトが手助けをしてやるといいだろう。

苦手なもの 現象 対応方法
毛足の長い(2cm以上)豪華な絨毯 駆動輪が空回りしたり絡まったりして動けなくなる 絨毯を変える
絨毯の横にヒラヒラしたヒモが付いているもの 底面の回転ブラシがヒモを巻き込んでしまう ヒモを絨毯の下に折り込ませる
軽くて固定されていないキッチンマット 回転ブラシに絡まって引きずってしまう 床にテープなどで固定する
スリッパなど軽くて高さのない障害物 接触センサーが反応せず押しながら進んだり、乗り越えて引きずってしまう スリッパを置き場などに戻す
壁に立てかけているモップなど細長いもの 接触センサーが触れたときに少し押してしまうので倒してしまうことがある 別の部屋などに一時的に移動する
軽く小さな缶やタッパー容器 接触センサーに反応せず押してしまったら、引きずってしまう場合がある 机の上などに片付ける

このようにヒラヒラのヒモが付いている絨毯は、それを織り込んでしまえばスマーボが掃除しやすくなる

 いずれも簡単な対応でスマーボが効率よく仕事できるようになるので、ちょっとだけロボットの職場改善に気をつけてやればいい。またバーチャルガードなどを活用するのもいいだろう。

 スマーボのもうひとつの便利ギミックは、ダストボックス下にモップを取り付けてから拭きができること。モップの着脱も簡単で、取り替え用のモップも添付されているので、部屋ごとに取り替えてもいいだろう。もちろんモップは水洗いして何度も使えるので、粉系の汚れが目立つときは、から拭きも同時にさせるといい。

モップを取り付ければ、掃除をしながら乾拭きできる

モップの布は、マジックテープで簡単に交換できる

床をから拭きしながら掃除するスマーボ

企業機密のギリギリ! スマーボの最新テクノロジー!

 さてここまでスマーボの魅力について色々と紹介してきたが、いわゆる「うわべだけ」の機能の紹介に過ぎない。技術系の読者からしてみると「かなり胡散臭い記事」に読めてしまうだろう。なにせ筆者もそのタイプのヒトなので「どうしてそんなことができるのか?」という技術的な裏づけがないと、たとえImpress Watchの記事でも信用しないほうだ(笑)。

 そこでここでは、技術系読者のためにスマーボの賢さを支えるセンサーやチップ類の説明もしておくことにしよう。なお、かなり技術的な話になるので「メカはさっぱり」という読者は、これまでのレビューから機能を把握できるはずなので、読み飛ばし、結びを読んでもらってもかまわない。

障害物センサーや段差センサーなど全部で38個のセンシング機能を搭載している

天井に向けて付けられた小型CCDカメラは、蛍光灯や部屋の「角」に注目して、すでに掃除した区画かどうかを判断する

 スマーボには、上部前方に小型CCDカメラが搭載されており、30枚/秒で天井中心に壁も撮影している。このカメラは部屋の照明の位置やエッジ(角)を認識して、すでに掃除した場所を判断するものだ。

 つまり過去に撮影した同じような写真を見つけると、そこはすでに掃除済みとして通過するので、効率よく早く掃除をできるというワケ。部屋を真っ暗にしてしまうと、掃除したかどうかを判断する材料は、駆動輪の走行距離センサーのみとなるため、掃除済みの区画を判断する精度が落ちてしまう。「夜間は常夜灯をつけたり日の出に合わせてタイマーをセットするといい」と前述したのは、この精度を上げるためである。

 なお掃除すべき部屋の形状は、障害物センサーと接触センサーで認識いている。

メインCPUは高速32ビットのCPUを2つ搭載している

 各種センサーからの情報を受けて、スマーボ全体の動きを制御するメインCPUには、組み込み用としては珍しい高速32ビットCPUを2つ搭載している。一般的な家電では1〜2ランク下の32〜16ビットCPUを使うのがポピュラーだが、スマーボは38個のセンサーと6個のモーターを利用しているので、最上位の高速版を利用しているようだ。

 掃除済みの区画を判断するための画像解析・蓄積モジュールには、前述している2つの高速32ビットCPUのうちの一つが組み込まれている。毎秒30枚撮影された画像は、スマートフォンやMP3プレイヤーなど小型AV機器でよく使われているチップに送られ、画像データとしてモジュールに搭載されているメモリー(フラッシュとSDRAMの合計64Mバイト)に蓄積。過去に同じ画像がなかったかを認識し、メインCPUと連動して賢く素早く部屋を掃除するのだ。

 スマーボは、できるだけ壁や家具に衝突しないように、障害物センサーを左右合計で8個搭載している。これは赤外線距離センサーと呼ばれるもので、工業用のロボットなどでも使われるセンサーだ。2つの目を持っているが、片側から赤外線を照射して、もう片方は照射した赤外線がどのぐらい戻ってきたかで距離を測るもの。

 たいていの家では、白い壁紙に床から数センチの箇所に木目の幅木というものが付けられているので距離を正確に測れる。しかしオフィスなどの場合は、樹脂製の真っ黒な幅木だったり、白いパーティション(仕切り)などの場合があり、赤外線の反射率が一般家庭とは異なるので、若干の誤差が生じる。幅木が白い場合は「かべぎわ」モードを使うといいだろう。

赤外線距離センサー(障害物センサー)が8個搭載されており、障害物を検知して衝突を回避する

白い壁紙でも、たいていの家は床から数センチのところまで「幅木」と呼ばれるものが貼られている

段差センサーは正面と、左右のブラシ横に計3つを備え、階段からの落下などを防止する

 壁や家具との距離を測るセンサーとほぼ同じだが、本体底部に3つある段差センサーは、床との高さを測っている。スマーボは後退(わずかに後退する場合もある)せず、向きを180度変えて常に前進するため、前方3箇所のセンサーのみでも階段などの段差から落下することはない。また、乗り越えられる段差1.5cmギリギリの場合は、段差の形状や絨毯の種類などによって、途中で空転してしまう場合もあるが、それを自動的に検知して音声でのアナウンスとともに、動作を止めるようになっているので安心だ。

 先に紹介したとおり、障害物センサー同士の隙間は10cmほどあるため、テーブルや椅子の足のように細長いものや黒く小さいものは障害物センサーで感知できない場合がある。それを補助するのは前面のバンバー裏に仕込まれている接触(パンバー)センサーだ。実体は左右にある2つの「フォトインタラプター」というセンサーで、向かい合った赤外線LEDと受光部をバンパーの突起が遮断すると、壁に当たったと検知する。

 外見から見たバンパーは一体型になっているが、左側のパンパーが当たると左のセンサーが検知、右が当たれば右のセンサーが検知するようになっている。また正面に当たると左右のセンサーが同時に検知するので、計3方向の障害を見極めるというわけだ。

障害物センサーで感知できなかった場合は、障害物がバンパーに当たりそれを感知する。

マイクロスイッチを搭載し、本体を持ち上げると自動で運転を停止する

 スマーボの走行に欠かせない駆動用モーターは、小型・軽量の直流モーターを、自由な速度で正確に回転できるPWM方式で制御している。しかも左右は独立したモーターなのに、フローリングの目を沿うようにまっすぐ進むスマーボを見れば、かなり精度の高い制御をしているというのが技術系のヒトにはよく分かるだろう。またモーターの軸には、左右のモーターがどれだけ回転したかを検出し、進んだ距離をはじき出す走行距離センサー(エンコーダー)が搭載されている。

 メインCPUでもPWM制御は可能だが、スマーボは専用のチップを左右2つ搭載し、メインCPUはセンサーの状態を常に監視することに重きを置いているようだ。

 またスマーボを持ち上げたとき指が車輪に巻き込まれないようするために、マイクロスイッチを搭載。床に置いてあるときは、スマーボの自重でスイッチがONになるが、持ち上げるとスイッチがOFFになるので、駆動輪が自動的に停止するようになっている。

 スマーボには6つのモーターが搭載されているが、吸引機用のモーターを除く5個は、ひも状のものが絡まって停止してしまう恐れのある掃除と駆動系のモーターだ。

 これらのモーターには、回転の異常を検知するセンサー(実際には電流を測っているものと思われる)が設けられており、無理に駆動して絨毯や家具を痛めないように、また自身のモーターを故障させないようにしている。

 スマーボは、より走行距離を正確に測ったり、掃除を終え素早く充電器に戻るために加速度センサーを搭載している。これにより急発進や急停止して駆動輪がスリップして走行距離に誤差が出ないようにしている。つまりメインCPUは、スマーボを加減速する際に加速度センサーの状況を見ながら駆動し、もしスリップした場合などは加速度センサーにより位置補正も行っているようだ。

 進む方向をキッチリ90度ターンして掃除するスマーボには、なんとジャイロセンサーも搭載している。フローリングの目に沿うように直進したり、コーナーではきっちり90度でターンするのは、このジャイロセンサーとPWM制御を行っているスマーボならではと言えるだろう。

 主なセンサーはこれまでに紹介してきたものだが、バーチャルガードの仮想壁を検知するセンサーをはじめ、充電器と寸分の狂いなくドッキングするためのセンサー、リモコンの信号を受信するセンサーに、充電中の電池の温度を測る温度センサーなどさまざまなものが搭載され、それをメインCPUがすべて把握して、早く、静かに正確に、そして安全・スマートに掃除するのがスマーボなのだ。

※使用されている部品が変更になる場合がございます。予めご了承ください

ゆとりの時間を生み出す賢い掃除機こそスマーボ

 技術系に強い読者は、最新の数々のテクノロジーに裏付けられて効率よく掃除できるかがお分かりいただけただろう。「技術はチョット苦手」という読者にも、その素晴らしさを十分に理解していただけたはずだ。

 これまでのロボット掃除機は、闇雲に部屋を動き回り「いずれ掃除が終わるだろう」というローラー作戦に違いないものだったが、東芝のスマーボは各種のハイテクセンサーと技術により、より早く合理的に、隅々まで掃除できるロボット掃除機として大きく未来の家事ロボットに近づいた。

 筆者が最もオススメしたいのは、次のような方々だ。

 共働き世帯でスマーボを使えば、寝ている間に掃除を済ませてくれるので、夫婦の時間が増えるだけでなく、奥さんや主夫が大喜びすることは間違いない。動作音が静かなので、夫婦でテレビを楽しんでいるときの邪魔にもならないのが魅力だ。

 独身世帯の場合は、男女問わず掃除をする手間が一切省けるので、より趣味に多くの時間を費やせるのがスマーボだ。

 奥さんや主夫へ、また自分自身へのご褒美としてボーナス一括払いのチョット早いクリスマスプレゼントとしてはどうだろう?

 スマーボはアナタのライフスタイルに癒しの時を作ってくれる。

(藤山哲人)

 

■関連情報
□東芝ホームアプライアンス
 http://www.toshiba.co.jp/tha/
□ニュースリリース
 http://www.toshiba.co.jp/tha/about/press/110824.htm

■関連記事
□東芝、壁にぶつからずに効率的な掃除ができるロボットクリーナー
 http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20110829_473751.html
□東芝、短時間で賢く掃除できる掃除ロボット「スマーボ」
 http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/20110824_472417.html

 

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